夢現聖杯儀典:re@ ウィキ

漆黒のジャジメント-what a noble dream-

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
記憶を取り戻して数日間、神条紫杏の行動パターンに変化はなかった。
狂いはない、計算通りだ。
記憶も、立場も、サーヴァントも。
何もかも、現状は問題なく回っている。
そう、この街が偽りだろうと真実だろうと、紫杏のやることは変わらない。
聖杯を奪取し、来たるべく計画の保険として利用させてもらう。
世界が平和であるように。ただそれだけの為に、この身体はある。
迷いはとっくに消え失せ、この身体は恒久の平和に沈んでいる。
犠牲を払ってでも、世界は救われなくてはならない。
当然、他に呼ばれた主従には譲れない願いを持っているだろうが、此方もそれは同じだ。
他の願いを踏み越えてでも、叶えたい悲願がある。
故に、騙そう、誑かそう、欺こう、偽ろう。
謀略を以って最後まで生き残るのは――紫杏達だ。

「戦が始まったというのに、変わらぬな。ますたあよ」
「そうか? これでも、私は来たる戦いに柄でもなく手が震えているよ」
「戯言だな」
「しかし、傑作だろ?」

温かみのない言葉に乾いた関係。
このぐらいが丁度いいし、気楽だ。
互いの利害が一致しているから手を組んでいるだけとはいえ、今は同じ方向を向いている。
紫杏と剣心が夢見る世界に関係が断絶する程の差異はない。

「軽口はここまでにしよう。今は、俺達はどう動くべきか。それを検討したい」
「どうするも何も、情報収集もなしに動けまい。幸い、私達の立場は恵まれている。
 存分に活用して、戦いに役立てよう。全てはそこからだ」

幸か不幸か。紫杏に割り振られた立場は、元の世界と変わらず社長だ。
拘束される時間は長いが、それ相応にリターンもある。
豊富な資金に人脈、人員を動かせるのは短期間なれど、大きなアドバンテージだ。

「大人しく引き篭もっていても自然と情報は入ってくるよ。戦いは戦意が盛んな主従が勝手に巻き起こしてくれるだろうさ」
「正面切って戦えない以上、こうするしかない、か」
「屈辱か?」
「まさか。このクラスで呼ばれた時より、覚悟は決めているさ」

非力な女社長とアサシンのサーヴァント。
力押しで勝てる組み合わせでは断じてない。

「ひとまずは、待ちの姿勢を崩さん。この戦いは強い者が勝者ではない。
 最後まで生き残った者が勝者だ」
「それよりも――」
「ああ、今は割り振られた役割に従じようか」

奇襲、暗殺、裏切り、協調。
取れる手段があるなら、なんだってしよう。

「了承した。ところで、ますたあよ」
「どうした?」

それが彼女達ができる戦い方だから。

「……この『すーつ』というものは窮屈だな。やはり元の服装が」
「駄目だ、アレは目立つ。それに、私の役職を補佐し雑踏に紛れるにはスーツは最適な服装だ。この戦争中は我慢してもらおうか」

まずは、服装から始めよう。
紫杏達の戦いの始まりは、互いの文化の齟齬を埋めることからだった。






アリー・アル・サーシェスの向かった先はとある取引先だった。
割り振られた役割は元の世界と同じく民間軍事会社に所属する傭兵である。
そんな物騒な経歴を持つ自分が、何故こんな平和な街にいるのか。
聖杯戦争以前。
記憶を取り戻す以前のことをざっと振り返ると、どうやらいつも通りビジネスらしい。
自分らしいとくつくつと喉を鳴らしながら嗤う。

「初めまして、アリー・アル・サーシェスです。この度は有意義な時間を過ごせることを切に願います、紫杏社長」
「神条紫杏だ。同じく、お互いの利益を尊重し合える関係であることを同じく願おう」

神条紫杏。冬木市の中でも上昇傾向にある会社の女社長。
軽く調べると、若手の美女社長として市内では有名らしい。
確かにサーシェスから見ても、紫杏の容姿は抜群に優れている。
下衆な考えを起こす人物がいてもおかしくはない美しさだ。
これなら世の男はハイエナのように彼女に迫るだろう。
男を選び放題の立場はさぞ気分がいいに違いない。

「では早速ビジネスの話に移ろうか」
「ええ。何でも、俺の力が欲しい、と」

加えて、話す言葉も単純明快、理路整然としていて好ましい。
ぐだぐだとつまらないお世辞だの世間話だの、サーシェスからするとどうでもいい。
焦点として当てられるのは、彼に興味を抱かせるのは其処に愉悦があるかどうかだけだ。
聖杯戦争をするにあたって、大会社の社長の後ろ盾は後先を考えずに戦えるので心強い。
だから、申し出で言えば即答してもいい話ではある。

「正確には、我が社との提携をお願いしたい。まあ、企業としてのし上がっていく過程で、色々と物騒なこともあるのでね。
 懐刀がないと落ち着かない性分でね」
「おっかない話ですねぇ。そのような手段に手を染めずとも、貴方ならば真正面から戦えるのでは?」
「ご冗談を。私にはそこまでの器量はありませんよ」

だが、引っかかるのは何故この聡明な女社長がわざわざ傭兵風情と繋がりを持とうとするかだ。
神条紫杏は自分がこれまで出会ってきた女性の中でもトップクラスに切れ者だ。
こんな肉人形で埋まった街で、これ程にキレる人物がいるのだろうか。
もっとも、多種多様な人種が集うであろう聖杯戦争でこの疑問点はナンセンスかもしれない。
しかし、それを抜きにしても、サーシェスから見て彼女の底が全く見えないのだ。
自分の放つ牽制の言葉もさらりと受け流し、にこやかに笑うこの女社長はどうやら相当の曲者らしい。
百戦錬磨、ありとあらゆる戦場を渡り歩いてきたサーシェスの眼光にも全く怯みはしない。
常人ならば震えて冷や汗を流すまでに昇華させたものだが、相手が鈍いのか、それとも自分が鈍ったのか。
どちらにせよ、眼前の女社長は自分が相手取るに相応しいレベルに到達している。
神条紫杏は、女社長としてあまりにもできすぎているのだ。
全く不備が見られないその仕草に、サーシェスの頭はどうも引っかかっている。


「そう嘆く人に限って牙を隠しているものですよ」
「経験談ですか?」
「そう取って貰って構いません」
「では、私はその例えに当てはまりませんね。凡才たるこの身では些か物足りないとは思いますが」

皮肉げに笑う彼女の姿に、一瞬でも気圧されたのは――きっと、気のせいだ。
いつまでも、錯覚に囚われていては聖杯戦争に支障をきたす。
戦場はころころと流れが変わっていくのが常だ、切り替えることができない愚図は死んでいくだけだ。
自分は、愚図じゃない。

「ははっ、与太話はここまでにして契約の方はどういたしますか、サーシェスさん?」
「お受けいたしましょう。この卑しい傭兵風情ですが、貴方様の懐刀として十分に活用してもらって構いません」
「では、契約は成立しました」
「貴方の麗しき姿に誓って」

ならば、今は順応していくことだけを念頭に入れておこう。
正直、神条紫杏は肉人形にしては些か切れ者過ぎる。
聖杯戦争のマスターとして、関わっている可能性を否定出来ない。
だが、このように出会う輩全てを疑っていてはキリがない。
あくまで怪しい、と思った程度だ。
先程の少女と同じく、心の片隅で気にかけておけばいいと再度肝に銘じておく。
今はまだ、神経質にならなくても大丈夫だ。
確信が深まった時に動けばいい。。
そんな余裕が、サーシェスにはまだ残されていた。






「黒だ。アリー・アル・サーシェスは聖杯戦争のマスターだ」
「早計な判断だな。理由を聞いてもいいか」
「勘だよ。それに、双眸が濁り切っている。反吐の出る肥溜めの中で嗤うクソッタレだって、一目見てわかった。
 生前から来る経験談としても、奴は下衆だよ」

サーシェスが去った後、霊体化から解除した剣心は紫杏のきっぱりとした言葉に珍しく呆気にとられていた。
自分のマスターである紫杏は決断力があり、迷わない。
そんな彼女がきっぱりと断言するのだから、彼は紫杏から見てよっぽどのドス黒い内面を持った人物なのだろう。

「だが、まだ手を出さない。アリー・アル・サーシェスは泳がせておく」
「すぐ暗殺するのではなかったのか? ますたあの口ぶりからしてすぐさまにでも殺せと命じられると思っていたんだが」
「そんなもったいないことはしないさ。ああいう奴は最大限に利用してから殺すに限る。
 加えて、サーヴァントが控えていたら返り討ちにあうだけだ。如何せん、私達は正面から戦える主従じゃないからな」

肩をすくめる彼女に対して、剣心は何も言わず溜息をつく。
わかっていたことながら、耳が痛い。
自分達にもっと力があれば、こんな遠回しな戦略など取らずに済んだ。
それはこの貧弱な身体が何よりも証明している。

「彼には暫くの間、他のマスター達を潰し回ってもらおう。アサシン、あいつの後を付けて情報を得ろ。
 危なくなったら直ぐに撤退してくれて構わないし、私も危険を感じたらすぐに令呪を使う。いいな?」
「心得た」

故に、紫杏達が重点に置いていることは情報だ。
聖杯戦争を戦うにあたって、彼女達は暗殺をメインに行動する予定である。
その為には、誰がマスターであるかしっかりと目星をつけておかなくてはならない。
だから、戦場の中心点となる彼の後ろで観察させてもらう。
アサシンという諜報に向いたサーヴァントだからこそできるギリギリの綱渡りだ。
ひとまずの行動方針を決め、紫杏は少しの休憩を取ろうと椅子に深々と座る。
剣心が霊体化し、彼の後を追ってからも頭の中からはサーシェスの姿が依然として離れなかった。
サーシェスを見ていると、脳裏に浮かぶ。
最愛の肉親を奪った悪の存在が大手を振って歩いている現実は、今も続いている。
戦の悦楽で血飛沫に狂う。
彼の奥底に秘める漆黒は、自分の父親を奪ったあのテロ組織と通じるものがあるのだろうか。
もし紫杏の予想があたっているとするならば、聖杯というものはよほど神条紫杏の想いを嘲笑いたいらしい。

「苦しみのたうちながら死んでしまえ、なんて言わないさ。私達の目的は勝つことだからな」

世界平和。理想を掲げ、夢を謳う魔王の顔は、未だ解けない。
否、解けてはならないのだ。



【C-8/神条紫杏の会社/1日目・午前】

【神条紫杏@パワプロクンポケット11】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]スーツ姿。
[道具]
[金銭状況]豊富。
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取る為に、最後まで生き残る。
1.情報収集。
2.サーシェスは泳がせておく。火の粉が此方に振りかかる時は即座に暗殺する。
[備考]

【アサシン(緋村剣心)@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-】
[状態]健康
[装備]スーツ姿
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針: 平和な時代を築く為にも聖杯を取る。
1.サーシェスの追跡。危機が迫ったら迷わず撤退する。
[備考]

【アリー・アル・サーシェス@機動戦士ガンダムOO】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]正装姿
[道具]カバン
[金銭状況]当面は困らない程の現金・クレジットカード
[思考・状況]
基本行動方針:戦争を楽しむ。
1.獲物を探す。
2.カチューシャのガキ(ゆり)の尾行をピロロに任せる。
[備考]
カチューシャの少女(ゆり)の名前は知りません。
現在アサシン(キルバーン&ピロロ)とは別行動中。
銃器など凶器の所持に関しては後続の書き手にお任せします。


BACK NEXT
010:正義の味方 投下順 012:過去と未来の邂逅
010:正義の味方 時系列順 013:白銀の凶鳥、飛翔せり

BACK 登場キャラ NEXT
000:黄金のホーリーグレイル-what a beautiful phantasm- 神条紫杏 050:それは終わりの円舞曲
アサシン(緋村剣心) 021:だから、戦うんだ
004:探し物は見つかりましたか? アリー・アル・サーシェス

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー