夢現聖杯儀典:re@ ウィキ

反転フラグメント

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 ―――例題です。

 ここに、ひとりの少女がいました。
 自分の正義を胸に、ただそれを成さんとする少女です。
 少女の抱く祈りは、誰にも傷ついて欲しくないというただそれだけ。
 戦いを知らず、喪失を知らず、死を知らず。
 恐れを知って進もうとする少女です。
 不安を知って歩もうとする少女です。
 少女は、何も分からないままに、世界と戦おうとしていました。

 そこに。
 そこに、ひとつの転機が訪れました。
 予兆なく襲いくる災厄。耳を覆わんばかりの破壊が、彼女の前に刻まれました。
 下手人は明らかでした。それは、彼女が戦おうと決意した誰かです。

 ―――どうするべきですか?

 少女は、脇目も振らずに戦いに赴くべき?
 少女は、何も見なかったと目を塞ぐべき?
 少女は、決断を傍らの誰かに投げるべき?

 少女は―――





   ▼  ▼  ▼





 屋上から垣間見える校庭は、見るも無残な状態と成り果てていた。

 一言、凄惨。平らに整地されていたはずの赤茶けた大地は端から掘り返されたように隆起し、深い爪痕をこれでもかと見せつけている。今でこそ静寂さを取り戻してはいるが、一時は舞い上がった粉塵が視界を遮るほどに充満し、爆撃跡のような有り様と化していたものだ。
 爆撃された、という比喩があながち間違いでもないというところが、何とも頭の痛くなる話であった。

「これはまた厄介な」

 呟きが自然と漏れる。眼前の所業は恐らくアーチャーの仕業か、雷電感覚の及ばぬ遠距離からの一方的な狙撃・爆撃となると弓兵の専売特許だろうことに疑いはない。
 とはいえ、これほどの規模と精度となると、およそ凡百のアーチャーでは為し得まい。被害の及んだ地点は校庭の端から端まで。抉られていない箇所は寄り集めても人一人すら収まらないほどに少なく、その範囲からして威力のほどが知れるだろう。
 しかし隙なく校庭が抉り返されたということは、逆に言えばこの攻撃による破壊は校庭以外には一切広がっていないということの裏返しでもあった。規模と精度が度外れているというのはまさしくそれのことで、どちらか一方だけならば、成してみせる英霊などそれこそ山のようにいるだろう。
 だがそうではない。極大の破壊と極限の技量、その双方を極めて高いレベルで両立させているのがこのアーチャーなのだ。型としては恐らく標準的なアーチャーのそれを外れてはいないだろうが、純粋に弓の腕が凄まじい。
 つまりは"単純に強いアーチャー"。これがただステータスに物を言わせた猪武者や、奇を衒った多芸さを鼻にかける曲芸師の類であったならばこうまで警戒などしない。しかし一芸を己が限界まで鍛え上げた武人というのは、カタログスペック以上に恐ろしく、そして強いのだ。
 それは例えば、かの剣聖男谷のように―――

「……ふむ」

 思案に暮れていた男―――ライダー、ニコラ・テスラはそこで一旦思考を中断し、周囲に張り巡らせた雷電感覚を更に鋭敏化させた。
 この中学校舎を中心に半径1㎞に展開していた警戒網を三割程度にまで縮める。するとそれまで感知していた"反応"が二つ消え去り、残ったのは二つと靄の如く不確かな反応が複数。
 サーヴァントが二騎、準サーヴァント級の存在が複数。それが、この中学校校舎に蔓延る己以外の魔的存在だ。
 モラトリアム期間において街中にサーヴァントの気配がなかったことを不可思議に思っていたが、灯台下暗しとはこのことだろう。
 こうも校舎に気配が集中しているのは、恐らくは本戦が始まった故のマスターの護衛のためか。他ならぬテスラとて、本戦に際してこの場を拠点とするために学校へと赴いたのだから、今までここでサーヴァント同士が遭遇することは確かになかったのだろうなと一人述懐する。

「とはいえこれ以上あちらから仕掛けてくる様子もなし。急場となれば、やはり私が直接赴くしかあるまい。
 ……と、もう動いたか。随分と早いものだ」

 独りごちて、雷電感覚が昇降口付近の反応を捉える。それまで一つ場所に留まっていた気配が突如として動作、そのまま索敵網の範囲外へと退避していくのを確認し、テスラは薄っすらと笑みを浮かべた。
 学生服の男、負のサーヴァント。本来なら如何なサーヴァントとて数時間は動けない程度の痛手を与えたつもりであったが、なんともう動けるまでに回復したらしい。どのような手段を用いたかは知らないが、なるほどこれは頼もしいとテスラは一人得心したかのように頷いている。
 これで残ったのは一+α。それが、彼のマスターたる南条光が対処すべき標的の数であった。

 テスラのマスター、南条光が取った「平常通りに時を過ごす」という選択は、実のところそう的を外したものではない。
 騒ぎを起こしたアーチャーは一見無軌道かつ、勝ちを焦り突出した見境のない相手にも見える。しかしNPCに紛れマスターが通っている可能性の高い校舎そのものを爆撃するのではなく、あくまで誘いとして校庭を狙い撃ったあたり、今回の騒動は全てが考えつくされて行われたものであるということは容易に察することができた。
 ルーラーからの警告を恐れ、そのデメリットを十分に理解し、その上で苛烈な攻め手を取った好戦派。それがテスラの描くアーチャー陣営図だ。ならば用意した手管はこれだけに留まることはありえず、仮にテスラたちが迎撃のため突出した場合には相応の苦難が待ち構えていたことだろう。
 無論、それでも負けることはないとテスラは不遜に考えているが、それとマスターたる光が無事に生還できるかとはまた別問題である。全てのサーヴァントはマスターという枷を背負っている以上、どこかに必ず隙というものが生まれるのだ。
 それに加えて、学校内に感知した幾多ものサーヴァント。これを放置しては足元が崩されるということが十分にあり得るし、何よりこの学校そのものが魂喰いに代表される悪行の手にかかるということも予想できる。
 幸いにもアーチャー陣営は先に言った通り「頭の回る主従」である。ならば校舎の破壊や学内のNPCの無差別な殺害といった行為はペナルティを恐れ実行には移さないだろうし、可及的速やかに対処すべき問題とは言い難い。

 要するに、害があるかも分からない外敵より、まずは内に潜む不確定要素の特定をと。つまりはそういうことだ。
 ならばこそ、今目を向けるべきはこの校舎に残った一+αの不確定存在なのだが……

「かのアーチャーにしろ、潜む何者かにしろ、今ここで仕掛けてくるほど短慮ではないということか。
 ならばこれ以上、この場で私の存在を誇示し続ける意味もない」

 言うが早いかテスラは霊体と化し、その場から姿を消失させた。一人としてNPCのいない、立ち入ることもない"小競り合いにはうってつけの"屋上から忽然と。
 戦うならば時と場所を選ぶのだという、両者に共通した暗黙の了解のみを携えて。





   ▼  ▼  ▼





 回答です。

 少女は、目の前の危難に立ち向かうということをしませんでした。
 ただ守りたいと願った少女です。厄災の芽があればそれを摘むと誓った彼女です。
 目を逸らしてしまったと、我が身可愛さに臆病風に吹かれたのだと心を軋ませる彼女に。
 彼は、言いました。

「それでいい。少なくとも、今はまだ」

「よく聞け。そしてお前は理解する。恐れを知らぬことと、恐れを御することは何もかもが違うのだということを」

「戦場は高揚を生み、高揚は蛮勇を生む。その境を見極め、流されず、すべきことを正しく選択するのがお前の為すべきことならば」

「お前は、ただお前のままで在れ。かつて仰いだ"光"のように」


【C-2/学園/一日目 午後】

【ライダー(ニコラ・テスラ)@黄雷のガクトゥーン ~What a shining braves~】
[状態]健康、霊体化
[装備]なし
[道具]メモ帳、ペン、スマートフォン 、ルーザーから渡されたチャットのアドレス
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を破壊し、マスター(南条光)を元いた世界に帰す。
1.マスターを守護する。
2.空の騎士のマスターの連絡を待つ。
3.負のサーヴァント(球磨川禊)に微かな期待と程々の警戒。
4.負のサーヴァント(球磨川禊)のチャットルームに顔を出してみる。
[備考]
一日目深夜にC-9全域を索敵していました。少なくとも一日目深夜の間にC-9にサーヴァントの気配を持った者はいませんでした。
主従同士で会う約束をライダー(ガン・フォール)と交わしました。連絡先を渡しました。
個人でスマホを持ってます。機関技術のスキルにより礼装化してあります。



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