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Noblesse Oblige-王族の義務とその意味-

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Noblesse Oblige-王族の義務とその意味- ◆O1Af7pV8lA


トレイズ・ベイン16歳。
イクス王国王女の息子であり、公にはされていないが正真正銘の王子様である。
その王子であるトレイズ・ベインは現在教会の中にある長椅子に座っていた。

「どういうことだ。何で明かりが消えたと思ったら急にここに……まあいい。参加者は……」

トレイズはバッグを開き、名簿を確認する。
参加者は大半が余り見た事の無い文字なので、自分の名前はすぐに発見出来る。
そして他の名前も。

「ちっ、アリソンさんにリリアにトラヴァス少佐か。親子で一人だけしか生き残れないとか有りえないだろ。
それに……残り10人は誰だ?まさか父さんか母さんやメリエルが………落ち着け。そんな事考えてもしょうがない。
それにまだ時間はある。72時間、つまり三日か。その間に何か方法を考えろ。ヒントはあの狐男の言葉だ。思い出せ」

トレイズは名簿を戻すと、記憶の糸を手繰り寄せる。
少し前のことなので、記憶力が悪くないトレイズにはほぼ正確に思い出す事が出来る。

(そうだ。消える世界で最後に一人だけ生き残る……ならあいつはどうする。舞台装置とか言っていたが、
現実にあいつは生きている。それに一人だけ元の世界に戻す。どうやって?あいつが隠れていて、どこかで見張っている?
………いや、それじゃ60人全員の動きは把握出来ない。どこかに監視装置……ならどこで見ている?この世界のどこか……
外か?世界の端から逃げれないと言っていたが、本当か?いや……試す価値はあるな)

トレイズは鞄から武器を取り出す。
愛用の物ではないが銃が入っていたのでそれをホルスターに差し、もう一つの銃はポケットに入れて天文台の外へと走る。



******




川嶋亜美
女優の母を持ち、自らもモデルとして活躍している高校二年生。
そんな彼女は現在、この非常識な世界にいつもの冷静さを失いつつあった。

「どういうこと……一人しか生き残れないって………なら亜美ちゃんしかいないよね。でも………いや、考えちゃ駄目。
だって亜美ちゃんだもん。あたしは生き残らないと。それにあんな一瞬で人を移動させるような奴だよ。抵抗なんて無駄じゃん。
あたし……絶対に生き残ってやるんだから」

川嶋亜美はこうと決めたら行動は早い。
支給されたナイフを長袖の中に仕込んで歩きだす。

(大丈夫。絶対にあたしは生き残るんだから。こんな所で消滅するなんて……亜美ちゃんにはそんな未来相応しくない。
あたしは………絶対に)


******




「ここか。世界の果てだけあってやけに暗い……というか真っ黒だな」

トレイズは目の前にある漆黒の壁のような物を見る。
そして近くにあった道路わきに植えてある植物から小枝を一本折って、黒い世界へ向ける。

「世界は切り取られるとか言ってたが………実際はどうなんだ?」

トレイズは枝の先を黒の向こうへと突き出す。
枝は普通に入り特に行き止まりは感じられない。
トレイズはすぐに枝を抜く。

「うん。別に消滅するわけでもないのか。なら安心だな。一度試すか」

トレイズは特に勢い良く顔を入れて黒い世界の奥を見る。
だが……

(なんだ?真っ黒で何も見えない。もう少し奥に……っ!!)

トレイズは嫌な寒気を感じてすぐに顔を出す。
そして顔を触り異常が無いのを確認すると安堵の息をつく。

(今一瞬存在が気迫になったような………まさか全身を入れると存在が消滅?……………試すにはリスクが高いな)

トレイズは現時点でのこれ以上の調査を断念し、今までと反対の方向へと足を向ける。

(世界が消えるとか言っていたが……どんな風に消えるんだ?今からだと明るくなってからB-6かC-6の消滅が確認出来るな)

トレイズは地図と時間を確認してから、目的地への歩を進める。
そこで、一つの声が届いた。

「あの……始めまして………かな?」
「えっ!?」

トレイズは声の方に慌てて振り返る。
慌てた理由は声が女性の物だったからだ。
そしてその声の主を見て、トレイズはしばし声を失う。

「…………」

その女性が余りに可愛く、美しかったからだ。
すらりと伸びた足。引き締まったウエスト。小さな頭にどこか守ってあげたいと思わせる目つき。
トレイズの想い人のリリアとは少し違った雰囲気の魅力が目の前の女性にはあった。

「ねえ、名前……何?あたしはね。川嶋亜美。亜美ちゃんって呼んでねっ」
「あっ……俺は………トレイズ。トレイズって呼んでくれていいから」
「そう、じゃあトレイズ君。亜美ね。……怖いの。とっても怖いの。だってね。あの狐のお面の人蹴落とせって
いうんだよ。亜美はそんなの出来るわけないのに。酷いよね~」
「ああ、それなら大丈夫だ。俺が守ってやるから。それにさ。この世界だってどうにか出来るはずさ。少なくとも可能性は
充分にある。それは保障する。不可能じゃない。それに………亜美さんも俺が守ってやるから」
「本当。すごーい。亜美尊敬しちゃう」

亜美の言葉に思わずトレイズも照れてしまう。
男を完全に手玉に取る話術の前に、トレイズは完全に警戒が取れていた。


******




そして数分が経つ。
トレイズは川嶋亜美と会話を楽しみながら目的地へと歩く。
そして時間の経過と共に、川嶋亜美が仕掛ける時間も迫っている。

「ねえ、ところでトレイズ君は好きな人とか居ないの?」
「えっ、急に」
「いいじゃない、ねえ、教えてよ~」

亜美の甘えてくるような言葉にトレイズは答えを窮してしまう。
そしてトレイズは顔を赤らめながら俯いた時。
亜美は凶行へと走り出した。

「ごめんなさい!」
「えっ!?」

亜美の謝罪を聞いた瞬間、トレイズの頭は真っ白に染まった。
眼前にナイフが迫っていた。

「ぐっ!」

咄嗟に身を捻って直撃を避ける。腰をかすめて軽い痛みを感じるが傷は深くない。
偶然にも亜美はナイフを袖から出すのに一瞬手間取り、僅かに初動が遅れた為に、トレイズに
致命傷を与えるに至らなかった。
その為にトレイズはすぐに体勢を立て直すと亜美のナイフの握られた右腕を押さえつける。

「きゃあっ」
「放すんだ!」

トレイズは強引に膝蹴りを右腕に放ちナイフを落とさせると、それを足で踏み、更に亜美を手前の建物に
もたれさせるように押さえつけて握った銃を向ける。

「何のつもりだ!自分さえ生き残ればそれでいいのかっ!」
「だっ、……だって仕方ねーじゃん。一人だけなんでしょ。亜美ちゃんはこんなに可愛いんだから、
生き残らなくちゃ。あたしより可愛い子なんてどうせいないんでしょ。それなら、やっぱあたしが生き残るのが一番……」
「ふざけるなっ!!」
「ヒッ……」
「ふざけるなよ。俺の好きな子は………お前よりずっと可愛いよ。そりゃ気が強いし我が侭だし傍若無人だけどさ。
それでも優しいところがあるし、それに…………お前みたいな人を平気で殺すような真似はしないっ!!」
「…………はあ、ふざけないでよ。のろけ~。亜美ちゃんそんなの興味ないんですけど~。そんな子いるわけないじゃん。
どうせ亜美ちゃんと一緒でどこかで人を殺して回ってるんじゃない。それとも、もう。死んでるとかアハハ、ウケル~」

トレイズの低めに放った声と、亜美のあえて煽るようにしゃべる高い声が反発するように不協和音を奏でた。
そして、しばし亜美の笑い声が響くと、トレイズは怖い顔で呟いた。

「俺はさ。守らなくちゃならないんだよ。俺は王子だからさ。勝手に皆殺しで最後に一人になるわけにもいかないし、
かといって死ぬ事も許されないんだ。それに……お前は拘束して連れ歩くには邪魔だし、放置したらリリアやアリソンさんを
傷付ける。だから………分かるよな」
「はあ、本気?あんたみたいな甘そうな男が本気で引き金を弾けるわけ……」
「弾けるさ。そうしなければリリア達を守れないなら、俺は躊躇無く引き金を弾く」
「えっ、………ちょ」

トレイズは銃口を亜美の額の真ん中に押し付け、引き金に指をかける。
銃口の感触を直に感じて、ようやく亜美にも死の実感を湧き上がる。
そして、

「待って、タイム!ねっ、亜美ちゃんはちょっと悪ふざけが……」
「終わりだ」

亜美の願いも空しく、今までで一番低い声をトレイズが発したと同時、一つの引き金が引かれた。


******


トレイズは亜美の前に立っていた。
目の前の亜美は顔を水で濡らしていた。

(やりすぎたか?水鉄砲とはいえ、形状は本物そっくりだからな)

目の前で呆けている亜美を見ながらトレイズは心の中で考えた。
この出来事のからくりは簡単である。
トレイズの支給品。
実は一つは実銃で、もう一つは水鉄砲だったのだ。
そしてトレイズは最初からホルスターの銃には一切手をつけず、ポケットの水鉄砲を撃っただけだ。

「おーい……いつまで呆けてるつもりだ。置いていくぞ」
「……え………………はっ、えっ、何これ?どうして……あたし」
「水鉄砲だ。本気でお前を殺す気は無かったから」
「………どうして?あたしはあんたを殺そうとしたのよ。どうして?」
「謝ってただろ」
「はあっ!?」
「いや、最初に『ごめんなさい!』ってさ。だからそれで。わざわざこれから殺す奴に謝るんだ。根っからの殺人狂でも
無けりゃ、どうしようもない自分勝手な奴でもない。それにこの状況なら誰でも魔がさすからな。それで一々殺す気は無い」

トレイズは先ほどとは違う優しい口調で話す。
それに思わず先ほどの緊迫感は亜美からも薄れていた。

「それで……どうする。俺はこの先に用がある。亜美さんはどうする」
「………いいわ。行ってあげるわよ。どうせ一人じゃ上手く行かないのも分かったから」
「OK。じゃあ行くか。立てる?」
「馬鹿にしないでよ。それぐらい………っ!?」
「どうした?」
「なっ、なんでもないっ!後ろ向いてて!」
「ん?」

亜美のなにやら切羽詰った声に押され、やむなくトレイズは亜美に背中を向けて少し離れた距離まで歩く。
そして亜美の方はなにやら本気で焦っていた。
それをトレイズは知る由は当然無い。

******


(ちょっ、亜美ちゃんこれってまさか……)

亜美は青ざめた表情でスカートを捲る。
無論トレイズが振り返る気配が無いのを察してからだ。
すると白いショーツは股間部分が黄色に変色している。

(あの野郎!亜美ちゃんにこんな恥を………後で殴る!!ってその前に下着……どうしよう)

怒りと羞恥の混じった表情で川嶋亜美はうな垂れた。


【E-1 市街地 一日目 深夜】

【トレイズ@リリアとトレイズ】
【状態】腰に浅い切り傷
【装備】コルトガバメント(8/7+1)@フルメタルパニック 銃型水鉄砲 コンバットナイフ@涼宮ハルヒの憂鬱
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:この世界からの脱出方法の検討と西東天と所在を突き止める
1:B-5かC-5に向かいB-6かC-6の消滅の瞬間を確認する
2:リリア、アリソンと早期合流、トラヴァスとも出来れば
3:弱い人は全力で守る

【備考】
マップ端の境界線より先は真っ黒ですが物が一部超えても、超えた部分は消滅しない。
人間も短時間ならマップ端を越えても影響は有りません(長時間では不明)
以上二つの情報をトレイズは確認済

【川嶋亜美@とらドラ!】
【状態】健康 顔が水で濡れている 右腕に軽度の打撲
【装備】濡れた下着
【所持品】支給品一式 確認済支給品0~2(ナイフ以上の武器ではない)
【思考】
1:早く下着を見つけないと、でもトレイズにばれないように
2:後で一回トレイズを殴る。でも一応は信用しても良い





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トレイズ silky heart
川嶋亜美 silky heart


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