サンジェルマンが、その空間に足を踏み入れた、時
聞こえてきたのは、泣き声、叫び声
聞こえてきたのは、泣き声、叫び声
「----っして、どうして、どうして、どうして………っ!!??」
泣いているのは、少年
いつもしゃがみこんで、小石でも落とすような動作を繰り返して波紋を作り続けていた、少年
いつも淡々とした話し方をして、サンジェルマンに対しても、ひどく無関心な態度しかとっていなかった、あの少年だ
いつもしゃがみこんで、小石でも落とすような動作を繰り返して波紋を作り続けていた、少年
いつも淡々とした話し方をして、サンジェルマンに対しても、ひどく無関心な態度しかとっていなかった、あの少年だ
感情を見せた事のない、少年が
感情を、爆発させている
感情を、爆発させている
すぐに、サンジェルマンは気づいた
真っ暗な空間、上も下もない、不可思議な、この空間に
真っ暗な空間、上も下もない、不可思議な、この空間に
……その、足元に
何か、映し出されていた
何か、映し出されていた
「…S-No.444.中立派のSNoにいながら、強硬派よりの男………これは確実に、上の指示じゃなくて、独断行動ですね……」
そういえば、あの男……学校町の旧家について、危険性を調べていたのだったような
その事をS-No.0……すなわち、イクトミに進言して、しかし、イクトミは「あまりかかわるな」と、それしか指示を出していなかったはず
………業を煮やして、実力行使に出たのか
愚かな事を………!
「首塚」側近組筆頭、それも、平将門のお気に入りである日景 翼
それを殺してしまえば、今度こそ、「組織」と「首塚」の全面戦争になりかねないというのに……!
その事をS-No.0……すなわち、イクトミに進言して、しかし、イクトミは「あまりかかわるな」と、それしか指示を出していなかったはず
………業を煮やして、実力行使に出たのか
愚かな事を………!
「首塚」側近組筆頭、それも、平将門のお気に入りである日景 翼
それを殺してしまえば、今度こそ、「組織」と「首塚」の全面戦争になりかねないというのに……!
「うー………うーうーうーうーうーうーうーうー!!いらないっ!!こんな世界、いらないっ!!」
うーうーと、癇癪を起したように泣いている少年
…現実世界では、「首塚」の一員である少年
翼とは、親しかったのだろう
その翼の「死」を見せつけられ、泣き叫んでいる
翼とは、親しかったのだろう
その翼の「死」を見せつけられ、泣き叫んでいる
「いらない、いらない、いらない、いらない、いらないっ!!翼お兄ちゃんを殺す世界なんて、いらない、翼お兄ちゃんを死なせる世界なんて、いらないっ!!」
「……っ!?」
「……っ!?」
そして
サンジェルマンは、気づいた
少年の、体が…………かすかに、透け始めている事に
サンジェルマンは、気づいた
少年の、体が…………かすかに、透け始めている事に
「こんな世界、いらない!!消えろ!なくなれ!!消えてなくなってしまえぇえええええええええっ!!!」
「……まさかっ!?」
「……まさかっ!?」
少年が
「現実」を否定しているせいか?
「現実」を否定しているせいか?
現実に、世界に、消えろと少年は憎悪を吐いている
だが、たった一人の少年の憎悪程度で消える程、世界は脆くない
ならば
その、世界を消すための憎悪は
そのまま、少年に返ってきて…………っ!!??
だが、たった一人の少年の憎悪程度で消える程、世界は脆くない
ならば
その、世界を消すための憎悪は
そのまま、少年に返ってきて…………っ!!??
「消えろ消えろ消えろ消えろ消えろっ!!!お前達の作った世界なんていらない、翼お兄ちゃんを死なせるお前達なんていらないっ!!!お前達の脚本なんて知らない、消えろ!!!そんなもの、受け入れない!!!みんな死ね、消えろ、創造者も観測者も何もかも、消えてしまえっ!!死んでしまえぇえええっ!!!」
「……っよしなさい、このままでは、消えるのはあなたですよっ!?」
「……っよしなさい、このままでは、消えるのはあなたですよっ!?」
さすがに、目の前で子供が消滅しそうになっているところを見捨てるのは、目覚めが悪い
サンジェルマンは少年に手を伸ばすが、少年はその手を払いのける
いや
すでに、その存在は消えかけていて……触れる事すら、できない
サンジェルマンは少年に手を伸ばすが、少年はその手を払いのける
いや
すでに、その存在は消えかけていて……触れる事すら、できない
世界を、そして、世界を作り上げる存在すら、拒絶して
…そのせいで
少年は、世界から拒絶され、はじき出されようとしているのだ
…そのせいで
少年は、世界から拒絶され、はじき出されようとしているのだ
----駄目か!?
サンジェルマンが、何か手段はないか、と模索しようとした、その時
そっと、何かが、少年に触れた
触れてきたその存在に、少年は叫ぶのを止めて、びくりと体を震わせる
触れてきたその存在に、少年は叫ぶのを止めて、びくりと体を震わせる
触れてきた存在は……サンジェルマンには、よく、見えなかった
目の前にいるはずなのに、存在がぼやけていて………はっきりと、見えないのだ
目の前にいるはずなのに、存在がぼやけていて………はっきりと、見えないのだ
だが、気づく
見えないのだが、わかる
それが、どんな存在なのか……サンジェルマンは、はっきりと理解する
見えないのだが、わかる
それが、どんな存在なのか……サンジェルマンは、はっきりと理解する
そして
それは、少年も同じなのだろう
それは、少年も同じなのだろう
「……何だよ、いまさら出てきて………何の用だ、人殺し、嘘付きっ!!殺さないって、言ってたくせに!翼お兄ちゃんの事は殺さないって、そう言ってた癖に!!!」
少年は、それに憎悪をぶつける
涙がたまった瞳で睨みあげ、殺意にも似た憎悪をぶつけ続ける
涙がたまった瞳で睨みあげ、殺意にも似た憎悪をぶつけ続ける
「嘘付き嘘付き嘘付きっ!!人殺し!!!僕達は、お前達の玩具じゃないっ!お前達に弄ばれる為に生まれたんじゃないっ!!僕に触れるな、消えろっ!!」
少年の憎悪の叫びに、それは答えない
ただ、つい、と
先ほどまで、日景 翼が殺害される様子を映し出していた、虚空を指差す
ただ、つい、と
先ほどまで、日景 翼が殺害される様子を映し出していた、虚空を指差す
『……何、だ、と……どうなっている!?』
そこから、叫び声が聞こえてきた
S-No.444の、叫び声が
S-No.444の、叫び声が
先ほど映し出していた光景
その、もう少し先が、映し出され始める
その、もう少し先が、映し出され始める
「………ぇ」
そこには
確かに、心臓をえぐり取られたはずの、翼が……
確かに、心臓をえぐり取られたはずの、翼が……
まるで、何事もなかったかの、ように
しっかりと、立ち上がっている様子が、映し出されていた
しっかりと、立ち上がっている様子が、映し出されていた
to be … ?