夢現聖杯儀典:re@ ウィキ

考察フラグメント

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肥大した後悔を糧に踏み込んだ世界は、誰かを犠牲にする摂理で溢れていた。
わかっている、本当はわかっている。
綺麗なままでは生きていけないことを。
戻りたいと願っても、元のままではいられないことを。
どれだけ強く望もうが、絶対に叶わない。

「……うし、最初と比べたら大分見れる顔になってきたな。
 無理に笑えとは言わねぇけど、ずっと泣き顔よかはいい」
「うっさい! 仕方ないじゃん、こんなことに巻き込まれて笑顔でなんていれないよ!」

それでも、と。
諦めずに立ち向かう勇気は、果たして蛮勇なのか。
彼らは未だ、世界の真実を知らない。
無知なる生贄達は、何も知らない。

「それに、今更どんな顔をしたらいいか……わからないし」

幾分、立ち直りはしたものの、未央の顔に含まれる陰りは払拭できていない。
現状は全く変わっていない。
未来へのヴィジョンは依然として不透明なままだ。
アイドルを辞めたくない。
その想いだけは確かだが、その為にはどうしたらいいのか。

「今までどおりでいたらいいさ。気負うことなんてねぇ。
 戦争とかそういうのは俺に全部背負わせとけ」
「……でも」
「でも、じゃねえ。俺からすると、マスターが危険な目にあう方が辛いしよ」

今はまだ、明確に定まった方針は見当たらない。
ただ、生き残るのに精一杯。
一歩先である戦うという選択肢には、未央は至っていなかった。
もっとも、元の世界ではそういった血生臭い争いとは無縁だった身からすると、無理もない。

「心配すんな。今のマスターに必要なのは時間だ。一週間あるし、一日や二日どうってことねぇ」

その部分をカバーするのがサーヴァントの役目である。
加藤鳴海の全身全霊を以って、未央を護り抜く。

「ただ、できたらでいい。いつかでいいんだ、心の底から――――笑ってくれ。こんな状況で無理かもしれねぇけどよ。
 お代はそれだけで十分ってな。なんて、かっこつけすぎたか?」

その果てで彼女が本来の笑顔を浮かべて、ありがとうなんて言ってくれたら。
鳴海はそれだけで満足だった。
特別な恩賞なんて望むべくものではないし、彼は自分の願いを奇跡へと頼らない。
自分の力で叶えてこその願い事だ。
何も。そう、しろがねになっても、彼の本質は何も変わってはいない。

「……善処、する」
「おう」

会話が途切れ、沈黙が続く。
しかし、その沈黙は前とは違い、どこか暖かな空気でもあった。
チクタクと時計の針が進む音だけが耳へと響いてくる。

「なぁ。話は変わるんだけどよ」

数秒、数分。
幾らかの時間がたった後、ふと鳴海が疑問を口にした。

「何か、違和感がないか? お前の家族とかこの世界――何でもいい。どんな些細な事でも笑わねぇからさ」
「違和感って言われても、私には全くわからないんだけど。
 強いて言うなら、しまむーやしぶりんがいないことかな?」
「そうか。いや、気のせいならいいんだ。気に留める程度でいい、深い意味はねぇ。
 ただ、何となく……この世界はふわふわしててどうも違和感が拭えなくてな。
 まるで夢の中にいるみたいだぜ」

この世界には秘密がある。されど、確固たる証拠はない。
鳴海が言い出したことはいわゆる妄言の類から出ないものだ。

「それって明晰夢かな? 私にとってはこの状況自体がもう夢みたいなことだけどね」
「マスターからするとそうなるわな。ま、何にしても情報が足りねぇんだ。
 違和感を感じるだけじゃあ、どうもならん」

けれど。どうにも、鳴海には自信があった。
視界の端で踊る道化師。お誂え向きに用意された冬木市。
聖杯戦争をするにあたって、全てが整いすぎている。
この偽りの世界は、何もかもが予定調和の上で動いているようにしか見えないのだ。
ならば、聖杯も同じく――底のある奇跡であるかもしれない。
これでまた、鳴海この聖杯戦争がますます信用できなくなった。
サーヴァントを全て打倒するだけでは足りない。
この聖杯戦争の裏側にあるだろう真実をこちらへと引きずり落とさなければ、自分達はずっと踊らされたままだ。
彼女が精一杯振り絞った願い事を、護り切る。例え、悪魔に成り果ててでも、と。
絶対の意思を再度固める鳴海を、未央はまだ捉えきれていない。
本田未央はまだ、何も知らない。
無知で矮小な盲目の生贄の範疇を超えられない。






めんどくさいことになった。
音無結弦は吐きかけたため息を無理矢理に飲み込んで、現在の自分が置かれている状況を整理する。
午後の授業を受け、放課後になってからの行動は迅速だった。
校庭の爆撃により、部活も生徒会もなくなり下校を推奨され、音無もそれに習い校門を出る。
授業を中断して、下校を促す案もあったようだが、下手に生徒達を動かすよりもひとまずは平常通りを貫くことを優先させたらしい。
校庭が突然爆発しましたなんて超常現象、どうにもしがたいという教師の立場からしてもわからないこともない。
現状維持。この世界は動かない。
まるで、かつて音無がいた死後の世界の《NPC》のようだ。
彼らは思考があれど、意志は通っていない。
淡々とした日常、裏に潜む非日常。
それらに疑問を抱けど、真理の到達には至らない。
もっとも、考察した所で答え合わせがされないのだから、意味なんてないのだけれど。

(明日の休校連絡はなかったし、これは学校が壊れでもしないと駄目かな。ったく、生徒会長の役柄はもうしばらくは続きそうだ。
 その役柄を活かせる内はとことん演じ切ってやるつもりではあるけどさ)

今はそんなことはどうだっていい。
考えても仕方がないことを考えてしまうのは自分の悪い癖だ。
今の自分は聖杯戦争のマスターである。
死後の世界で共に戦った野田のように一つの願いにとことん殉じればいいだけだ。

(ゆりからは返信がないし、ネギ先生は体調不良で早退……とは伝えられたが。
 全く、せっかく集めた情報もパーだし、勇んで踏み出した結果は何も得られちゃいねぇ)

ゆりに送ったメールは返信がなく、何か厄介事にでも巻き込まれているのだろうかと懸想するが、考えても仕方がない。
なので、今はもとよりの目的である本田未央の暗殺にでも向かうとしよう。
武器こそないが、あやめの能力で自分の気配は完全に掻き消せる。
サーヴァントに気づかれることなく、未央を殺すことができるのだ。

(ならんば、手元にある情報で戦うしかない。さっさと本田未央を策敵して殺してしまえばよかった。
 下手に動き回っていないから場所を特定する必要もない。
 それに、立ち直ってアクティブになってからだと、行動が読めないからな)

それも、家に引きこもっているなら人目につかず楽に殺せる。
お誂え向きに、教師からも未央の住所を教えてもらい、決行するには絶好の機会であった。

「音無さん、どうかしましたか?」
「いや、何でもない。前川の方こそ、そんなに畏まらなくていい。
 年上といえど、同じ学生だからさ」

ところが、何事にも例外というものが存在する。
イレギュラー。NPCといえども、彼らは人間であり、思考能力は持っている。
今は、暗殺を行うにあたっては目の前にいる少女をどうにかしなければならない。
前川みく。アイドル候補生でもある彼女は同期である未央のことを心配して、毎日彼女の自宅へと立ち寄るらしい。
加えて、同じクラスの委員長なのだから尚更気にかかっているらしい。
今日もその例に漏れずに訪問しているのだから、真面目な少女なのだろう。
それは普段ならば褒めるべき行いではあるが、今からすることを考えると、とてもじゃないが邪魔でしかない。
どうするべきか。毎日来ているぐらいだから彼女を帰そうとしてもそれは無理なことだろう。
いっそのこと、みく諸共殺してしまえばいいかとも策謀するも、即座にその案を破棄する。

(もしも、前川がマスターだったら返り討ちにあう可能性だってある。
 本田とは違って、前川については何も知らないんだ。一つでも間違えたら、死ぬのは俺の方だ)
(ますたー……)
(大丈夫だ、あやめ。無茶はしても無謀はしない)

戦いは何が起こるかわからない。
不確定要素を楽観で押し潰せる程、音無には力も余裕もない。
自分達は最後の生き残りを目指すと言っておきながら無力だ。
なればこそ、此度は引くべきだ。
あくまでも、教師の要請で様子を見に来た生徒会長、音無結弦で通すのが賢い選択だろう。

(――楔を打ち込めるなら、それでいい)

もっとも、好機があればその限りではないけれど。
そう、思いながら、音無はインターホンをゆっくりと押した。



【B-2/本田未央の家/1日目 午後】

【本田未央@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ)】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]なし
[道具]なし
[金銭状況]イマドキの女子高校生が自由に使える程度。
[思考・状況]
基本行動方針:疲れたし、もう笑えない。けれど、アイドルはやめたくない。
1.いつか、心の底から笑えるようになりたい。
2.加藤鳴海に対して僅かながらの信頼。
[備考]
前川みくと同じクラスです。
前川みくと同じ事務所に所属しています、デビューはまだしていません。


【しろがね(加藤鳴海)@からくりサーカス】
[状態]健康
[装備]拳法着
[道具]なし。
[思考・状況]
基本行動方針:本田未央の笑顔を取り戻す。
1.全てのサーヴァントを打倒する。しかしマスターは決して殺さない。この聖杯戦争の裏側を突き止める。
2.本田未央の傍にいる。
[備考]
ネギ・スプリングフィールド及びそのサーヴァント(金木研)を確認しました。ネギのことを初等部の生徒だと思っています。

【音無結弦@Angel Beats!】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]学生服
[道具]鞄(勉強道具一式及び生徒会用資料)、メモ帳(本田未央及び仲村ゆりについて記載)
[金銭状況]一人暮らしができる程度。自由な金はあまりない。
[思考・状況]
基本行動方針:あやめと二人で聖杯を手に入れる。
1.生徒会長としての役目を全うしつつ、学校内や周辺にマスターがいないか探る。平行してあやめを『紹介』する人間も探す。
2.戦闘を行っていたサーヴァントのマスターを特定できたならば暗殺を検討する。
3.本田未央の自宅に来たはいいものの、前川みくが邪魔だ。
4.ゆりと接触したい。
5.あやめと親交を深めたい。
[備考]
高校では生徒会長の役職に就いています。
B-4にあるアパートに一人暮らし。
コンビニ店員等複数人にあやめを『紹介』しました。これで当座は凌げますが、具体的にどの程度保つかは後続の書き手に任せます。
ネギ・スプリングフィールド、本田未央を聖杯戦争関係者だと確信しました。サーヴァントの情報も聞いています。

【アサシン(あやめ)@missing】
[状態]霊体化
[装備]臙脂色の服
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:ますたー(音無)に従う。
1.ますたーに全てを捧げる。
[備考]
音無に絵本を買ってもらいました。今は家に置いています。

【前川みく@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ)】
[状態]健康、イライラちょっと減少、前川さん
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]学生服、ネコミミ(しまってある)
[金銭状況]普通。
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取る。
1.人を殺すことに躊躇。
[備考]
本田未央と同じクラスです。学級委員長です。
本田未央と同じ事務所に所属しています、デビューはまだしていません。
事務所の女子寮に住んでいます。他のアイドルもいますが、詳細は後続の書き手に任せます。

【ルーザー(球磨川禊)@めだかボックス】
[状態]『まあ、特筆することはないかな』
[装備]『いつもの学生服だよ』
[道具]『螺子がたくさんあるよ、お望みとあらば裸エプロンも取り出せるよ!』
[思考・状況]
基本行動方針:『聖杯、ゲットだぜ!』
0.『たまには僕だって空気を読んで何もしゃべらない時があるさ』
1.『みくにゃちゃんはいじりがいがある。じっくりねっとり過負荷らしく仲良くしよう』
2.『いい加減みくにゃちゃんを裸エプロンにしてもいい頃合いだと思うんだけど、そこんところどうなってるのかな』
3.『道化師(ジョーカー)はみんな僕の友達―――だと思ってたんだけどね』
4.『ぬるい友情を深めようぜ、サーヴァントもマスターも関係なくさ。その為にも色々とちょっかいをかけないとね』
[備考]
瑞鶴、鈴音、クレア、テスラへとチャットルームの誘いをかけました。
帝人と加蓮が使っていた場所です。



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しろがね(加藤鳴海)
029:願い潰しの銀幕 音無結弦
アサシン(あやめ)
前川みく
034:ワイルドルーザー/ブレイブウィナー ルーザー(球磨川禊)

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