ラノロワ・オルタレイション @ ウィキ

リリアとソウスケ〈そして二人は、〉後編

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
管理者のみ編集可

リリアとソウスケ〈そして二人は、〉後編  ◆UcWYhusQhw







「……今、何て言った?」


ぼくはただ驚いていた。
目の前の少女の咄嗟の行動に。
掴まれた手が振りほどけない。
ぼくは慌てて、でも逆に少女はその勢いでぼくを全力で殴ってきた。
その力に僕は思わず尻餅をついて、そして握っていた包丁を放してしまう。
少女はそのまま包丁を思いっきり蹴り飛ばして不遜に僕を見下ろしている。


「どうしてこうも……バカばっかり……あーーーーーーもう! ふざけるなぁ!」

腕組みをしながらぼくを睨み、顔は怒りで真っ赤に染まってる。
ぼくはそんな彼女の様子に情けない事に竦んでいた。
彼女は僕を指差し力強く言う。

「そんな誰かの為なんて言葉…………ただの思い上がりだっ!」

強く、強く。
その言葉で僕を否定しながら。
髪を大きく揺らしながら力強い言葉を言い続ける。

「伊里野って子好きなんだよね? きっと本当に心の底から……」

少女はそう、呟いて。
優しそうな目線をぼくに向ける。
ぼくは静かに頷いて。
けど、彼女はそのまま怒りに変えた。

「でも、だからといって伊里野を護りたいといって誰かを殺していい理由になってならないわよっ!」

まるで先程会った小さい少女と同じのような事をぼくに言う。
ぼくはその強い言葉にやはり目をそらしてしまう。
その少女は言葉を続ける。
ぼくは彼女の言葉に、情けない事にただ何も言えなかった。

「そうやって、単なるエゴの押し付けなんて…………最悪よ」

そして少女はとてもとても哀しく笑う。
少女の目にはいつの間にか沢山の涙が溢れて。


「わたしはね…………さっきお母さんが何処かで死んじゃった」


そう、哀しそうに告げたのだった。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「わたしはね……お母さんが何処かで死んじゃった」


そう言った時、わたしはやっぱり心がズキズキと痛んだ。
思い出したママの笑顔が溢れて、たまらず涙が零れていく。
喪失という傷は深すぎて。

きっと永遠に癒えないんだろうと思う。

亡くなった人は戻らないから。

だから


「やっぱり……凄い哀しいわよ……心が壊れそうになるくらい」


凄い哀しい。
苦しくなるくらい。
とても、とても。
心が壊れそうになって。
立っていられなくなってしまいそう。

それぐらい大切な人が亡くなるって事は大きい哀しみなんだ。
そして、それは怒りにもなったりしてしまう。

復讐という形になったり。


でも。
それでも


「お母さんの為に復讐するなんて……絶対に思わない。お母さんもきっとそう願ってる」


わたしはこう思うんだ。
だから、私は復讐なんて思わない。

だって……

ママの手紙に書いてあったんだもん。
あの手紙にはただ、こう書いてあっただけ。


『リリアへ。
 貴方がこの手紙を見ている時、わたしはどうなっているかわからないけど言える事は一つだけ。
 逢えなくっても、わたしは傍に居ます。
 貴方の気持ちが永遠である限り私の気持ちも永遠だから。
 だから……貴方は哀しみや憎しみに囚われず、貴方の思うままに生きてね、リリア。
 貴方はとても優しい子なんだから。
 勿論生きてあえたらそれが一番だけれども。でも解らないから言葉だけ残します。

 どうか幸せに生きてね、愛しています。
                                        アリソン』


って。

そんな事、書かれたら。
そんな事、言われたら。
わたしは憎しみの通りに生きる事なんかできないじゃない。

ママは優しいから。
そうやってきっと殺した人も憎んでないんだろうな。
そんな事思ったら……わたしはもう憎しむことなんて出来やしない。

だって……わたしは……

ママの子だから。たった一人の子供だから。

だからわたしはママの言葉通りに生きなきゃ。


そう思うしかないじゃない。


だから


「わたしは貴方の勝手な思い込みで殺しを許容するなんて……絶対に許さないっ!」


そんな殺しを許す訳いかない。
それがわたしのエゴだとしても。
わたしはそんな殺人を選び取るのは許してはいけないんだと思う。

それに

「それにお母さんが死んだ哀しみはね……癒える訳が無い。もう二度と会えないんだから……もう二度と笑ってくれないんだから……もう二度と抱きしめてくれないんだから。 
 もう二度と大好きといってくれないんだから……大切な人だったのに……わたしだってだいすきだったのにっ! もう無理なんだからっ!」

大切な人が死んだ。
その哀しみほ御免……ママ……癒える訳は無い。
あえないから。
好きという気持ちを伝えられないのは……

とても哀しい。


ねぇ……貴方は……


貴方はさぁ



「切ないよ……哀しいわよ……ねぇ貴方は……そんな哀しい想いを貴方は他の人に押し付けるのって押し付ける覚悟があるのっ!?
 誰かの大切な人を奪って、哀しみや憎しみに染めるような事、貴方はできる決意があるというのっ!? わたしはそんなに風に見えないっ!」





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





歩く歩く。


俺は考える。




そして、思った。


ああ―――それは堪らなく嫌だ。


そう思って、俺は踵を返し




――――走り始めた。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






「切ないよ……哀しいわよ……ねぇ貴方は……そんな哀しい想いを貴方は他の人に押し付けるのって押し付ける覚悟があるのっ!?
 誰かの大切な人を奪って、哀しみや憎しみに染めるような事、貴方はできる決意があるというのっ!? わたしはそんなに風に見えないっ!」


少女は泣きながら叫んでいた。
強い強い言葉でぼくを責め立ててる。
ぼくはその言葉を唖然と聞いていた。

そして、何も返せない。

目の前の大切な人を失った少女に対してぼくは何も言えない。
言ったって説得力がある言葉なんて吐けない。
ぼくは大切な人を失っていない。
伊里野を失っていない。

ただ流されるままで居たぼくに。

彼女の言葉に何も言い返せない。
思い上がりとか決意とか覚悟とか……わからない。

何もいえない……何もいえない。

ぁあ……何かもう嫌だ。

全てを投げ捨てたい。
でも、出来ない。
一人殺したから。

だからぼくは決まりきったような……


これだけは確かといえる言葉を言うんだ。

「それでも伊里野を護りたいんだ。だから何でも頑張ってやる。それが伊里野のためだから」

伊里野を護りたい。
伊里野の為なら何でも出来る。
伊里野の為だから。
そう信じて。


その言葉に……

「伊里野の為……伊里野って人の未来も何も考えてないのに?」

少女は正しく肩を震わせ。
ぼくの方を強く睨み。
ぼくの顔に向かって指をさし

とてつもない大声を上げる。


「何が、『伊里野を護る』よ! 沢山の罪も無い人を殺して何が『伊里野を護る』よ!……護るって言葉は……そんな意味じゃない! 今すぐ自分の歪んだ頭を拳で殴りなさい、バカ! 」


少女は……激昂していた。
ぼくの身勝手かもしれない言葉に。
伊里野のことを考えてないと。
拳を震わせ、『護る』という言葉を強調して。

ぼくは……ただ言葉を紡ぐだけ。

伊里野をこの場所で護るには……この方法しかないんだから。


「……そんなの関係ない……ぼくがただ伊里野を護りたいだけ。他は知らない」


少女は紡いだ言葉に対して。


「そんな身勝手で……そんな自分よがりの考えで…… 」


今度こそ。
全ての感情をぶつけるように。
ぼくに向かって。


「あんたは悪い人間だーっ!」


そう言い切った。


「あんたは、人間の風上にも置けない悪人だ! 絶対ろくな死に方しないって断言してやる!―――伊里野は護りたい、他は知らない? ふざけるなっ!」

完全に涙は乾いた顔で。
怒りだけで。

そして


「どんな事がやりたくても、どんな理由があっても、そこに無辜の人間の大量死があるなら、そこに誰も想っていないのなら、それは単なるテロだ! 極悪非道の犯罪だーっ!」



そう、ぼくを軽蔑して言った。


「たとえ、伊里野を護りたくても、そこに罪の無い人を殺すというのなら、それに誰も考えてない自分の思い込みなら、それは理由になんかならない、ただの人殺しだっ!
 だから、あんたがいってる事……やってる事は……ただの言い訳だ。伊里野を護るという言葉で何でも解決しようとするエゴの塊だーっ!」

ぼくはそんな言葉に何も言えず。
でも、沸々とした怒りが溢れてくる。
なんで、こんなに言われないといけないんだ。

何も知らないのに!
何も解らないのに!
何も……何も……!

なのに、この女はなんでそんなに偉そうなんだ!


ふざけ……ふざけるな!


「 煩い煩い!……何も知らないくせに……何も知らないくせにぃいいいい!!!!!!」
「きゃぁ!?」

ぼくは勢いで彼女をドンと押した。
だけどその勢いでぼくもそのまま同じように倒れてしまう。
互いにもみくちゃになって押し倒すような形になってしまった。

そしてふとその少女の身体を見ると。

制服が大きくはだけて、可愛らしいブラと肌が露出して。
スカートもめくれて、下着が露になって。

ぼくはその姿を見て息を呑んだ。
そんな女の子らしい姿に。
今ぼくが力で押さえつけている状況で。
彼女は何も出来ない。


ぼくは……ぼくは……


ああ。


どうにでもなってしまえ。


だったら何でもしてやる。
どんなに軽蔑されようと。
どんなに恨まれようと。

ぼくはぼくのためにやってやる。

そのためなら何も後悔しない。

後はどうなって知らない。


そう想って。

ぼくは彼女の胸を鷲掴みにした。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「ちょっ……と……!……やめて……よぉ!……あんた……さい……あくだっ!」

そう、わたしは叫ぶも聞かない。
さっきは抑えられたのに今は彼に反抗する事ができない。
恐ろしい力で押さえつけられている。

手は胸などを蹂躙し始め制服は乱れ始めている。

流石に恐怖し始めている。
けど、ある意味好き勝手言った代償かもしれない。
なんか、これも罰かなぁと自分のことなのに客観に見ていて。

どうにかなる訳がない。

……なんだろうなぁ。

……でも、まぁいっか。


いまのわたしに助ける人も護る人もいないから。
独りぼっちで。
だから、このまま好き勝手されるのだろう。

「……ママ……助けて」

なのにお母さんの名前を自然によんでいた。

ばかだなぁ……わたし。

もういないのよ……ママは。

呼んだって絶対にこない。


トレイズ……」

勿論あのヘタレもこない。
来てくれるわけが無い。
何処にいるかもわからないのに。
どうでもいい時にいるのに。

トレイズは助けに来ない。



ああ……もう無理なんだな。

護ってくれる人もいない。



だから、きっとここで私は御終い。

ママごめんね……




あー……でも。
もしかしたら……

ううん……わたしが拒絶したんだ。

わたしが解れたんだ。

来るわけ……

「宗介っ……!」


な……


「――――呼んだか?」


い……?


え……?

あの制服。
あの解りやすいむっつり顔。


まさか……


「宗介っ!?」
「うむ……タイミングがよかったみたいだな……リリア、俺は此処に居るぞ」


ぁぁあ……ぁあ。


居た。

此処に。

彼が。


相良宗介が。



私の為に


やって……着てくれた。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




俺が辿り着いた時にはリリアは危なかった。
リリアが俺の名前を呼んだ時、俺はちょうど辿り着く事ができた。
そのまま、リリアに乗りかかっている少年を思いっきり蹴り飛ばす。

「ぐぎゃ!?」

少年は吹っ飛び近くの電柱にぶつかっていた。
俺は構わずリリアの安全を確かめる。
服は乱れて少し破れている所もあるようだが、彼女自身は大丈夫だった。
俺は制服の上かけてやってあげる。

「あんたなんで……」
「……考えた」
「え?」
「考えて考えて……」
「うん……」

そして俺が考えて出したその結果を言う。
それは間違いなく俺の本心だった。

「リリアが無残に殺される事、慈悲無く蹂躙される事、俺が見てない所で死んでしまう事―――それが不愉快で見たくなくて嫌った。それだけだ」

単純な事だった。
あのままリリアと今生の別れになってしまう事。
無残に殺される事、慈悲無く蹂躙される事。
それが堪らなく嫌だっただけだ。
俺は千鳥達を探すべきなのかもしれない。
それがミスリルの軍曹である相良宗介がやるべき事で。
俺が優先するべき事だ。

でも、それでも俺は動いていた。
たとえ後悔する事になってもリリアの方に向かった。
底まで突き動かしたのは何かはよく知らないが。
ただ、無我夢中で走っていた。

俺は最善を尽くす。

だけどリリアを切り捨てる事を選ばなかった。

ただ、それだけだった。

「そう…………ありがと」
「うむ……ではまずあいつを」

リリアの疲れながらも気丈な笑みに俺は頷き返す。
そしてそのまま電信柱にぶつかってくらくらしている少年の下に駆け出す。

「ぐぎゃ!?」
「報いは受けて貰うぞ。貴様はリリアに酷い事をしたっ!」

そのまま膝蹴りを少年の腹に。
少年は痛みで屈みこんだが容赦はしない。

「ガッ!?」

そして肘を少年の顔に。
衝撃で少年の歯が折れ、地面に落ちたが気にする事ではない。
俺はそのまま殺そうとナイフを首元に当て

「終わりだ」
「ひぃぃぃぃぃぃ!?」

一閃に引き裂こうとした瞬間




「――――――――殺すなっっ!!!」



リリアの大きな叫びが響いたのだ。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




ぼくは痛みに堪えていた。
宗介と呼ばれた人の蹴りが凄く痛い。
これが報いだというのだろうか。

痛くて痛くて堪らない。

そして宗介と呼ばれた人がぼくを殺しにやってくる。
ぼくは敵う訳も無く彼に暴行されるだけ。
痛くて痛くて。
そして歯も欠損してしまう。

そしてナイフの輝きが見えた時。
ああ、死ぬんだなと思って。

怖いと思って。

思い起こすのは伊里野の顔で。

それを想って死ぬのかなと。

ならそれでいいのかなと想って。

目を閉じた瞬間


「――――――――殺すなっっ!!!」


そんなリリアと呼ばれた少女の叫びが聞こえてきた。
宗介という人は戸惑って反論する。

「だが、リリア! こいつはリリアを……!」
「いいからっ! 貴方がこんな人の為に手を汚す必要なんてないっ!」

渋々といった感じ宗介はぼくの首元からナイフを降ろす。
そして警戒しながら僕を見下ろしていた。

だけど、ぼくはリリアの言葉に戸惑うだけだった。

つまり、ぼくは彼女に殺す価値も無いといわれたのだろうか。


「わたしはねっ……それでも貴方が伊里野の事を本当に大好きで……大好きで仕方ないと思ってた。だからこんな短慮な殺しまでやってるんだって……そう思ってた」

リリアの言葉が続く。
だけど、その言葉はぼくの心を更に抉るような感じがして……とても怖い。


「でも、思い違いだったのかな?……あなたはそんなんじゃない。貴方はやっぱり…………『伊里野』という存在に託けて酷い事をしたいだけっ!」


そして、ぼくの伊里野の想いまで否定されて。
リリアは言う。

決定的な一言を

「貴方は『伊里野』という存在の為にやってるんじゃないっ! わたしを襲うような酷い事を伊里野の為という自己肯定の為にやってるだけだっ!」


ああ……

「貴方は……本当に『伊里野』を好きといえるの!? わたしはそんな歪んだ想い……認めたくないわよっ!」



あぁぁあああああああああああああああああああああああああ。



その言葉を聴いた瞬間はぼくは駆け出していた。


解らない解らない。
ぼくは何の為にやっていたかわからなくなった。

伊里野の為。
そう伊里野の為のはずなのに。

それを否定されて。
なんでぼくは否定できないんだ?

解らない解らない。

伊里野の為じゃないなら?

ぼくは何の為にやっていたの?

ぼくは何の為にころしたの?



違う!

伊里野の為なんだっ!


なのになのに。


解らない解らない。

自分の心がわからない。
自分の行動がわからない。


でもぼくはきっと酷い人間で殺す価値も無い屑なんだろう。
彼は宗介はヒーローのように現れてリリアを守り抜いた。
でもぼくは伊里野の元に辿り着く事も出来ず助けることすら、殺すことすらできない。

護る事もできないで欲情までしてぼくはなんて人間だろう。


ぼくは伊里野の為といえるのだろうか?


ぼくは本当に伊里野の為に?


わからない。

だから走っている。


もう此処が何処だかわからない。
もうどれくらい走ったかわからない。



もし伊里野の為じゃないなら。



ぼくは今までやった事にどうすればいいのだろう?



【C-6/北部/一日目・朝】


浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:自信喪失。茫然自失。全身に打撲・裂傷・歯形。全身生乾き。右手単純骨折。 微熱と頭痛。前歯数本欠損
[装備]:毒入りカプセル×1@現実
[道具]:デイパック、支給品一式 、ビート板+大量の浮き輪等のセット(三分の一以下に減少)@とらドラ!、カプセルを入れていたケース
[思考・状況]
0:????????????
[備考]
※参戦時期は4巻『南の島』で伊里野が出撃した後、榎本に話しかけられる前。
※浅羽が駆け出した方向は後の書き手にお任せします。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「ふう、ここまでくれば大丈夫かしら」
「ああ」

わたしと宗介はあの後、あの場所から離れていった。
わたしがあの場所に居たくなかったから。
今は飛行場近くの草原に居る。

そして、落ち着き始めた今。


「あのね、宗介」


彼と話し合わなければならない。
わたしの今の気持ちを。

「なんだ?」
「お母さんが死んでね、かなしくて、わたしどうしようか迷ってたんだ……ううん、今も」

ママが死んで。
私は哀しくて。
いや、今もその哀しみは消えない。
でも、でもね

「でもね……わたし、お母さんが手紙に書いてくれた通り……生きようと想ったんだ頑張って」

そう、頑張って。
哀しくても。
苦しくても。
それでも。

「だから、わたしは頑張って生きたい。そして憎しみに囚われるような……復讐に囚われるような生き方してる人止めたい」


わたしは、生きていく。

そして、憎しみや復讐に囚われない生き方を……教えたい。

「そうか」

宗介は頷いて。
そして、わたしは

「でもね、わたしはね……無力、こんなにも無力」
「……」
「結局貴方の手を借りた……わたしも弱い、力も心も」

わたしは弱くて。

だからこそ。


「お願い、傍に居て」


宗介が傍に居てくれる事を望んだ。


「あんなに啖呵きって、別れもしたけど…………お願い……」


あの時、私の呼びかけに応えた少年に。

傍に居てほしい事を願った。



そして宗介は


「了解した」


短く、でもしっかりした返事をくれた。
私は笑って、


「うん、お願いします」

そう応えた。
何処と無く突き出した拳。

それを互いにぶつけ合った。



「……あれ? 可笑しいな」

涙が出て来ている。


あぁ……やっぱり。


「簡単には癒えないなぁ……お母さんが失った傷……」
「リリア……」
「あはは……はは」


ごめんね、宗介。


ちょっと……ちょっとだけ。


「うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!」


今はお母さんの為に。


泣かせて下さい。



【B-5/飛行場脇草原/一日目・朝】

リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツ@リリアとトレイズ】
[状態]:健康、深い深い哀しみ
[装備]:陣代高校上着@フルメタル・パニック!
[道具]:デイパック、支給品一式(ランダム支給品0~1個所持)、ハーゲンダッツ(ストロベリー味)@空の境界×6、アリソンの手紙
[思考・状況]
0:今は泣く。
1:がんばって生きる。憎しみや復讐に囚われるような生き方してる人を止める
2:宗介と行動
3:トレイズが心配。
4:トレイズ、トラヴァスと合流。

【相良宗介@フルメタル・パニック!】
[状態]:健康
[装備]:サバイバルナイフ、IMI ジェリコ941(16/16+1)
[道具]:デイパック、支給品一式(確認済みランダム支給品0~2個所持)、予備マガジン×4
[思考・状況]
1:リリアの傍に居る
2:かなめとテッサとの合流。
3:マオの仇をとる?


投下順に読む
前:冷たい校舎 次:「契約の話」 ― I'm NO Liar ―
時系列順に読む
前:冷たい校舎 次:リアルかくれんぼ

前:泥の川に流されて 浅羽直之 次:最後の道
前:本当はずっと、子供のままで、幼いままで リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツ 次:しばるセンス・オブ・ロス
前:本当はずっと、子供のままで、幼いままで 相良宗介 次:しばるセンス・オブ・ロス
ウィキ募集バナー