【平唯の人間観察第十話「スイートハートチューン」】
「ボク思うんですけどね、砂糖というのは神が人間に使わした平和への架け橋なんじゃないでしょうか。」
「そ、そうなのかな?」
「ていうかアレなんですよね。
ボクってば胃袋キャラじゃないですか。
だから甘いもの食べるのは決して趣味じゃなくてキャラ付けアピールの為の一環っていうか。
昔流行ったスイーツ系男子、みたいな。」
「みたいな、じゃなくて貴方は貴方はスイーツ系男子そのものなんじゃないかな?」
「う~ん……。」
こんにちわ、平唯です。
今は学校町で有名な変人ばかり集まるというカフェで甘味を楽しんでいます。
この店はコーヒーを頼む前からガムシロップが置いてあるので、
嫌いなコーヒーを頼まなくてもパフェにガムシロップをかけられてすっごくありがたいです。
今私の目の前でオレンジジュースをチューチュー吸っている子供は拝戸純。
前々回私を男だと勘違いして襲いかかってきた子です。
これで高校二年生らしいのだから正直驚きです。
学校町は色々怖いところだと思いました。
なんで今私が純ちゃんとお話ししているかというと彼女の卑劣な策でおびき出されたからです。
デザートフェスタに連れて行ってあげるからめーちゃんとの関係を洗いざらい吐けだなんて卑怯です。
そんなことされたら誰でもどんな情報でも吐いちゃいますよね。
「ところで昇天ペガサスMIXパフェ食べ過ぎじゃないかな?
これでお代わり十回目だよ?」
「いやいや純ちゃん、その程度で驚いてはいけません。
甘い物は別腹って昔から言うでしょう?」
「そ、そうなの……?」
「ええ、そうですよ。」
「それはまあ良いとして、そろそろお兄ちゃんとの関係を教えてくれないかな?」
「ああ、私は彼の従妹です。」
「でも従弟なら普通あんな感じで抱き合ったりしないんじゃないかな?」
「いや、恋人以上親戚未満みたいな感じなんですよ今。」
「親戚同士で恋愛はアウトなんじゃないかな?
ていうか男同士で恋愛って時点でアウトなんじゃないかな?」
「それを言ったら兄妹で恋愛ってアウトですよ。」
「義兄妹だからセーフ!」
「あれ?てっきり本当に妹だとばっかり……。」
違うのか。
めーちゃんの家と私の家とは母親が双子の姉妹だという以外接点が無いからあまり解らない。
そういえば昔の中国で義兄弟というのはおホモダチのことだったらしいが……
純ちゃんの場合はまあストレートなのでセーフだが。そう言う意味ではむしろ私の方こそ危ないくらいだ。
いいや、そもそも彼女の場合外見がどう見ても小学生なので彼女は別の法律でアウトか。
「……本当に貴方は貴方は従弟なのかな?
私が本当の意味で妹だったらわざわざこんな質問しないとおもうなあ。」
ジトーっとした目でこちらを見つめる純ちゃん。
あらやだ可愛い食べちゃいたい。
「従妹だよ。子供の頃からあの人に遊んで貰っている。
あの人の優しい部分、人間らしい部分を知っている数少ない人間だと言っても良い。」
「ふーん、私は私は遊園地で迷子になった時に助けて貰ったもん!」
「ボクは遊園地までドライブに連れてって貰いました。
その後お泊まりまでしましたね。」
「私は私は入院した時にお見舞いに来て貰ったもん!」
「ボクも殺人鬼に襲われて入院した時は三日三晩寝ずに付きそってくれました。」
「私は私は一緒に添い寝したことあるもん!」
「ストォォォォォオップ!駄目、その外見でそんな事言うと逮捕だよ!
君じゃなくてめーちゃんが逮捕されちゃうよ!」
「…………何を言っているのかな?」
「いやだって、え?」
「お泊まり会したんだもん!」
「………………何も無し、っすか。」
「友さんとも一緒にトランプしたよ!」
「いやいや、ボクもまだ何もしてないけどさあ。
ていうか友さんって誰?」
「私と私とおにいちゃんの友達なの!」
「ふぅん……。」
めーちゃんと純ちゃんの友達と言うからにはヤバイ奴に違いない。
会ってもいない友という人を勝手にイメージしてみる。
めーちゃんと似た雰囲気のド変態男に違いない。
考えるだけで恐ろしいぜ。
「まあボクはめーちゃんのピンチを助けたこととかあるもん。
何だかんだ言ってバトルヒロインなんで。」
「ヒロ……イン?」
「ああ、間違えた、ヒロインではないよね。」
「私だっておにいちゃんのピンチを助けたことあるもん!」
「ボクの場合めーちゃんと入れ替わって敵と渡り合ってたからね!」
「私なんてお兄ちゃんが胴体真っ二つになってたところを助けに行ったもん!
ちゃんと時間稼ぎしたもん!
「待って、胴体真っ二つの時点で手遅れじゃないの!?」
「ところがそうはならないんだよ!お兄ちゃんってばすごいよね!」
「そんな化け物を従兄に持った覚えはなかったよ。」
まったくもう、胴体真っ二つでも大丈夫ってセルかブゥかクマーかチョコラータかバギーくらいだ。
あとシックスさん……は、結局死んだね。
仙水さん……死ぬか。キメラアントの王なら大丈夫だけど。
「お兄ちゃんは化け物じゃなくて常識からずれちゃっただけだよ。」
ちょっとムスっとした様子の純ちゃん。
何か化け物という言葉に嫌な思い出でもあるのだろうか?
「まあ良いや、それはそうとしてボクは昔からめーちゃんと仲良くしてて勢い余って良い雰囲気になっただけなんだ。
以前から付き合っていたとか君の存在とかはまったく知らなかった。
そう言うことで良いかい?」
「まあそれは解ったけどさ。
貴方は貴方はこれからもお兄ちゃんを好きで居続けるの?」
「会うだろうね、うん。」
「そっか……。」
「めーちゃんを独占したいの?」
「うん。」
純ちゃんは素直に頷いた。
でも、それは彼に対してあまりにも理解がない。
彼は誰かに所有されることを一番嫌うのだ。
「それは無理だよ。」
「なんで?」
「だって、誰かに独占された時点でそれはもうめーちゃんじゃないもん。
そもそも純ちゃんは太陽や月を独占できるのかな?」
めーちゃんは人間とかなんだとか言うよりも太陽や月みたいな星に近いのだ。
遠く何処か届かないところで強く優しく輝き続けるけど触れられやしない。
彼を受け止められるつなぎ止められるキャパシティーの人間なんて居ない。
そんな寂しい人なのだ。
「できないけど……。めーちゃんは人だもん。
私の力なら絶対私の物にできるよ!」
「そうか、それならやってみればいい。
ボクは無理だと思っている。」
「自分の物になってくれないと思ってるなら、なんで傍に居るのさ?」
「だって純ちゃん、太陽や月が無ければ世界は輝かないじゃないか。」
「……よくわかんない。なんでそこまでめーちゃんのことが好きになれるの?」
「うーん……。最近知ったんだけど私って実は色々複雑な事情が有って養子に出された身の上なんだよね。
家族と直接血が繋がってない訳よ。
でもそんな私にめーちゃんは優しくしてくれたんだよね、子供の頃から。
周りの人には悪の権化みたいな扱いされてるけど私にだけは優しかった。
それじゃあ駄目かな。」
「……ふーん、なんでいきなり私に私にそんな大事な話をするのかな?」
「君が好きだから、じゃあ駄目かな?」
「…………じゃあ私の私の事情も話そうかな。
私は私は家族と血こそ繋がってるけど、それほど優しくして貰った覚えがないの。
だからって虐められてたかって言うと違うんだけど……
関係が希薄な感じかな?
めーちゃんは初対面の筈の私と私と積極的に関わろうとしてくれたの。
私の私の閉じた世界の天窓なの。」
「成る程、お互い事情が有る訳ね。」
「そうみたいだね。」
「ボクはめーちゃんが好きな人が好きだよ。」
そう言ってウインクすると純ちゃんは少し頬を赤くした。
「わ、私は私はお兄ちゃんを独占するのに貴方が邪魔なんだからね!
只相性悪いから排除する順番が後なだけなんだから!」
「さて、錦双龍三連盛り金粉フェスタパフェ十八杯目お代わり!」
「って聞いてない!?」
「聞いてるよ、まあ良いよそれで。
ボクは君のことを勝手に友達だと思うことにするから、年も近いし。」
「うぅ……調子が狂うなあ。あとそれ以上頼まれると私の私の通帳がすっごく寒くなるかな?」
「仕方ないよ、君はボクをパフェ食べ放題の条件で誘い出したんだ。
そんな物にあっさりひっかかるのなんてボクだけだよ!」
「そんなぁ~!」
「イケメンと美味しい食事してるんだからお金くらい払ってよ!」
めーちゃんのろくでなしっぷりが移ったかのような台詞を言い放ちながら、
私は運ばれてきたパフェをぱくつき続けるのであった……。
【平唯の人間観察第十話「甘味」fin】
「ボク思うんですけどね、砂糖というのは神が人間に使わした平和への架け橋なんじゃないでしょうか。」
「そ、そうなのかな?」
「ていうかアレなんですよね。
ボクってば胃袋キャラじゃないですか。
だから甘いもの食べるのは決して趣味じゃなくてキャラ付けアピールの為の一環っていうか。
昔流行ったスイーツ系男子、みたいな。」
「みたいな、じゃなくて貴方は貴方はスイーツ系男子そのものなんじゃないかな?」
「う~ん……。」
こんにちわ、平唯です。
今は学校町で有名な変人ばかり集まるというカフェで甘味を楽しんでいます。
この店はコーヒーを頼む前からガムシロップが置いてあるので、
嫌いなコーヒーを頼まなくてもパフェにガムシロップをかけられてすっごくありがたいです。
今私の目の前でオレンジジュースをチューチュー吸っている子供は拝戸純。
前々回私を男だと勘違いして襲いかかってきた子です。
これで高校二年生らしいのだから正直驚きです。
学校町は色々怖いところだと思いました。
なんで今私が純ちゃんとお話ししているかというと彼女の卑劣な策でおびき出されたからです。
デザートフェスタに連れて行ってあげるからめーちゃんとの関係を洗いざらい吐けだなんて卑怯です。
そんなことされたら誰でもどんな情報でも吐いちゃいますよね。
「ところで昇天ペガサスMIXパフェ食べ過ぎじゃないかな?
これでお代わり十回目だよ?」
「いやいや純ちゃん、その程度で驚いてはいけません。
甘い物は別腹って昔から言うでしょう?」
「そ、そうなの……?」
「ええ、そうですよ。」
「それはまあ良いとして、そろそろお兄ちゃんとの関係を教えてくれないかな?」
「ああ、私は彼の従妹です。」
「でも従弟なら普通あんな感じで抱き合ったりしないんじゃないかな?」
「いや、恋人以上親戚未満みたいな感じなんですよ今。」
「親戚同士で恋愛はアウトなんじゃないかな?
ていうか男同士で恋愛って時点でアウトなんじゃないかな?」
「それを言ったら兄妹で恋愛ってアウトですよ。」
「義兄妹だからセーフ!」
「あれ?てっきり本当に妹だとばっかり……。」
違うのか。
めーちゃんの家と私の家とは母親が双子の姉妹だという以外接点が無いからあまり解らない。
そういえば昔の中国で義兄弟というのはおホモダチのことだったらしいが……
純ちゃんの場合はまあストレートなのでセーフだが。そう言う意味ではむしろ私の方こそ危ないくらいだ。
いいや、そもそも彼女の場合外見がどう見ても小学生なので彼女は別の法律でアウトか。
「……本当に貴方は貴方は従弟なのかな?
私が本当の意味で妹だったらわざわざこんな質問しないとおもうなあ。」
ジトーっとした目でこちらを見つめる純ちゃん。
あらやだ可愛い食べちゃいたい。
「従妹だよ。子供の頃からあの人に遊んで貰っている。
あの人の優しい部分、人間らしい部分を知っている数少ない人間だと言っても良い。」
「ふーん、私は私は遊園地で迷子になった時に助けて貰ったもん!」
「ボクは遊園地までドライブに連れてって貰いました。
その後お泊まりまでしましたね。」
「私は私は入院した時にお見舞いに来て貰ったもん!」
「ボクも殺人鬼に襲われて入院した時は三日三晩寝ずに付きそってくれました。」
「私は私は一緒に添い寝したことあるもん!」
「ストォォォォォオップ!駄目、その外見でそんな事言うと逮捕だよ!
君じゃなくてめーちゃんが逮捕されちゃうよ!」
「…………何を言っているのかな?」
「いやだって、え?」
「お泊まり会したんだもん!」
「………………何も無し、っすか。」
「友さんとも一緒にトランプしたよ!」
「いやいや、ボクもまだ何もしてないけどさあ。
ていうか友さんって誰?」
「私と私とおにいちゃんの友達なの!」
「ふぅん……。」
めーちゃんと純ちゃんの友達と言うからにはヤバイ奴に違いない。
会ってもいない友という人を勝手にイメージしてみる。
めーちゃんと似た雰囲気のド変態男に違いない。
考えるだけで恐ろしいぜ。
「まあボクはめーちゃんのピンチを助けたこととかあるもん。
何だかんだ言ってバトルヒロインなんで。」
「ヒロ……イン?」
「ああ、間違えた、ヒロインではないよね。」
「私だっておにいちゃんのピンチを助けたことあるもん!」
「ボクの場合めーちゃんと入れ替わって敵と渡り合ってたからね!」
「私なんてお兄ちゃんが胴体真っ二つになってたところを助けに行ったもん!
ちゃんと時間稼ぎしたもん!
「待って、胴体真っ二つの時点で手遅れじゃないの!?」
「ところがそうはならないんだよ!お兄ちゃんってばすごいよね!」
「そんな化け物を従兄に持った覚えはなかったよ。」
まったくもう、胴体真っ二つでも大丈夫ってセルかブゥかクマーかチョコラータかバギーくらいだ。
あとシックスさん……は、結局死んだね。
仙水さん……死ぬか。キメラアントの王なら大丈夫だけど。
「お兄ちゃんは化け物じゃなくて常識からずれちゃっただけだよ。」
ちょっとムスっとした様子の純ちゃん。
何か化け物という言葉に嫌な思い出でもあるのだろうか?
「まあ良いや、それはそうとしてボクは昔からめーちゃんと仲良くしてて勢い余って良い雰囲気になっただけなんだ。
以前から付き合っていたとか君の存在とかはまったく知らなかった。
そう言うことで良いかい?」
「まあそれは解ったけどさ。
貴方は貴方はこれからもお兄ちゃんを好きで居続けるの?」
「会うだろうね、うん。」
「そっか……。」
「めーちゃんを独占したいの?」
「うん。」
純ちゃんは素直に頷いた。
でも、それは彼に対してあまりにも理解がない。
彼は誰かに所有されることを一番嫌うのだ。
「それは無理だよ。」
「なんで?」
「だって、誰かに独占された時点でそれはもうめーちゃんじゃないもん。
そもそも純ちゃんは太陽や月を独占できるのかな?」
めーちゃんは人間とかなんだとか言うよりも太陽や月みたいな星に近いのだ。
遠く何処か届かないところで強く優しく輝き続けるけど触れられやしない。
彼を受け止められるつなぎ止められるキャパシティーの人間なんて居ない。
そんな寂しい人なのだ。
「できないけど……。めーちゃんは人だもん。
私の力なら絶対私の物にできるよ!」
「そうか、それならやってみればいい。
ボクは無理だと思っている。」
「自分の物になってくれないと思ってるなら、なんで傍に居るのさ?」
「だって純ちゃん、太陽や月が無ければ世界は輝かないじゃないか。」
「……よくわかんない。なんでそこまでめーちゃんのことが好きになれるの?」
「うーん……。最近知ったんだけど私って実は色々複雑な事情が有って養子に出された身の上なんだよね。
家族と直接血が繋がってない訳よ。
でもそんな私にめーちゃんは優しくしてくれたんだよね、子供の頃から。
周りの人には悪の権化みたいな扱いされてるけど私にだけは優しかった。
それじゃあ駄目かな。」
「……ふーん、なんでいきなり私に私にそんな大事な話をするのかな?」
「君が好きだから、じゃあ駄目かな?」
「…………じゃあ私の私の事情も話そうかな。
私は私は家族と血こそ繋がってるけど、それほど優しくして貰った覚えがないの。
だからって虐められてたかって言うと違うんだけど……
関係が希薄な感じかな?
めーちゃんは初対面の筈の私と私と積極的に関わろうとしてくれたの。
私の私の閉じた世界の天窓なの。」
「成る程、お互い事情が有る訳ね。」
「そうみたいだね。」
「ボクはめーちゃんが好きな人が好きだよ。」
そう言ってウインクすると純ちゃんは少し頬を赤くした。
「わ、私は私はお兄ちゃんを独占するのに貴方が邪魔なんだからね!
只相性悪いから排除する順番が後なだけなんだから!」
「さて、錦双龍三連盛り金粉フェスタパフェ十八杯目お代わり!」
「って聞いてない!?」
「聞いてるよ、まあ良いよそれで。
ボクは君のことを勝手に友達だと思うことにするから、年も近いし。」
「うぅ……調子が狂うなあ。あとそれ以上頼まれると私の私の通帳がすっごく寒くなるかな?」
「仕方ないよ、君はボクをパフェ食べ放題の条件で誘い出したんだ。
そんな物にあっさりひっかかるのなんてボクだけだよ!」
「そんなぁ~!」
「イケメンと美味しい食事してるんだからお金くらい払ってよ!」
めーちゃんのろくでなしっぷりが移ったかのような台詞を言い放ちながら、
私は運ばれてきたパフェをぱくつき続けるのであった……。
【平唯の人間観察第十話「甘味」fin】