「すっかり眠り込んでしまたようネ」
鈴音は寝室で眠りについている明日菜を見た。
風呂から上がった明日菜は、今後をどうするか決めることもなくそのまま寝間着に着替えて床に入ってしまった。
明日も学校だ。明日菜は学生だから早寝早起きも重要だろう。
これ以上考えたくないという逃げとも取れ得るが。
風呂から上がった明日菜は、今後をどうするか決めることもなくそのまま寝間着に着替えて床に入ってしまった。
明日も学校だ。明日菜は学生だから早寝早起きも重要だろう。
これ以上考えたくないという逃げとも取れ得るが。
「明日菜サンが迷てても私はやれることはやておくヨ」
そう言って鈴音は軍用強化服に包まれた身体で、己の拳を開閉しながら動作チェックを済ませる。
ただ、世界樹による魔力のバックアップを受けられない今、鈴音の宝具である『航空時機』の使用はできず、
長瀬楓や桜咲刹那といった強者を手玉に取った戦法は利用できない。
そのため、現在鈴音が身につけているものはモラトリアム期間中に鈴音が開発した『航空時機』を搭載していない簡易強化服だ。
ただ、世界樹による魔力のバックアップを受けられない今、鈴音の宝具である『航空時機』の使用はできず、
長瀬楓や桜咲刹那といった強者を手玉に取った戦法は利用できない。
そのため、現在鈴音が身につけているものはモラトリアム期間中に鈴音が開発した『航空時機』を搭載していない簡易強化服だ。
「ウム、問題ない」
拳を突き出して電撃を放てることを明日菜を起こさぬように確かめてから、
鈴音は宝具『ステルス迷彩付きコート』を羽織って部屋を出た。
そのまま玄関へ向かい、ドアを開く。
これから見回りのために外出するところだった。
強化服とコートを装備したのも敵サーヴァントに遭遇した時のための防護手段である。
鈴音は宝具『ステルス迷彩付きコート』を羽織って部屋を出た。
そのまま玄関へ向かい、ドアを開く。
これから見回りのために外出するところだった。
強化服とコートを装備したのも敵サーヴァントに遭遇した時のための防護手段である。
「さて、行くとするカ」
彼女がフード越しに見た夜空は少し明るみを取り戻していた。
聖杯戦争の幕が開けてから初めての朝が来る兆しだ。
日付は夏至からそう遠くないからか、夜更かしが日常となっている住人は眠る前に朝を迎える。
聖杯戦争の幕が開けてから初めての朝が来る兆しだ。
日付は夏至からそう遠くないからか、夜更かしが日常となっている住人は眠る前に朝を迎える。
見回りと言ってもそれほど遠方へ行くわけではない。
あくまで近くに敵がいないか確かめるだけのことだ。
鈴音はアーチャーでもなければ単独行動もできないため、あまり明日菜から離れられないことは鈴音自身も承知の上だ。
本日0時に行われたルーラーによる通達により、これからは動きをより活発にさせてくる者が多くなるだろう。
ある者は冬木を探索して地理を把握し、ある者は自身のサーヴァントや使い魔に偵察させるかもしれない。
この見回りの目的は、そういった敵を発見し、マスターやそのサーヴァントの正体を知ることにあった。
1人でも多くの敵を知っておけば初見よりも断然対応しやすくなる。
さらに、鈴音には気配遮断機能を備えたコートがある。
敵に察知されて先手を取られることはまずないだろう。
鈴音はたとえ己のマスターが覚悟できていなくとも、勝つための下準備は決して怠らなかった。
あくまで近くに敵がいないか確かめるだけのことだ。
鈴音はアーチャーでもなければ単独行動もできないため、あまり明日菜から離れられないことは鈴音自身も承知の上だ。
本日0時に行われたルーラーによる通達により、これからは動きをより活発にさせてくる者が多くなるだろう。
ある者は冬木を探索して地理を把握し、ある者は自身のサーヴァントや使い魔に偵察させるかもしれない。
この見回りの目的は、そういった敵を発見し、マスターやそのサーヴァントの正体を知ることにあった。
1人でも多くの敵を知っておけば初見よりも断然対応しやすくなる。
さらに、鈴音には気配遮断機能を備えたコートがある。
敵に察知されて先手を取られることはまずないだろう。
鈴音はたとえ己のマスターが覚悟できていなくとも、勝つための下準備は決して怠らなかった。
出発する前に、鈴音は片手に抱えていた彼女の発明品を起動させて飛ばした。
少しでも広範囲を調べるために鈴音が製作した無人偵察機である。
これでせいぜいB-6内でしか動けない鈴音に代わって別区画を調べることができる。
少しでも広範囲を調べるために鈴音が製作した無人偵察機である。
これでせいぜいB-6内でしか動けない鈴音に代わって別区画を調べることができる。
偵察機が淡い青の空の彼方へ飛び立ったことを確認して、鈴音は地を蹴った。
並々ならぬ身体能力により向かいの民家の屋根へ跳んだ鈴音は、
そのままステルス迷彩をかけて霊体化し、辺りにサーヴァントの気配がないか神経を尖らせた。
並々ならぬ身体能力により向かいの民家の屋根へ跳んだ鈴音は、
そのままステルス迷彩をかけて霊体化し、辺りにサーヴァントの気配がないか神経を尖らせた。
◆
未明、B-6区画に位置する公園内の路上。
この公園は比較的規模の大きいもので、この道を朝のジョギングの走路に使う者も少なくない。
流石に現時刻では早すぎるので、この道路を使う者はまだ誰もいない。
この公園は比較的規模の大きいもので、この道を朝のジョギングの走路に使う者も少なくない。
流石に現時刻では早すぎるので、この道路を使う者はまだ誰もいない。
(…今のところ捕捉できたサーヴァントはいない)
しばらくの間、鈴音はB-6内を回ってみたが、サーヴァントと思しき気配、及び魔力は感じられなかった。
鈴音はほんの少しだけ落胆しながらも、仕方ないネ、と思い直す。
そもそも今回は単に近場を見回るくらいしかしていないし、この狭いエリアに敵がやってくる可能性はむしろ低い。
鈴音が誰とも遭遇しないことは可能性として十分あり得たのだ。
また、長期間離れては消滅にもつながるし、聖杯戦争もまだ序盤だ。成果を得るまで粘る必要性は全くない。
今回は収穫なしと判断し、偵察機はちゃんとサーヴァントの姿を捉えているかを思いながら、鈴音は明日菜の家へ帰ろうと踵を返した。
鈴音はほんの少しだけ落胆しながらも、仕方ないネ、と思い直す。
そもそも今回は単に近場を見回るくらいしかしていないし、この狭いエリアに敵がやってくる可能性はむしろ低い。
鈴音が誰とも遭遇しないことは可能性として十分あり得たのだ。
また、長期間離れては消滅にもつながるし、聖杯戦争もまだ序盤だ。成果を得るまで粘る必要性は全くない。
今回は収穫なしと判断し、偵察機はちゃんとサーヴァントの姿を捉えているかを思いながら、鈴音は明日菜の家へ帰ろうと踵を返した。
が―――
「……!?」
突如、まだ薄暗い道の奥から、魔力―――サーヴァントの気配が鈴音の肌をなぞった。
それも近い。本来、鈴音はそれなりに遠くにいても相手の気配を感じることはできるのだが、ここまで寄らなければ察知できないのは予想外だ。
気配遮断を持つアサシンが来たのかと考えを巡らせながら、鈴音はステルス迷彩を維持しながら実体化し、道路の脇から相手を窺う。
幸い、向こうはこちらに気づいていないようだ。
それも近い。本来、鈴音はそれなりに遠くにいても相手の気配を感じることはできるのだが、ここまで寄らなければ察知できないのは予想外だ。
気配遮断を持つアサシンが来たのかと考えを巡らせながら、鈴音はステルス迷彩を維持しながら実体化し、道路の脇から相手を窺う。
幸い、向こうはこちらに気づいていないようだ。
「敵は今のところいないな」
黒い軍服を着た男が実体化し、独り言ちた。
その首には『10』の形をしたペンダントがかけられている。
その首には『10』の形をしたペンダントがかけられている。
「ここ一帯は全て回ったが気配はなかった」
「この区画で俺たちの他にサーヴァントはいないのかもしれん」
「この区画で俺たちの他にサーヴァントはいないのかもしれん」
それに続いてさらに2人、同じ装備に同じ顔をしたサーヴァントが霊体を実体に変える。
異なっている点といえば、それぞれが『11』『12』を象ったペンダントをつけていることくらいか。
異なっている点といえば、それぞれが『11』『12』を象ったペンダントをつけていることくらいか。
(……3人!?)
同時に3体のサーヴァントを目にした鈴音は大層驚いた。
1体いるかいないかと踏んでいたサーヴァントがまさか3体同時に現れるとは、願ってもないことだ。
だが、彼らは同じ顔であり尚且つ同じ服装をしていることが引っかかる。
基本は1人のマスターには1体のサーヴァントしかいない。
3組の主従が同盟を組んでいる可能性もあるが、この数日のモラトリアム期間だけで互いの正体を看破して協力し合うなどできるとは到底思えない。
ならば、ある程度はこのサーヴァントの正体を推測できる。
1体いるかいないかと踏んでいたサーヴァントがまさか3体同時に現れるとは、願ってもないことだ。
だが、彼らは同じ顔であり尚且つ同じ服装をしていることが引っかかる。
基本は1人のマスターには1体のサーヴァントしかいない。
3組の主従が同盟を組んでいる可能性もあるが、この数日のモラトリアム期間だけで互いの正体を看破して協力し合うなどできるとは到底思えない。
ならば、ある程度はこのサーヴァントの正体を推測できる。
(……なるほどネ)
科学技術に精通している鈴音はすぐに合点がいった。
(これらは、所謂クローンみたいな量産型ネ)
同じ外見的特徴を持ち、複数召喚できていることから、元々は量産されていた存在だったのだろう。
首にぶら下げているペンダントも、同じ顔であることを面倒に思った彼らのマスターが個体識別のために与えたとしたら辻褄が合う。
彼らが本当に生物学的なクローンなのか、それとも絡繰茶々丸のようなロボットを量産したものなのかは鈴音の知るところではない。
だが、宝具か何かで量産されていることは確かだ。
首にぶら下げているペンダントも、同じ顔であることを面倒に思った彼らのマスターが個体識別のために与えたとしたら辻褄が合う。
彼らが本当に生物学的なクローンなのか、それとも絡繰茶々丸のようなロボットを量産したものなのかは鈴音の知るところではない。
だが、宝具か何かで量産されていることは確かだ。
(こんなときに明日菜サンがいればもっと詳しいこともわかるんだが…)
サーヴァントはマスターとは違い、敵のステータスを見ることができない。
いずれ戦うことになる相手に出会った以上、得ることができる情報はできるだけ集めておきたいのだが、ないものをねだっても仕方がない。
一応、彼らから感じとれる魔力は通常のサーヴァントよりもかなり小さいことと、量産型という特性上、並のサーヴァントよりは弱いことはわかる。
魔力が薄いことである程度接近しないと気配を感知できないのは厄介だが。
いずれ戦うことになる相手に出会った以上、得ることができる情報はできるだけ集めておきたいのだが、ないものをねだっても仕方がない。
一応、彼らから感じとれる魔力は通常のサーヴァントよりもかなり小さいことと、量産型という特性上、並のサーヴァントよりは弱いことはわかる。
魔力が薄いことである程度接近しないと気配を感知できないのは厄介だが。
(さて、どうしたものか…)
このまま帰るか敢えて前に出て小手調べをするか。
最低限の武装をした鈴音1人に対し、弱いとはいえ詳しいステータス・スキル・宝具がわからない量産型サーヴァント3人。
後者の択を選ぶことは些か無謀――――
最低限の武装をした鈴音1人に対し、弱いとはいえ詳しいステータス・スキル・宝具がわからない量産型サーヴァント3人。
後者の択を選ぶことは些か無謀――――
「アーイ!」
鈴音が考えを巡らしていると、突如量産型のサーヴァント――エレクトロゾルダートの1人が声を上げた。
「ムッ……!」
鈴音はそれに反応して咄嗟に飛び退く。
すると先ほどまで鈴音がいた場所に高圧の電撃が紫に輝く弾となって飛来した。
それが着弾した地点には黒く焼け焦げた跡が残っていた。
すると先ほどまで鈴音がいた場所に高圧の電撃が紫に輝く弾となって飛来した。
それが着弾した地点には黒く焼け焦げた跡が残っていた。
「敵か!?」
「ああ……電光機関から流れた電流が1点に向かっていた。まさかとは思ったが」
「ああ……電光機関から流れた電流が1点に向かっていた。まさかとは思ったが」
電光機関。無尽蔵に電気を生み出すアガルタの超科学技術の遺産。
実体化した際に、エレクトロゾルダート10号は万が一のことを考慮して電光機関の出力を上げたことが鈴音の発見につながった。
当初はステルス迷彩による気配遮断のせいで察知することはできなかったが、
電光機関の出力を上げた際、バチリと体表面を流れるはずの電流があらぬ方向へ一直線へと流れていったのだ。
実体化した際に、エレクトロゾルダート10号は万が一のことを考慮して電光機関の出力を上げたことが鈴音の発見につながった。
当初はステルス迷彩による気配遮断のせいで察知することはできなかったが、
電光機関の出力を上げた際、バチリと体表面を流れるはずの電流があらぬ方向へ一直線へと流れていったのだ。
何か電流を引き寄せやすいもの…あるいは敵が潜んでいるのではないか。
そんな思考が元で、その方向へ電光弾――ブリッツクーゲルを放ったのである。
10号の予測は実際に当たっており、鈴音は電光被服と同じ電撃を放てる軍用強化服を身に着けていたため、電光機関から流れる電気を図らずも引き寄せてしまったのだ。
そんな思考が元で、その方向へ電光弾――ブリッツクーゲルを放ったのである。
10号の予測は実際に当たっており、鈴音は電光被服と同じ電撃を放てる軍用強化服を身に着けていたため、電光機関から流れる電気を図らずも引き寄せてしまったのだ。
「考え事していたとはいえステルス迷彩を破るとは…少し侮ていたヨ」
……これは後者の択を選ばざるを得ナイ。
そう思いながら鈴音は己の頭を覆っていたフードを外し、ゾルダート達と対峙する。
そう思いながら鈴音は己の頭を覆っていたフードを外し、ゾルダート達と対峙する。
◆
「貴様…何者だ」
体勢を立て直して自分達の前に立つ東洋人のサーヴァントを3人の電光兵士は睨みつける。
「どうも、初めまして。キャスターデス」
平然とした様子で鈴音は両手の平を合わせ、お辞儀をした。
中国のそれとは違う、日本の様式に合わせた挨拶だ。
その顔は笑みを浮かべており、どこか相手を小馬鹿にしている印象を拭えない。
中国のそれとは違う、日本の様式に合わせた挨拶だ。
その顔は笑みを浮かべており、どこか相手を小馬鹿にしている印象を拭えない。
「次はそっちの番ネ。挨拶を返さないのはスゴイシツレイヨ?」
「ふざけるな!」
「ふざけるな!」
おちゃらけた様子を崩さない鈴音に対し、11号は怒鳴った。
自らの主君には忠実なゾルダートだが、敵や部外者に対しては高圧で攻撃的な態度を取る。
鈴音は彼らの敵意に満ちた視線に臆することはなく、飄々とした様子だ。
自らの主君には忠実なゾルダートだが、敵や部外者に対しては高圧で攻撃的な態度を取る。
鈴音は彼らの敵意に満ちた視線に臆することはなく、飄々とした様子だ。
「郷に入ては郷に従えと言う。聖杯からそれなりの知識を与えられてるんだからお前達も従てみてはどうカ?」
「死にたいのか、野蛮な劣等種め……!」
「死にたいのか、野蛮な劣等種め……!」
12号が沸々と湧き上がる怒りを電光機関の出力に変え、臨戦態勢を取る。
彼らの電光機関がいつでも戦闘できることを示すように、周囲に電流が流れた。
彼らの電光機関がいつでも戦闘できることを示すように、周囲に電流が流れた。
「その野蛮な劣等種より礼儀がなってない優良種なんて冗談でも笑えないヨ?あと、これでもイギリス人の血を引いてるネ」
「フン……俺達は『レプリカ』だ」
「フン……俺達は『レプリカ』だ」
鈴音の挑発に乗り、12号は簡単な自己紹介を済ませる。
するとその直後、3人のゾルダートが一斉に動き出した。
これ以上鈴音の茶番に付き合っていられないのだろう。
するとその直後、3人のゾルダートが一斉に動き出した。
これ以上鈴音の茶番に付き合っていられないのだろう。
「情ケ無用ということカ」
だが、茶番としか思えない挨拶で相手のクラス名を聞けたのは自らがキャスターだと知られたことを差し引いてもなお大きい。
この同じ顔をした3人のサーヴァントの属するクラスは、レプリカ。
その名から、彼らの正体はオリジナルを複製したクローンであることがわかる。
この同じ顔をした3人のサーヴァントの属するクラスは、レプリカ。
その名から、彼らの正体はオリジナルを複製したクローンであることがわかる。
(それにしても、『劣等種』カ…)
クローンが鈴音に向かって吐いた台詞。
このクローン達は顔立ちからして西洋の白人がオリジナルだろう。
白人の使う「野蛮な劣等種」という言葉は、人種差別がまかり通っていた、第二次世界大戦終戦前の帝国主義時代を彷彿とさせる。
まるで自分達は文明の中に生きる者で優れていると根拠もなく信じているかのようだ。
戦争やそれによる憎悪の連鎖を嫌う鈴音はそれを不愉快に感じていた。
このクローン達は顔立ちからして西洋の白人がオリジナルだろう。
白人の使う「野蛮な劣等種」という言葉は、人種差別がまかり通っていた、第二次世界大戦終戦前の帝国主義時代を彷彿とさせる。
まるで自分達は文明の中に生きる者で優れていると根拠もなく信じているかのようだ。
戦争やそれによる憎悪の連鎖を嫌う鈴音はそれを不愉快に感じていた。
(レプリカサンにはちょっと痛い目に遭ってもらおうかネ)
鈴音も簡易強化服からいつでも電撃が出せるようにして応戦の構えを取った。
「フン!」
鈴音に肉薄した10号から、電光被服によって強化された肉体によるローリングソバットが繰り出される。
それを鈴音はバク転しながら大きく跳び退き、これを避ける。
そこに先ほど発射された電光弾が鈴音に迫っていた。10号が仕掛けると同時に11号がブリッツクーゲルを牽制射撃として発射していたのである。
それを鈴音はバク転しながら大きく跳び退き、これを避ける。
そこに先ほど発射された電光弾が鈴音に迫っていた。10号が仕掛けると同時に11号がブリッツクーゲルを牽制射撃として発射していたのである。
「ムムッ!」
咄嗟に右へ大きくジャンプしこれを回避すると、着地点になるであろう場所に12号が待ち構えていた。
「イィーヤッ!」
12号はしてやったりと笑みを浮かべながら体をくねらせて大きく飛び上がり、側転の要領で蹴り上げて迎撃せんとする。
一般的なものとは異なる、横に回るサマーソルト――フラクトリットだ。
一般的なものとは異なる、横に回るサマーソルト――フラクトリットだ。
「何の!イヤーッ!」
「ナインッ!」
「ナインッ!」
12号の表情が驚愕に変わる。
鈴音を見事撃墜するかと思われた12号の蹴りは、円弧を描くようにして振り下ろされた鈴音の脚に撃墜された。
遠心力の助力を得て繰り出された蹴りは12号の想像以上に高威力で、逆に撃墜されてそのまま地面に叩きつけられる。
本来、鈴音と電光被服で強化されたゾルダートは筋力と耐久が同等で、身体能力に関してはほぼ互角なのだが、
鈴音は簡易強化服による強化と持ち前の敏捷、そして中国拳法の技量でゾルダートに差をつけていた。
鈴音を見事撃墜するかと思われた12号の蹴りは、円弧を描くようにして振り下ろされた鈴音の脚に撃墜された。
遠心力の助力を得て繰り出された蹴りは12号の想像以上に高威力で、逆に撃墜されてそのまま地面に叩きつけられる。
本来、鈴音と電光被服で強化されたゾルダートは筋力と耐久が同等で、身体能力に関してはほぼ互角なのだが、
鈴音は簡易強化服による強化と持ち前の敏捷、そして中国拳法の技量でゾルダートに差をつけていた。
「まだ終わらぬヨ!」
鈴音が上空へ拳を突き出して電撃を打ち、下方への推進力を得てジャンプの軌道を変え、12号へ追撃を加えんと、勢いに任せて脚を振り下ろす。
「12号!」
12号の前へ10号が割り込み、鈴音の蹴りに備える。
鈴音の蹴りは引っ込むことなく10号の身体へ向かった。
鈴音の蹴りは引っ込むことなく10号の身体へ向かった。
しかし、12号を庇った10号に炸裂するでろう蹴りに手ごたえは感じられなかった。
それどころか10号はまったくダメージを受けていない。
鈴音の目には、10号の前に電気でできたシールドのようなものが張られているように見えた。
それどころか10号はまったくダメージを受けていない。
鈴音の目には、10号の前に電気でできたシールドのようなものが張られているように見えた。
(…魔法障壁?)
鈴音の世界における魔法使いは魔法障壁による防御魔法を用いていたが、それをこのサーヴァントは使えるのだろうか。
ところが、ソルダート10号の張ったシールドは防御するだけのものではなかった。
ところが、ソルダート10号の張ったシールドは防御するだけのものではなかった。
「イィーヤッ!」
「くっ…!?」
「くっ…!?」
蹴りをシールドで受け止めたゾルダートは鈴音の蹴りの勢いを押し返すように膝蹴りを鈴音へ喰らわせた。
膝蹴りの衝撃で少し浮いた鈴音の腹に10号の蹴りが追撃として入り、間合いを取られた。
鈴音はすぐさま受け身をとり、体勢を立て直す。
膝蹴りの衝撃で少し浮いた鈴音の腹に10号の蹴りが追撃として入り、間合いを取られた。
鈴音はすぐさま受け身をとり、体勢を立て直す。
「…やるネ、レプリカサン」
攻性防禦。鈴音の知らない、ゾルダートの生きていた世界に存在した攻守一体の構え。
使い手によって細部は異なるが、敵の攻撃を受け止め、その力を逆に利用して反撃するというものだ。
ゾルダートの場合は、電光機関により電気のシールドを張り、それで攻撃を受け止めた際に発生した電気を肉体の瞬発力強化に回して反撃するという手法を取っていた。
使い手によって細部は異なるが、敵の攻撃を受け止め、その力を逆に利用して反撃するというものだ。
ゾルダートの場合は、電光機関により電気のシールドを張り、それで攻撃を受け止めた際に発生した電気を肉体の瞬発力強化に回して反撃するという手法を取っていた。
「我等の攻性防禦の前では貴様の攻撃は効かん」
「その攻性防禦というものはなかなか使えそうだヨ。私の強化服にもその機構を取り入れてみようかネ。…次はこっちの番だヨ」
「その攻性防禦というものはなかなか使えそうだヨ。私の強化服にもその機構を取り入れてみようかネ。…次はこっちの番だヨ」
鈴音が言い終わった瞬間、10号の前に目にもとまらぬスピードで鈴音が肉薄する。
敏捷でゾルダートに数段勝っている鈴音に10号の目が追いつかず、焦りの色を顔に浮かべながら咄嗟に攻性防禦の構えをとる。
鈴音の拳が10号の目前に迫るが、シールドによってそれは受け止められた。
敏捷でゾルダートに数段勝っている鈴音に10号の目が追いつかず、焦りの色を顔に浮かべながら咄嗟に攻性防禦の構えをとる。
鈴音の拳が10号の目前に迫るが、シールドによってそれは受け止められた。
「効かないと言っている!」
無事、鈴音の攻撃を止めた10号はすぐに反撃を鈴音の身体に入れようとする。
それは再び鈴音の体を捉えると、10号は信じて疑わなかった。
それは再び鈴音の体を捉えると、10号は信じて疑わなかった。
「…それはどうかナ?」
「イィ……!?」
「イィ……!?」
鈴音の拳を受け止めた10号の顔に再び焦りが出る。
しかし、その焦りを浮かべた顔は、すぐに鈴音の視界からなくなった。
鈴音の強化服による電撃を纏った、もう片方の拳が10号の身体に入り、数十メートル先に吹き飛ばされていたからだ。
この一撃は、魔法拳士として十分な技量を得たネギ・スプリングフィールドを一撃で戦闘不能にする威力を持つ。
しかし、その焦りを浮かべた顔は、すぐに鈴音の視界からなくなった。
鈴音の強化服による電撃を纏った、もう片方の拳が10号の身体に入り、数十メートル先に吹き飛ばされていたからだ。
この一撃は、魔法拳士として十分な技量を得たネギ・スプリングフィールドを一撃で戦闘不能にする威力を持つ。
「攻性防禦はスデに見切た。反撃される前に攻撃を加えれば全て無意味ヨ」
最初の一撃はフェイクだ。鈴音は10号に反撃を受けた際、反撃が出る前にに小さな隙が生じることを見抜いていた。
敢えて攻性防禦で受け止めさせることにより、その隙に本命の攻撃を入れることができる。
敢えて攻性防禦で受け止めさせることにより、その隙に本命の攻撃を入れることができる。
「貴様…!」
傍らで体勢を立て直した12号が憎悪の籠った目で鈴音を睨んでいた。
「フム…素早さ以外の身体能力はキャスターである生身の私と同じくらいみたいだネ。そこは量産型故の脆弱性があるといったところカ」
「アーイ!」
「アーイ!」
12号が鈴音へ出せるだけのスピードを出して突進し、膝を突きだす。
当たれば鈴音とて先ほどの10号と大差ないくらいに弾き飛ばされるほど力の籠った一撃であったが、あまりに力任せであったために避けるのが容易だ。
当たれば鈴音とて先ほどの10号と大差ないくらいに弾き飛ばされるほど力の籠った一撃であったが、あまりに力任せであったために避けるのが容易だ。
「これに耐えられるカ!」
鈴音はがら空きになった12号の背中に手を当て、直接電撃を流しこんだ。
一度に大量の電気が流れたからかそこから熱が上がって小さな爆発が起こり、12号は感電してビクビクと体を震わせた後、爆発に吹き飛ばされてうつ伏せに倒れた。
一度に大量の電気が流れたからかそこから熱が上がって小さな爆発が起こり、12号は感電してビクビクと体を震わせた後、爆発に吹き飛ばされてうつ伏せに倒れた。
「これで二人…」
「アーイ!」
「あと一人いたネ」
「アーイ!」
「あと一人いたネ」
鈴音の背後から打ち出されたブリッツクーゲルを電撃で相殺し、11号と向かい合う。
両者は互いへ同時に走り出し、11号は鈴音の顔面に向かってアッパーを、鈴音も11号の顔面へ蹴りを放ったが、手首と足首が交差して打ち合い、どちらの攻撃も相殺された。
続いて、鈴音は牽制として裏拳を11号に繰り出すが、難なくガードされ、
それのお返しとばかりに11号の右手が鈴音の鳩尾に向かうが、鈴音は素早くバックステップで回避し、間合いを取った。
しかし、11号は素早い動きで鈴音に距離を詰め、コートの襟首部分を掴まんとした。
それを鈴音はすぐに察知し、片手で払いのけ、低い姿勢から11号を蹴りで貫こうとする。
11号は咄嗟に攻性防禦により蹴りを受けとめ、反撃を食らわそうとした。
両者は互いへ同時に走り出し、11号は鈴音の顔面に向かってアッパーを、鈴音も11号の顔面へ蹴りを放ったが、手首と足首が交差して打ち合い、どちらの攻撃も相殺された。
続いて、鈴音は牽制として裏拳を11号に繰り出すが、難なくガードされ、
それのお返しとばかりに11号の右手が鈴音の鳩尾に向かうが、鈴音は素早くバックステップで回避し、間合いを取った。
しかし、11号は素早い動きで鈴音に距離を詰め、コートの襟首部分を掴まんとした。
それを鈴音はすぐに察知し、片手で払いのけ、低い姿勢から11号を蹴りで貫こうとする。
11号は咄嗟に攻性防禦により蹴りを受けとめ、反撃を食らわそうとした。
――ここが勝負の分かれ目となった。
「言たハズヨ。見切たト」
反撃を入れようと脚を突きだした11号の胸に蹴りが入る。
1発、2発、3発、4発――――
鈍い痛みの中、何発受けたかわからなくなった頃に鈴音の拳をモロに食らい、11号は膝を突いた。
「き、貴様…!」
中国拳法には、古菲の形意拳やネギの八極拳、魏の心意六合拳、マリリン・スーの劈掛拳などがあるが、
鈴音の使う拳法は北派少林拳。移動や跳躍や蹴りの多い中国武術の一つだ。
先ほどの攻性防禦で対応のできなかった連続蹴りは、鈴音の得意分野の一つであった。
鈴音の使う拳法は北派少林拳。移動や跳躍や蹴りの多い中国武術の一つだ。
先ほどの攻性防禦で対応のできなかった連続蹴りは、鈴音の得意分野の一つであった。
このまま押し切れそうだったが、鈴音にはそうもいっていられない事情がある。
(魔力の消耗が早い…明日菜サンの近くにいないからカ)
ゾルダート達と交戦してから、しばらく経つ。
現状は鈴音が有利だが、長期戦になると魔力の関係で不利になるであろう。
現状は鈴音が有利だが、長期戦になると魔力の関係で不利になるであろう。
「…まだだ!」
「ぐ……!」
「殺すつもりはなかたとはいえ、まだ戦えるカ」
「ぐ……!」
「殺すつもりはなかたとはいえ、まだ戦えるカ」
11号の背後へと駆けてくる10号と12号の姿が見える。
やはり、ここは退くべきであろう。
二度目になるが、成果を得るまで粘る必要性は全くないのだ。
優位性を保っている内に戦線から離脱しよう。
やはり、ここは退くべきであろう。
二度目になるが、成果を得るまで粘る必要性は全くないのだ。
優位性を保っている内に戦線から離脱しよう。
「残念だけど、今日はここまでネ。…また会おう、旧世界の人類…旧人類ヨ」
鈴音はフードを再び被り、ゾルダート達の肩が揺れている間に霊体化してこの場を去った。
「待て!」
「いや、ここは俺たちも引くべきだ!魔力が持たん」
「いや、ここは俺たちも引くべきだ!魔力が持たん」
追おうとする10号に対し、12号が制する。
単独行動をしており、電光機関は魔力を電力に変換するという性質上、鈴音との交戦でゾルダートが消費した魔力は決して少なくない。
さらに鈴音はステルス迷彩をかけたのか、先ほどまで感じていた気配が消えている。
単独行動をしており、電光機関は魔力を電力に変換するという性質上、鈴音との交戦でゾルダートが消費した魔力は決して少なくない。
さらに鈴音はステルス迷彩をかけたのか、先ほどまで感じていた気配が消えている。
「ミサカの所へ戻るぞ。ここであったことを報告せねば」
11号が言ったことに2人は頷き、ゾルダート達も己のマスターの元へ引き返すのであった。
【B―6/大きな公園/1日目・深夜】
【キャスター(超鈴音)@魔法先生ネギま!】
[状態]霊体、ダメージ(小)、魔力消費(大)
[装備]簡易軍用強化服、ステルス迷彩付きコート
[道具]今は外出中だから特にないヨ
[思考・状況]
基本行動方針:願いを叶える
1.明日菜が優勝への決意を固めるまで、とりあえず待つ
2.それまでは防衛が中心になるが、出来ることは何でもしておく
3.明日菜の元へ戻る
4.強化服にレプリカの使う攻性防禦と同じ機能を搭載してみるのもいいかもしれない
5.帝国主義は不愉快
[備考]
ある程度の金を元の世界で稼いでいたこともあり、1日目が始まるまでは主に超が稼いでいました
無人偵察機を飛ばしています。どこへ向かったかは後続の方にお任せします
レプリカ(エレクトロゾルダート)と交戦、その正体と実力、攻性防禦の仕組みをある程度理解しています
[状態]霊体、ダメージ(小)、魔力消費(大)
[装備]簡易軍用強化服、ステルス迷彩付きコート
[道具]今は外出中だから特にないヨ
[思考・状況]
基本行動方針:願いを叶える
1.明日菜が優勝への決意を固めるまで、とりあえず待つ
2.それまでは防衛が中心になるが、出来ることは何でもしておく
3.明日菜の元へ戻る
4.強化服にレプリカの使う攻性防禦と同じ機能を搭載してみるのもいいかもしれない
5.帝国主義は不愉快
[備考]
ある程度の金を元の世界で稼いでいたこともあり、1日目が始まるまでは主に超が稼いでいました
無人偵察機を飛ばしています。どこへ向かったかは後続の方にお任せします
レプリカ(エレクトロゾルダート)と交戦、その正体と実力、攻性防禦の仕組みをある程度理解しています
【レプリカ(エレクトロゾルダート)@アカツキ電光戦記】
[状態](10号~12号)、ダメージ(中)、魔力消費(大)、無我、スリーマンセル、単独行動
[装備]電光被服
[道具]電光機関、数字のペンダント
[思考・状況]
基本行動方針:ミサカに一万年の栄光を!
1.ミサカに従う
2.ミサカの元へ帰還する
3.キャスター(超鈴音)のことをミサカに報告する
[備考]
キャスター(超鈴音)と交戦しました
[状態](10号~12号)、ダメージ(中)、魔力消費(大)、無我、スリーマンセル、単独行動
[装備]電光被服
[道具]電光機関、数字のペンダント
[思考・状況]
基本行動方針:ミサカに一万年の栄光を!
1.ミサカに従う
2.ミサカの元へ帰還する
3.キャスター(超鈴音)のことをミサカに報告する
[備考]
キャスター(超鈴音)と交戦しました
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011:漆黒のジャジメント-what a noble dream- | 投下順 | 013:白銀の凶鳥、飛翔せり |
009:灰色の夢 | 時系列順 | 015:Fake/この手が掴んだものは |
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001:プラスチックのようなこの世界を | キャスター(超鈴音) | 026:夢現ガランドウ |
002:開戰 | レプリカ(エレクトロゾルダート) | 015:Fake/この手が掴んだものは |