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群青――(Madonna)

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群青――(Madonna) ◆EchanS1zhg



 【0】


『要するに玖渚友の子供(ロリィ)な体躯には欲情しないと』


 【1】


東の端より顔を出した世界を照らす為の照明も時計の短針と揃って上昇を続け、今は頂点のその少し前。
物語より隔絶された死線の寝室。その様相もそれに合わせ、それの分だけの変化を起こしていた。

日の入りの方角一面に張られた硝子より入り込む光は強く突き刺すものから優しく沁み込むものへと変じており、
ひんやりとした空気の中に光の強さだけが痛烈だった部屋は、時とともに暖められふわりと寝心地のよい極楽と成り、
冷たい白色ばかりだった部屋は乱反射する光に白さを増し、白白白と、まるで御伽噺の中に出てくる星屑の砂漠の様で、

そして、うつろわない時を生きる少女だけが、変わらず、まるで時流を無視するがのごとく、ただ眠り続けている。

目から脳髄までを刺し貫かんばかりの鮮やかなウルトラマリンの髪は水のようで、
波立つその青はまるで、白の砂漠の中に浮かぶ唯の、しかし蜃気楼でしかないオアシスの様だった。


 【2】


少女という存在が眠っている。

触れれば、それがどんな些細な力であろうとも、どれだけ慈しみのある手であろうとも崩れてしまうのではと錯覚するような、
女の子は砂糖でできているのよと、どこかで聞いた唄をそのままに信じてしまいそうになる美少女が眠っている。

無防備に、無防備に、無防備に、ただ薄いだけの、ただ白いだけの布だけを身に纏わせ、無防備を曝して眠っている。



少女は女王の様に美しく、お姫様の様に可愛らしい。

青色に覆われた面は如何なる天才の設計(デザイン)なのか、まるで生き物ではないかのように端整で、
同じ色の眉が描くアーチは世界の何処に存在する橋よりも優美で、雨上がりに見る七色の橋よりも色鮮やか。

閉じた両の瞳を飾り立てる睫はこれまでのどの王が頂いた冠よりも精巧に作られており、
愛くるしい額から鼻の頭頂までに描かれるアールはいかな高名な建築家でも引くことのできない優美さを持っている。

薄い唇に滲む彼女が持つ微かな生命のその証を表す桃色は、決して芸術家ごときのパレットの上では作れない神秘の色。

細くとがった顎は誰をもの目を奪い、水草の茎のように細い首はその目を捉え離さない。

すぅすぅと、静寂という名の空白の五線譜の上に置かれる寝息は金銀どちらで作られた楽器よりも耳を擽り、
それと同期し、動悸する、彼女の熱い心臓(ハート)を包む、水平線の様に薄く空との境の様に曖昧な胸は華奢で薄い。

小さなお腹は指で押せばそのまま沈んでしまいそうで、泡立てられたばかりのメレンゲの様にふんわりとしてマシュマロの様。

何かを掴むかのように伸ばされた腕の先には何もなく、そしてしかし全てがあった。
腕の先。緩く握られた細かい手。それぞれが世界の運命を打ち込む10本の指がそこを、全てを確かに掴んでいる。

奔放に投げ出された足は彼女が地に足をつく不必要を表し、世界が彼女の足元に従属すべき存在であることを表している。

そして、その稀有な存在を発散させて広げゆく極々微かな燐粉の様な香りは、気づけばどんな花より齎せる蜜より甘い。



「…………うーん」

夢中の彼女は法則そのもので、投げ出された肢体が作るシンプルな姿形はそこに新しい文字(ルーン)を生み出す。

「…………いーちゃんらぶー」

夢中の彼女は宇宙そのもので、零れ出てくる言葉はトランスした巫女が齎す神託のそれと等しい。



少女という存在が眠っている。

世界の神秘(ロリィ)が、世界の端の端の端で、ただ静かに存在している






【E-5/摩天楼東棟・最上階(超高級マンション)/1日目・昼】

【玖渚友@戯言シリーズ】
[状態]:健康、睡眠中
[装備]:なし
[道具]:デイパック、基本支給品、五号@キノの旅
[思考・状況]
 基本:いーちゃんらぶ♪ はやくおうちに帰りたいんだよ。
 1:いーちゃんが来るまで寝る。ぐーぐー。
[備考]
※登場時期は「ネコソギラジカル(下) 第二十三幕――物語の終わり」より後。
※第一回放送を聞き逃しました。


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