ヴィットリオ・パッツィはイタリアで生まれ、イタリアで育ってきた
自分は自分の生まれ故郷を愛していたし、他所へと行く理由等存在しないと、幼い頃から思いながら育ってきた
自分は自分の生まれ故郷を愛していたし、他所へと行く理由等存在しないと、幼い頃から思いながら育ってきた
その考えが崩されたのは、あの美しい存在に出会ってからだった
思考全てを埋め尽くすような美しいその存在を前に、「従わなければ」と考えた
この美しい人に従う事は当たり前の事であると、そう感じたのだ
その己の考えが、美しいその存在によって植え付けられたものである等と、気付くこともなく
思考全てを埋め尽くすような美しいその存在を前に、「従わなければ」と考えた
この美しい人に従う事は当たり前の事であると、そう感じたのだ
その己の考えが、美しいその存在によって植え付けられたものである等と、気付くこともなく
「あー、もう。面倒くせぇな………」
人通りの多い駅前で、だらっと人を待つヴィットリオ
九十九屋からのメールで、同じ存在を愛している同士の迎えをしなければいけなくなったのだ
昼間は、生活に必要な物資を書いつつナンパ(命かける存在は一人であるとして、ナンパは男の仕事なのでしなければいけないのだ)するつもりであっただけに、面倒な仕事を押し付けられた気分である
これで、迎えに行く相手が女性であればまだ別だが、相手は男で、しかもお子様&老人なのだ。気が進む訳がない
とは言え、金を稼ぐ手段は持っていないに等しいヴィットリオからすれば、生活費を稼いでおり財布の紐を握っている九十九屋には頭があがらない為、言うこと聞くしかないのだが
九十九屋からのメールで、同じ存在を愛している同士の迎えをしなければいけなくなったのだ
昼間は、生活に必要な物資を書いつつナンパ(命かける存在は一人であるとして、ナンパは男の仕事なのでしなければいけないのだ)するつもりであっただけに、面倒な仕事を押し付けられた気分である
これで、迎えに行く相手が女性であればまだ別だが、相手は男で、しかもお子様&老人なのだ。気が進む訳がない
とは言え、金を稼ぐ手段は持っていないに等しいヴィットリオからすれば、生活費を稼いでおり財布の紐を握っている九十九屋には頭があがらない為、言うこと聞くしかないのだが
(それに、あいつは時間はきっちりしてっから、そこは幸いか)
そう考えつつ、駅前を行き交う人々を見る。ある線より上の美人を見ると思わず目で追ったりとかそういうことをしつつ、時間を過ごしていると
(………お、来た)
駅から出てくる少年と、それに付きそう老人
少年は、ふわっとした長めの金髪をポニーテールにしており、割合かちっとした服装をしている。特徴的なのは、首に下げている懐中時計だろうか。首飾りと言うには少し大きな懐中時計なのだが、少年は気にせず身に着けている
その少年に付きそう老人は………少々、異様な姿だった。なぜならば、とても大きな鎌を手にしていたからだ。ダンボールとかで作った作り物ではない、間違いなく本物の刃の輝きを持つ鎌。まるで死神が持っているようなそれを、重たい様子も見せずに手にしているのだ。そして、周囲の人間は、そんな危険な物を持っている老人を咎めようともしない……否、老人の存在に気づいてすら、いない
少年は、ふわっとした長めの金髪をポニーテールにしており、割合かちっとした服装をしている。特徴的なのは、首に下げている懐中時計だろうか。首飾りと言うには少し大きな懐中時計なのだが、少年は気にせず身に着けている
その少年に付きそう老人は………少々、異様な姿だった。なぜならば、とても大きな鎌を手にしていたからだ。ダンボールとかで作った作り物ではない、間違いなく本物の刃の輝きを持つ鎌。まるで死神が持っているようなそれを、重たい様子も見せずに手にしているのだ。そして、周囲の人間は、そんな危険な物を持っている老人を咎めようともしない……否、老人の存在に気づいてすら、いない
「よぉ、ミハエル」
「あ、ヴィットー、やっほー。ボク来たよー」
「あ、ヴィットー、やっほー。ボク来たよー」
少年………ミハエル・ハイデッガーは、ヴィットリオの姿に気づくとてととととととっ、と駆けて来た
老人はゆっくりと、ミハエルの後を追いかけている
老人はゆっくりと、ミハエルの後を追いかけている
「可愛いボクを迎えに来てくれたんだね、ありがとう!」
「九十九屋に言われたからだよ」
「ヴィット、ノリわるーい」
「九十九屋に言われたからだよ」
「ヴィット、ノリわるーい」
けらけらと笑うミハエル
まだまだ子供なせいか、単に個人の性格か。ドイツ人によく見られる堅苦しさはミハエルにはない(時間がきっちりしている辺りは流石ドイツ人だが)
ぽーん、と勢い良く飛びついてくるミハエルからは、さっと逃げるヴィットリオ
女性から抱きつかれるのはいつでも歓迎だが、男はたとえお子様でもお断りである
むーぅむーぅ、と不満そうなミハエルの頭を、老人がぽふり、と撫でた
まだまだ子供なせいか、単に個人の性格か。ドイツ人によく見られる堅苦しさはミハエルにはない(時間がきっちりしている辺りは流石ドイツ人だが)
ぽーん、と勢い良く飛びついてくるミハエルからは、さっと逃げるヴィットリオ
女性から抱きつかれるのはいつでも歓迎だが、男はたとえお子様でもお断りである
むーぅむーぅ、と不満そうなミハエルの頭を、老人がぽふり、と撫でた
「………ヴィットリオは、いつもこうだろう。気にするな」
「むーぅ、仕方ないなぁ。ファザータイムがこう言ってるし、許してあげる」
「むーぅ、仕方ないなぁ。ファザータイムがこう言ってるし、許してあげる」
傲慢さをにじませた態度でそういうミハエル
はいはい、とヴィットリオは適当に流した
はいはい、とヴィットリオは適当に流した
「ほら、さっさと行くぞ。こっちで増えた仲間と会わせてやるから」
「えー。ボク、それよりもサムライとかニンジャ探したい」
「仲間に「落ち武者」だかって感じのやつがいるからそれで我慢しろ」
「えー。ボク、それよりもサムライとかニンジャ探したい」
「仲間に「落ち武者」だかって感じのやつがいるからそれで我慢しろ」
行くぞー、と歩きだすと、ミハエルは「オチムシャ!サムライの一種だよね!」となんだかワクワクした様子になりながら、素直についてきた
す、と、老人がヴィットリオに並ぶ
す、と、老人がヴィットリオに並ぶ
「………あの方は?」
「まだ見つかってない………何があったんだか」
「まだ見つかってない………何があったんだか」
老人の言葉にヴィットリオが答えると、そうか、と短い返答
す………と、老人はそのまま少し下がり、ミハエルに付き従うように歩いて行く
孫と祖父、と言うには、どこか異様な雰囲気。老人から感じる気配に、ヴィットリオは冷や汗を流す
す………と、老人はそのまま少し下がり、ミハエルに付き従うように歩いて行く
孫と祖父、と言うには、どこか異様な雰囲気。老人から感じる気配に、ヴィットリオは冷や汗を流す
(つっても、俺も慣れてきたよなぁ。最初ん頃は、近寄ることすら嫌だったし)
老人を前にして、自然と感じる恐怖
ヴィットリオは、それから無理矢理意識をそらした
ヴィットリオは、それから無理矢理意識をそらした
「見たくないものは見ない」。それが、ヴィットリオが生きていく上で自然と身につけたものであった
己の生まれ故郷の田舎より便利そうな都会は、見るとそこに行きたくなってしまって故郷が嫌いになりそうで見たくない。だから、「故郷が一番だ」と考えて都会なんて見ない
怖いものなんて見たくない。そんなものを見て、恐怖でショック死したらどうする。だから、怖いものなんて見ないし気づかない
己を誘惑してきた美しいそれから感じた恐怖心を見てみぬふりして、見ない、見ない、見ない
己の生まれ故郷の田舎より便利そうな都会は、見るとそこに行きたくなってしまって故郷が嫌いになりそうで見たくない。だから、「故郷が一番だ」と考えて都会なんて見ない
怖いものなんて見たくない。そんなものを見て、恐怖でショック死したらどうする。だから、怖いものなんて見ないし気づかない
己を誘惑してきた美しいそれから感じた恐怖心を見てみぬふりして、見ない、見ない、見ない
そして、人間にとって、絶対に避けられぬもの
「死」の運命から目をそらす
故に、ヴィットリオ・パッツィは、その存在の正体を見てみぬふりして、見ない
「死」の運命から目をそらす
故に、ヴィットリオ・パッツィは、その存在の正体を見てみぬふりして、見ない
ミハエルが契約しているその存在、「ファーザータイム」がどんな存在であるのか、を
ヴィットリオは、決して考えようとはしなかった
ヴィットリオは、決して考えようとはしなかった
to be … ?