「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 魔法少女銀河-11

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【不思議少女シルバームーン~第六話 第三章「トライエラートアラートトライアングラー」~】

「ここが学校町?」
「ああ、一応俺の生まれ育った町だよ。」
「ふーん。」

 頬を一陣の風が掠めていく。
 気の早い桜の花が一片だけ空の彼方へと飛んでいった。

「良い風の吹く町ね。」

 “ああ、そうだな”と俺は言おうと思ったのだ。
 そう言おうとして俺は振り返る。

「ぎゃあ!」

 突然の突風、毛虫が顔に直撃する。

「キャハハハハハハ!」
「笑うなルル、それにしても嫌な風の吹く街だ……。」

 俺の名前は暮地明尊。
 ああ、母方の姓を名乗りながら絶賛家出中の元気な好青年だ。
 自分の父親が自分より年下の女の子とイチャイチャしていたらだれだって家を出たくなるだろう?
 おれだって家を出たくなる。
 とはいえ身を寄せる宛があるわけでもないので、
 俺はとりあえず組織の担当黒服であるエーテルさんに相談して、
 世界ついでに学校町を狙う悪の都市伝説組織“ネバーランド”に仲間入りするふりをしながら衣食住を提供してもらうことにした。
 春休みごろには奴らが動き出すらしいのでそれと同時に奴らを裏切り自宅に戻ろうかと思う。
 二人居る母から聞いた話では俺のクソッタレな父親は俺ぐらいの時に綺麗なお姉さんをナンパしながら日本中を旅して歩いたというし、
 この程度恐らく軽々と許されることに違いない。

「明尊ちゃん英語上手いよねー。」
「まあな、腹の立つことに腹の立つ両親の教育の賜物だ。」
「へー。良いじゃん、親がいるって幸せだよ。」
「そうなのかい?」
「私は覚えてないからね、親のこと。
 明尊ちゃんが初対面の私に殴りかかってきたってことも覚えてないよ。
 気づいたらジャックちゃんとつるんでたしー。」
「三日分の記憶しかないってどんな感じなんだ?」
「地獄かな。」
「忘却は幸福だよ。」
「そりゃあねえ、私は地獄を楽しんでいるから。」
「ジャックの口癖か。」
「“地獄を楽しみな!”ってね」
「うわそっくり」
「でしょ?」
「ところで三日分の記憶があるって言うならちょっと質問。」
「なに?」
「お前は昨日何処に行っていたんだ?」
「ああ、ちょっとヤボ用でね。」
「ふーん、何も聞かされていないと困るんだけどな。」
「女の子の秘密を詮索しないの。」
「ったく…………。」
「ちょっと学校町の面々に宣戦布告してきただけ。」
「ああ、ジャックはそういうこと大好きだもんな。」
「大したウォーモンガーだよ。」

 さっきから俺とくだらない話をしている女はルル=ベル。
 ネバーランドのNo.2だ。
 いやNo.2といっても単に彼女が最古参というだけで上位メンバー同士に身分の差はないのだが。
 彼女は主に索敵と諜報と事件隠蔽を担当しており、契約する都市伝説はラプラスの悪魔
 俺の知り合いである橙さんほど使いこなしていないがそれでも十分脅威だ。
 俺の家族のゴタゴタを勝手にのぞき見ていたので俺が彼女をぶん殴ろうとしたのが縁で良くタッグを組まされている。
 ネバーランドのリーダーであるジャック・ジョーカーという男の気まぐれだった。

「ところで明尊ちゃん、私も一つ質問して良い?」
「なんだ、お前の能力を以てしてもわざわざ聞かねばならないこととはなんだ?」


「明尊ちゃんは何時私たちを裏切るの?」


 ああ、そのことか。

「ああ、俺とあいつの目的が一致しなくなったらね。」
「それは皆一緒だよぉ~」
「全員、当面の目的が一緒なだけだからな。」

 ベルは何故か俺に懐いた(他メンバー談)らしく、彼女はなんだか任務以外でも俺に良く付いてくる。
 『明尊ちゃんは私の初めての友達なんだよ』と俺の居ないところで言っていたそうだ。
 俺は別にヤツのことを普通の同年代の女子としか思っていない。
 橙さんと同じでラプラスの悪魔なんてレアな能力をもっているだけのただの女子ではないか。
 とはいえ同年代の女子にこうまでベタベタされると悪い気はしない。
 俺の妹も俺になついてはくれていたが所詮妹、基本暑苦しいだけである。
 せめて血がつながっていなかったらちょっとは嬉しくもなるだろうが……
 どうにもこうにもいまいち興奮しない。
 まあ可愛い妹なのでそれも悪い気はしないが。

 ま、どのみち年上のお姉さん派である俺には関係が無いことだ。

 ああ吉静さん、元気にしているだろうか吉静さん。
 ネバーランドに寝返った設定である以上中々会いに行けないけれど僕は貴方と同じ青空を見ています。
 全部終わったらお茶でも飲みに行きましょう。
 そしたらそのあとは夜景の美しいレストランで……

「明貴ちゃん。」
「なんだよ。」
「いやなにか不埒な妄想をしてたみたいなので。」
「能力で人の思考を勝手に読むな。」
「能力じゃないよ、目に見えてにへらにへらしているんだもん。」

 なんてことだ。
 俺としたことが不覚を……

「あ、明尊兄!」
「ゲゲッ!?」

 不覚に不覚の上塗りだ。

「明お前なんでこんなところに……。」
「明尊兄こそずっと家から居なくなっちゃって困ってたんだよ!
 お父さんもお母さんも『これくらいの年頃の男とはそういうものだ……』
 とかいってまともに探そうとすらしないし!
 お父さんに至っては『家出という名のサーキットで限界を振り切れ……!』とか言い出してるし!」

 恐らく自分が家出中に散々捕まったから理解のある父親の振りをしたのだろう。
 あいかわらず碌でも無い親父である。
 真っ先に探しに来るならまだ悪くない父親だと思えたものを。

「そして……」

 明がルルを睨みつける。
 ああ、背後に般若が見えます。

「その女の人は誰?」
「明尊ちゃん翻訳お願い。」
「えーっと、『はじめまして、私は明尊の妹の明です。どうぞよろしく』だって」
「まあ、そうなの?やたら殺気立ってて怖いけど。」
「明尊兄、その人なんて言っているの?」
「『はじめまして、私は明尊くんの友人の一人で最近日本に留学しにきたベルと言います。よろしくね。』だそうだ。」
「へえ、そうなんだ。無闇矢鱈と怪しげだけど。」
「明尊ちゃん」
「『まあ素敵、何処からいらっしゃったんですか?これから仲良くしてね。』だそうです。」
「へえ……なるほどなるほど……しかしねえ……」
「明尊兄」
「『ブリテン島の出身です。日本の漫画に興味が有るのですが持っていらしたら今度貸して下さりませんか?』」

 おお、俺すげえ。
 親父よりうまくこの一触即発の場を……

「うん、検索が終わったよ。」
「トレースは完璧だ。」

 ほぼ同時に二人が言葉を発する。



「「嘘も大概にしようね」」


「明尊兄」
「明尊ちゃん」


 ふっ、何故俺はこういう時に失敗ばかりするのだ。
 俺の頭上を明がものすごい勢いで飛び跳ねていく。

「喰らえ!」

 どうやら明がベルに殴りかかったようだ。
 後ろで金属音のような物が聞こえる。

「ずいぶん荒っぽいわね。」

 ベルがどうやらベレッタを明に向けて撃ったようだ。
 間一髪で回避された音が聞こえる。

「ちょこまかちょこまかと!予知か何か知らないけど明尊兄を誑かさないで!
 あなたは明尊兄にふさわしくないわ!」
「思考を読むタイプの能力者かしら?予知してもその内容を読まれちゃうんだから世話ないわね。
 貴方の方こそ相応しくないわ、だって実の……」
「うるさい!」
「あら、私何か言った?」

 すげえ、こいつら会話成立してるよ。
 俺ガン無視だよ。
 だからやなんだ同じ年とか年下の女ってのは!
 人の気持ちを無視しやがって!
 俺の気持ちを無視するのは俺の親父だけで十分なんだ!
 とか言いたいのですが目の前で繰り広げられているバトルのせいで何も言えません。
 まあ一見銃を持っているベルの方が有利に見えるが、彼女は先程から一発も弾を明に当てられてない。
 ラプラスの悪魔の予知を明の特技である“模倣”で思考をトレースすることで先読みされるので予想が意味を為さないのだ。
 しかも距離1m以下の接近戦ならば銃弾なんて意味を為さない。
 明の拳を、蹴りを防ぐたびにじりじりとベルの体力は削られていく。

「一目見た時から気になってたけど何その髪色変じゃない?変な頭ね。」
「こっちも不思議だったんだけどなんで貴方の記憶って途切れてるの?頭の中身が悪いの?」
「悪いが割るのは貴方の頭ねまたまた喰らって弾と弾。」

 再びの銃声。
 無論、当たらない、その隙に明がベルに体を密着させて八極拳の体当たりをかます。
 今度は恋路さんのモノマネか。

「当たりもしない豆鉄砲は口だけ野郎にお誂え向きだね。」
「口だけ?ノーノーこの口一つが私の才能。私の言葉が世界を変える。
 だって私は未来視らしいし脳筋な貴方と能が違う。」
「脳筋?笑える、封殺されるてるのうたりんは誰?
 英語でいえばフードゥーユーノウ?」

 なんでそんな微妙に韻を踏みながら罵り合ってるの?
 そしてあくまで俺は無視なの?
 悪魔の娘だけにってか、飽くまでやってろバカ二名……。

「はいはい喧嘩はおよしなさいな。」

 凛とした声が響く。
 ガチャリ、ボルトアクションライフルに弾が込められる時の存在感のある金属音。

「初対面からガタガタ言って仲たがってちゃ、私はなんだかがっかりしちゃうわ。
 貴方も私も明尊くんのお友達だから仲良くしてたら明尊くんは幸せでしょう。」

 発砲。
 二名の拳と銃の間を魔弾が貫く。

「だからとりあえず二人とも座って、ね。」

 ライフルから空の薬莢がいい音で排出される。
 ああ、助かった。
 俺は遠くから歩いてきた人影を見て安堵する。
 彼女の名前は穀雨美静、俺の姉みたいな人で今父の探偵事務所で副所長をやっている彼方さんの妹さんだ。
 そして……俺の初恋にして現在も絶賛片思い中の人である。
 ありがとう吉静姉さん。
 愛してます、心から愛しています。
 でも伝えられないこの気持。
 そして突き刺さる二人の視線。
 一人は妹一人は友達、二名にいったい何故睨まれる。
 俺はとりあえず吉静さんとの時間を……

「やばっ。」
「どうしたベル。」
「組織の人が来る。」

 なんてこったい。
 ここで俺が捕まると埋伏の計に失敗したお馬鹿になってしまう。 

「……ごめん吉静さん!」

 俺は都市伝説の力で肉体を強化。
 そしてすかさずベルを持ち上げてその場を逃げ出す。
 くそ……なんで俺はいつもいつもこんな目に…
【不思議少女シルバームーン~第六話 第三章「トライエラーアラートトライアングラー」~】

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