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死神少女は修行中-14.死神少女は夜更けに禁断の電波を受け取る

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2012年2月2日 晴れ
あたしはいつも、夜の9時になると、もう寝なさいってしかられちゃう。
イタルはいつもお勉強とか本を読んでて、あたしが寝た後も起きてるのに。
カナタも幻も、もっとおそくまでやってるお笑いとかアニメとか見てるんだって。
あたしだけ見らんないなんて、そんなのつまんないからヤだ!


「ノイ・リリス。もう寝なさい」
「やだ」
 夜9時になると、学校町は新田家の居間で毎日恒例の会話が交わされる。
 自らの契約者、ノイ・リリス・マリアツェルに規則正しく健やかな毎日を送らせるべく日々奮闘する
 ムーンストラックの一日は大抵、ノイをテレビの前から引き剥がす事で終わりとなるのだった。
 新田家に住み着いてまだ一年足らずながら
 座布団を枕に畳の上で寝っ転がってテレビを見る日本式の生活様式に慣れきったノイに
 ウィーン式の行儀作法を躾けるのはなまなかな事ではないだろうと極は生温い気持ちで毎晩の攻防を見守っている。
「この番組最後まで見るのー!」
「夜更かしはいかんといつも言っているだろう!」
「なんでダメなの!?イタルだって起きてるのに!」
 思わぬ形で引き合いに出された極は憮然とした表情。
「極は勉強をしているんだ!お前も起きていたいなら勉強をしなさい!」
 昼間だって嫌がっているものを、どうやって夜起こしておいてまでさせられると思うんだと突っ込みたくなったが
 敢えて黙っていたのは、飛縁魔とリジーの女性陣。
「カナタはいつも夜中までテレビ見てるって言ってるもん!」
「よそはよそ、うちはうちだ!」

 結局。
「わーん、やだったらー!!」
「・・・たまには夜更かしさせてあげたっていいんじゃない?」
 とは、柳。学校に行くわけでなし、朝からすることなんかないんだしさと取りなしたつもりだったが
「貴様が!そうやって甘やかすからノイ・リリスに基本的な生活習慣の大切さが!」
「はいはいそこまでー」
 飛縁魔が柳の襟首を掴んで頭から湯気を噴き上げんばかりのムーンストラックから
 引き離すようにぽいっと投げると、あんたは早く寝なさいとノイの肩に手を置いてくるりと戸口の方に向き直らせる。
「えー」
「えーじゃない。さっさと寝る」
「だいたい寝坊でもしたらお前の分の朝食の支度と後片付けの手間はどうするんだ」
 その分リジーが大変だろう、と極がノイを窘めるとリジーもそれに賛同した。

「いったん起きてゴハン食べてから寝るからいーもん」
「布団が干せないだろうが」
「・・・ちぇー」
 ノイが文字通りぶーぶー言いながら引き下がって、新田家の騒々しい一日にも終幕が引かれたのだった。

 その日の深夜。
「ん・・・」
 ノイが目を覚ますと辺りはまだ真っ暗で、時計の針は午前3時を指していた。
「のどかわいたぁ」
 お水とトイレ、どっちを先にしようかと部屋を出ると、居間からわずかに光が漏れていて。
「テレビついてる」
 みんなあたしには9時に寝ろって言うのに、不公平じゃんと襖を開けると・・・
「あれれ?」
 誰も居ない居間をテレビの光だけが照らしていた。既に今日の放送は終わっているらしく、画面は砂嵐になっている。
「消し忘れたのかなぁ」
 まったくしょーがないなーとこまっしゃくれた調子で呟いてリモコンを手に取った、その時。
 画面が不意に切り替わった。前にもテレビで見たことのある「ゴミ処理場」に似た風景と
 なにやら漢字が沢山映し出されている。
「・・・人の名前、かなぁ?」
 日本語の読み書きは不得手だけど、それくらいはわかる。
 男とも女ともつかない無機質なキャスターの声が、画面に表示されているらしい人の名前を読み上げていく。
(・・・なんだろう、これ、スゴく変・・・)
 なんだかとても、見てはいけないもののような気がする。
 それでも何故か目が離せず、ただじっと画面を見つめていると
 見覚えのある字が画面に現れ、キャスターの声がその字を読み上げた。
 「ニッタ イタル」と。
(何だろ・・・今イタルの名前、呼んだよね。あれ?・・・なんだか、眠い)
 目を擦りながらも画面を見ていると、名前の群は唐突に途切れ、無機質な声が無機質に告げた。
「以上、明日の犠牲者をお送りしました。おやすみなさい」
(ギセーシャ?何だっけ?ギセーシャって日本語、なんかニュースで・・・)
 もうなにも考えられないし目が開いていられない。体もぐらぐらする。
 お部屋に帰らなくちゃと思いながらもぱたりとそのまま倒れ込み、意識が遠くなっていった。

 気が付くと居間ではなく寝室の布団の中。時計の針は朝の7時30分を指している。
「あれ?」
 ヘンだな。あたしいつの間にお部屋に帰ってきたんだろ?
 周囲を見回しても、いつもと何の代わりもない、天気のいい朝だ。
(夢だったのかなあ?)
 首を捻って考え込んでも、何か答えが出るわけでもない。
「ノイちゃーん、朝ご飯だよー」
 いつもと何の変わりもない朝。何の変わりもない柳の声。
「待ってー、すぐ行くからー!」
 いくら「家族」しかいない朝食の席とはいえ、パジャマ姿のままでははしたないと叱られてしまう。
 慌てて着替えて部屋を飛び出した。
「ノイ・リリス!家の中を走ってはいかん!」

「ねーねー、『ギセーシャ』って、なんて意味だったっけ?」
 朝食の席で誰にともなく聞いてみた。夜中にこっそりテレビを見た事は黙っておこうと思ったけれど、
 みんなに色々踏み込んだ事を聞かれると、つい誤魔化せずに深夜の番組の事を話してしまった。
 夜中にテレビなんか見た事を叱られるかと思いきや、みんなの顔色がなんだか悪い。
「・・・僕、今日学校を休みます」
 極が強ばった表情で呟くと、大人達はみんな、それがいいと口を揃えた。
 ノイだけが、事態を把握できずにきょとんとしたままだったが
 深夜番組を見た事はお咎めなしで済んだので、ほっとしてあまり深くは考えなかった。


2012年 2月3日 晴れ時々くもり

今日、イタルは元気なのに学校をお休みした。
カナタといっしょでずる休みだと思ったけど、みんなもそうしなさいと言って、リジーが学校に電話してた。
そのあと、リジーがケーキを焼くお手伝いをして、みんなでおやつを食べたあと、
ゲームをしたり、イタルといっしょに勉強したりした。
まるで日曜日みたいな、みんないっしょの楽しい一日だった。


END

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