Lapislazuli Garden ◆wlyXYPQOyA
何故こんな事に巻き込まれてしまったのだろう。
まずタバサが考えていたのは、この一点だった。
まずタバサが考えていたのは、この一点だった。
自分は確か、グランバニア城で平和に暮らしていたはずだ。
魔王ミルドラース一派の野望を打ち砕き、世の平和も取り戻した。
それからはもうどんな運命にも縛られることも無く暮らしていたはずだ。
昨晩眠りに付く前に見た最後の家族の顔は、確かに幸福をかみ締めているそれだった。
父はにっこりと笑みを浮かべていたし、母は綺麗な金の髪を靡かせて微笑んでいた。
そして兄は眠る前、楽しそうに話しかけてくれていた。
魔王ミルドラース一派の野望を打ち砕き、世の平和も取り戻した。
それからはもうどんな運命にも縛られることも無く暮らしていたはずだ。
昨晩眠りに付く前に見た最後の家族の顔は、確かに幸福をかみ締めているそれだった。
父はにっこりと笑みを浮かべていたし、母は綺麗な金の髪を靡かせて微笑んでいた。
そして兄は眠る前、楽しそうに話しかけてくれていた。
それなのに、何故こんな事になってしまったのだろう。
彼女はこの空間に飛ばされるまでの出来事を思い返した。
彼女はこの空間に飛ばされるまでの出来事を思い返した。
そうだ。自分はゆっくりとベッドで眠りについていたはずだった。
けれど気付けば自分は、沢山の人間が集められたあの奇妙な空間に呼び出されていたのだ。
そこでジェダと名乗る男から確かに”殺し合いをしろ”という言葉を告げられ、
そしてそれに反発した女性の首が爆発と共に宙に舞う光景を見せ付けられた。
けれど気付けば自分は、沢山の人間が集められたあの奇妙な空間に呼び出されていたのだ。
そこでジェダと名乗る男から確かに”殺し合いをしろ”という言葉を告げられ、
そしてそれに反発した女性の首が爆発と共に宙に舞う光景を見せ付けられた。
異常な光景だった。あまりの異常さに訳も意味もわからない。
ただ、自分はその光景を呆然と眺めることしか出来なかった。
ただ、自分はその光景を呆然と眺めることしか出来なかった。
そして今に至る。気付けば再びどこかに移動され、今は森の中だ。
だが殺し合いをするつもりなど毛頭無い。それよりも、自分は彼を捜さなければいけない。
そう、あの悲劇が起こった部屋には確かに最愛の兄、レックスがいたのだ。
恐らくは自分と同じ様にここに呼び出されたのだろう。残念ながら、話しかける暇は無かったが。
だが殺し合いをするつもりなど毛頭無い。それよりも、自分は彼を捜さなければいけない。
そう、あの悲劇が起こった部屋には確かに最愛の兄、レックスがいたのだ。
恐らくは自分と同じ様にここに呼び出されたのだろう。残念ながら、話しかける暇は無かったが。
――それなら、話は早い。
「殺し合いなんて……するわけにはいかない……」
もう彼女の動く理由は十分過ぎる程だった。
あの罪の無い女性を殺したジェダとやらを許すわけにはいかない。
だからこそ必ず生き残り、この世界から脱出してみせる。絶対に、意地でも。
あの罪の無い女性を殺したジェダとやらを許すわけにはいかない。
だからこそ必ず生き残り、この世界から脱出してみせる。絶対に、意地でも。
家族のいるあのグランバニアに帰りたい。
殺し合いなんてものを始めるつもりもない。
あのジェダという男を許すなんて事は出来ない。
殺し合いなんてものを始めるつもりもない。
あのジェダという男を許すなんて事は出来ない。
タバサは渡された紅いランドセルに目をやった。
この中に入っているものによって、恐らく自分の命運は決まる。
「絶対にレックスと再会して……信頼できる人も捜して……生き残る!」
決心した彼女はランドセルの蓋を開き、片手を突っ込む。
そして掴んだものを一気に引き抜いた。
この中に入っているものによって、恐らく自分の命運は決まる。
「絶対にレックスと再会して……信頼できる人も捜して……生き残る!」
決心した彼女はランドセルの蓋を開き、片手を突っ込む。
そして掴んだものを一気に引き抜いた。
彼女が手にしたものは、台座付きの金色の宝石だった。
見た目はアクセサリーだ。どう見ても武器ではない。まるでお話にならない。
まさか、まさかこれが自分の受け取ったアイテムなのだろうか。
多少何かの魔力の様なものを感じるが、一目見ただけでは使い方が判らない。
「う、嘘よね? 嘘……よね?」
更にランドセルを漁ってみたが、他はコンパスや地図などの雑貨ばかり。
一応自分には強力な氷雪呪文や爆破呪文があるものの、これはかなり手痛いと言える。
「私、ついてないのかも……」
つい溜息をつきながら呟く。だが仕方が無い、運が悪かったのだ。
しかし「片付けて出発しよう」と考えたその時、文章が書かれた紙が足元に落ちた。
何の迷いも無く、タバサはそれを拾う。そして一番に目に付いた文面を読んでみた。
「……説明書?」
説明書と書かれていた。まさかと思い文章を読み解き始めるタバサ。
そしてやっと判った。この宝石がとんでもないものだという事がだ。
見た目はアクセサリーだ。どう見ても武器ではない。まるでお話にならない。
まさか、まさかこれが自分の受け取ったアイテムなのだろうか。
多少何かの魔力の様なものを感じるが、一目見ただけでは使い方が判らない。
「う、嘘よね? 嘘……よね?」
更にランドセルを漁ってみたが、他はコンパスや地図などの雑貨ばかり。
一応自分には強力な氷雪呪文や爆破呪文があるものの、これはかなり手痛いと言える。
「私、ついてないのかも……」
つい溜息をつきながら呟く。だが仕方が無い、運が悪かったのだ。
しかし「片付けて出発しよう」と考えたその時、文章が書かれた紙が足元に落ちた。
何の迷いも無く、タバサはそれを拾う。そして一番に目に付いた文面を読んでみた。
「……説明書?」
説明書と書かれていた。まさかと思い文章を読み解き始めるタバサ。
そしてやっと判った。この宝石がとんでもないものだという事がだ。
まずこの宝石は、ある特殊な杖の待機形態である。
杖の名は「バルディッシュ・アサルト」といい、インテリジェントデバイスに種別される杖である。
展開する事により、スタンバイフォームからデバイスフォームの状態へと移行する。
杖の名は「バルディッシュ・アサルト」といい、インテリジェントデバイスに種別される杖である。
展開する事により、スタンバイフォームからデバイスフォームの状態へと移行する。
この杖は人工知能搭載済みなので、使用者と会話が可能。
また、この杖には魔法を操る際に手助けをしてくれる機能が搭載されている。
更には杖自体にもいくつかの強力な電撃・雷撃魔法がセットされている。
(だがミッドチルダ式魔術への知識と理解がないとその魔法の使用は不可能)
更には杖自体にもいくつかの強力な電撃・雷撃魔法がセットされている。
(だがミッドチルダ式魔術への知識と理解がないとその魔法の使用は不可能)
杖の状態への移行時、使用者にはバリアジャケットの展開が可能。
尚、バリアジャケットの展開時には使用者の服装が変化するので注意。
因みに服装は使用者のイメージしたものを忠実に再現する。
尚、バリアジャケットの展開時には使用者の服装が変化するので注意。
因みに服装は使用者のイメージしたものを忠実に再現する。
紙にはこういった文章が淡々と書かれていた。
どうやらこれは自分の武器となり得る素晴らしいものであるという事らしい。
「でも、不親切な説明書ね……」
だがこれ以上文面を追っていくと、バリアジャケットや杖の展開についての方法が記されているだけ。
セットされているという魔法の説明や、説明文の中の専門用語の補足説明は一切無かったのだった。
会話可能と書いてあるので「後は自分で質問をしろ」ということなのだろうが、不親切感は否めない。
だがこのアイテムを使える状態にする説明があるだけマシだと思いたかった。
もしもこの説明書を見落としていたら、この宝石の使い方に延々と悩まされていただろう。
どうやらこれは自分の武器となり得る素晴らしいものであるという事らしい。
「でも、不親切な説明書ね……」
だがこれ以上文面を追っていくと、バリアジャケットや杖の展開についての方法が記されているだけ。
セットされているという魔法の説明や、説明文の中の専門用語の補足説明は一切無かったのだった。
会話可能と書いてあるので「後は自分で質問をしろ」ということなのだろうが、不親切感は否めない。
だがこのアイテムを使える状態にする説明があるだけマシだと思いたかった。
もしもこの説明書を見落としていたら、この宝石の使い方に延々と悩まされていただろう。
とにかく、この宝石をどうにかして杖にしなければ。
タバサは説明書に書かれている通りの手順を追う事にした。
「えっと、まずは……」
少々時間が掛かるかもしれないが。
タバサは説明書に書かれている通りの手順を追う事にした。
「えっと、まずは……」
少々時間が掛かるかもしれないが。
◆
何故自分が殺し合いを命じられなければいけないのか。
結局、蒼星石がそれを理解する事は出来なかった。
結局、蒼星石がそれを理解する事は出来なかった。
あのジェダという男が何故自分を妙な世界に呼び出したのか。
そして何故、何体かの姉妹達までもが呼び出されてしまっていたのか。
理解出来ない。最早自分達の宿命であるアリスゲームの範疇を超えている。
そして何故、何体かの姉妹達までもが呼び出されてしまっていたのか。
理解出来ない。最早自分達の宿命であるアリスゲームの範疇を超えている。
そして、何よりも恐ろしいのは翠星石がいた事だった。
あの部屋には自分と同じ様に最愛の双子の姉がいたのだ。
どんなものにも代え難い姉。勿論、会えることなら会いたいと思う。
そう考えるものの、蒼星石は踏み出せずにいた。
あの部屋には自分と同じ様に最愛の双子の姉がいたのだ。
どんなものにも代え難い姉。勿論、会えることなら会いたいと思う。
そう考えるものの、蒼星石は踏み出せずにいた。
――自分には翠星石達と再会する資格があるのだろうか。
アリスゲームに乗り、敵として戦った自分は翠星石を傷つけた。
泣いてまで止めようとした翠星石に刃を向け、決別をした。
そんな自分が今更彼女達と再会したところで何になるというのか。
拒絶されてもおかしくない。ただそれが怖かった。
アリスゲームに乗り、敵として戦った自分は翠星石を傷つけた。
泣いてまで止めようとした翠星石に刃を向け、決別をした。
そんな自分が今更彼女達と再会したところで何になるというのか。
拒絶されてもおかしくない。ただそれが怖かった。
どうすればいいのかと考えるが答えは出ない。仕方なく彼女は一度思考を止めた。
そのまま特注なのか知らないが、自分に合わせてくれたかのような小さなランドセルを背負う。
紅いその物体は蒼い服を着た自分には似合わないものだ。そう考えて苦笑してしまった。
そして彼女は当ても無く歩き出した。どうすれば良いのか判らないまま、歩き出す。
しかしそれでも構わないと思った。暫く一人で考えて整理をつけるのも良いだろう。
そのまま特注なのか知らないが、自分に合わせてくれたかのような小さなランドセルを背負う。
紅いその物体は蒼い服を着た自分には似合わないものだ。そう考えて苦笑してしまった。
そして彼女は当ても無く歩き出した。どうすれば良いのか判らないまま、歩き出す。
しかしそれでも構わないと思った。暫く一人で考えて整理をつけるのも良いだろう。
だが突然彼女は足を止め、そしてすぐに近くの大木の陰に隠れた。
進行方向上に、二つの緑色のリボンをつけた短い金髪の少女が立っていたのだ。
「誰だ……?」
見れば何かを真剣に読んでいる。こちらの姿には気付いていない。
殺気が漂っているようにも思えない。それに見た目だけなら普通の少女だ。
進行方向上に、二つの緑色のリボンをつけた短い金髪の少女が立っていたのだ。
「誰だ……?」
見れば何かを真剣に読んでいる。こちらの姿には気付いていない。
殺気が漂っているようにも思えない。それに見た目だけなら普通の少女だ。
この世界で初めて出会った他人という存在。
接触してみるのも良いかもしれない。先程までの考えを捨て、蒼星石は思考する。
そうだ、どうせ当てもなく彷徨うのならば人との接触も視野に入れて問題ないだろう。
会って話をして、そしてその後でこれからの事を考えるのも悪くない。内心、孤独なのが不安ではあるし。
接触してみるのも良いかもしれない。先程までの考えを捨て、蒼星石は思考する。
そうだ、どうせ当てもなく彷徨うのならば人との接触も視野に入れて問題ないだろう。
会って話をして、そしてその後でこれからの事を考えるのも悪くない。内心、孤独なのが不安ではあるし。
そうと決まればと彼女は作戦を練った。
まずは友好的に行こう。自分から話しかければ突然攻撃される事も無いだろう。
そしてとりあえず敵意が無い事は言葉でアピールする。上手く行けば万々歳だ。
もし相手が自分を殺そうとした場合にはどうするか。それは逃げるしかないだろう。
辺りを見渡して改めて実感したが、この森林は思った以上に深く複雑だ。
小さい自分ならどこかに隠れられるはずだ。
まずは友好的に行こう。自分から話しかければ突然攻撃される事も無いだろう。
そしてとりあえず敵意が無い事は言葉でアピールする。上手く行けば万々歳だ。
もし相手が自分を殺そうとした場合にはどうするか。それは逃げるしかないだろう。
辺りを見渡して改めて実感したが、この森林は思った以上に深く複雑だ。
小さい自分ならどこかに隠れられるはずだ。
準備をしよう。
ランドセルを下ろし、その外観を眺める。
改めてその姿を見てみると随分と変わった鞄だという事がわかる。
だがそんな事を考えている暇は無い。急いで鞄を開けた。
「良いアイテムが入っていると良いけど」
あの少女がどこかに行ってしまう前に済ませなければならない。
もしも武器が出れば、接触した際の万一の保険になる。
この鞄の中に入っている物品によって、その立ち回りは大きく変わる。
これは一つの分岐点だ。大きな運命の分かれ道なのだ。
「さぁ、どうなる?」
戸惑う事無くランドセルに手を突っ込んだ。
改めてその姿を見てみると随分と変わった鞄だという事がわかる。
だがそんな事を考えている暇は無い。急いで鞄を開けた。
「良いアイテムが入っていると良いけど」
あの少女がどこかに行ってしまう前に済ませなければならない。
もしも武器が出れば、接触した際の万一の保険になる。
この鞄の中に入っている物品によって、その立ち回りは大きく変わる。
これは一つの分岐点だ。大きな運命の分かれ道なのだ。
「さぁ、どうなる?」
戸惑う事無くランドセルに手を突っ込んだ。
さて、蒼星石に支給されたアイテムは幸運にも三種類だった。
しかしその三種類全てが強力なアイテムであるはずも無い。
当たりと呼ばれるに相応しいものはたった一種類であった。
それは10個セットで収納されていた刃の付いた輪だ。
「……武器?」
説明書曰く、名は「戦輪」で、”滝夜叉丸先輩が好んで使っていた”とのことだった。
だがそんな情報はどうでも良い。つまりは早い話がただのチャクラムなのだろう。
「大体誰? 滝夜叉丸先輩って」
自分はチャクラムを使用したことは無いので、こう実際に支給されると困る。
武器としての知識はあれど、経験が無いのでいまいち頼りないのが実情だ。
その滝夜叉丸先輩とやらに教えを請いたいところだ。妙な武器を当ててしまった。
しかしその三種類全てが強力なアイテムであるはずも無い。
当たりと呼ばれるに相応しいものはたった一種類であった。
それは10個セットで収納されていた刃の付いた輪だ。
「……武器?」
説明書曰く、名は「戦輪」で、”滝夜叉丸先輩が好んで使っていた”とのことだった。
だがそんな情報はどうでも良い。つまりは早い話がただのチャクラムなのだろう。
「大体誰? 滝夜叉丸先輩って」
自分はチャクラムを使用したことは無いので、こう実際に支給されると困る。
武器としての知識はあれど、経験が無いのでいまいち頼りないのが実情だ。
その滝夜叉丸先輩とやらに教えを請いたいところだ。妙な武器を当ててしまった。
そして残りの二つは見るも無残なハズレであった。
ジッポと呼ばれる蓋付きライターに、長方形の板チョコ。
板チョコにいたっては”メロの大好物!”と書かれた説明書が同封されている。
つまり、頼れるものは戦輪のみ。いざという時はこれで何とかしなければならない。
今の自分では冗談交じりで投げたところで打ち返されそうではあるが。
ジッポと呼ばれる蓋付きライターに、長方形の板チョコ。
板チョコにいたっては”メロの大好物!”と書かれた説明書が同封されている。
つまり、頼れるものは戦輪のみ。いざという時はこれで何とかしなければならない。
今の自分では冗談交じりで投げたところで打ち返されそうではあるが。
とにかく、支給されたアイテムの確認は出来た。
戦輪以外のアイテムをランドセルにしまい、もう一度背負う。
見ればまだ少女は移動していない。ならば今の内に接触するべきだろう。
意を決すと蒼星石は大木の影から姿を現し、目の前の少女に話しかけた。
戦輪以外のアイテムをランドセルにしまい、もう一度背負う。
見ればまだ少女は移動していない。ならば今の内に接触するべきだろう。
意を決すと蒼星石は大木の影から姿を現し、目の前の少女に話しかけた。
「やぁ、ちょっといいかな?」
◆
どういうことなのか、製作者に問い詰めたかった。
確かにあの宝石は素晴らしい出来の武器に変わった。
バルディッシュ・アサルトというこの物騒な名前の武器からは立派に魔力も感じられる。
それは良い。それは良いのだが、文句を言いたいのは今のこの状態に対してだ。
バリアジャケットとやらを生成する際に彼女が思い浮かべてしまった姿を
律儀に繊細に完璧に投影してくれたこの神秘的な力に文句を言いたかった。
確かにあの宝石は素晴らしい出来の武器に変わった。
バルディッシュ・アサルトというこの物騒な名前の武器からは立派に魔力も感じられる。
それは良い。それは良いのだが、文句を言いたいのは今のこの状態に対してだ。
バリアジャケットとやらを生成する際に彼女が思い浮かべてしまった姿を
律儀に繊細に完璧に投影してくれたこの神秘的な力に文句を言いたかった。
現在、タバサの目の前には小さな人形が立っていた。
男装という言葉が当てはまる蒼い服装の小さな人形だ。
見たこと無いが魔物だろうか。いや、今はそんな事はどうでも良い。
何故、何故こんな事になってしまったのだろう。
男装という言葉が当てはまる蒼い服装の小さな人形だ。
見たこと無いが魔物だろうか。いや、今はそんな事はどうでも良い。
何故、何故こんな事になってしまったのだろう。
何故自分は”目の前の人形と全く同じ服装”になっているのだろうか。
――疑問を解消する為、思い返す。
そう、先程タバサは自身の魔力と意識を宝石に集中させていた。
理由は当然、このバルディッシュ・アサルトという武器を使う為である。
その為に自分の思う”バリアジャケット”の形とやらを念じ、説明書に書かれてあった手順をしっかりと踏んでいた。
そしてそれが実を結んだのか、なんと宝石が輝きだした。更には猫の目の様な文様が姿を現す。
説明書によればこれは成功の合図だ。つまり自分はこのアイテムを起動させることに成功したのだ。
そうなると後の問題は自分の思う姿に変わるというバリアジャケットただ一つである。
『お母さんみたいな服にしようかな……私、一度着てみたかったんだ』
その力を使ってちょっとお洒落をしてみようかな、と考えた彼女は母の服装を念じる。
これでバリアジャケットの問題は解決。自分はバルディッシュの全貌を明らかに出来る。
だが、そんなタバサの安心と小さな願いをぶち壊しにする瞬間は呆気なく訪れた。
理由は当然、このバルディッシュ・アサルトという武器を使う為である。
その為に自分の思う”バリアジャケット”の形とやらを念じ、説明書に書かれてあった手順をしっかりと踏んでいた。
そしてそれが実を結んだのか、なんと宝石が輝きだした。更には猫の目の様な文様が姿を現す。
説明書によればこれは成功の合図だ。つまり自分はこのアイテムを起動させることに成功したのだ。
そうなると後の問題は自分の思う姿に変わるというバリアジャケットただ一つである。
『お母さんみたいな服にしようかな……私、一度着てみたかったんだ』
その力を使ってちょっとお洒落をしてみようかな、と考えた彼女は母の服装を念じる。
これでバリアジャケットの問題は解決。自分はバルディッシュの全貌を明らかに出来る。
だが、そんなタバサの安心と小さな願いをぶち壊しにする瞬間は呆気なく訪れた。
「やぁ、ちょっと良いかな?」
目の前に、突然小さな人形のようなものが現れ、話しかけてきたのだ。
宝石の未知なる力の起動に挑戦していたタバサの視界に、突然現れた相手。
そう、その相手に意識を移してしまったのが間違いだったのだ。ここで歯車は完全に狂ったのだ。
何故なら宝石がその姿を変化させたのは、タバサがその相手の姿に意識を向けた瞬間だったのだから。
宝石の未知なる力の起動に挑戦していたタバサの視界に、突然現れた相手。
そう、その相手に意識を移してしまったのが間違いだったのだ。ここで歯車は完全に狂ったのだ。
何故なら宝石がその姿を変化させたのは、タバサがその相手の姿に意識を向けた瞬間だったのだから。
それからは本当に何もかもが早かった。
ストップをかける暇も与えず、タバサの服は姿形を変える。
そして気がつけば自身の服は、目の前にいるあの人形の着ている服と同じものに変化していた。
母の着ていた服などとは程遠い、深い蒼で固められた服。それが今の自分のバリアジャケットだ。
ストップをかける暇も与えず、タバサの服は姿形を変える。
そして気がつけば自身の服は、目の前にいるあの人形の着ている服と同じものに変化していた。
母の着ていた服などとは程遠い、深い蒼で固められた服。それが今の自分のバリアジャケットだ。
「そ、その……僕は蒼星石って言うんだけど……ごめん、邪魔しちゃった……かな?」
引きつった笑みを浮かべながら、目の前の蒼星石と名乗った人形が謝罪をする。
まあ、この態度は当然だろう。話しかけた相手が突然光ったと思いきや自分と同じ服装になっている。
これほど驚くことは無いはずだ。タバサは相手が抱いているであろう感想に心底同意した。
まあ、この態度は当然だろう。話しかけた相手が突然光ったと思いきや自分と同じ服装になっている。
これほど驚くことは無いはずだ。タバサは相手が抱いているであろう感想に心底同意した。
◆
目の前の少女が自分と同じ服装に変わるのを目撃してしまう。
そんな居た堪れない事件が起きて数十分後になるだろうか。
そんな居た堪れない事件が起きて数十分後になるだろうか。
「本当にごめん!」
「いいよ、そんなつもりは無かったのは判ったし」
「で、でも……ごめん」
「いいよ、そんなつもりは無かったのは判ったし」
「で、でも……ごめん」
あれから蒼星石は少女との情報交換を行い、そして必死に謝罪をしていた。
「君には悪い事をしちゃったな……本当に……」
「大丈夫よ、もう気にしてないわ。それにこの服だって素敵だもの」
蒼星石は湧き上がる罪悪感と申し訳なさに背中を押され、幾度と無く謝罪を繰り返していた。
まさか相手がアイテムを使用している最中で、更には服装を変化させようとしている最中とは思わなかった。
知らぬ事とはいえ、悪い事をした。許してくれた相手の慈悲深さに感謝しなければならない。
「そういえば、蒼星石みたいな女の子のお人形さんは……まだ、他にもいるのよね?」
そんな事を考えていると、今度は相手から話しかけられた。
自分に対する直接的な問い。嘘をつく理由も無いので首を縦に振った。
「大丈夫よ、もう気にしてないわ。それにこの服だって素敵だもの」
蒼星石は湧き上がる罪悪感と申し訳なさに背中を押され、幾度と無く謝罪を繰り返していた。
まさか相手がアイテムを使用している最中で、更には服装を変化させようとしている最中とは思わなかった。
知らぬ事とはいえ、悪い事をした。許してくれた相手の慈悲深さに感謝しなければならない。
「そういえば、蒼星石みたいな女の子のお人形さんは……まだ、他にもいるのよね?」
そんな事を考えていると、今度は相手から話しかけられた。
自分に対する直接的な問い。嘘をつく理由も無いので首を縦に振った。
そう、タバサ――許可が下りたので、今は互いに呼び捨てで呼んでいる――は
蒼星石が話した自身の生い立ちや課せられた宿命などを、本当にあっさりと信用してくれた。
それは単純に彼女が素直なのか、それとも凄い人生を歩んできたおかげなのか。
恐らくは両者だろう。彼女を只者ではないと認識しているため、蒼星石はそう結論付ける。
実際聞くところによると、彼女は蒼星石を驚かせるほどのとんでもない人生を歩んでいる。
アリスゲームの宿命を背負った自分に勝るとも劣らない壮絶なものなのだ。
「バルディッシュも会話に入ってくれれば良いのに」
『失礼致しました』
「それに私もあなたに訊きたい事が沢山あるもの。だからお願い、ね?」
『了解』
タバサがバルディッシュ・アサルトという喋る杖と会話をしている。
その姿からは彼女の秘められた力や壮絶な人生はまるで想像できない。
自分と同じ服を着ている以外は、本当に普通の女の子だった。
蒼星石が話した自身の生い立ちや課せられた宿命などを、本当にあっさりと信用してくれた。
それは単純に彼女が素直なのか、それとも凄い人生を歩んできたおかげなのか。
恐らくは両者だろう。彼女を只者ではないと認識しているため、蒼星石はそう結論付ける。
実際聞くところによると、彼女は蒼星石を驚かせるほどのとんでもない人生を歩んでいる。
アリスゲームの宿命を背負った自分に勝るとも劣らない壮絶なものなのだ。
「バルディッシュも会話に入ってくれれば良いのに」
『失礼致しました』
「それに私もあなたに訊きたい事が沢山あるもの。だからお願い、ね?」
『了解』
タバサがバルディッシュ・アサルトという喋る杖と会話をしている。
その姿からは彼女の秘められた力や壮絶な人生はまるで想像できない。
自分と同じ服を着ている以外は、本当に普通の女の子だった。
そう、本来は普通であるべきなのだ。
いくら旅をしていたとはいえ、まだ年齢は十歳程。
こんな殺戮の舞台に放り込まれるべきではないのだ。
この家族や兄を愛する純粋な少女に、アリスゲームの様な戦いは似合わない。
いくら旅をしていたとはいえ、まだ年齢は十歳程。
こんな殺戮の舞台に放り込まれるべきではないのだ。
この家族や兄を愛する純粋な少女に、アリスゲームの様な戦いは似合わない。
彼女の願いは、兄と再会してこの世界から脱出する事らしい。
その為にも信頼できる仲間を捜したい、そうも言っていた。
しかし自分はどうだろう。姉妹達に会う事に戸惑い、何がしたいのか判らない。
それに比べて彼女は明確な意思をもって行動を起こした。
――そんな彼女についていけばいつかは自分が何をするべきかが判るだろうか。
「あの、タバサ……」
「どうしたの?」
更に蒼星石は、タバサの力になってあげたいとも思い始めていた。
その理由ははっきりとはしない。タバサ自身の強さに興味を持ったのかもしれないし、
自分が一人になりたくないだけかも知れない。けれど力になりたいという想いは本物だ。
その為にも信頼できる仲間を捜したい、そうも言っていた。
しかし自分はどうだろう。姉妹達に会う事に戸惑い、何がしたいのか判らない。
それに比べて彼女は明確な意思をもって行動を起こした。
――そんな彼女についていけばいつかは自分が何をするべきかが判るだろうか。
「あの、タバサ……」
「どうしたの?」
更に蒼星石は、タバサの力になってあげたいとも思い始めていた。
その理由ははっきりとはしない。タバサ自身の強さに興味を持ったのかもしれないし、
自分が一人になりたくないだけかも知れない。けれど力になりたいという想いは本物だ。
「その”信頼できる仲間”に……僕はなれないかな?」
だから、蒼星石は言った。共に行動したいというという明確な思いをぶつけた。
自身に何も還元されなくとも良い。ただ協力したい、それだけだった。
自身に何も還元されなくとも良い。ただ協力したい、それだけだった。
タバサが嬉しそうに頷いてくれた。
【D-3/森(D-3の北西寄り)/1日目/朝】
【タバサ@ドラゴンクエスト5】
[状態]:健康、バリアジャケット展開中(蒼星石と同じ服装)
[装備]:バルディッシュ・アサルト@魔法少女リリカルなのは
[道具]:基本支給品
[思考]
第一行動方針:バルディッシュ・アサルトから色々と教えてもらう
第二行動方針:信頼できる仲間を捜す
基本行動方針:蒼星石と行動してレックスを捜す
最終行動方針:レックスと再会してこの世界から脱出する
参戦時期:エンディング以降
[備考]
[状態]:健康、バリアジャケット展開中(蒼星石と同じ服装)
[装備]:バルディッシュ・アサルト@魔法少女リリカルなのは
[道具]:基本支給品
[思考]
第一行動方針:バルディッシュ・アサルトから色々と教えてもらう
第二行動方針:信頼できる仲間を捜す
基本行動方針:蒼星石と行動してレックスを捜す
最終行動方針:レックスと再会してこの世界から脱出する
参戦時期:エンディング以降
[備考]
- このロワに参加しているタバサは、主人公とビアンカの娘です
- ED後なので「ドラゴンクエスト5」内でタバサが覚える魔法は全て習得しています
- タバサはまだミッドチルダ式魔法の知識を持っていません
【蒼星石@ローゼンメイデン】
[状態]:健康、姉妹達への精神的な壁
[装備]:戦輪×10個@忍たま乱太郎
[道具]:基本支給品、ジッポ、板チョコ@DEATH NOTE
[思考]
第一行動方針:タバサに協力する
第二行動方針:いつかは翠星石を初めとする姉妹達にも会いたい
基本行動方針:タバサに協力しつつ自分探し
参戦時期:アニメ最終回以降
[状態]:健康、姉妹達への精神的な壁
[装備]:戦輪×10個@忍たま乱太郎
[道具]:基本支給品、ジッポ、板チョコ@DEATH NOTE
[思考]
第一行動方針:タバサに協力する
第二行動方針:いつかは翠星石を初めとする姉妹達にも会いたい
基本行動方針:タバサに協力しつつ自分探し
参戦時期:アニメ最終回以降
アイテム解説
【バルディッシュ・アサルト】
魔法少女リリカルなのはA'sでフェイトが使用する
漆黒のインテリジェントデバイス(意志有る魔法の杖)。
本人に魔法の素養があれば上手く使いこなすことが可能。
形状を武器の様に変化させたり、雷撃・電撃の魔法を使うことが出来る。
近接戦闘や遠距離戦闘どちらもバランス良く使用可能。
バリアジャケットはこの装備から作り出される。
魔法少女リリカルなのはA'sでフェイトが使用する
漆黒のインテリジェントデバイス(意志有る魔法の杖)。
本人に魔法の素養があれば上手く使いこなすことが可能。
形状を武器の様に変化させたり、雷撃・電撃の魔法を使うことが出来る。
近接戦闘や遠距離戦闘どちらもバランス良く使用可能。
バリアジャケットはこの装備から作り出される。
【戦輪】
忍たま乱太郎の登場人物、滝夜叉丸が好んで使っていた「斬る」為の投擲武器。
真ん中に穴のあいた金属製の円盤の外側に刃が付けられており、大きさは直径12-30cm程。
投げ方は二通りあり、円盤の中央に指をいれて回しながら投擲する方法と、円盤を指で挟み投擲する方法がある。
忍たま乱太郎の登場人物、滝夜叉丸が好んで使っていた「斬る」為の投擲武器。
真ん中に穴のあいた金属製の円盤の外側に刃が付けられており、大きさは直径12-30cm程。
投げ方は二通りあり、円盤の中央に指をいれて回しながら投擲する方法と、円盤を指で挟み投擲する方法がある。
【板チョコ】
DEATH NOTEのメロが好きな黒い板チョコ。齧るとパキパキ言う。
DEATH NOTEのメロが好きな黒い板チョコ。齧るとパキパキ言う。
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