夢現聖杯儀典:re@ ウィキ

老兵は死なず、ただ戦うのみ

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 人は誰しも空に憧れる。
 程度の差はあれ、それは万人に共通する感情と言っても過言ではないだろう。
 未知への憧れとは至って普通の思考であり、故に古来より人は空を目指し探求を続けてきた。
 今日において人は航空機という叡智の結晶により空へ至ることはできたが……しかし多くの人が夢見るだろう「生身による空への到達」を成せた者は未だいない。
 人には翼がない以上、単独での飛行など夢のまた夢だ。そも常人では高高度の気圧等に耐えることは難しく、あらゆる意味で人がそのまま空に辿りつくことは不可能だと断じていい。

 そう、普通なら。蒼天の只中に人の影が浮かぶことなど考えられない。
 航空機内にいるでもなく、重力に従って落下するでもなく、悠然と飛行する姿はただしく常人のそれではない。
 しかしそこには人影が存在した。物理の縛りを感じさせない優雅さで、風を切り空を駆ける。
 それは翼持つ有翼人種でなければ、超常の力により飛行するでもない、人の背丈ほどもある鳥に騎乗する姿であったが、それが不可思議を意味しないのかと問われれば答えは否だ。

 それは男。それは老人。奇怪な紋様の浮かぶ巨鳥にして彼の宝具たる『蒼空の騎士鳥』ことサー・ピエールに跨り、どこまでも突き抜ける青空を滑空する。
 彼は確かに老人であったが、しかし老いの衰えは微塵も見えず、瞳は老練なる強固な意志に燃えていた。
 白銀の鎧を纏う姿はまさしく、中世の勇壮なる騎士に酷似して。
 名付けるとするならば。「空の騎士」という呼び名こそが彼に相応しいだろう。

「壮観なり。これが異界の大地(ヴァ―ス)か」

 白雲の混じる風を受け、老齢の鎧騎士は静かに呟いた。
 彼―――ガン・フォールは眼下に映る街並みに、率直な感嘆の言葉を口にする。

 乱立する建築物は大地を覆って憚らないが、それとて大地に根差す人々の繁栄の証と見るならば、やはり先ほど口にした「壮観なり」という感想こそが先に口を突いて出る。
 ここは彼や彼のマスターたるラカムが住んでいた世界とはまるで違う異界ではあるが、しかし果て無き大地(ヴァ―ス)であることに違いはなかった。

「景色に見惚れてばかりではいられぬが……しかし戦争など嘘のように静かであるな」

 視界に映る街並みは、彼の言う通り聖杯戦争とは無縁なほどに平和な様相を呈していた。
 彼はそれを一望できる。聖杯戦争となる会場の全て、余すことなく見通せる。

 高度およそ2000m。そこが今彼らの存在する場所であった。
 周囲には白雲がまばらに浮かび、眼下には冬木の街並みが広がっていた。無論のこと、通常のサーヴァントでは気配察知はおろか肉眼での目視も叶わない場所だ。
 それは空飛ぶガン・フォールも街に存在するサーヴァントを捕捉できないことを意味するが、しかし個人ではなく区画ごとに見れば、今のガン・フォールは冬木という会場全体を把握できる立場にある。

 そう、例えば。周囲を巻き込むレベルの戦闘が発生したなら、当然の帰結として今この高所にいるガン・フォールの目に入る。地上では見えないことでも、空の上であるなら話は別だ。
 彼が今行っているのは、つまりそういうことだ。騒ぎを起こすサーヴァントの捜索。危険であるなら先んじて警戒できるし、万が一善良なる者であったならば交渉するのもいいだろう。
 捜索の手段としては待ちの姿勢であることは否めないし、効率的かと問われれば微妙なところではあるが、しかしガン・フォールの持つ能力を遺憾なく発揮する方法であることに違いなかった。

「願わくば争いのない平穏な世こそが理想であるが、しかし既に闘争の幕は開かれておる。
 我輩無意味な闘争など望むところではない。できることならば無益な犠牲など払わず争いに幕引きたいと願っておるが、現実にそう上手く行くとも限らん」

 ガン・フォールは誰ともなしに言葉を紡ぐ。
 それは自分に言い聞かせる類のものではなく、この場に明確に存在する誰かに問いかけるようなもので。

「ゆえ、おぬしに問おう。
 この非情なる戦場にて、おぬしは何のために戦う」

「―――無論、遍く輝きを守護するために」

 そこにはいつの間にか、もう一つの影があって。
 空を往くガン・フォールを、不遜に見下ろしていた。






   ▼  ▼  ▼





 突き抜けるような蒼だけが在る大空にて、二騎の英霊が対峙していた。
 一人は騎士。鎧を纏い、相棒たる巨鳥に跨る空の騎士ガン・フォール 
 一人は白い男。学生服にも似た意匠の服を纏い、中空へと屹立する若い男。

 どちらも敵意は一切なく。
 しかし欠片も油断はしない。

「存外鋭いものだ。隠すつもりなど毛頭なかったが、こうも容易く位置を悟られるとはな」
「悟るも何もなかろう。いきなり人の後ろに陣取りおって、全く肝が冷えおるわ」

 ふむ、とわざとらしいまでに顎を撫でる若者に対し、ガン・フォールはどこまでも巌の姿勢を崩さない。
 それは積み重ねた人生という年月が成せる業か。空の騎士は突然の闖入者にも心は揺るがず、射抜くような視線で以て相対する。

 相手は明らかに奇妙な手合いである。この高高度まで飛行し、気配探知にすら引っ掛からず、それでいて背後を取るだけ取っておいて何をするわけでもない。
 端的に言って意図が全く読めない。相手の正体も目的も分からない以上、警戒するなというほうが難しいだろう。

「それで、おぬしは如何様な用件でここまで来た。
 ここに戦の火を灯すというならば我輩が相手になるが……どうにもそのような気配ではないようだな」
「まあ待て。そう結論を焦るな。
 見たところ、この私と同じくライダーのクラスで参じたサーヴァントと見て取れる。ならばそれもまた縁、言葉を交わすのも一興だろう」

 ライダーを名乗る白い男は不遜な物言いを変えることはない。それは外見から来る両者の印象を鑑みれば奇妙な光景で、ともすれば失敬な若造にも捉えられるだろう。
 しかし白い男からはそんな幼稚さを感じさせない、奇妙な貫禄のようなものが滲み出ている。少なくともこの場において、彼はガン・フォールとも肩を並べられる老練さを兼ね備えていた。

「とはいえ、根を詰めて語り合うにはこの場は適さんか。惜しいが、ここは手短に済ませるとしよう。
 まずは自己紹介といこう。私はライダーのサーヴァント。聖杯戦争のセオリーとして真名は明かせんが、クラス名が被るというなら《ペルクナス》とでも呼んでもらって構わん」
「ならば返礼しよう。我輩は《空の騎士》。 
 察しの通りライダーのサーヴァントよ。そちらと同じく真名は明かせんがな」

 互いに呼び名を交わし合う両者は、しかしその表情を対照的なものとしている。
 ペルクナスは不遜に笑い。
 空の騎士は威風を持った巌の顔だ。

「さて、では本題に入るとしようか。
 貴君は用件はなんだと言ったが、はっきり言ってしまえばサーヴァントとの対面そのものが目的だな。戦うにしろ、そうでないにしろ、まず直に会って話さねば何も分からん」

 白い男の言葉に、ガン・フォールはピクリと眉を動かす。
 未だ警戒こそ解いていないが、何かを感じるように言葉を待つ。

「ほう……ならばおぬしは、この老骨を前にどう致す?」
「話し合いの場を設けたい。無論、我らだけでなく各々のマスターを交えたものを、な。
 この聖杯戦争における私の行動方針は先に言った通りだ。そして、貴君の取らんとする行動もまた聞き届けた。
 ならば我らには交渉の余地がある。悪い話ではないと考えるが」

 どうだ? と尋ねる男に、ガン・フォールは暫しの沈黙の後、告げた。

「……それは願ってもない話であるな。しかし我がマスターに告げず、我輩の一存で決められる話でもない」
「当然だな。ならばこそ、貴君にはこれを渡しておこう」

 言葉も終わらないうちに、ペルクナスを名乗る男は懐からメモ帳を取り出すと、何やら書き込みその紙片をガン・フォールへと差し出した。

「私直通の連絡先だ。受け取るがいい」

 白い男はこれまた懐から取り出した携帯端末―――スマートフォンというものだったか―――を軽く振りながら言う。
 渡された紙片を見れば、いくらかの数字の羅列に加え異国の文字列が書き記されている。

「仮にこの提案を受けるのであれば、場所の指定はそちらに任せよう。
 時間は今日の18時頃を想定しているが、これもある程度ならそちらの都合に合わせるとしよう」
「……随分と譲歩するのだな」
「こちらから頼み込んでいるのだ。当然だろう」

 それは不遜な物言いとは裏腹の謙虚さだった。

「おぬしの提言、しかと受け取った。
 確約はできんが、改めて連絡させていただこう」

 目を伏せるガン・フォールに、白い男は同じように目だけで返事をして。

「……ふむ。手短に済ませるつもりだったが、少々長くなったか。まあいい。
 ではさらばだ空の騎士。良い返事を期待しているぞ」

 相も変らぬ笑みで男はそう言って―――次の瞬間には影すらも残さずその場から消え去った。

 瞬きする間もないとはこのことだろう。その一瞬で、既にガン・フォールがサーヴァントの気配を探知できる領域からすら離脱していた。
 取り残されたガン・フォールはしばし僅かな緊張を以て姿勢を正し―――数瞬の後、一気に脱力した。

「……全く因果なことよ。雷人間など、エネルだけで十分だというのに」

 騎士とその相棒の巨鳥は、共に大きく嘆息する。こちらに敵意を持たない相手だったとはいえ、一瞬の油断もできない問答だった。
 何故ならガン・フォールとピエールは、かつてそれと酷似した者を知っていたから。仇敵というにはあまりにも強大で、自分ひとりでは到底敵わない神の如き存在を目の当りにしていたから。

 ペルクナスが去る一瞬、ガン・フォールは確かに目撃した。姿が掻き消える瞬間に走った雷光を。
 それは確かにあのエネルと違わぬもので、しかしだからこそ。

「主の下へ戻るとしよう、ピエール。
 これが吉報となるかどうか、それは分からんがな」

 だからこそ、この戦場で再び雷電の魔人と相対するなど。
 それは本当に因果な話であると、ただそう思ったのだ。





   ▼  ▼  ▼





 新都と深山町を結ぶ大橋、その主塔の真上にその男は現れた。
 宙に走る電流のように、気付いた時には既にその姿はあった。

 ―――彼は。
 背の高い男だった。
 白い服の男だった。
 正義を成すと心に決めた男だった。

 少女の代わりに捜索を行う男だった。
 聖杯戦争もまだ序盤、無駄な労力は使うまいと決めていた。

 だが。

「なるほど、これは幸先がいい」

 だが、ここまで見事に気持ちのいいサーヴァントに巡り会えたとあらば。
 魔力の無駄だからと、遭遇を避けるわけにもいくまい。

「空の騎士。推察するにどこぞの統治者か、歴戦の勇士か、それとも両方か。
 いずれにせよあれは相当の傑物だ。マスターは未だ未知数だが、この早期に出会えたことを幸運に思うべきか」

 呟く言葉は心からの賛辞だ。
 彼は虚偽を述べない。
 言葉を誤魔化すことはあっても、決して、嘘を吐くことができない。
 それはこの身にある呪いの一つだ。かつて老齢に差し掛かろうと老いを見せなかった肉体と同じ、雷の鳳に与えられた祝福。呪詛。

 そして故に、彼には全てが分かる。
 彼は、あらゆる嘘を捨てたが故に。
 彼は、あらゆる虚偽が目に見える。

「……さて、この場において為すべきことは終えたか。
 早々にマスターの下へ戻らねばな」

 そうして彼は再びその身を雷電へと変換しようとして……ふと気づく。
 纏う雷電が心なしか微弱なものとなっていた。
 目に見えるほどの弱体でも、未だ戦闘に障りが出るレベルでもないが。
 それは空の騎士と出会う直前に比べ、明らかに目減りしている。

(予想より魔力の減りが早い……やはり万事が上手くいくとは限らんか)

 右手に滾る雷電を確認し、テスラは内心で独り呟く。
 既に理解していたことだが、サーヴァントとして括られる今、テスラの力は大幅な制限を受けている。
 この体たらく。全盛期はおろか、常に電力不足に悩まされていた学園都市時代にさえ遥かに及ばないだろう。

 雷を生み出す源は人の輝きである故に、その傍にいなければ彼は存在を保つことができない。
 かつてと違い、今はマスターの存在が基底現実へと存在を繋ぎとめる楔となっているため人の記憶に留まることはできるが。
 それでも、この身に課された呪いを完全に無くすことはできない。

 客観的な事実として、南条光が魔術師の類であったならば……いや、そうでなくとも多少の魔力を有していたならば、ここまでの弱体化はなかっただろう。
 彼女は普通の人間とは違う職業に就き、紛うことなき輝きではあったが、しかし決して魔術に身を置く者ではない。それはこの聖杯戦争では極大の枷となり、侍従たるテスラの身を縛る。

 そう、それは事実であったが。

「……この程度、何の支障もない。元より私が望んだこと、不満などあるものか」

 しかし彼は決してそれを「煩わしい束縛」だなどと考えない。
 何故なら、そんな何処にでもいる「普通」の、健やかなる在り方こそが、彼にとっては眩い光となるから。
 かの少女には多くを貰った。輝きを、楔を、信頼を。彼が何より尊ぶものを。
 故に、これ以上は甘えてもいられない。

 言葉もなく、白い服の彼は霊体と化し宙へと消える。
 闘争は始まったばかり。一瞬の油断さえ許されないこの状況で、彼は早急に主の下へと帰還する。
 白い男。ニコラ・テスラ。この現界においてペルクナスとなることを選んだただ一人。
 彼の戦いは、未だ終わらない。


【C-7/大橋/一日目 午前】

【ライダー(ニコラ・テスラ)@黄雷のガクトゥーン ~What a shining braves~】
[状態]霊体化。単独行動及びそれに伴うステータス・雷電魔人スキルのランク低下。雷電魔人スキルの使用による魔力消費。
[装備]なし
[道具]メモ帳、ペン、スマートフォン
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を破壊し、マスター(南条光)を元いた世界に帰す。
0.マスターの下へと帰還する。
1.マスターを守護する。
2.学園に向かい、そこで他のマスターの動きを待つ。
3.空の騎士のマスターの連絡を待つ。
[備考]
  • 一日目深夜にC-9全域を索敵していました。少なくとも一日目深夜の間にC-9にサーヴァントの気配を持った者はいませんでした。
  • 主従同士で会う約束をライダー(ガン・フォール)と交わしました。連絡先を渡しました。
  • 個人でスマホを持ってます。






   ▼  ▼  ▼






「で、これがそのメモってわけかい」
"ウム、確かに渡したぞマスターよ"

 街の中心地から少し外れた場所にある町工場、その外にある人気のない一画。
 ツナギを着た格好のラカムは、己がサーヴァントから事のあらましを聞き、「どうすっかなぁ」などとぼやきながら頭を掻いていた。

 始業前の僅かな時間。ガン・フォールからの念話を受けたラカムは、人一倍早く準備を済ませた後に野暮用があると言ってここまで抜け出していた。
 幸いなことに、職場の町工場でのラカムの立場は「下っ端ながら確かな技術と経験を持った頼りになる奴」である。
 そのおかげである種の人望めいたものも持ち合わせており、多少の勝手は苦笑いと共に受け入れられている。
 今回も、早いとこ戻ってこいよと言われたくらいで、特にお咎めというものはなかった。

「で、その、ペルクナスだったか?
 実際そいつは信用できそうなのか?」

 尋ねる声は真剣そのものだ。目下、彼が最も注意すべきはその事項であるために。
 ラカムとしても、情報収集のために他の主従と接触を図ることは視野に入れていた。単独で戦うことが難しいなら、共闘すらしようとも思っていた。
 故にこれは絶好の好機なのかもしれないが、しかし罠や策謀の可能性だって十分にある。いや、まずそちらを重点的に疑ってかからなければ馬鹿を見るのは自分たちになるだろう。
 だからこそ、信用というのは最優先で確認しなければならないし、そこを見誤ってはいけないのだ。

"……あくまで我輩から見た意見であるが、彼奴は悪人ではないと、そう思う"
「そうか、なら多少は安心ってとこかね」

 ふっと表情を和らげ、ラカムが呟く。
 こと他人の審美眼について、ラカムはこの騎士を全面的に信頼していた。
 取った年の功と言うべきか、統治者として長年携わってきた実績からか、ガン・フォールという騎士は人を見る目は確かなものだった。
 少なくとも自分のような若造が及ぶべきものじゃない。そうラカムは評価している。

"悪人ではないというだけで、小生意気な小僧ではあったがな"
「ま、そんくらい偉ぶってなけりゃ英雄にはなれないってことなのかもな。聞いた感じ、爺さんとはまるで違うタイプっぽいが」

 英雄にも色んな奴がいるんだな、と。そこで一旦言葉を切って。

「しっかしとんでもねえのがいたもんだね。舐めてたつもりはねえが、まさかこんな早いうちに向こうから接触してくるなんてな」

 当初、ラカムは高所におけるガン・フォールの監視を提案した時には、そうそう他のサーヴァントと出くわすことなどないと考えていた。
 キロ単位の距離を越えて人間大の存在を視認できるサーヴァントは限られているし、よしんば目撃されたとして高所を飛行するガン・フォールを狙撃できるか、ガン・フォールの元まで追い縋れる者など更に数が限られる。
 ましてそうした前提条件を満たした上で、更に高速機動に一日の長があるガン・フォールを捕捉できるサーヴァントなど、それこそあり得ない存在だとさえ考えて。
 今思えば、それは慢心としか形容できない思考だ。
 ガン・フォールの話を統合すると、ペルクナスが持つ能力はまさに破格の代物だろう。
 2000m先のサーヴァントを知覚し、更にその距離を一瞬で踏破する移動能力。しかもそれは、ライダーのクラスにとって最大の切り札である最速の機動力となる宝具を使用した形跡が一切ないままでのことだ。
 正直言えば荒唐無稽としか思えない。しかし、サーヴァントとは時としてそんな不条理を現実にする超存在なのだということを自分は知っている。

「下手打って敵対でもされたら敵わねえな。ここはひとつ、ご機嫌取りでもしとくべきか?」

 冗談めかした口調でラカムは言うが、実際のところ、ここでの決断は今後を左右する重要な選択だ。

 仮にペルクナスが敵に回ったら、それは最大級の危機となるだろう。無論こちらとてただでやられるつもりはないし、いつだとて勝ちに行く腹積もりではあるが、厳しい戦いになることは明白だ。
 だからこそ今は様子見で、事を荒立てないために会いに行くのが定石だと。
 そこまで考えて。

「……いや、違ぇな」

 それまでの思考を自ら否定する。
 いいや、これは違うのだと。

 要するに、自分は確かめたいのだ。ガン・フォールが悪人ではないと言った奴のことを。
 そいつを通して、自分もまたガン・フォールのことを信じてみたかったから。

「よし、決めたぜ爺さん。俺ァそいつらに会ってみる。後のことは野となれ山となれだ」
"ウム。おぬしが決めたとあらば文句は言うまい"

 ひとまずの方針は定まった。ならばあとは、それを実行に移すのみ。

 善は急げとばかりに、ラカムは懐から薄い携帯機器を取り出した。
 それはスマートフォンと呼ばれるもので、奇しくもペルクナスが持っていたものと寸分違わない代物だった。ラカムは異世界の出身であるが、この地で役割を宛がわれたように冬木の地に即した持ち物を多数与えられている。
 これはそのひとつ。今まで連絡する相手もいなかったから使う機会を与えられなかった代物だが、ついに使用を解禁する時が来たのだと手に取って。

「……ところでよ、これどう操作すんだ?」
"……我輩、青海の道具は門外漢である"
「だよなぁ……」

 ……結局、始業のベルが鳴るまでに、ペルクナスに連絡することは叶わなかった。

【C-9/街中の工場/一日目 午前】

【ラカム@グランブルー・ファンタジー】
[状態]健康、宝具『蒼空の騎士鳥』使用による軽度の魔力消費
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]工場勤務に必要な道具一式、スマートフォン、ライダー(ニコラ・テスラ)の連絡先が書かれたメモ
[金銭状況]工場勤務で纏まった金はある。
[思考・状況]
基本行動方針:この街を出て空を目指す。
1.脱出のための情報を集める。他の主従との接触も視野に入れる。
2.襲ってくるなら容赦はしない。
3.『ペルクナス』の主従と会ってみたい。とりあえず落ち着いた時間になったら連絡してみる。
[備考]
  • 装備のマスケット銃は拠点に置いてきています。

【ライダー(ガン・フォール)@ONE PIECE】
[状態]健康、霊体化
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターを護る。
1.マスターのために戦うのみ。
[備考]





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010:正義の味方 ライダー(ニコラ・テスラ) 029:願い潰しの銀幕
000:黄金のホーリーグレイル-what a beautiful phantasm- ラカム 033:空へと至る夢
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