「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ハーメルンの笛吹き-128

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
【上田明也の探偵倶楽部after.act31~やっぱり我が家が一番です~】

「やばいな……」

 とりあえずつぶやいてみた。
 だからどうにかなるって訳ではない。
 元々華恋は激昂しやすい性格なのだ。
 さらに茜さんはどうにも人情の機微に疎く、いわゆる他人の地雷を踏みやすい所がある。
 いや、都市伝説に人情を云々言うってそもそもに無理が有るんだけどさ。
 人間でさえ他の人間の気持ちがわからないのにそれを都市伝説に求めるのは酷なのであって、
 そういう意味ではこの危機的状況を招いてしまったのは俺の怠慢以外の何でもないという見方こそが正しいのだ。
 それはわかる。
 これでもわかっているつもりだ。
 だが一つだけ言わせてほしい。
 なぜ俺の周りにはこんなにも性格がアレな女性ばかり集まるのだろうか。
 もしこの世界に神というものが居るならば
 『こいつと仲良くなる女の子は全員性格がアレな設定にしてやるぜー』
 とかなめたまねしてくれたに違いないと今の俺は断言しても良いくらいの気分だ。

「華恋。」
「なんだよ!」
「あのー……、あれだ。あの時迷惑かけてごめんね。」
「……うぅ。」
「俺は別にあの時あったことはまったく気にしてないしあそこでやったことがその後の人生に何か影響与えたなんてこと一切無いから安心してね。」
「……だから、だからそうやって何してもケロッとしているあんたのそういうところが……!
 でもあんなことをさせてしまったのは私だし……。」
「初めての体験だったけど意外と軽かったから、たいしたことなかったから!」
「私だって経験してなかったよ!何であんたはそこまで平気で……」

 とりあえず罪悪感と怒りを同時に刺激してみる。



「だあああああああああもう!」

 二つの異なる感情が相まって彼女自身が混乱を始める。

「でもやっぱ……人を殴ると拳が痛むよね。」

 怒りが罪悪感を超さないように『思わず縋り付きたくなる嘘』を混ぜ込む。
 残念ながら親父と俺の料理の師匠の英才教育のお陰で誰かと戦うときに躊躇いを感じたことはない。
 やるときはやる、やれないなら死ぬしかない。
 俺の世界は至ってシンプルだ。

「軽いと感じるんだけど、何故だか少しずつ痛んでね。
 両手が腐って落ちていくんじゃないか心配になるよ。」

 いっそ、焼き払ってもらえば良かったかもな……と呟く。
 華恋が完全に動きを止めたのを見てから茜さんに目配せ、赤い部屋で転移する準備は完璧らしい。
 さすが俺と添い遂げることを決めた女性だ。
 優しいばかりが母性じゃないことをこれでもかと教えてくれるぜ。

「ま、そういうわけでさようなら。」
「え?」

 辺りの景色が一瞬で旅館のそれに変わる。
 ここは自分たちの泊まっていた離れだ。
 どうやら無事に逃げ帰れたらしい。




「いやー危ないところだったわー」
「別に倒しちゃえば良かったじゃないですか。」
「おまえ本当にあいつのこと嫌いなんだな。」
「そりゃあ嫌いですよ、私が人を嫌いで悪いですか?」
「いいや、怒った顔も可愛いぜ。」
「…………茶化さないで。」
「悪い悪い。」

 安堵からかため息がこぼれる。
 倒せば良いなんて言うがどうやら相手は警察にお勤めになっていらっしゃるらしいし俺がこれ以上暴れれば問題になる。
 故に話し合いで済ませるのが最も安全な選択なのだ。
 まあ、アレを話し合いと表現して良いのかは正直言って甚だ疑問ではあるが、
 この際それについては聞かないようにしよう。
 とまあそんなことを思ってると携帯電話が鳴る。

「はい、こちら笛吹探偵事務所所長笛吹丁です。」
「あー笛吹さんっすか。寺門です。」
「さっきの刑事さんか。」
「プライベートの番号知らないんで仕事用にかけたけど大丈夫ですかね。」
「今日オフだから大丈夫。ていうかプライベート知ってたら怖いよね。」
「調べればたぶん出ますよ。」
「まさに権力だな。」
「はい。」
「それで用件は?」
「なんか冬木さんめっちゃ泣いてるんですけど。」

 ですよねー。
 女の子を泣かせるとか最低なのは知ってるけどあの場合仕方ないじゃないか。




「それで?」
「今からそっち向かうそうです。」
「え゛」
「もう行った筈なので速やかに逃げることをお勧めします。」
「ずいぶん親切だね。」
「いやほら、刑事ドラマとかで探偵と仲良くしておくと手柄を横取りできるじゃないですか。
 だから探偵さんにお近づきになっておくのは出世のためにも大事かなーって。」
「華恋は相棒じゃないの?」
「いやー、俺たちの業務って荒事が基本なんですけどね。
 俺が殺しすぎてあいつが殺さないから足して二で割ればちょうど良いっていうふざけた上司の発想につきあってるだけっす。」
「なるほどなるほど……、じゃあありがたく逃げさせてもらうわ。そのうちお礼はしよう。
 ん?なんかちょっと割り込み来たみたいだな。電話切らせてもらうぜ。」
「はいはーい。」

 通話に割り込んできたのは誰だろう。
 俺はボタンを押して通話を切り替えた。

「おう、明也か。お前のプライベートの携帯って番号なんだったっけ。」
「親父かよ。」
「かよってなんだよ!仕事中だった?」
「いや、オフだったから温泉旅行中。
 数寄屋町の藍染屋ってところ。」
「今から行っても良い?」
「来るなよ!絶対来るなよ!」
「なんでさ。」
「なんでも!」
「ふーん……そんじゃあ切るぜ。」

 親父との通話が切れる。
 茜さんが怪訝そうな表情でこっちを見ていた。




「なんでそんな『計画通り!』みたいな顔してるんですか。」
「いやほら、これで上手くいけば俺の嫌いな奴らが鉢合わせするなあとおもって。
 俺と親父って顔似てるし上手くいけば騙されてくれるかも。」
「来るなって言ったのにお義父様は来るんですか?」
「あいつはやるなっていったことを片っ端からやりたがるやつだ。」

 転移の準備を開始する。
 どこかから騒がしい足音が聞こえてきた。
 おそらく親父も何らかの移動手段を持っていたのだろう。

「明也さん、本当にお義父さんが嫌いなんですね。」
「とっととくたばれ糞爺と思ってるよ。まあ俺の方が先に死ぬかもだが。」

 俺と茜さんは再び転移を開始する。
 転移先は吾が懐かしの事務所。
 一連の事件で俺は悟ったのだ。
 やっぱり我が家が一番……と。

【上田明也の探偵倶楽部after.act31~やっぱり我が家が一番です~fin】

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー