「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代の子供達-64h

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匿名ユーザー

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 ーーーーちゃぽんっ

「まぁ、それぞれ役割というものが存在する故。どの問題も、おそらくは適任者が片付けると思うのだけれどね」

 ちゃぽんっ。ちゃぷんっ

 除染作業を終えた後、「先生」は一人ふらふらと学校街の中を歩き回っていた
 川沿いをゆっくりと、白衣をひらめかせながら、携帯で誰かと会話しながら歩き続ける

「その点で言えば、「狐」関連は完全に適任者逹がいつでも動けるようにしている故。「狐」連中はもはや詰みだ。そもそも、この学校町で何かしら厄介事を越している時点で詰みだと言う事はさておいてね」

 ちゃぽ、ちゃぽぽんっ
 ゆっくり、ゆっくりと
 川沿いを歩きながら、「先生」は何やらぽいぽい、と川に投げ込んでいく
 投げ込まれたそれらは、川に沈むことなくぷかぷか、ぷかぷかと浮かんでいた

「ピエロ連中関連も、「怪奇同盟」のトップの暴走案件も。「赤マント」大量発生から連なる子供の失踪事件も………どれも、場所がこの学校町であると言う時点で、私から見ればどうしようもなく、黒幕にとっては詰んでいる事態としか思えんがね。この街で何か起こそう等と、正気の沙汰ではない。自殺願望者か愚か者でもなければやらんわ。発狂中だった私とて、学校街は避けただろう」

 ちゃぷん………っちゃぽん
 「先生」が川に投げ込んでいるのは、瓢箪だった
 中身の入っていない、蓋がされた瓢箪が。ぽいぽい、ぽいぽいと川へと放り込まれる
 ぷかぷか、ゆらゆら
 沈むことなく瓢箪は浮かび、ただ流されていく
 前方から何やら騒がしい声が聞こえてきているのだが、それを気に留めた様子もなく、「先生」はその作業を続け、携帯での会話も続けている
 当然、まるで無警戒に、不用心に、喋りながら歩いているようにしか見えない「先生」にピエロ逹は気づく
 悪趣味に笑いながら、そちらへと火を向けようと

「無茶言わんでくれ。私は非戦闘員だぞ?」

 …ピエロ逹の様子が、おかしくなる
 何やら苦しげに、酸素を求めるように口をぱくぱくとさせながら倒れ始めた
 バチバチと、「先生」の周囲に赤黒い光がのぼり、ピエロ逹の周囲の空気へとちょっかいをだす
 ピエロ逹の周辺だけ、酸素を延々と水素とくっつけて水へと錬成し、ピエロ逹へと呼吸を許さない
 ……いや、一人だけ、かろうじて死なない程度には呼吸を許されていた
 ギリギリラインの酸素濃度を維持された状態で、ピエロは倒れ込む

「私は、あえて言うなら「保険」のようなものだ。物語というものにおける問題の対処法を作者が考えついていなかった時、「こいつならどうにかできるだろう」と言うように用意されている手段の一つ。私の立場はそのようなものにすぎん。本来の正しい「主役」が存在するのであれば、私の出番等、モブも同然でしかないのだよ」

 ちゃぽんっ
 瓢箪を投げ込みながら、「先生」はかろうじて呼吸を許していたピエロへと近づき、その首根っこを掴んだ
 その細身からは信じられない力で、ずるずると路地裏へと引きずり込んでいく

「故に。今現在も、私はその「保険」としての役割をはたすべく、「保険」となりえる行動をとっているつもりだ。まぁ、私でも「保険」にならんようだったら、もういっそ「レジスタンス」から「奇跡」か「ピーターパン」でも呼んで…………あ、駄目?」

 ぺいっ
 路地裏の奥にピエロを投げ込みながら、携帯の向こう側の人物の言葉に「先生」は面白がっているように笑う

「ですよねー。知ってる。彼らを呼んだら、それこそ「物語」は台無しであろうて。「デウス・エクス・マキナ」契約者や概念殺しができるような者呼んだらそうなる。が、最終手段は本当、それだぞ?それぞれの「主役」に頑張ってもらうしかあるまいて。誰がそれかは知らんが」

 す、と「先生」は路地裏に座り込む
 ぺふ、とピエロの頭を自分の膝の上に載せると、白衣の内側からメスを取り出した
 ……ばちばちと、「先生」から登る赤黒い光がピエロを包み込む

「あ、それじゃあ。今からちょっとピエロの頭の中覗くな。情報手に入り次第、リアルタイムで情報を送る故、すまんがそのまま繋いでおいてくれ」

 いつもとおりの軽い口調でそう言いながら
 さっくし、「先生」はピエロの頭へとメスをいれはじめた





 バイクの轟音が鳴り響く
 ひかりをサイドカーに載せたまま、「ライダー」は東区に向かってバイクを走らせていた
 彼女の身内が東区にいるようなので、そちらへと送ろうとしているのだ
 途中、ピエロの石像の間をくぐり抜けながら、スピードを落とした様子はない

「さっきから、時々空がピカピカ光ってっし、派手にやってんなぁ」

 半ば他人事のようにそう言いながら、「ライダー」は目的地へと向かう
 サイドカーに乗るひかりは、先程通り過ぎたピエロ逹の石像を見て……そうして、「ライダー」を見上げた

「あのね、おじちゃま……」
「あ、俺、ガールから見るとおじさん認定……まぁいいや。なんだ?」
「うん。えっとね。おじちゃまは、もしかして…」

 ……何か、ひかりが言いかけて
 しかし、「ライダー」はそっと、それを制した

「やめとけ、ガール。契約都市伝説の力、今はヘタに使うな。あの場に居た、なんかロリコンの気配を感じなくもない奴。あいつの能力がガールの能力に思い切りカウンターかましてきそうな予感がする」
「おじちゃまは、それを感じ取っているのは能力じゃないの?」
「俺のは百%ただの直感だから、感知系やら何やらへのカウンターは刺さらないのさ」

 悪戯っぽく笑い、そう答える「ライダー」
 事実、彼の契約都市伝説は感知系の能力はない
 本当に、直感で言っているのだ
 と、言うか、この男。そもそも直感頼りに動くことが多い
 それでなんとかなっているのだから、本能に基づいた直感がかなり強いのだろう

「それと……俺ん事も、あんま能力で探ったりしないほうがいいぜ。俺は別に構わないが、怖いおじさんとかが怒りに来るかもしれないからな」
「「レジスタンス」だから?」
「そう。内緒の事が一杯だからな」

 少し、バイクのスピードが上がる

「少なくとも、今回この街で起きている多々の厄介事。その全てに「レジスタンス」は反逆する。そう覚えておいてくれりゃいい」

 敵ではないのだ、と
 それだけは明確にしたいと言うようにそう告げながら、「ライダー」は夜の街にバイクを走らせ続けた



「………はい、駄目ー。ろくな情報ないね!そっちでも、情報引っ張り出そうと思わんほうが良いだろう。時間の無駄だ」

 丁寧にピエロの脳みそを開き、ぐちゅぐちゅと引っ掻き回して探っていた「先生」だったが、お手上げというように携帯で話している相手にそう告げた
 脳を開かれた状態になりながらも、ピエロは命をつながれていた
 しかし、感じているはずの痛みを喜んでいる様子もない
 ……何も、感じなくされていた
 全ての感覚を、先に殺されている
 指一本動かせず、ただか細く呼吸した植物人間のような状態だ

「歩きまわってる最中、他のピエロと明らかに違う動きをしている者がいくつかいた。恐らく「通り悪魔」の御仁辺りが、本拠地に戻ってそっちに放火するよう唆したのであろ。あの御仁、「悪魔の囁き」から教わって割合細かくその手の唆しできたはずであるし」

 メスについた血やら何やらを拭い、白衣の内側にしまい込む
 そうしてから、「先生」はそっと、脳を開いたピエロを撫でた
 撫でる手のひらからばちばちと赤黒い光が生まれ、ピエロの体はぐじゅぐじゅに溶けていく

「ピエロの情報探るなら、そうやって本拠地に向かっているピエロの後をそっとつけていって、本拠地突き止めるほうが早いやかもしれんね。ただ、危険度は洒落にならんと思う故、実行する場合は計画的にね」

 ぐじゅぐじゅ、ぐじゅぐじゅと
 ピエロを溶かしきり、さて、と「先生」は立ち上がる

「では、私は引き続き、私がやるべき作業へと戻るよ。また何かあったら連絡してくれ」

 誰と連絡しあっていたのやら、そのように会話を打ち切ると
 「先生」は再び川沿いを歩きはじめ、川へと空の瓢箪投げ込んでいく

「……ひたえの瓢の、南風ふ吹けば……」

 ゆるゆると、その口から歌のような、呪文のような言葉が漏れて
 ちゃぷりっ、川に浮かぶ瓢箪は、決して沈むことなくぷかぷか、浮かび続けていた







to be … ?



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