「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 怪奇チャンネル-三回線四-1

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四-1

遙か昔の人は、日が落ちるのが早いことを「つるべ落とし」と言ったそうだ。
今の季節も、つるべ落としのごとく、日が落ちるのが早い。
武は、唯一の防寒具のマフラーを鼻の上まで上げる。
ついでに、本物のつるべは見たことがない。ただの、本から得た言葉だ。
足早に沈む夕日が、学校町をオレンジ色から、闇色に染め始める頃。
武と晃は、冴の自宅についた。
本当は、もう少し早めに着く予定だったが。昨日、図書室に突然飛び込んだ理由を先生にしつこく聞かれたのが一番の原因だった。二番目の原因は、晃が陸上部の助っ人を頼まれ、チーム編成をしていたからだ。
「で、どうすんのさ」
武は、押しつけられたクリアファイルを見る。
見ようと思わないのに、見てしまうのが人間のサガって奴だ。
サガに逆らわない者は、あんまりいい目を見ないのは罰だろう。
武は、例外無く、罰の悪い自体になった。冴の答案は、ほぼ丸だらけだった。
これを、クリアファイルで持たせた教師の嫌らしさ。その先生は、ものすごく評判も悪い。
「お前が持ってけよ、昨日のこともあるしよ」
晃は、珍しく引け目だ。
ここまで、頭の色もはちゃけたお調子者の友人が、引け目なのも珍しい。
「え、晃。昨日のヘルメットのそんなにコワかった?」
「バッカ、そっちじゃねぇよ!話したろ!?あいつんチには」
晃の声が、止まる。
マンションから、誰か出てくるのが見えた。
片手にビニール袋を持った、長身で、耳の上に剃り込みの入った、両耳にピアスをじゃらじゃら付けた、厳つい男。
赤いシャツに、黒のロングコート、黒の皮のズボン。
どう見たって、ヤヴァイ人です。
関わりたくない人です。
と思っていたら、隣の晃が一目散に逃げ出していた。
「待て!!」
ヤヴァイ男の人は、逃げた晃を追いかけた。
何故か、最速のスプリンターの豹が、トムソンガゼルを追いかける映像が重なった。
ああ、昔教育番組で見たそれが、今まさに起こっていた。
「貴様!家の周りをチョロチョロしてただろ!!ストーカーか!?」
「ハァ!?意味わかんネェし!!痛い痛い痛い!!」
長髪が災いした晃は、呆気なく髪を引かれ掴まっている。
どうにかしなきゃ。どうにもなんないかも。
そんな消極的なことを思っていると、心の中でムサシが飛び起きた。
「代われ、武。アイツと戦いたい」
「え、あの人も都市伝説契約者なの?」
「馬鹿。アイツ、前々回の空手大会の日本代表だ!知らねぇのかよ!!」
ムサシにまくし立てられるが、残念ながらスポーツに興味はない。
マンション前で騒いでいると、頭上から声がかかった。
「あら、遅かったじゃない」
マンションの七階から、顔を覗かせる冴がそこにいた。
遅かったの一言に、思わず苦笑いが漏れる。
「冴様、コイツですよ!この間、ウチの周り徘徊していたの!!」
「徘徊とかいうなよ!い、痛いー!」
往生際の悪いトムソンガゼルは、もう涙目だった。
そんなに怖かったのだろうか。うん、怖いな。
怖い豹に、晃を離すように言える、冴も正直怖いと武は心の中で思った。
「二人とも、上がってよ。積もる話もあるんだし」
冴は、にこりと笑いながら、言った。
あれは、営業スマイルだ。
スマイル0円。最近、女性の営業スマイルっていうのがわかってきた武だったが、十七年目で急接近できた女の子が。見た目はいいのに、なんだか良くわからない人なのも納得がいかないというか、神様の馬鹿やろっていうか。
髪がぼっさぼさになった晃に、促されマンションの中に入っていく。
後ろで、豹が羽音しか聞こえない何かを、空中に投げていた。



四-1 了

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