ラノロワ・オルタレイション @ ウィキ
CROSS†POINT――(交換点) 後編
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CROSS†POINT――(交換点) 後編 ◆EchanS1zhg
【5】
街中で偶然発見したバギーを見て、シズはいささか以上に驚いていた。
記憶の中の姿よりかは多少痛んでいるような気がするものの、紛れもなくそれは自分が愛用していたバギーだったからだ。
記憶の中の姿よりかは多少痛んでいるような気がするものの、紛れもなくそれは自分が愛用していたバギーだったからだ。
「陸が修理に出したと言っていたな」
地面に片膝をついて車体の裏を覗き込み、それから車体の後ろに回ってエンジンとその他の機械部品を見てみる。
どうやら陸が言っていたことは本当らしく、いくつかの部品が知らないものと交換されていることをシズは確認した。
どうやら陸が言っていたことは本当らしく、いくつかの部品が知らないものと交換されていることをシズは確認した。
「これは勝手に乗っていっていいものかな……?」
シズは少しだけ悩む。
目の前にあるバギーは紛れもなく自分の物だと言えるが、しかし今はそうでない可能性もある。
これがもし、キョンという少年に支給された陸のように、他の何者かに支給されたものだとすれば、
その者はいわゆる善意の第三者というものに当てはまることになる。
自身からバギーを盗んだのが人類最悪とするならば、事情を知らずに配られた者に責任を問うことはできない。
目の前にあるバギーは紛れもなく自分の物だと言えるが、しかし今はそうでない可能性もある。
これがもし、キョンという少年に支給された陸のように、他の何者かに支給されたものだとすれば、
その者はいわゆる善意の第三者というものに当てはまることになる。
自身からバギーを盗んだのが人類最悪とするならば、事情を知らずに配られた者に責任を問うことはできない。
こんな状況で、そんなお人好しなことにシズは頭を悩ませる。
割り切りのいい性格ではあるし、人の命を奪うことに躊躇う人間でもないが、根は善人なのであった。
割り切りのいい性格ではあるし、人の命を奪うことに躊躇う人間でもないが、根は善人なのであった。
「今の持ち主が来たら、事情を話して譲ってもらうか……、いや――」
――殺せばいいのか。と、シズは今更ながらに気づいた。
どうせ殺すのだ。勝手に持って行くのは気が引けるが、ならば武力でもって交渉しその結果として獲得すればいい。
もはやそれは、旅中で何度も撃退した野盗となんら変わらない姿だが、それもまた今更だと、シズは決心する。
そしてちょうどその時、遠くから歩いてくる2人の少年の姿がシズの視界の中に入ってきた。
もはやそれは、旅中で何度も撃退した野盗となんら変わらない姿だが、それもまた今更だと、シズは決心する。
そしてちょうどその時、遠くから歩いてくる2人の少年の姿がシズの視界の中に入ってきた。
シズは被ったフードが作る影の中から、向かってくる2人組を静かに観察する。
背の高い少年と、それなりの背の少年。一見、どちらも平凡で戦いを知らない者のように見えるが、しかし油断はしない。
キョンというただの少年に出し抜かれたこともまだ記憶に新しい。警戒をしすぎるにこしたことはないのだ。
背の高い少年と、それなりの背の少年。一見、どちらも平凡で戦いを知らない者のように見えるが、しかし油断はしない。
キョンというただの少年に出し抜かれたこともまだ記憶に新しい。警戒をしすぎるにこしたことはないのだ。
足取りを見て、背の高い方はただの素人だとシズは判断する。
逆にそれなりの背の方はただの素人ではないと判断した。いくらかは訓練を受けている者の身のこなしだ。
そして、それなりの背の方が背の高い方を止めて、一人で前へと出てくるのを見て、シズは刀の柄に軽く手を置いた。
逆にそれなりの背の方はただの素人ではないと判断した。いくらかは訓練を受けている者の身のこなしだ。
そして、それなりの背の方が背の高い方を止めて、一人で前へと出てくるのを見て、シズは刀の柄に軽く手を置いた。
「これは君たちの車かい?」
後5メートルほどというところでシズは少年に声をかける。
不意を打たなかったのは車を”譲り受ける”に当たっての最低限の礼儀でもあったが、半分は本能的な警戒心からだった。
迂闊に飛び込めば予期せぬ反撃を受けるかもしれないと、シズの中の経験がそう警告を告げていたのである。
声をかけられた少年はその場で止まっている。果たしてどのような答えが返ってくるのか。それはとても意外なものであった。
不意を打たなかったのは車を”譲り受ける”に当たっての最低限の礼儀でもあったが、半分は本能的な警戒心からだった。
迂闊に飛び込めば予期せぬ反撃を受けるかもしれないと、シズの中の経験がそう警告を告げていたのである。
声をかけられた少年はその場で止まっている。果たしてどのような答えが返ってくるのか。それはとても意外なものであった。
「いいえ、――”シズさんのもの”ですよ!」
はっきりとした返答にシズは目を見開いた。
どうして目の前の少年は自分のことを知っていて、このバギーが自分の物だと知っているのか。
戦いの中では全く関係ないことなのに一瞬それを考えてしまって、その一瞬の内に少年は行動を終えていた。
どうして目の前の少年は自分のことを知っていて、このバギーが自分の物だと知っているのか。
戦いの中では全く関係ないことなのに一瞬それを考えてしまって、その一瞬の内に少年は行動を終えていた。
ゴン――と、あまり広くない駐車場の中に重い音が響き渡る。
少年が身の丈よりも遥かに長い鉄柱を取り出し、バトンのように軽々と振ってアスファルトの上に突き立てていた。
取り返しのつかない失敗だと、シズは己を叱責する。
相手は得物を取り出していて、しかしこちらはその機に刀を抜くことができなかった。
使い慣れない長刀とあってはここからの抜き打ちも難しく、完全に機先を制された状態と言える。
取り返しのつかない失敗だと、シズは己を叱責する。
相手は得物を取り出していて、しかしこちらはその機に刀を抜くことができなかった。
使い慣れない長刀とあってはここからの抜き打ちも難しく、完全に機先を制された状態と言える。
「……どうして俺がシズだとわかったのかな?」
じりと足幅を広げつつシズは目の前の少年に尋ねる。
時間稼ぎもあるが、確認もしておかなくてはならない。もし自分の情報がばら撒かれているのだとすればそれはことだ。
時間稼ぎもあるが、確認もしておかなくてはならない。もし自分の情報がばら撒かれているのだとすればそれはことだ。
「いいえ、本当はわかりませんでした。でも、その車の説明書に書いてあったんですよ《シズのバギー》だって」
ハッ――と息を吐いてシズは笑った。自分はかまをかけられてそれにまんまと引っかかってしまったのだ。
「名簿の中に《シズ》って名前がありましたからね。だったらその人の物なのだろうと思いました。それに――」
――ここには他にもいっぱい車があるじゃないですか。と少年は駐車場を見渡してそう言った。
「それなのに、一番奥に止めてあったバギーをしげしげと眺めている。まるで”知っている物”を見るかのようにです。
そして、僕達を見てこう思いましたよね。その刀で斬り殺して車を奪ってしまおう……って。
シズさん。あなたの話はキョンから聞いています。アリソンさんを殺し、メリッサさんも殺した疑いがある。
身の丈ほどもある長刀を凶器に使用したとも聞いていました。
なので、あなたが”シズ”である可能性もあると思い、かまをかけさせてもらったんですよ」
そして、僕達を見てこう思いましたよね。その刀で斬り殺して車を奪ってしまおう……って。
シズさん。あなたの話はキョンから聞いています。アリソンさんを殺し、メリッサさんも殺した疑いがある。
身の丈ほどもある長刀を凶器に使用したとも聞いていました。
なので、あなたが”シズ”である可能性もあると思い、かまをかけさせてもらったんですよ」
シズは無言で頷き、刀の柄を強く握った。
シズは半身をずらし油断なく構えながらも、いぶかしむ表情をその顔に浮かべた。
ここまで知っていてどのような提案があるというのだろうか。
見逃してくれというのなら今更過ぎる。逆もそうだ。そもそも正体の見当がついているなら近づかなければよかっただけだ。
では、一体どんな? それは、シズからすればとても意外な、思いも寄らない”提案”だった。
ここまで知っていてどのような提案があるというのだろうか。
見逃してくれというのなら今更過ぎる。逆もそうだ。そもそも正体の見当がついているなら近づかなければよかっただけだ。
では、一体どんな? それは、シズからすればとても意外な、思いも寄らない”提案”だった。
「物々交換をしませんか?」
少年――坂井悠二は、シズに対しそんなことを、優しい表情を浮かべ提案したのだった。
【6】
「意図を測りかねるな」
言葉の意味はわかるが、少年の意図がどこにあるのか読みきれない。
なので、シズはそれをそのままに言葉として口にした。
なので、シズはそれをそのままに言葉として口にした。
「そのままなんだけど……そうですね。まず第一に交渉が通じると思っているのは、シズさん。
あなたが物事を秤にかけて考えることのできる人だからです」
あなたが物事を秤にかけて考えることのできる人だからです」
シズはあの橋の上でキョンから時間移動などの可能性を聞き、この世界からの脱走は無理だと判断した。
故に、ここをコロシアムの前哨戦として、皆殺しを慣行して優勝者になろうと決めたのである。
それを指し、目の前の少年――悠二はシズのことを損得で物事を判断できる人間だとそう称した。
故に、ここをコロシアムの前哨戦として、皆殺しを慣行して優勝者になろうと決めたのである。
それを指し、目の前の少年――悠二はシズのことを損得で物事を判断できる人間だとそう称した。
「しかし、俺は自分勝手な理由で人を殺している。それなのに交渉が通じると思うのかな?」
「けど最初はそうじゃなかった。だったら戦いをしかける方が不利益だと、僕があなたに示せればいい」
「けど最初はそうじゃなかった。だったら戦いをしかける方が不利益だと、僕があなたに示せればいい」
再び、ゴンという重い音が辺りに響き渡る。
アスファルトにめり込んだ鉄柱を見るに、どうやら見た目どおりの重さはあるらしい。
だが、少年はそれを軽々と重さがないかのように扱っている。
そこにいかなる仕掛けがあるかは不明だが、その実力は無傷で済ませられる程度ではないと見積もることができた。
アスファルトにめり込んだ鉄柱を見るに、どうやら見た目どおりの重さはあるらしい。
だが、少年はそれを軽々と重さがないかのように扱っている。
そこにいかなる仕掛けがあるかは不明だが、その実力は無傷で済ませられる程度ではないと見積もることができた。
「なるほど。……では一体、何と何を交換するんだ?
君たちはこのバギーを譲ってくれるのか? だとしても俺は君たちに渡せるような物を持っていないぞ」
君たちはこのバギーを譲ってくれるのか? だとしても俺は君たちに渡せるような物を持っていないぞ」
そんなことはないと少年はシズの腰のあたりを指差す。
彼が何を差し出せと言っているのか、言葉にしなくてもそれは明白だった。
シズが腰に差している一本の刀をよこせということである。しかし己の武器を手放すなど、簡単に了承できるはずもない。
彼が何を差し出せと言っているのか、言葉にしなくてもそれは明白だった。
シズが腰に差している一本の刀をよこせということである。しかし己の武器を手放すなど、簡単に了承できるはずもない。
「正直に言うと、その刀は僕の知り合いのもので……その刀を彼女以外の人間が持っているは見逃せないんです」
「つまり、それぞれの持ち物を本来の所有者の元へと戻そうというわけか」
「勿論、無理を言っているのは承知の上です」
「つまり、それぞれの持ち物を本来の所有者の元へと戻そうというわけか」
「勿論、無理を言っているのは承知の上です」
なのでこれもつけます。そう言って、少年は鞄から鞘に入った太刀を取り出してバギーの座席の上へと放り投げた。
鞘から抜いて見なければ確かとは言えないが、どうやらシズが普段使っている刀と似たようなものらしい。
鞘から抜いて見なければ確かとは言えないが、どうやらシズが普段使っている刀と似たようなものらしい。
「その脇に差している刀。抜き身だし、長くて使いづらいんじゃないですか?」
「バギー1台に代えの刀か……。おいしい話すぎて逆に警戒してしまうな。何かまた要求するものがあるんじゃないか?」
「そうですね。できればこれから人を殺すのを控えてください。それがあなたの為でもあります」
「説得するつもりなのか?」
「いいえ、交渉です。あなたはどうやら頑固そうなので、説得だなんてそんな甘い期待はしませんよ」
「バギー1台に代えの刀か……。おいしい話すぎて逆に警戒してしまうな。何かまた要求するものがあるんじゃないか?」
「そうですね。できればこれから人を殺すのを控えてください。それがあなたの為でもあります」
「説得するつもりなのか?」
「いいえ、交渉です。あなたはどうやら頑固そうなので、説得だなんてそんな甘い期待はしませんよ」
ふむ……と唸る前で、少年はいかに殺し合いによって生き残ろうとするのが無謀かをシズに向かって説く。
すでに少年の側には10人ほどの実力者による集団ができあがっていること。
その中にはフレイムヘイズという超常の強者がおり、それは自分よりも遥かに強いこと。
またそれ以外にも強者は仲間におり、逆に敵対している存在の中にもそれに匹敵する者がいること。
自分や、それと相対しているシズ程度の実力ではとてもそれらには太刀打ちできないこと――を。
すでに少年の側には10人ほどの実力者による集団ができあがっていること。
その中にはフレイムヘイズという超常の強者がおり、それは自分よりも遥かに強いこと。
またそれ以外にも強者は仲間におり、逆に敵対している存在の中にもそれに匹敵する者がいること。
自分や、それと相対しているシズ程度の実力ではとてもそれらには太刀打ちできないこと――を。
「無謀だから止めておけと忠告してくれるわけか……」
「その通りです。しかしこちら側に下れとも言いません。ただ現状を把握しなおし冷静に行動してほしいんです」
「その通りです。しかしこちら側に下れとも言いません。ただ現状を把握しなおし冷静に行動してほしいんです」
少年は最後の交渉材料――1枚のメモ紙を丁寧にジープの座席に置き、そしてまた離れた。
「そこに僕の持っている携帯電話の番号が記してあります。気が向いたら電話してください」
「君たちが拠点にしている場所はどこだ?」
「それは教えられません」
「君たちが拠点にしている場所はどこだ?」
「それは教えられません」
最後の答えを聞いてシズは刀から手を離しかまえを解いた。
この坂井悠二という少年はただの平和主義者ではない。頭が回り、そしてなにより慎重だ。信用がおけると判断する。
この坂井悠二という少年はただの平和主義者ではない。頭が回り、そしてなにより慎重だ。信用がおけると判断する。
「では、刀はここに置いてゆく。せっかくなのでこちらからも”おまけ”をひとつ差し出そう。
それとひとつ警告だ。ここから北にある病院で4つの死体を見た。
殺したやつは俺と同じか、それよりも強い。多分バイクに乗っているやつがそうだろう。気をつけるといい」
それとひとつ警告だ。ここから北にある病院で4つの死体を見た。
殺したやつは俺と同じか、それよりも強い。多分バイクに乗っているやつがそうだろう。気をつけるといい」
最後に、国の外で旅人同士がそうするように情報を交換し合うと、シズはバギーに飛び乗りエンジンをかけた。
そして見送る2人の少年から逃げるようにバギーを駐車場の出口へと向け、その場を後にする。
そして見送る2人の少年から逃げるようにバギーを駐車場の出口へと向け、その場を後にする。
その後に、一本の長い刀とひとつの筒が残されていた。
【7】
「……よかった」
シズが置いていった刀――贄殿遮那を拾い上げ悠二はほっと息を漏らす。
最初に気づいた時は驚いたが、それは紛れもなくシャナが愛用していた刀に違いなかった。
それが彼女の手元にないことに不安を感じ、そして無事に取り戻せたことに安堵する。
最初に気づいた時は驚いたが、それは紛れもなくシャナが愛用していた刀に違いなかった。
それが彼女の手元にないことに不安を感じ、そして無事に取り戻せたことに安堵する。
「(時間移動説は本当なのか……?)」
もうひとつ。シズが残していった望遠鏡のようなものを拾い上げて、悠二はキョンが言っていたことを思い出した。
望遠鏡のようなそれは《リシャッフル》という名前の宝具であり、以前にシャナが打ち壊したはずのものなのだ。
また討滅したはずのフリアグネの所有物でもあり、とある1日の騒動を起こした逸品でもあった。
望遠鏡のようなそれは《リシャッフル》という名前の宝具であり、以前にシャナが打ち壊したはずのものなのだ。
また討滅したはずのフリアグネの所有物でもあり、とある1日の騒動を起こした逸品でもあった。
「さて、”おれのもの”だったバギーがなくなってしまったわけだが」
背後から声をかけれて悠二はびくりと肩を揺らす。
振り向けば、そこには今回の物々交換で損しかしていない水前寺の不満げな顔があった。
振り向けば、そこには今回の物々交換で損しかしていない水前寺の不満げな顔があった。
「……えーと、これは……その」
「いや、かまわんよ坂井クン。あのシズという男との交渉の手並みは見事なものだった。
あれで我々に対しても危険が減るというのならバギーの一台くらい安いものだろう」
「いや、かまわんよ坂井クン。あのシズという男との交渉の手並みは見事なものだった。
あれで我々に対しても危険が減るというのならバギーの一台くらい安いものだろう」
だからこれは君に対する”貸し”だと、水前寺はさらりと言う。
そしてやはり時間が惜しいのだろう。早速に次の目的地の話を切り出した。
そしてやはり時間が惜しいのだろう。早速に次の目的地の話を切り出した。
「グズグズはしておられん。病院に向かうとするぞ……と言いたいところだが乗り物を失ってしまったな」
「ごめん」
「言葉だけでは貸しが減ることはないぞ。要求されるのは迅速な行動だ。我々の新たなる足を確保しようではないか」
「ごめん」
「言葉だけでは貸しが減ることはないぞ。要求されるのは迅速な行動だ。我々の新たなる足を確保しようではないか」
言いながら水前寺は駐車場の中を見渡す。悠二もそれに倣って駐車場の中を見渡してみた。
普通乗用車やワゴンにトラック。狭いながらも多種多様な車両がそこには並んでいるが、しかし問題があった。
普通乗用車やワゴンにトラック。狭いながらも多種多様な車両がそこには並んでいるが、しかし問題があった。
「ふむ。ここに止めてある車はどれも鍵がついてないと見るべきだろうな」
「どうする? 車を止めてある家の中に入れば鍵が見つかるかもしれないけど」
「自転車ならば止め具を壊すだけでかまわんのだがね」
「できれば自動車がいいって?」
「どうする? 車を止めてある家の中に入れば鍵が見つかるかもしれないけど」
「自転車ならば止め具を壊すだけでかまわんのだがね」
「できれば自動車がいいって?」
さてどうするべきか。
死体が4つなどという話は穏便ではない。そこに浅羽が入っている可能性もある以上、今すぐにでも飛んで行きたいのだ。
探せば車もどこかで調達できるだろう。速度もあるし、複数人が一度に乗れるので、できればこちらが好ましい。
自転車で妥協するという手もある。何よりお手軽だ。だがしかし速度やその他では自動車に大きく劣る。
死体が4つなどという話は穏便ではない。そこに浅羽が入っている可能性もある以上、今すぐにでも飛んで行きたいのだ。
探せば車もどこかで調達できるだろう。速度もあるし、複数人が一度に乗れるので、できればこちらが好ましい。
自転車で妥協するという手もある。何よりお手軽だ。だがしかし速度やその他では自動車に大きく劣る。
「ふーむ……」
「ふーむ……」
「ふーむ……」
水前寺と横に並び、悠二は駐車場に並んだ車と自転車を見て、彼と同じように唸り声を漏らした。
これとは別に余談であるが。と、前置きして水前寺は悠二にひとつ確認をとった。
「今更だが、携帯電話を持っていたのだな」
「うん。そうだけど……。一度、神社へと連絡を取っておいた方がいいのかな? 番号はあるし」
「実を言うと、君と遭遇した時点で彼らとの約束を反故にしていてな……」
「今、電話しても怒られるだけか……」
「うむ。成果を上げるまでは、大手を振っては帰ることもできんのだよ。6時に帰るとは言ったがね」
「わかった。電話するのは少し置いておこう。(シャナもいないし……)」
「うん。そうだけど……。一度、神社へと連絡を取っておいた方がいいのかな? 番号はあるし」
「実を言うと、君と遭遇した時点で彼らとの約束を反故にしていてな……」
「今、電話しても怒られるだけか……」
「うむ。成果を上げるまでは、大手を振っては帰ることもできんのだよ。6時に帰るとは言ったがね」
「わかった。電話するのは少し置いておこう。(シャナもいないし……)」
これもまた、余談は余談として終わる。
水前寺の理由もあるが、悠二としても電話口越しにあのヴィルヘルミナから小言を重ねられるのは勘弁願いたかったからだ。
水前寺の理由もあるが、悠二としても電話口越しにあのヴィルヘルミナから小言を重ねられるのは勘弁願いたかったからだ。
【B-4/市街地南部・駐車場/一日目・昼】
【坂井悠二@灼眼のシャナ】
[状態]:健康
[装備]:メケスト@灼眼のシャナ、アズュール@灼眼のシャナ
[道具]:デイパック、支給品一式
贄殿遮那@灼眼のシャナ、リシャッフル@灼眼のシャナ、湊啓太の携帯電話@空の境界(バッテリー残量100%)
[思考・状況]
基本:この事態を解決する。
0:自動車か自転車か……?
1:水前寺と一緒に浅羽を探す。そのために今は病院へと向かう。
2:事態を打開する為の情報を探す。
├「シャナ」「朝倉涼子」「人類最悪」の3人を探す。
├街中などに何か仕掛けがないか気をつける。
└”少佐”の真意について考える。
3:シャナと再会できたら贄殿遮那を渡す。
[備考]
清秋祭~クリスマスの間の何処かからの登場です(11巻~14巻の間)。
会場全域に“紅世の王”にも似た強大な“存在の力”の気配を感じています。
[状態]:健康
[装備]:メケスト@灼眼のシャナ、アズュール@灼眼のシャナ
[道具]:デイパック、支給品一式
贄殿遮那@灼眼のシャナ、リシャッフル@灼眼のシャナ、湊啓太の携帯電話@空の境界(バッテリー残量100%)
[思考・状況]
基本:この事態を解決する。
0:自動車か自転車か……?
1:水前寺と一緒に浅羽を探す。そのために今は病院へと向かう。
2:事態を打開する為の情報を探す。
├「シャナ」「朝倉涼子」「人類最悪」の3人を探す。
├街中などに何か仕掛けがないか気をつける。
└”少佐”の真意について考える。
3:シャナと再会できたら贄殿遮那を渡す。
[備考]
清秋祭~クリスマスの間の何処かからの登場です(11巻~14巻の間)。
会場全域に“紅世の王”にも似た強大な“存在の力”の気配を感じています。
【水前寺邦博@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:健康
[装備]:電気銃(1/2)@フルメタル・パニック!
[道具]:デイパック、支給品一式
[思考・状況]
基本:この状況から生還し、情報を新聞部に持ち帰る。
0:自動車か自転車か……?
1:悠二と一緒に浅羽特派員を探す。そのために今は病院へと向かう。
3:もし途中で探し人を見つけたら保護、あるいは神社に誘導。
4:浅羽が見つからずとも、午後六時までには神社に帰還する。
[状態]:健康
[装備]:電気銃(1/2)@フルメタル・パニック!
[道具]:デイパック、支給品一式
[思考・状況]
基本:この状況から生還し、情報を新聞部に持ち帰る。
0:自動車か自転車か……?
1:悠二と一緒に浅羽特派員を探す。そのために今は病院へと向かう。
3:もし途中で探し人を見つけたら保護、あるいは神社に誘導。
4:浅羽が見つからずとも、午後六時までには神社に帰還する。
【8】
聞きなれたエンジン音を耳に、シズは慣らし運転といった感じでバギーを走らせ市街の中を行く。
そしてほどなくして、とある倉庫街の一角へと辿りついた。
灰色の高い壁で囲われ、煉瓦造りやプレハブなど多様な倉庫がずらりと並ぶそこは、彼にとってのスタート地点である。
そしてほどなくして、とある倉庫街の一角へと辿りついた。
灰色の高い壁で囲われ、煉瓦造りやプレハブなど多様な倉庫がずらりと並ぶそこは、彼にとってのスタート地点である。
「ふりだしか……」
車を止め、座席の中で悠二から譲り受けた太刀を確認しながらシズは再び考える。
半日――予定されている3日の期限の内の6分の1ほどを過ぎて、結局はまたここに帰ってきてしまっていた。
半日――予定されている3日の期限の内の6分の1ほどを過ぎて、結局はまたここに帰ってきてしまっていた。
「いい刀だな」
ずしりと重みのある厚い刃は太刀のそれで、よくよく見れば相当に使い込まれていることがわかる。
あの長刀もすごいものだったが、これにしても中々のもので、何故この様な業物を彼が手放したのか、少し不思議なくらいだった。
実を言うと、存在の力を通せない普通の物質であるこの太刀よりも、使いこなせないまでも宝具であり力を通せる鉄柱の方が
悠二にとっては有用な武器だったのだが、しかしシズには知る由もない。
あの長刀もすごいものだったが、これにしても中々のもので、何故この様な業物を彼が手放したのか、少し不思議なくらいだった。
実を言うと、存在の力を通せない普通の物質であるこの太刀よりも、使いこなせないまでも宝具であり力を通せる鉄柱の方が
悠二にとっては有用な武器だったのだが、しかしシズには知る由もない。
「さて、どうすればいいんだろうな……?」
ここを生きて抜け出し、あの国へと赴き悲願を達成する。
従者であった陸が死んでもそれは変わらない。誰が死のうとも、誰を殺そうともそれだけは決して変わらない。
その為に国を捨て、その為に剣の腕を磨き、その為に旅をして、その為だけに7年という時間を費やしてきたのだ。
従者であった陸が死んでもそれは変わらない。誰が死のうとも、誰を殺そうともそれだけは決して変わらない。
その為に国を捨て、その為に剣の腕を磨き、その為に旅をして、その為だけに7年という時間を費やしてきたのだ。
「それを考えなおすつもりはないよ」
心の中に聞こえた忠犬の声に、シズは何度も何度も繰り返したようにそう呟いた。
これだけは変わらない。いくら頑固者と言われようとも、無鉄砲とも、泣いて止めろと哀願されようとも変わらない。
しかし、ここでの振舞いに関しては別の話だ。ようは生きて戻れさえすればいい。
まずは何か方法がないかと探してみた。次にそれはとても難しそうだったので人を殺すのが早いと考えた。
そして、今度はそれもまた難しいということがわかった。さて、この状況で一体どう振舞えばいいのか?
これだけは変わらない。いくら頑固者と言われようとも、無鉄砲とも、泣いて止めろと哀願されようとも変わらない。
しかし、ここでの振舞いに関しては別の話だ。ようは生きて戻れさえすればいい。
まずは何か方法がないかと探してみた。次にそれはとても難しそうだったので人を殺すのが早いと考えた。
そして、今度はそれもまた難しいということがわかった。さて、この状況で一体どう振舞えばいいのか?
「なぁ、お前は俺がどうすればいいと思う?」
シズは助手席に置いた鳥籠に顔を向け、その中にいる新しい相棒であるインコちゃんへと問いかける。
「テ、テ、テ……、テメェノォ――カッテニ、シ、シヤ……ガレェ――ッ!」
そうだな。そのとおりだな。と、シズは新しい相棒の言葉に小さく頷いた。
【C-4/倉庫街/一日目・昼】
【シズ@キノの旅】
[状態]:健康
[装備]:早蕨刃渡の太刀、レインコート、パイナップル型手榴弾×1、シズのバギー@キノの旅
[道具]:デイパック、支給品一式(食料・水少量消費)、医療品
インコちゃん@とらドラ!(鳥篭つき)、携帯電話の番号を書いたメモ紙
トンプソン・コンテンダー(0/1)@現実、コンテンダーの交換パーツ、コンテンダーの弾(5.56mmx45弾)x10
[思考・状況]
基本:生還し、元の世界で使命を果たす。
0:さて、どういった方法でそれを実現するか……?
1:身の振り方を考える。
2:未来の自分が負けたらしいキノという参加者を警戒。
3:インコちゃんを当面の旅の道連れとする。
[備考]
参戦時期は、「少なくとも当人の認識の上では」キノの旅6巻『祝福のつもり』より前です。
腹部に傷跡が残っているかどうかは不明です。
[状態]:健康
[装備]:早蕨刃渡の太刀、レインコート、パイナップル型手榴弾×1、シズのバギー@キノの旅
[道具]:デイパック、支給品一式(食料・水少量消費)、医療品
インコちゃん@とらドラ!(鳥篭つき)、携帯電話の番号を書いたメモ紙
トンプソン・コンテンダー(0/1)@現実、コンテンダーの交換パーツ、コンテンダーの弾(5.56mmx45弾)x10
[思考・状況]
基本:生還し、元の世界で使命を果たす。
0:さて、どういった方法でそれを実現するか……?
1:身の振り方を考える。
2:未来の自分が負けたらしいキノという参加者を警戒。
3:インコちゃんを当面の旅の道連れとする。
[備考]
参戦時期は、「少なくとも当人の認識の上では」キノの旅6巻『祝福のつもり』より前です。
腹部に傷跡が残っているかどうかは不明です。
【早蕨刃渡の太刀@戯言シリーズ】
《殺し名》の序列第一位である匂宮雑技団の分家である《早蕨》に所属する早蕨三兄妹。
その長兄である《紫に血塗られた混濁》こと早蕨刃渡が使用していた太刀。
《殺し名》の序列第一位である匂宮雑技団の分家である《早蕨》に所属する早蕨三兄妹。
その長兄である《紫に血塗られた混濁》こと早蕨刃渡が使用していた太刀。
投下順に読む
前:モザイクカケラ | 次:ふたりの護りたいという気持ち、ふたりの不安。 |
時系列順に読む
前:モザイクカケラ | 次:ふたりの護りたいという気持ち、ふたりの不安。 |
前:CROSS†CHANNEL | 坂井悠二 | 次:死線の寝室――(Access point) |
前:CROSS†CHANNEL | 水前寺邦博 | 次:死線の寝室――(Access point) |
前:「葬儀の話」― Separation ― | シズ | 次:街角にて ― Alternative ― |