【未発売キットを製作すると発売決定する都市伝説】
「はぁ……」
12月某日。
もうすぐクリスマスを迎えようとしている寒空の下、
ため息とともに一軒の大型プラモ店を後にする俺。
先ほどのお店でもう何軒目になるだろうか……ああ、見つからない。
もうすぐクリスマスを迎えようとしている寒空の下、
ため息とともに一軒の大型プラモ店を後にする俺。
先ほどのお店でもう何軒目になるだろうか……ああ、見つからない。
「にしてもあの店員……悪気はないんだろうが、少しイラッとしたのは事実だな」
『えーと……申し訳ありませんお客様、当店では現在ゾイドは取り扱っておりません
それよりも、プラモデルをお探しでしたらこちらの商品はいかがでしょうか……』※実話です
それよりも、プラモデルをお探しでしたらこちらの商品はいかがでしょうか……』※実話です
「って……それよりって何だよそれよりって」
まあ、今はかなり知名度が落ちてきているとはいえあれは正直ショックだった。
店員が持ってきたのが、先日友人に乗り換えを勧められたガンプラシリーズだったことも
落ち込み具合に拍車をかける。やはりアニメ効果か。劇場版か。おのれソレ・ビー。
……正直、ゾイドが変形してガンダムになるという同人誌には一瞬心が引かれかけたが
俺もyesとnoをはっきりと言える日本人、友人の度重なる誘惑を今日まではねのけてきた。
店員が持ってきたのが、先日友人に乗り換えを勧められたガンプラシリーズだったことも
落ち込み具合に拍車をかける。やはりアニメ効果か。劇場版か。おのれソレ・ビー。
……正直、ゾイドが変形してガンダムになるという同人誌には一瞬心が引かれかけたが
俺もyesとnoをはっきりと言える日本人、友人の度重なる誘惑を今日まではねのけてきた。
「まあ、今週一番のショックはあいつに彼氏が居たという事実だが」
そう、先日友人宅へ遊びに行った際。
何時ものようにガンプラへの改宗を勧めてくる彼女を振り払い、
トイレを借りて部屋へと戻る時である。
何時ものようにガンプラへの改宗を勧めてくる彼女を振り払い、
トイレを借りて部屋へと戻る時である。
「また……を、して……危な…………するんですか!」
「ん?」
何やら、部屋の中で友人の声がする。まるで誰かと話をしているようだが、
今日は俺一人しか遊びに来ていないはず……妙だ、とは思ったがすぐに思いいたる。
今日は俺一人しか遊びに来ていないはず……妙だ、とは思ったがすぐに思いいたる。
「あいつ……いい年して一人遊びでもしてんのかよ」
これは僥倖。常日頃からバレンタインやクリスマスが来るたびに「彼女はいないのか」と
毎年のように俺をからかっているあの女に復讐する絶好のチャンスである。
ひょっとして俺に気が……なんて馬鹿な事を考えた頃もあったが、
一昨年のバレンタインに義理チョコと称したダークマタ―を食わされた事は今でも黒歴史だ。
毎年のように俺をからかっているあの女に復讐する絶好のチャンスである。
ひょっとして俺に気が……なんて馬鹿な事を考えた頃もあったが、
一昨年のバレンタインに義理チョコと称したダークマタ―を食わされた事は今でも黒歴史だ。
とにかく、あいつの弱みを握れる機会を逃してはならない。
俺はそっと部屋のドアを開け、声の方へカメラ付きケータイを向けてシャッターを押した。
俺はそっと部屋のドアを開け、声の方へカメラ付きケータイを向けてシャッターを押した。
その後、友人宅を出るまでニヤニヤ笑いを堪えるのに必死だったのは無理もない。
家に帰った俺は早速ケータイ画像を確認し―――そいつを、見た。
家に帰った俺は早速ケータイ画像を確認し―――そいつを、見た。
ベッドの下から顔と腕だけを出し、友人と何か話している男の姿を。
「……ああ、そういうことな。だからあいつ、何処となく落ち着かなかったのか」
俺はバイト帰りに友人宅へ寄る事を、あらかじめ彼女にメールで送っておいた。
恐らく彼女は面食らったのだろう。彼氏との待ち合わせと被ったか、もしくは既に部屋へ彼氏が来ていただろうから。
かといって高校からの悪友と新しい彼氏、どちらも無下にできず……ベッドの下という隠れ場所を思いついたと。
よく見ればこの男、右手に何か持っている。解像度の問題でよくは見えないがプラモデルだろうか?
ひょっとしたら友人と同じガンプラオタクなのかもしれない。共通の趣味から男女の恋愛が始まるのはよくある事だ。
まあ、ひとまずおめでとうと言っておくか。彼女の幸せを今は祈っておいてやるとしよう。
恐らく彼女は面食らったのだろう。彼氏との待ち合わせと被ったか、もしくは既に部屋へ彼氏が来ていただろうから。
かといって高校からの悪友と新しい彼氏、どちらも無下にできず……ベッドの下という隠れ場所を思いついたと。
よく見ればこの男、右手に何か持っている。解像度の問題でよくは見えないがプラモデルだろうか?
ひょっとしたら友人と同じガンプラオタクなのかもしれない。共通の趣味から男女の恋愛が始まるのはよくある事だ。
まあ、ひとまずおめでとうと言っておくか。彼女の幸せを今は祈っておいてやるとしよう。
「シングルヘール、シングルヘール、シングルオールウェーイズ……」
でも、これくらいの呪詛は許容範囲という事で。
そして今日。バイト帰りに近所のプラモ店を回るものの、一向にゾイドの「Z」も見当たらん。
ただでさえ宝富ーから寿屋へ移った事で値段が高くなっているというのに、
そもそも商品事態が見つからなければ俺の薄っぺらい財布と相談のしようもないではないか。
ただでさえ宝富ーから寿屋へ移った事で値段が高くなっているというのに、
そもそも商品事態が見つからなければ俺の薄っぺらい財布と相談のしようもないではないか。
「おおお、寒っ……仕方ない。今日はこの辺で帰るか」
結局、夜遅くまで探し回るも目当てのものは見つからなかった。
がっくりと肩を落としつつ、自宅のドアを開けて帰宅する。
軽い晩飯を済ませた後、大人しく布団に入って寝ようとした―――その時。
寝返りを打った瞬間、背後でガチャッと何かが落ちる音がした。
あわてて振り向くと、俺のシールドライガー(全身白塗り)が棚から落下しているではないか!
思わず顔から血の気が引いた。あわてて確認するも、パーツの一部が取れているだけだった。
破損している様子もない事を確認し、ようやく胸をなでおろす。
がっくりと肩を落としつつ、自宅のドアを開けて帰宅する。
軽い晩飯を済ませた後、大人しく布団に入って寝ようとした―――その時。
寝返りを打った瞬間、背後でガチャッと何かが落ちる音がした。
あわてて振り向くと、俺のシールドライガー(全身白塗り)が棚から落下しているではないか!
思わず顔から血の気が引いた。あわてて確認するも、パーツの一部が取れているだけだった。
破損している様子もない事を確認し、ようやく胸をなでおろす。
「あっぶね……置き場所変えるべきか?というか、今ので完全に目が覚めた……orz」
まあ、元凶がプラモでは怒るに怒れない。この装甲をはめ直したら寝るとしよう。
そう言ってパーツをシールドライガーに取り付ける際……ふと、こんな事を考えてしまった。
そう言ってパーツをシールドライガーに取り付ける際……ふと、こんな事を考えてしまった。
(明日は見つかるといいな……そうだ、せっかくクリスマスなんだし)
今思えば、あれが全ての始まりだったのだと、確信している。
「この際季節限定の機体とか出ね―かな―、スノーライガーとかそんな感じで……」
……リーン……
「……ん?なんだ、今の音?」
パーツをはめ込んだ瞬間、小さく鈴の鳴るような音が聞こえた気がしたのだ。
しかしそれっきり何の音も聞こえなかったため、空耳だろうと考えてそのまま寝てしまった。
しかしそれっきり何の音も聞こえなかったため、空耳だろうと考えてそのまま寝てしまった。
翌朝。何時ものように目を覚ました俺は、日課にしている早朝のジョギングへ出かけた。
そして、あのプラモ店の横を通りがかった時……店の中に、信じられない物を見た。
そして、あのプラモ店の横を通りがかった時……店の中に、信じられない物を見た。
「ん……!?おい、嘘だろこれ!いや、どっちかと言えば嘘であってほしくないけど……こんなことって……!」
嬉しさ半分、戸惑い半分で混乱している俺が見たもの。
ウィンドーガラス越しに見えた、その新作プラモデルと広告のポスターは―――
ウィンドーガラス越しに見えた、その新作プラモデルと広告のポスターは―――
『冬季限定商品!ZOIDSシールドライガー:ウィンターバージョン:スノーライガー本日発売!』
―――無論、店の開くのを待ってすぐさま購入したのは言うまでもない。
そして、何度か同じような経験をした後に、俺はやっと気付いた。
今まで店頭に並んだ事のない玩具商品……すなわち、未発売のプラモデル。
それを自分で作り、完成させる際に心の中で『販売してほしい』と願う。
すると翌朝、自分の作ったそれが新商品として―――いつの間にか店頭に並んでいるのだ。
もし気に入らなければ、元となるプラモデルの一部を外し、『販売中止』と願えばいい。
それだけで、翌朝にはそのプラモデルは消える。商品そのものだけでなく、人々の記憶からも存在が消えてなくなるのだ。
何故こんな力が自分に宿ったのかはわからないが、初めて能力を得たあの夜に確かに聞こえた小さな鈴の音。
あの鈴の音が原因なのは明らかである……結局の所、あの音が何だったのかさえわからないのだが。
今まで店頭に並んだ事のない玩具商品……すなわち、未発売のプラモデル。
それを自分で作り、完成させる際に心の中で『販売してほしい』と願う。
すると翌朝、自分の作ったそれが新商品として―――いつの間にか店頭に並んでいるのだ。
もし気に入らなければ、元となるプラモデルの一部を外し、『販売中止』と願えばいい。
それだけで、翌朝にはそのプラモデルは消える。商品そのものだけでなく、人々の記憶からも存在が消えてなくなるのだ。
何故こんな力が自分に宿ったのかはわからないが、初めて能力を得たあの夜に確かに聞こえた小さな鈴の音。
あの鈴の音が原因なのは明らかである……結局の所、あの音が何だったのかさえわからないのだが。
ただ、これだけは言える。この力は、自分の思う以上に危険なものだと。
実は一度、ふざけて「本当に撃てるビーム砲(プラモサイズ)」を製作した事がある。
当時、自分の力の限界を試すのに夢中だった俺は自分の部屋で空き缶を的に見立て、
販売品を右手で持ちながら「発射!」と叫んだのだ。
当時、自分の力の限界を試すのに夢中だった俺は自分の部屋で空き缶を的に見立て、
販売品を右手で持ちながら「発射!」と叫んだのだ。
瞬間。銃口から一筋の光が走り、横一列に並べていたコーヒー缶四つが一瞬のうちに真っ二つになった。
しばらくの間は、何が起こったかわからずに呆然と突っ立っていた。
が、我に帰ってすぐさま元のプラモデルをへし折り、「販売中止」と絶叫した。
……その後しばらくは怖くて部屋から出られなかった。テレビやネットのニュースも見れなかった。
幸いなことに『原因不明の殺傷事件』などはその日起こっておらず、心から安堵したのを覚えている。
何せ一歩間違えば町中で……いや、下手をしたら日本中で小型ビーム砲が乱射されていた恐れがあるからだ。
が、我に帰ってすぐさま元のプラモデルをへし折り、「販売中止」と絶叫した。
……その後しばらくは怖くて部屋から出られなかった。テレビやネットのニュースも見れなかった。
幸いなことに『原因不明の殺傷事件』などはその日起こっておらず、心から安堵したのを覚えている。
何せ一歩間違えば町中で……いや、下手をしたら日本中で小型ビーム砲が乱射されていた恐れがあるからだ。
そう、この能力は一定の範囲なら(少なくともビーム砲に関しては)販売した商品に
本物の武器や兵器と、同等の性能を付け加えることも可能だったのだ。
また例の事件の翌朝、ビーム砲の存在は町中から綺麗に消し去られていたが
真っ二つにされたコーヒー缶は、元には戻ずそのままだった。
つまり商品の存在自体を消すことは可能であっても、その商品が与えた影響は残るのだ。
今のところ、ゾイドやガンプラの新商品を偶に作る程度に抑えてはいるものの
自分には過ぎた力であることに変わりはないだろう。
いつの日か、力を乱用した報いが来るのではないかと恐れる日もある。
本物の武器や兵器と、同等の性能を付け加えることも可能だったのだ。
また例の事件の翌朝、ビーム砲の存在は町中から綺麗に消し去られていたが
真っ二つにされたコーヒー缶は、元には戻ずそのままだった。
つまり商品の存在自体を消すことは可能であっても、その商品が与えた影響は残るのだ。
今のところ、ゾイドやガンプラの新商品を偶に作る程度に抑えてはいるものの
自分には過ぎた力であることに変わりはないだろう。
いつの日か、力を乱用した報いが来るのではないかと恐れる日もある。
「まあ、それらをひっくるめても自分の欲しい商品がいつでも買えるのは最高だよな!」
そう言って俺は今日も自分の手の中のプラモに向かって「販売希望」と呟いた。