ラノロワ・オルタレイション @ ウィキ
ART OF FIGHTING――(作法)
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ART OF FIGHTING――(作法) ◆EchanS1zhg
【0】
――オレたちゃこれで飯食ってんだ! 負けたら明日はねえんだよ!
【1】
星をちりばめた深い藍色の空。その中央に薄い雲をショールのようにまとった白い月が浮かんでいた。
そこから視点を地上へと下ろすと、月光を受け蒼く染まった風景の中を横切ってゆく一台のバイクの姿が見える。
サイドカーを持ったそれは、夜の市街へと高いエンジンの音を響かせ、デコボコの道の上をガタゴトと揺れながら走っている。
そこから視点を地上へと下ろすと、月光を受け蒼く染まった風景の中を横切ってゆく一台のバイクの姿が見える。
サイドカーを持ったそれは、夜の市街へと高いエンジンの音を響かせ、デコボコの道の上をガタゴトと揺れながら走っている。
大きくて頑丈そうなバイクにまたがるのは水色の襟が目立つセーラー服を着た綺麗な顔の少女で、
サイドカーの中には黒いスーツを着こなす妙齢の、そしてこちらも美しい女性が身を収めていた。
少女と女性の二人は、ともにその艶やかな黒髪を後ろで一つにまとめ、それを流れる風にそのままにしている。
サイドカーの中には黒いスーツを着こなす妙齢の、そしてこちらも美しい女性が身を収めていた。
少女と女性の二人は、ともにその艶やかな黒髪を後ろで一つにまとめ、それを流れる風にそのままにしている。
東から西へ。しんと静まり返る夜の中を一台のバイクはただ走って行く。
【2】
目の前に現れ、そして流れ消えゆく風景を朝倉涼子は見る。
罅割れたアスファルトの道路。頑丈そうなコンクリートの塀。漆喰が塗られた白い壁。粘土を焼いて作られた固い瓦。
金属とプラスチックで組上げられた街灯。立ち並び、緑の葉を揺らす街路樹達。その足元に見える赤い土。風に流される黄色い砂。
窒素を主成分とし人が生命活動を行うに必要な酸素を含む空気。その中に漂う微粒子。嗅覚でのみ感知しうる、匂い。
照らし跳ね返り視覚に情報を送る光。そしてその視覚では捉えられない、電波や電磁波といった波。
金属とプラスチックで組上げられた街灯。立ち並び、緑の葉を揺らす街路樹達。その足元に見える赤い土。風に流される黄色い砂。
窒素を主成分とし人が生命活動を行うに必要な酸素を含む空気。その中に漂う微粒子。嗅覚でのみ感知しうる、匂い。
照らし跳ね返り視覚に情報を送る光。そしてその視覚では捉えられない、電波や電磁波といった波。
有機物も無機物も、光も波も、解析され最終的には情報というものに置き換えられ、彼女には理解される。
大宇宙の彼方に存在する実態を持たない情報生命群である、情報統合思念体。
その中より切り出され、地球へと送り込まれた朝倉涼子は人の形をして人として振舞うが、実態はそこから大きく異なる。
見えている世界も、感じ方も、解釈の仕方も、考え方も、何もかもが人間とは違う。
大宇宙の彼方に存在する実態を持たない情報生命群である、情報統合思念体。
その中より切り出され、地球へと送り込まれた朝倉涼子は人の形をして人として振舞うが、実態はそこから大きく異なる。
見えている世界も、感じ方も、解釈の仕方も、考え方も、何もかもが人間とは違う。
彼女は、宇宙人なのだ。
「復元能力に関しては、概ね問題なしか……」
びゅうと耳を叩く風切り音の中で朝倉涼子は鼻の頭をこすり小さく呟いた。
その高く通った鼻に先程受けた手痛い一撃の痕跡はなく、綺麗に最初の状態へと元通りに直されている。
これは、情報の改竄、再構成を活動の基本とする彼女達宇宙人にとっては通常の振る舞いだ。
身体の物理的な損傷は”治す”ではなく、”直す”ものなのである。
その高く通った鼻に先程受けた手痛い一撃の痕跡はなく、綺麗に最初の状態へと元通りに直されている。
これは、情報の改竄、再構成を活動の基本とする彼女達宇宙人にとっては通常の振る舞いだ。
身体の物理的な損傷は”治す”ではなく、”直す”ものなのである。
「けど……」
感知の仕方が違うゆえにそうすること自体に意味はないが、人間らしい振る舞いとして彼女は目を凝らすように細める。
そのジェスチャーは、視界が悪いということを表している。宇宙人の感覚に合わせれば、情報が読み取りづらいという意味だ。
そのジェスチャーは、視界が悪いということを表している。宇宙人の感覚に合わせれば、情報が読み取りづらいという意味だ。
「有機生命体の近眼って状態はこういった感覚のことを言うのかしら?」
有機体の眼によって受け取り、脳で知覚する光学的な意味での目の前の風景になんら違和感は覚えない。
しかし情報生命体としての感知能力で見るそこには大きな変化があり、随分と”ぼやけた”ものとしか感じられない。
開けた場所に出て初めて気付いたが、どうにも10メートルほど離れるとそこにあるモノの構成情報が読み取れなくなってしまう。
しかし情報生命体としての感知能力で見るそこには大きな変化があり、随分と”ぼやけた”ものとしか感じられない。
開けた場所に出て初めて気付いたが、どうにも10メートルほど離れるとそこにあるモノの構成情報が読み取れなくなってしまう。
「私も長門さんみたいに眼鏡をかけていればよかったかも」
と、朝倉涼子は軽口を叩き、少しだけ自嘲気味な笑みを浮かべた。
もっとも、わざわざ眼鏡を構成してかけるぐらいなら、直接有機体の情報を書き換えたほうが早いし効率的だ。
そしてそのフィジカルサポートは現在十分に機能している。運動能力は人類の範疇を超え、負傷の回復にも特に問題はない。
もっとも、わざわざ眼鏡を構成してかけるぐらいなら、直接有機体の情報を書き換えたほうが早いし効率的だ。
そしてそのフィジカルサポートは現在十分に機能している。運動能力は人類の範疇を超え、負傷の回復にも特に問題はない。
問題があると言えるのは、近眼と例えた情報感知能力の範囲が大きく狭まっていること。
そして、この世界に来てより早々に確認した情報改変能力が手の届くより少しの範囲でしか発揮できないということ。
以上の2つの問題と、体内やその表面上で行われる事柄に関しては特に問題がないこと合わせて考えると――
そして、この世界に来てより早々に確認した情報改変能力が手の届くより少しの範囲でしか発揮できないということ。
以上の2つの問題と、体内やその表面上で行われる事柄に関しては特に問題がないこと合わせて考えると――
「(全ては”距離”なのね)」
――彼女の能力を制限しているのは、外圧でも内部干渉でもなく、距離ということになる。
推測するならば、この世界の端という空間とやらがそもそも彼女達が扱う種類の波を伝えづらいのかもしれない。
水の中では空気中より運動エネルギーが伝わりにくい。そういう風に解釈すれば解りやすいだろう。
推測するならば、この世界の端という空間とやらがそもそも彼女達が扱う種類の波を伝えづらいのかもしれない。
水の中では空気中より運動エネルギーが伝わりにくい。そういう風に解釈すれば解りやすいだろう。
「(”電波”が届かない……かぁ。原始生命になった気分)」
能力を制限されている状況ではあるが、それ自体は単体のユニットとして行動している分にはさして問題はない。
問題となるのは、彼女の帰属する情報統合思念体との通信が全く行えないということだ。
技術や技能などの新しい情報のダウンロードが行えないのはともかくとして、こちらから報告を送ることすらできないのは大きな問題だ。
果たして最終的に涼宮ハルヒを確保したとして、この事件そのものを解決する能力が自分に存在するのか?
問題となるのは、彼女の帰属する情報統合思念体との通信が全く行えないということだ。
技術や技能などの新しい情報のダウンロードが行えないのはともかくとして、こちらから報告を送ることすらできないのは大きな問題だ。
果たして最終的に涼宮ハルヒを確保したとして、この事件そのものを解決する能力が自分に存在するのか?
「(長門さんはどうしているかしら?)」
朝倉涼子は大元を同じとする宇宙人の仲間である長門有希のことについて考える。
互いに、本来の目的は涼宮ハルヒとその周辺事情の観測。そして、そこから未知の進化の可能性を発見、抽出することであった。
となればこの場において本来の仕事仲間として彼女とはうまく連携できるだろうと朝倉涼子は考える。
以前は些細な方法論の食い違いから衝突することとなったが、今回においてはそれも考えられないだろう。
互いに、本来の目的は涼宮ハルヒとその周辺事情の観測。そして、そこから未知の進化の可能性を発見、抽出することであった。
となればこの場において本来の仕事仲間として彼女とはうまく連携できるだろうと朝倉涼子は考える。
以前は些細な方法論の食い違いから衝突することとなったが、今回においてはそれも考えられないだろう。
加えて、朝倉涼子は他のSOS団団員。つまりは、涼宮ハルヒの周辺人物についても考えてみる。
まずはキョンと呼ばれるある意味において最も重要な、鍵と呼ばれる人物。
彼が死ぬと涼宮ハルヒがいかなる反応を見せるのかというのは依然として興味深くはあるが、今はそんな場合ではないだろう。
あずかり知らぬところで死ぬのはかまわないとしても積極的に狙う理由はない。
そも、彼は長門有希のお気に入りでもあるのだ。ここでわざわざ彼女と敵対する理由を作ることもない。
彼が死ぬと涼宮ハルヒがいかなる反応を見せるのかというのは依然として興味深くはあるが、今はそんな場合ではないだろう。
あずかり知らぬところで死ぬのはかまわないとしても積極的に狙う理由はない。
そも、彼は長門有希のお気に入りでもあるのだ。ここでわざわざ彼女と敵対する理由を作ることもない。
そして、涼宮ハルヒを沈静する為の存在である超能力者と、別時間平面――平たく言えば未来より来た使者。
古泉一樹。朝比奈みくる。と名乗る彼と彼女に関してはどう扱うべきか?
SOS団という特別な枠組みの中にいる人間ではあるが、超能力者としても未来人としても他に代替が利く為その価値は低い。
また、その枠が空くというならば新しく情報統合思念体の側から新しい人員を滑り込ませられる可能性もあるだろう。
古泉一樹。朝比奈みくる。と名乗る彼と彼女に関してはどう扱うべきか?
SOS団という特別な枠組みの中にいる人間ではあるが、超能力者としても未来人としても他に代替が利く為その価値は低い。
また、その枠が空くというならば新しく情報統合思念体の側から新しい人員を滑り込ませられる可能性もあるだろう。
「(となれば、あの2人はここで消えてもらうのがいいかもしれないわね)」
朝倉涼子は再び笑みを浮かべる。
元々、柔和で人当たりのよい表情をデフォルトとするが、しかしこの場で気付いてからは妙に興奮している節があった。
その有機体で構成された身体自体は通常の人間と大体において同じだ。
しかし彼女は宇宙人である。自らをそれと見せかける為に人間らしくは振舞うが、本来は0と1の羅列でしか思考しない存在のはず。
元々、柔和で人当たりのよい表情をデフォルトとするが、しかしこの場で気付いてからは妙に興奮している節があった。
その有機体で構成された身体自体は通常の人間と大体において同じだ。
しかし彼女は宇宙人である。自らをそれと見せかける為に人間らしくは振舞うが、本来は0と1の羅列でしか思考しない存在のはず。
「(”運”が向いてきた……か。それは、つまり……あぁ、なるほど)」
運とは、知覚範囲と予測能力に著しく劣る原始的なレベルの知性体が持つ、知覚範囲外の事象を自身の因果より切り離し
その境界面上で受け取る結果を指して表現する、あまりにも大雑把で正確さを期待できない概念のことである。
とすれば、何故計算の権化とも呼べる彼女がその概念を自身の中で使用したかというと、つまりそれは――
その境界面上で受け取る結果を指して表現する、あまりにも大雑把で正確さを期待できない概念のことである。
とすれば、何故計算の権化とも呼べる彼女がその概念を自身の中で使用したかというと、つまりそれは――
「(私は今、”人間”に近い状態に陥っている)」
――そういうことに他ならない。
元々、ヒューマノイドインターフェースとして人間としての思考形態のサンプルは持ち合わせている。
そして現在、彼女を宇宙人足らしめている超知覚能力は大幅にその範囲を減じている。未だ人間以上ではあるが、以前とは比べくもない。
つまり、彼女の中で感覚による部分の比率が大きく”人間”の側に寄っているということであった。
元々、ヒューマノイドインターフェースとして人間としての思考形態のサンプルは持ち合わせている。
そして現在、彼女を宇宙人足らしめている超知覚能力は大幅にその範囲を減じている。未だ人間以上ではあるが、以前とは比べくもない。
つまり、彼女の中で感覚による部分の比率が大きく”人間”の側に寄っているということであった。
「(どうりで”興奮”しているわけだわ。
知覚範囲が狭まったことによって”不安”が生じ、その反射として有機体の脳が興奮を強いている)」
知覚範囲が狭まったことによって”不安”が生じ、その反射として有機体の脳が興奮を強いている)」
朝倉涼子はまた、そして今までより強く笑みを浮かべる。
人間のコミニティの中に紛れ込み、応対すること情報を更新し彼女は僅かながら生み出された時よりもその個性を強くしている。
それは、今現在のこの状況の中で大きく加速していくだろうと彼女自身は予感した。
人間のコミニティの中に紛れ込み、応対すること情報を更新し彼女は僅かながら生み出された時よりもその個性を強くしている。
それは、今現在のこの状況の中で大きく加速していくだろうと彼女自身は予感した。
そう。それは予感。
宇宙人としての知覚を減じられ、情報統合思念体よりのキャリプレーションを受けられない今、彼女は一切の正解を得られない。
与えられた、人間としての感覚と思考形態を基準とし、今までより遥かに不明瞭な時間を過ごして行かねばならないのだ。
宇宙人としての知覚を減じられ、情報統合思念体よりのキャリプレーションを受けられない今、彼女は一切の正解を得られない。
与えられた、人間としての感覚と思考形態を基準とし、今までより遥かに不明瞭な時間を過ごして行かねばならないのだ。
「(こういう時って、人間は”おもしろくなってきた”って言うのかしら?)」
その胸の中に湧き上がる興奮が、期待なのか不安なのかそれともまた別のものなのか、それを今の彼女は断言できない。
しかしその衝動に今の彼女は面白さを感じていた。自身が唯一無二のユニークな存在となるのもまた新しい価値の発見なのだから。
しかしその衝動に今の彼女は面白さを感じていた。自身が唯一無二のユニークな存在となるのもまた新しい価値の発見なのだから。
彼女は、人間になるのかもしれない。
【3】
ガタゴトと揺れるサイドカーの中で、師匠と人に名乗る彼女は考える。
「(これは、今まで見てきた銃の中でもかなりのものですね)」
先程、動く標的を相手に”試射”を終えたばかりの短機関銃を抱え、彼女は感心したと小さく息を吐いた。
フレームや機構、弾薬などは予め確かめていたので、どの程度の性能があるのかというのは予測していたが、結果はそれ以上であった。
放浪の旅人である彼女は基本的に同じ銃を使い続け、性能のいかんに関わらずそれを交換したりはしない。
何故ならば、己の命を守る為に備えてある銃に最も必要とされるのは信頼性だからだ。故に、旅人は皆、自分に馴染んだ愛銃を持っている。
しかしそれでなお、この初めて手にする短機関銃は信頼がおけると彼女は判断した。それだけの性能がその銃にはあったのだ。
フレームや機構、弾薬などは予め確かめていたので、どの程度の性能があるのかというのは予測していたが、結果はそれ以上であった。
放浪の旅人である彼女は基本的に同じ銃を使い続け、性能のいかんに関わらずそれを交換したりはしない。
何故ならば、己の命を守る為に備えてある銃に最も必要とされるのは信頼性だからだ。故に、旅人は皆、自分に馴染んだ愛銃を持っている。
しかしそれでなお、この初めて手にする短機関銃は信頼がおけると彼女は判断した。それだけの性能がその銃にはあったのだ。
「(もっとも、元よりの銃がなければあるものを使うのが当たり前ですが)」
元々所持していた武器の類は気付いたら手元にはなかった。
その理由はある程度察することができるが、ともかくとして彼女の元には配りなおされた新しい武器が届いた。
狐面の男はその武器の内容に関して運試しだと言ってたが、今回に関しては幸運があったと断ずることができるだろう。
脇に置いたデイパックの中には弾丸の詰まった弾倉も十分に用意されており、たかだか60人程度を殺すにあたっては十分以上であった。
その理由はある程度察することができるが、ともかくとして彼女の元には配りなおされた新しい武器が届いた。
狐面の男はその武器の内容に関して運試しだと言ってたが、今回に関しては幸運があったと断ずることができるだろう。
脇に置いたデイパックの中には弾丸の詰まった弾倉も十分に用意されており、たかだか60人程度を殺すにあたっては十分以上であった。
「(こちらも随分とよいものですね。あまり趣味というわけではありませんが)」
短機関銃を脇に置き、彼女は一本のナイフを目の前にかざし、また感心する。
細身ではあるが、繰り出された刀と打ち合わせたにも関わらず全く歪みが生じている様子もなく、随分と頑丈なのだとわかる。
本来の持ち主であるらしい”両儀式”というのが鍛冶師なのかどうかは知らないが、その世界ではさぞや有名なのであろう。
細身ではあるが、繰り出された刀と打ち合わせたにも関わらず全く歪みが生じている様子もなく、随分と頑丈なのだとわかる。
本来の持ち主であるらしい”両儀式”というのが鍛冶師なのかどうかは知らないが、その世界ではさぞや有名なのであろう。
「(さて、これとこれは問題ないとして……)」
ナイフをケースに仕舞い、彼女は先程手に入れた3つ目の武器の方へと視線を傾ける。
なにが楽しいのかにやにやとした笑みを浮かべながらバイクを運転している少女。つまり、朝倉涼子と名乗った彼女のことである。
見た目は年若い少女にすぎないが、実際には常識の範疇を超えた運動能力と不可思議な力を振るう怪物である。
なにが楽しいのかにやにやとした笑みを浮かべながらバイクを運転している少女。つまり、朝倉涼子と名乗った彼女のことである。
見た目は年若い少女にすぎないが、実際には常識の範疇を超えた運動能力と不可思議な力を振るう怪物である。
「(パワーに関しては文句はありませんが、いささか単細胞のきらいがありますね)」
あえて自分を発見させてから撃ったにせよ、それを感知し実際に銃弾を避けてみせたのはまさに動物並の反射速度であった。
次の掃射を避けた際の運動能力も、また見事だと感心せざるを得ない。
この時点では逆襲による敗退も頭をよぎったのだが、しかしそれは彼女の次の行動を見て幻と消えてしまう。
次の掃射を避けた際の運動能力も、また見事だと感心せざるを得ない。
この時点では逆襲による敗退も頭をよぎったのだが、しかしそれは彼女の次の行動を見て幻と消えてしまう。
「(戦闘の経験はないと見るべきでしょうか)」
力任せに振り回す刀。そこにはいかなる術も見られず、子供が棒を振り回しているのと大差ない。となれば回避も容易かった。
続けざまの蹴りや防御にしてもその場しのぎで、次に繋がる姿勢や、展開を考慮してるとは見て取れなかった。
そして最終的に拳の一撃をもらうことになったが、そこでこちらがその威力を殺していたことにも気付く様子がなかった。
となれば、所謂喧嘩や格闘といったものに関してはド素人だと判断を下さざるを得ない。
続けざまの蹴りや防御にしてもその場しのぎで、次に繋がる姿勢や、展開を考慮してるとは見て取れなかった。
そして最終的に拳の一撃をもらうことになったが、そこでこちらがその威力を殺していたことにも気付く様子がなかった。
となれば、所謂喧嘩や格闘といったものに関してはド素人だと判断を下さざるを得ない。
「(椅子を槍へと変形させた……超能力ですか)」
そして、推測するに、途中で見せたあの槍を撃ち込む攻撃こそが彼女本来のスタイルなのであろう。
おそらく今まではあの力でもって相手を一方的に撃破してきたに違いない。そしてあれだけの力があるなら他の力は不要だとも言える。
だとすれば彼女の見せた戦闘の組み立て方の拙さにも納得がいくというものだ。
もっとも、あれにしても最初から使ってこなかったことと、立て続けに使ってこなかったことを見るに、連続した使用は難しいらしいが。
おそらく今まではあの力でもって相手を一方的に撃破してきたに違いない。そしてあれだけの力があるなら他の力は不要だとも言える。
だとすれば彼女の見せた戦闘の組み立て方の拙さにも納得がいくというものだ。
もっとも、あれにしても最初から使ってこなかったことと、立て続けに使ってこなかったことを見るに、連続した使用は難しいらしいが。
「(……まぁ、及第点をあげておきましょうか。なにとなにやらは使いよう、です)」
戦闘そのものだけでなく、交渉やその他の判断にもやや不安はあるものの、しかし”自分の武器”だと考えればそれも問題ない。
考える力に乏しいのなら考えさせなければいい。武器は、その使い手が最大の力を発揮させるのものなのだから。
考える力に乏しいのなら考えさせなければいい。武器は、その使い手が最大の力を発揮させるのものなのだから。
狭いサイドカーの中でそんな結論を出すと、師匠と呼ばれる彼女は己の武器に声をかけバイクを停車させた。
【4】
「どうしたのかしら? まだ目指している診療所までには距離があると思うのだけど」
停車させ、そしてバイクから降りた師匠にむかい、朝倉涼子は浮かび上がった疑問をぶつける。
その周囲には夜の中に沈む町並みがあり、道路沿いに立ち並ぶ街灯の光が来た道から行く道へと点々と明かりを灯していた。
その周囲には夜の中に沈む町並みがあり、道路沿いに立ち並ぶ街灯の光が来た道から行く道へと点々と明かりを灯していた。
「私達が向かうと考えた以上。
そこに同様の目的でやって来る、またはすでに到達している人間がいると考えるべきです。
更には、あなたが水族館の中で気付いたように、診療所の中で気付きその中で潜んでいるものがいる可能性もあるでしょう」
そこに同様の目的でやって来る、またはすでに到達している人間がいると考えるべきです。
更には、あなたが水族館の中で気付いたように、診療所の中で気付きその中で潜んでいるものがいる可能性もあるでしょう」
街灯が作り出す即席のステージの中を避け、師匠は暗闇の中から朝倉涼子へと丁寧な説明をする。
この状況において、自分以外の人間は原則的に敵性である。故に、接触の可能性がある場合はそこに細心の注意を払わなければならない。
今現在の場合。仮に診療所の中かその付近に人間がいた場合、バイクのエンジン音をたてて近づけば先制を許す可能性があるのだ。
この状況において、自分以外の人間は原則的に敵性である。故に、接触の可能性がある場合はそこに細心の注意を払わなければならない。
今現在の場合。仮に診療所の中かその付近に人間がいた場合、バイクのエンジン音をたてて近づけば先制を許す可能性があるのだ。
「なるほどね。でも、それじゃあこのバイクはどうするのかしら? ここに放置? それともまさか押してゆくの?」
朝倉涼子は問い。そしてそれを聞いた師匠は彼女の前でわかりやすい溜息をついた。
そして冷ややかな目で彼女を見つめ、その肩にかかったデイパックを指差す。
そして冷ややかな目で彼女を見つめ、その肩にかかったデイパックを指差す。
「入っていたのならば戻せない道理はないでしょう。このバイクは元通りあなたの鞄の中に仕舞っておきなさい」
やれやれと首を振ると、師匠は自身のデイパックを片手に持ちバイクと悪戦苦闘している朝倉涼子を尻目に道を西へと歩き出した。
【5】
「……まったく人使いが荒いんだから」
目視で診療所を確認できる位置まで来て朝倉涼子は一人ごちる。
その近くに師匠の姿はない。二手に別れて進入することを提案すると、返事を聞く間もなく裏手側の方へと行ってしまったのだ。
ともかくとして、朝倉涼子は一人正面玄関より診療所への侵入を試みる。
その近くに師匠の姿はない。二手に別れて進入することを提案すると、返事を聞く間もなく裏手側の方へと行ってしまったのだ。
ともかくとして、朝倉涼子は一人正面玄関より診療所への侵入を試みる。
「西東診療所……」
診療所の前に掲げられた看板を見て朝倉涼子はその名前を口にした。
何の変哲もない。特に大きな意味もなさそうなただそれだけの名前ではあるが、しかし一つだけ大きく不自然な点があった。
それは、その看板は随分と年季が入っているらしく擦れて文字が全く読めないということだ。
何の変哲もない。特に大きな意味もなさそうなただそれだけの名前ではあるが、しかし一つだけ大きく不自然な点があった。
それは、その看板は随分と年季が入っているらしく擦れて文字が全く読めないということだ。
「やっぱり、いつの間にかに知識が増えている。それも、ここで使う為のようなものばかり……」
彼女の地球に来てからの行動範囲というのは大きく限られており、実質的には学校と家との間ぐらいでしかない。
故にこんな世界の端などという場所に来たこともなければ、目の前の診療所に見覚えなんかあるはずもない。
なのに知っている。奇妙なことにその名前だけをはっきりと知っていた。それが間違いでないという確信がある。
故にこんな世界の端などという場所に来たこともなければ、目の前の診療所に見覚えなんかあるはずもない。
なのに知っている。奇妙なことにその名前だけをはっきりと知っていた。それが間違いでないという確信がある。
そして、師匠が持っていたFN P90という名前の短機関銃。また、バイクの運転技術。
通常の生活に必要な情報を最低限持った状態で生まれ、日々の活動の中で知識を得たり、必要に応じて情報都合思念体より
新しい知識や技術をダウンロードしてそれなりの知識と経験を持ち合わせてはいたが、どちらの知識も以前は知らなかったものだ。
これまでの活動中にそれを必要としたり、ダウンロードの申請を情報統合思念体へと送った記憶はない。
通常の生活に必要な情報を最低限持った状態で生まれ、日々の活動の中で知識を得たり、必要に応じて情報都合思念体より
新しい知識や技術をダウンロードしてそれなりの知識と経験を持ち合わせてはいたが、どちらの知識も以前は知らなかったものだ。
これまでの活動中にそれを必要としたり、ダウンロードの申請を情報統合思念体へと送った記憶はない。
「新しい知識を注入された。それはいい。問題は、”何者”がそうしたのかよね」
根本的な問題として、彼女にはここで気付いた段階より持っている大きな疑問が存在していた。
それは、”何者が朝倉涼子を再生したのか?”ということである。
彼女は以前、涼宮ハルヒに関する事態を独断で大きく進めようとし、長門有希より問題のある固体としてその存在を抹消されているのだ。
それは、”何者が朝倉涼子を再生したのか?”ということである。
彼女は以前、涼宮ハルヒに関する事態を独断で大きく進めようとし、長門有希より問題のある固体としてその存在を抹消されているのだ。
では一体何者がというと、この状況を作り上げたものがそうしたのであろうというのがほぼ間違いのないところであろう。
それが涼宮ハルヒであれ、情報統合思念体であれ、または狐面の男か全く未知の存在であれ、その点に関しては変わらないはずだ。
この状況に関する何らかの要請により、消失したはずの朝倉涼子はいくらかの知識を付与され再生された。
それが涼宮ハルヒであれ、情報統合思念体であれ、または狐面の男か全く未知の存在であれ、その点に関しては変わらないはずだ。
この状況に関する何らかの要請により、消失したはずの朝倉涼子はいくらかの知識を付与され再生された。
「まぁ、いいか」
疑問をそのままに置いておき、朝倉涼子は看板の前を離れて診療所の正門へと歩いてゆく。
ここで状況が開始されてよりすぐに同じことを考えたが、どの可能性を論じても辿り着く解答は、”自分自身が知る術はない”だ。
記憶そのもの、引いては自分そのものに対し完全な信頼がおけない以上、確定的な答えを出すことはできない。
そういうことならば、結局は自分自身が自分自身として疑いをもたずに事を進めてゆくべきだと彼女はそう結論を出した。
ここで状況が開始されてよりすぐに同じことを考えたが、どの可能性を論じても辿り着く解答は、”自分自身が知る術はない”だ。
記憶そのもの、引いては自分そのものに対し完全な信頼がおけない以上、確定的な答えを出すことはできない。
そういうことならば、結局は自分自身が自分自身として疑いをもたずに事を進めてゆくべきだと彼女はそう結論を出した。
「(……人がいる気配は感じられないけれども)」
正門を潜り、朝倉涼子は二階建てで大きめの一軒家である診療所の中を窺ってみた。
目の前の玄関扉や一階二階にある窓など、どこからも光は漏れておらず、また物音もせずしんと静まり返っている。
右側を見れば車5台分ほどのスペースの駐車場があり、いくらかの車やバイクが止められていたが、しかしその物陰にも気配はない。
目の前の玄関扉や一階二階にある窓など、どこからも光は漏れておらず、また物音もせずしんと静まり返っている。
右側を見れば車5台分ほどのスペースの駐車場があり、いくらかの車やバイクが止められていたが、しかしその物陰にも気配はない。
足音を立てないよう慎重に玄関扉の前にまで移動すると、そこに鍵がかかっていないことを確認し彼女はその扉を横に引いた。
【6】
「(さて、あまり時間をかけている暇はありませんね)」
朝倉涼子が玄関より診療所の中へと進入した頃、別行動をとっていた師匠はすでに診療所内へと進入していた。
別れる際には、狭い屋内で固まっていれば敵がいた場合一網打尽にされる可能性があるなどと彼女は理由をつけたが、それは真実ではない。
ただ彼女は単に、一人先んじて金目のものがあれば頂いてしまおうと考えただけであり、それはそうする為の方便であったのだ。
別れる際には、狭い屋内で固まっていれば敵がいた場合一網打尽にされる可能性があるなどと彼女は理由をつけたが、それは真実ではない。
ただ彼女は単に、一人先んじて金目のものがあれば頂いてしまおうと考えただけであり、それはそうする為の方便であったのだ。
「(とはいえ……)」
ミシ、ミシ……と、足をのせる度に軋んだ音を慣らす廊下を進みながら、ここは期待薄と師匠は判断する。
医者という肩書きを持つ人間は大金持ちかもしくは逆に赤貧かと相場は決まっているものだが、ここは少なくとも前者ではないらしい。
そもそもそれは診療所という規模から押して知るべしといったところだったが……。
医者という肩書きを持つ人間は大金持ちかもしくは逆に赤貧かと相場は決まっているものだが、ここは少なくとも前者ではないらしい。
そもそもそれは診療所という規模から押して知るべしといったところだったが……。
「(まぁしかし、何があるとも限りません)」
適当な扉を潜り、師匠は懐中電灯を片手に物色を始める。
どうやらそこは書斎の様な部屋らしく、彼女は事務机の引き出しを片端から開け、本棚へと光を走らせ、衣装棚へと手を伸ばす。
成果はあまり芳しくはない。特別に価値が高そうなものは見当たらず、得られるのは部屋の持ち主が几帳面であるという情報ぐらい。
しかしそれでも彼女は捜索の手を緩めようとはしない。業突く張りだからというのもあるが、彼女には一つの確信があったからだ。
どうやらそこは書斎の様な部屋らしく、彼女は事務机の引き出しを片端から開け、本棚へと光を走らせ、衣装棚へと手を伸ばす。
成果はあまり芳しくはない。特別に価値が高そうなものは見当たらず、得られるのは部屋の持ち主が几帳面であるという情報ぐらい。
しかしそれでも彼女は捜索の手を緩めようとはしない。業突く張りだからというのもあるが、彼女には一つの確信があったからだ。
それは、朝倉涼子のデイパックに入っていた金の延べ棒という名の”武器”により発想を得たものであった。
金というのは重たい金属でありそれで叩けば武器となるかもしれないが、しかしこの場合は武器とはそういう意味ではないだろう。
彼女と朝倉涼子がそれを媒介に契約を結んだように、その”価値”こそが武器となるのだ。
金というのは重たい金属でありそれで叩けば武器となるかもしれないが、しかしこの場合は武器とはそういう意味ではないだろう。
彼女と朝倉涼子がそれを媒介に契約を結んだように、その”価値”こそが武器となるのだ。
そして、その価値が有効であるとこの状況を作り出したものが認めているのだとすれば、それはあることを意味すると考えられる。
まず、この3日後には消える世界の端で行われているのはルール無用のバトルロワイアルで、その中では価値そのものに意味はない。
外の――元いた世界に通じた時に初めて価値は価値として認められるのだ。
だとするならば、金の延べ棒がブラフやハズレでないという限り、それは”持って帰れる”ものだと考えるべきだろう。
まず、この3日後には消える世界の端で行われているのはルール無用のバトルロワイアルで、その中では価値そのものに意味はない。
外の――元いた世界に通じた時に初めて価値は価値として認められるのだ。
だとするならば、金の延べ棒がブラフやハズレでないという限り、それは”持って帰れる”ものだと考えるべきだろう。
「(持ち帰りが可能ならば、いただける物は遠慮なくいただいてゆかなければ――)」
勿体無い。と、師匠は薄闇の中でまだ見ぬお宝を求め、屋内を徘徊しその手を伸ばす。
【7】
診療所に到着してより一時間ほどの頃、屋内で合流した二人は和室にて卓袱台を挟んでお茶を飲んでいた。
「残念ながら、この建物の中では労に見合った収穫は得られませんでした。次に期待したいところです」
「ここには医療品を探しにきたんじゃなかったっけ?」
「ああ、それだったら十分に確保しました。しかしこんなものは子供のお小遣いにもなりません」
「……私にはまだ有機生命体の考えることがうまく理解できないみたいだわ」
「ここには医療品を探しにきたんじゃなかったっけ?」
「ああ、それだったら十分に確保しました。しかしこんなものは子供のお小遣いにもなりません」
「……私にはまだ有機生命体の考えることがうまく理解できないみたいだわ」
そんなことはさておき。と、湯飲みを卓袱台の上に戻して師匠は朝倉涼子へと本題を切り出した。
特別、当ても急ぐ理由もないわけだが、別にただゆっくりする為にわざわざお茶を淹れさせたわけでもないのだ。
特別、当ても急ぐ理由もないわけだが、別にただゆっくりする為にわざわざお茶を淹れさせたわけでもないのだ。
「私とあなたとの契約ですが、一つ失念していたことがありました」
「それは一体、何かしら?」
「この先、運良くあなたが保護すべき涼宮ハルヒさんとやらを発見し、そして無事に合流できたとします」
「ええ。そうなってほしいものであるわ」
「しかし、私達3人以外の者達が存命していれば、彼女は依然として危険にさらされ続けることは変わりませんね?」
「そのとおりよ。だから、私達は私達以外誰もいなくなるまで彼女を守り続けなければならないの」
「はい。でしたら――」
「それは一体、何かしら?」
「この先、運良くあなたが保護すべき涼宮ハルヒさんとやらを発見し、そして無事に合流できたとします」
「ええ。そうなってほしいものであるわ」
「しかし、私達3人以外の者達が存命していれば、彼女は依然として危険にさらされ続けることは変わりませんね?」
「そのとおりよ。だから、私達は私達以外誰もいなくなるまで彼女を守り続けなければならないの」
「はい。でしたら――」
――涼宮ハルヒを終わりの時まで健やかでいさせる為の料金。”SOS料”を払いなさい。
「ちょ、ちょっと待って、それはすでに契約の内に入っているんじゃないかしら?」
「物事を都合よく解釈しないでください。先程の契約の際にはあなたはそんなことを言ってませんよ」
「……えーと、じゃあ、金の延べ棒をもう1本先渡しするから」
「詐欺をするつもりですか? こうなれば即刻契約はなかったことにしたいと思います」
「そ、そんな……それは待ってよ!」
「でしたら、何か他に料金に見合った物を探すことですね」
「今から……?」
「涼宮ハルヒさんと合流するまでの間に、ですね。でないと彼女が流れ弾で死にかねません」
「こういう時、人間は血も涙もないやつだなって言うと思うのだけど」
「何を言ってるんですか。人間は血も涙も流しますよ」
「理不尽だわぁ……」
「シビアなんです」
「物事を都合よく解釈しないでください。先程の契約の際にはあなたはそんなことを言ってませんよ」
「……えーと、じゃあ、金の延べ棒をもう1本先渡しするから」
「詐欺をするつもりですか? こうなれば即刻契約はなかったことにしたいと思います」
「そ、そんな……それは待ってよ!」
「でしたら、何か他に料金に見合った物を探すことですね」
「今から……?」
「涼宮ハルヒさんと合流するまでの間に、ですね。でないと彼女が流れ弾で死にかねません」
「こういう時、人間は血も涙もないやつだなって言うと思うのだけど」
「何を言ってるんですか。人間は血も涙も流しますよ」
「理不尽だわぁ……」
「シビアなんです」
【8】
そして、淹れたお茶が冷め切っている頃。二人は家屋より出て、場所を駐車場へと移していた。
「とりあえずは予定通りに温泉へ向かおうかと思います。その後は天守閣へと向かいましょう」
「お城に?」
「ええ。あそこらへんは最終的に残るエリアですし、早めに拠点となる場所などを確保できれば都合がよいでしょうから」
「私は、お城だからって金銀財宝があるとは思わないんだけどな」
「夢は大きいほうがいいとどこかの国の偉人も言っていました」
「………………」
「お城に?」
「ええ。あそこらへんは最終的に残るエリアですし、早めに拠点となる場所などを確保できれば都合がよいでしょうから」
「私は、お城だからって金銀財宝があるとは思わないんだけどな」
「夢は大きいほうがいいとどこかの国の偉人も言っていました」
「………………」
そんなやり取りで今後の行き先を定めると、師匠は駐車場に並んだ車の中で一番小さなものの前に立ちその扉を開いた。
そしてきょとんとしている朝倉涼子に構うことなくその中へと乗り込む。
そしてきょとんとしている朝倉涼子に構うことなくその中へと乗り込む。
「えっと、今度はそれに乗ってゆくわけ?」
「襲撃を受けてしまう場合。生身を曝すバイクよりかはこちらの方が安全です」
「襲撃を受けてしまう場合。生身を曝すバイクよりかはこちらの方が安全です」
あなたも早く乗りなさい。と言う師匠は、当たり前のように助手席へと座っている。
なので、釈然としないところがあったものの朝倉涼子は仕方なく運転席の方へと腰を下ろし、その手にハンドルを握った。
幸か不幸か、自動車の運転に関しても何時の前にやらに身についているというのが何故か彼女には悲しく思える。
なので、釈然としないところがあったものの朝倉涼子は仕方なく運転席の方へと腰を下ろし、その手にハンドルを握った。
幸か不幸か、自動車の運転に関しても何時の前にやらに身についているというのが何故か彼女には悲しく思える。
「では、速やかに発進してください」
「……はい。師匠」
「……はい。師匠」
ほどなくして、ブルル……と音をたててフィアット500という名の黄色い車が駐車場を抜け出し、夜の市街の中へと滑り込んでいった。
「ところで、この車の鍵ってどうしたの?」
「二階の寝室にかけられていた上着のポケットの中から見つけましたが、それが何か?」
「二階の寝室にかけられていた上着のポケットの中から見つけましたが、それが何か?」
南から北へ。しんと静まり返る夜の中を一台の小さな車はただ走って行く。
【F-3/診療所付近/一日目・黎明】
【師匠@キノの旅】
[状態]:健康、ポニーテール
[装備]:FN P90(30/50発)@現実、FN P90の予備弾倉(50/50x19)@現実、両儀式のナイフ@空の境界
[道具]:デイパック、基本支給品、金の延棒x5本@現実、医療品、フィアット・500@現実
[思考・状況]
基本:金目の物をありったけ集め、他の人間達を皆殺しにして生還する。
1:朝倉涼子を利用する。
2:まずは温泉へと向かい、その後天守閣の方へと向かう。
[状態]:健康、ポニーテール
[装備]:FN P90(30/50発)@現実、FN P90の予備弾倉(50/50x19)@現実、両儀式のナイフ@空の境界
[道具]:デイパック、基本支給品、金の延棒x5本@現実、医療品、フィアット・500@現実
[思考・状況]
基本:金目の物をありったけ集め、他の人間達を皆殺しにして生還する。
1:朝倉涼子を利用する。
2:まずは温泉へと向かい、その後天守閣の方へと向かう。
【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:健康、ポニーテール
[装備]:シズの刀@キノの旅
[道具]:デイパック、基本支給品、金の延棒x5本@現実、軍用サイドカー@現実
[思考・状況]
基本:涼宮ハルヒを生還させるべく行動する。
1:師匠を利用する。
2:まずは温泉へと向かい、その後天守閣の方へと向かう。
3:SOS料に見合った何かを探す。
[備考]
登場時期は「涼宮ハルヒの憂鬱」内で長門有希により消滅させられた後。
銃器の知識や乗り物の運転スキル。施設の名前など消滅させられる以前に持っていなかった知識をもっているようです。
[状態]:健康、ポニーテール
[装備]:シズの刀@キノの旅
[道具]:デイパック、基本支給品、金の延棒x5本@現実、軍用サイドカー@現実
[思考・状況]
基本:涼宮ハルヒを生還させるべく行動する。
1:師匠を利用する。
2:まずは温泉へと向かい、その後天守閣の方へと向かう。
3:SOS料に見合った何かを探す。
[備考]
登場時期は「涼宮ハルヒの憂鬱」内で長門有希により消滅させられた後。
銃器の知識や乗り物の運転スキル。施設の名前など消滅させられる以前に持っていなかった知識をもっているようです。
【FN P90@現実】
突撃銃の威力と拳銃の取り回しのよさを両立する為に開発されたコンパクトな短機関銃。
全長:500mm 重量:3.0kg 口径:5.7mmx28 装弾数:50
使用されている弾丸も専用に開発された特殊なもので、ライフル並の貫通性と強力なマンストップ力を併せ持っている。
突撃銃の威力と拳銃の取り回しのよさを両立する為に開発されたコンパクトな短機関銃。
全長:500mm 重量:3.0kg 口径:5.7mmx28 装弾数:50
使用されている弾丸も専用に開発された特殊なもので、ライフル並の貫通性と強力なマンストップ力を併せ持っている。
【フィアット・500@現実】
まんまるいフォルムが特徴の小型自動車。色は黄色。
正確にはシリーズの2代目にあたる「NUOVA 500」で、フィアットというとこれが連想されることが多い。
窮屈ながらも一応は5人乗りの仕様で、エンジンタンクがフロント部分にあるのが特徴。
ちなみに、500は”チンクェチェント”と読む。決して”ごひゃく”とは読んでいけない。絶対に。
まんまるいフォルムが特徴の小型自動車。色は黄色。
正確にはシリーズの2代目にあたる「NUOVA 500」で、フィアットというとこれが連想されることが多い。
窮屈ながらも一応は5人乗りの仕様で、エンジンタンクがフロント部分にあるのが特徴。
ちなみに、500は”チンクェチェント”と読む。決して”ごひゃく”とは読んでいけない。絶対に。
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