それを思い出させないでください その記憶を掘り出さないで
もう もう二度と あの頃には戻りたくない
もう、この身を血で濡らすのは御免なのです
Red Cape
都市伝説は、時の流れの中で変質していく事が多々ある
噂は、流れるうちに変化していくもの
時代に合わせ、変化していくもの
噂は、流れるうちに変化していくもの
時代に合わせ、変化していくもの
それは、時として悪意によって歪められ
時として、誰かの気まぐれで優しいものに変えられる
時として、誰かの気まぐれで優しいものに変えられる
変化したものが、また元に戻っていく事もあれば
絶えず変化し続け、元の本質など忘れている事もある
絶えず変化し続け、元の本質など忘れている事もある
自分は後者でありたいと思う
もう二度と、あの頃には戻りたくない
もう二度と、あの頃には戻りたくない
『赤い靴』
異国の老人が、子供を連れ去っていく…そんな噂
童謡のその真の意図を理解しない誰かが口にしたそれは、噂となり、都市伝説となった
連れ去られた子供、女の子はどうなったのか?
皆は、想像力を働かせた
童謡のその真の意図を理解しない誰かが口にしたそれは、噂となり、都市伝説となった
連れ去られた子供、女の子はどうなったのか?
皆は、想像力を働かせた
奴隷として売られた
内臓を全部抜き取られた…即ち、移植用の内臓類を抜き出す為に連れて行かれた
性の玩具として弄ばれ、心が壊れてしまった
優しい老紳士に連れられていって、生涯幸せに生活した…
内臓を全部抜き取られた…即ち、移植用の内臓類を抜き出す為に連れて行かれた
性の玩具として弄ばれ、心が壊れてしまった
優しい老紳士に連れられていって、生涯幸せに生活した…
…何故
何故、最後のそれが、一番流布してくれなかったのだろうか
そうしていれば、もしかしたら、自分は生まれなかったかもしれないのに
何故、最後のそれが、一番流布してくれなかったのだろうか
そうしていれば、もしかしたら、自分は生まれなかったかもしれないのに
はじめ、この世に生れ落ちた自分は、異国風の老人の姿をしていた
その姿で幼女を油断させ、噂通りに連れ去っていた
そして…
その姿で幼女を油断させ、噂通りに連れ去っていた
そして…
「………」
「どうかしたの?」
「…いや」
「どうかしたの?」
「…いや」
前を歩いていた、己の契約者が、小さく首を傾げてきた
なんでもない、と無理に笑って返す
契約者は、怪訝な表情をしながらも…それ以上は、追求してこなかった
なんでもない、と無理に笑って返す
契約者は、怪訝な表情をしながらも…それ以上は、追求してこなかった
思い出したくもない記憶
おぞましい記憶
間違いのない、消し去りたい己の過去
おぞましい記憶
間違いのない、消し去りたい己の過去
真っ赤に染まった光景
泣き叫ぶ声
後に残るのは、血塗れの肉塊のみ
肉塊と成り果てた、幼女の体
泣き叫ぶ声
後に残るのは、血塗れの肉塊のみ
肉塊と成り果てた、幼女の体
それを見下ろす自分は、血塗れだった
生れ落ちた自分は、悲しいほどに、人々の話す噂に忠実だった
連れ去られた女の子は、異国の地で死んでしまった
殺されてしまった
生れ落ちた自分は、悲しいほどに、人々の話す噂に忠実だった
連れ去られた女の子は、異国の地で死んでしまった
殺されてしまった
意思すらはっきりしていなかった頃の自分は、それを忠実に再現してしまっていた
いつからだったろうか
その行為に、違和感を感じるようになった
子供の泣き叫ぶ声が、行為を鈍らせるようになった
その行為に、違和感を感じるようになった
子供の泣き叫ぶ声が、行為を鈍らせるようになった
幼女を殺すその行為に、自分が激しい嫌悪を覚えるようになった時
既に、自分は血塗れだった
既に、自分は血塗れだった
思い出すな
思い出したくもない記憶
消し去りたい己の過去
何故、あの頃の自分は、誰にも見つけられなかったのか
何故、あの頃、誰にも退治されなかったのか
どうして、誰も退治してくれなかったのか
思い出したくもない記憶
消し去りたい己の過去
何故、あの頃の自分は、誰にも見つけられなかったのか
何故、あの頃、誰にも退治されなかったのか
どうして、誰も退治してくれなかったのか
もし、誰かが退治してくれていたら
自分は、あんなにもたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさん
殺さずに、すんだと言うのに
自分は、あんなにもたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさん
殺さずに、すんだと言うのに
自我がはっきりとした、その直後
自分は、老紳士の姿を捨てた
今とっている、異国風の中年に足を一歩踏み入れた、その姿に
体格も、自分が持っていた腕力に相応しいものに変えた
異人さんに連れて行かれた、としか歌われていない
だから、異人の姿であれば、何でも良かったのだ
ただ…もう、あの異国の老人の姿は、二度ととりたくない
また、あの姿になってしまったら
自分は、老紳士の姿を捨てた
今とっている、異国風の中年に足を一歩踏み入れた、その姿に
体格も、自分が持っていた腕力に相応しいものに変えた
異人さんに連れて行かれた、としか歌われていない
だから、異人の姿であれば、何でも良かったのだ
ただ…もう、あの異国の老人の姿は、二度ととりたくない
また、あの姿になってしまったら
また、自分は血に塗れた殺人鬼になってしまうのではないか
その恐怖は、永遠に消えてはくれない
その恐怖は、永遠に消えてはくれない
「……うん?」
ぎゅう、と
契約者が、こちらの手を握ってきた
少し、俯いたまま、しっかりと
契約者が、こちらの手を握ってきた
少し、俯いたまま、しっかりと
「どうかしたか?」
「……いえ、何も」
「……いえ、何も」
これ以上は、何も言わずに
ただ、契約者はこちらの手を引いていく
ぺたり、ぺたり
歩く契約者がはいているのは赤い靴
かつての自分が、ターゲットに選び続けた少女たちが履いていたような、赤い靴
…自分の能力を使うの為には、赤い靴を履いている必要がある
その制限さえなければ、できれば彼女に、赤い靴は履いていてはほしくなかった
ただ、契約者はこちらの手を引いていく
ぺたり、ぺたり
歩く契約者がはいているのは赤い靴
かつての自分が、ターゲットに選び続けた少女たちが履いていたような、赤い靴
…自分の能力を使うの為には、赤い靴を履いている必要がある
その制限さえなければ、できれば彼女に、赤い靴は履いていてはほしくなかった
「…あぁ、そうそう」
「うん?」
「私は、あんたの契約者なんだから。もっと死ぬ気で私を護りなさいよね」
「うん?」
「私は、あんたの契約者なんだから。もっと死ぬ気で私を護りなさいよね」
いつも通りの、若干高慢な物言い
…しかし、その声に、微かに心細さが混じっているのも、確かで
…しかし、その声に、微かに心細さが混じっているのも、確かで
「わかった」
小さな手を握り返す
…今日のことは、自分の油断が招いた事
もう、二度と、あんな事を引き起こしてなるものか
…今日のことは、自分の油断が招いた事
もう、二度と、あんな事を引き起こしてなるものか
赤い靴履いてた女の子 異人さんに連れて行かれちゃった
連れて行かれちゃった女の子 一体どうなったのか
誰も
誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も
誰も、知らない
誰も
誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も
誰も、知らない
赤
赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い
赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い
赤く赤く、染まり果てた私を
どうか、お願いです、見ないでください
どうか、お願いです、見ないでください
Red Cape