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死神少女は修行中-02.俺の彼女を紹介します-0a

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 俺の一日は、元気なノイちゃんの声から始まります。
「やなぎー!やなぎー!おはよー!」
 彼女の声を使った携帯のアラームという、文明の利器が与えてくれるささやかな幸せです。
 「ノイちゃん、おはよう」
 枕元に手を伸ばして携帯を手に取り、アラームを止める前に、そっとキス。
「柳、その気持ち悪い朝の儀式、もう止めなさいよ・・・」
 じとっとした目で俺を生暖かく見守るこの見た目だけは綺麗な女は、
 飛縁魔と書いて、ひのえんまと呼ばれる都市伝説。というか妖怪。
 あ、申し遅れました。
 俺は浅倉柳。
 22歳、契約者ですが、所属はありません。
 職業ですか?強いて言えば花婿修行中、というところでしょうか。
「早く朝ご飯食べないと、いつまで経っても片付かないでしょーが」
 俺の大切な朝のひとときにケチを付けた上に、朝飯まで急かすのか。
 言っておきますが、飛縁魔が食事の後片付けどころか家事一切しているのを、契約してからはや六年、俺は見たことがありません。
 なんせ彼女のエネルギー源は男の精気。
 吸血鬼のようなものですから、普通の食事など気まぐれにしか口にはしないのですから。
 ともかく、俺達が朝食の食卓についた頃には、みんな食事を始めていました。

「おはようございます、柳さん、飛縁魔さん」
「遅くなっちゃったわねぇ」
 飛縁魔と挨拶を交わしたのは、この家の家主の極(いたる)くん。
 ノイちゃんの腹違いのお兄さんで、現在中学三年生。
 お母さんが女手ひとつで育てて下さったそうですが、そのお母さんも先年亡くなり、ノイちゃんが来日するまでは独り・・・
 いえ、都市伝説のリジーさんと二人暮らしだったとか。
 異母妹のノイちゃんどころか赤の他人のはずの俺や飛縁魔まで、学校町の彼の自宅で世話になっています。
 初めは固辞したのですが「妹の友人ですから」の一言で済ませてくれ、俺から申し出た生活費も要らないと。
 感動のあまりお義兄さんと呼んだら、さすがにそれは止めて下さいと言われてしまいましたが。
「おはよー!」
 朝から元気一杯のノイちゃんはお箸が使えない為か、慣れない和食をスプーンとフォークで食べる事に苦労している様子。
「お魚、ひと口分ずつに切ってあげようか?」
「じゃあね、テレビでやってたみたいに、あーんって食べさせて」
 幼くして両親を亡くして以来、ウィーンの自宅に軟禁同然で育ったノイちゃんにとって
テレビやネットは外の世界そのもの。そこで見た物は真偽を問わず、試してみたいもののようで。

 俺に否やがあるはずもなく、箸で魚を一切れ摘んで
「はい、あーんして」
「柳さん、あんまりノイを甘やかさないで下さい」
 極くんがぴしゃりと言いました。
「それを言うなら、もげろとか爆発しろとか、そういう類じゃあないのかな」
 そう言えば極くんは、15歳という年齢の割に背が高く、色素の薄めな綺麗な少年である割に
 もてるとかそういった話はとんと聞いた事はなかったと思い出しました。
 それどころか男子の友人ですら、この独りで住むには広すぎる家に訪ねてきた事はありません。
「羨ましい訳ではありませんが」
「イタル、この天然のフリした色ボケには何言ってもムダよ」
 この言い様は心外です。
「まるで俺が色情狂みたいじゃないか」
 飛縁魔の視線が氷点下まで温度を下げました。
「色情狂が嫌なら、のーみそピンクのお花畑ね」
 ・・・なんでたかが「はい、あーん」でそこまで言われなくちゃいけないんでしょう。
 今の今まで黙っていたノイちゃんの保護者、ムーンストラックまでが剣呑な目つきで睨んできます。
「極の言う通りだ、柳。お前はノイ・リリスが一人では食事も出来ないと思っているのか」
 …実はそうあって欲しいとは、俺は言えません。
 行ってきますと極くんが箸を置いて席を立つと、リジーさんがそっと後をついて行きます。
 …別に金髪の美人がメイドよろしく身の回りの世話をしてくれるからって、羨ましいとは思いませんよ?
「あたしも学校に行きたい」
 朝食のフォークを置いて、ノイちゃんが開口一番に口にしたのはそれでした。
「駄目だ」
 すかさずムーンストラックが却下しました。
 でもノイちゃんもそんな一言ではめげません。
「行きたい!」
「いかん!」
 どちらも一歩も譲らず、小一時間ほど押し問答が続いたでしょうか。
 ノイちゃんの目には次第に涙がたまり、声が震えてきたと思ったら。
「・・・友達が欲しいだけなのに・・・わからずやー!」
「ノイ・リリス!待ちなさい!」
 止める暇もあればこそ。
 あっという間に飛び出していってしまいました。
 苦々しい表情で溜息をついた彼女の保護者に、先に探しに出ると告げ
庭からサンダルを履いて通りに出た時には、彼女の姿は見あたりませんでした…

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