contractor making
男には目の前の光景も、自分が置かれている状況も、何一つ理解できなかった。
赤いコートを着た女が突然鎌を振りかざして襲ってきたら突如白い車が現れ、
それに気を取られているうちに男もあの女もなぜか動けなくなっていた。
そしてその白い車から、黒いスーツを着込んだ背の低い少女と、うつむき加減の背の高い女性が降りてきた。
赤いコートを着た女が突然鎌を振りかざして襲ってきたら突如白い車が現れ、
それに気を取られているうちに男もあの女もなぜか動けなくなっていた。
そしてその白い車から、黒いスーツを着込んだ背の低い少女と、うつむき加減の背の高い女性が降りてきた。
「こんばんはー、「組織」からきました黒服ですー」
のんびりとした口調で自己紹介になってない自己紹介をする黒服。
男が何か言おうとするが、その体は動かず、声を出すこともできない。
男が何か言おうとするが、その体は動かず、声を出すこともできない。
「あれー、こっちも固まっちゃってますー?ゆうさーん、この人は大丈夫ですよー」
「逃げるかも、って思って、一応」
「逃げるかも、って思って、一応」
直後、男の体に自由が戻る。
男は目の前の少女と車の傍に立つ女性、そして赤いコートの女を見比べ、震える声で問いかける。
男は目の前の少女と車の傍に立つ女性、そして赤いコートの女を見比べ、震える声で問いかける。
「な、なんなんだよお前ら……どうなってるんだよこれ……」
「私たちは「組織」の人間で、あれは口裂け女ですよー。あと、さっきのは金縛りですねー」
「私たちは「組織」の人間で、あれは口裂け女ですよー。あと、さっきのは金縛りですねー」
そんなことを言われても理解できない、といった目で少女を見上げると、少女はこほんと咳払いをして男に話し始める。
「簡単に説明しますとですねー、この世には都市伝説が実在し、今回のように人を襲うこともあるんですよー。
その理由というのがー、都市伝説が自己の存在を確立するため、ってことなんですねー。
つまり、口裂け女に襲われた、ってうわさが流れることでー、口裂け女は存在する、っていう事実が人間によって認められるんですよー。
でもそのために人が襲われるのはよくないのでー、もうひとつ、都市伝説が自己の存在を確立させる方法があるんですねー。
それが「契約」といわれるものでしてー、人間と都市伝説が共存共栄していきましょう、っていう素敵なシステムなんですねー。
で、ここからが本題なんですけれどー、あなた、この口裂け女さんと契約してみませんかー?」
その理由というのがー、都市伝説が自己の存在を確立するため、ってことなんですねー。
つまり、口裂け女に襲われた、ってうわさが流れることでー、口裂け女は存在する、っていう事実が人間によって認められるんですよー。
でもそのために人が襲われるのはよくないのでー、もうひとつ、都市伝説が自己の存在を確立させる方法があるんですねー。
それが「契約」といわれるものでしてー、人間と都市伝説が共存共栄していきましょう、っていう素敵なシステムなんですねー。
で、ここからが本題なんですけれどー、あなた、この口裂け女さんと契約してみませんかー?」
口を挟む暇も与えず一方的に説明を終えた黒服は笑顔で男に「契約」を持ちかける。
男にとって、ついさっき自分を襲ってきた得体の知れない存在との得体の知れない「契約」。
到底受け入れられるものではなかった。
男にとって、ついさっき自分を襲ってきた得体の知れない存在との得体の知れない「契約」。
到底受け入れられるものではなかった。
「断ってもいいですけどー、そしたら私たち帰っちゃうんでー、あの口裂け女さんのことはよろしくお願いしますねー」
そんな男の心境を察したかのように、黒服から告げられる言葉。
要するに「断ったら口裂け女に襲われて死ね」と言っているようなものだ。
行く道は未知の闇、帰る道は確実な死。選択肢は一つしかなかった。
要するに「断ったら口裂け女に襲われて死ね」と言っているようなものだ。
行く道は未知の闇、帰る道は確実な死。選択肢は一つしかなかった。
「……契約をすれば、俺は死なないんだな?」
「察しがよくて助かりますー。ではこの契約書に血判をお願いしますねー」
「察しがよくて助かりますー。ではこの契約書に血判をお願いしますねー」
黒服はにこりと笑うと男に一枚の紙とナイフを差し出す。
文字なのか記号なのかもわからない線が並ぶその紙に、押印欄だけがいやに目立っていた。
ナイフの刃に親指を押し付け、一瞬の痛みの後にその指を紙に押し付ける。
文字なのか記号なのかもわからない線が並ぶその紙に、押印欄だけがいやに目立っていた。
ナイフの刃に親指を押し付け、一瞬の痛みの後にその指を紙に押し付ける。
「ありがとうございますー。じゃあ口裂け女さんの方もちょっと失礼しますねー」
黒服は男から紙とナイフを受け取り、そのナイフで無造作に口裂け女を刺した。
驚く男をよそに、引き抜かれたナイフから滴る血を契約書に垂らすと、男の中に何かが流れ込んできた。
自分の中の深いところが何かで満たされ、何かが組みあがっていくその感覚に、もう後戻りはできないのだと嫌でも思い知らされた。
驚く男をよそに、引き抜かれたナイフから滴る血を契約書に垂らすと、男の中に何かが流れ込んできた。
自分の中の深いところが何かで満たされ、何かが組みあがっていくその感覚に、もう後戻りはできないのだと嫌でも思い知らされた。
「ではこれから「組織」でいろいろと説明をしますのでー、ちょっとの間寝ててくださいねー」
黒服は懐から拳銃のようなものを取り出すと、男に向けて引き金を引いた。
全身に電流が走り、薄れゆく意識の中で、黒服が口裂け女へ引き金を引くのが見えた。
全身に電流が走り、薄れゆく意識の中で、黒服が口裂け女へ引き金を引くのが見えた。
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日は変わり「組織」の一室。
机に突っ伏して足をぷらぷらさせる黒服の少女と、その傍らに立つ女性の姿があった。
机に突っ伏して足をぷらぷらさせる黒服の少女と、その傍らに立つ女性の姿があった。
「やっぱり週に3人の契約者調達のノルマはきついですってー。
怪我とか処分とか裏切りとかで前線が不安定っていうのはわかってますけどー。
そのせいで私たちみたいな後ろの人員も足りてないんですよー?」
「でも、誰かがやらなきゃ、人が減るだけ」
「それもわかってるからしんどいんですよー。むー、ノルマに追われる下っ端はつらいなー」
怪我とか処分とか裏切りとかで前線が不安定っていうのはわかってますけどー。
そのせいで私たちみたいな後ろの人員も足りてないんですよー?」
「でも、誰かがやらなきゃ、人が減るだけ」
「それもわかってるからしんどいんですよー。むー、ノルマに追われる下っ端はつらいなー」
うにー、と声を出しながら伸びをし、勢いよく椅子から立ち上がる黒服。
くるりと振り返ると宣言するかのように右手を挙げ、笑顔で告げる。
くるりと振り返ると宣言するかのように右手を挙げ、笑顔で告げる。
「それじゃー、今日も元気に契約者調達にいきますかー」
【終】