彼女の意思を継いで僕は……◆xncBWD4TMo
ザクッ、ザクッ、ザクッ……。
神社の本殿のわきにある土場。乾いた土が次から次へと削り取られる音が聞こえる。
ただでさえ木々が生い茂り薄暗い空間、その薄闇の中でリンクはひたすら穴を掘っていた。
何のための穴か、といわれれば言うまでもない。
ただでさえ木々が生い茂り薄暗い空間、その薄闇の中でリンクはひたすら穴を掘っていた。
何のための穴か、といわれれば言うまでもない。
「ごめんね……ごめんね……梨花、ちゃん……」
本殿に偶然置いてあったスコップを土壌に差しながら、悲痛な面持ちでリンクは呟く。
リンクのそばにある縁側には、さっきまで元気な笑顔を見せていたはずの梨花が横たわっていた。
ジェダに対抗できる勢力が徐々に集まりつつある現状に希望を見出していた梨花。
彼女は辛い現実と向き合いつつも、決してめげることなくいつも活気に満ちた笑みを浮かべていた。
その笑顔にリンク自身、何度も心洗われただろう。
梨花はもう動かない。もう何も喋らない。
「にぱー」と言いながら満面の笑みを浮かべる彼女の顔は、もう見られない。
夜の空気に晒されてすっかり冷たくなってしまった梨花の体は、二度と温もりを帯びることは無い。
リンクのそばにある縁側には、さっきまで元気な笑顔を見せていたはずの梨花が横たわっていた。
ジェダに対抗できる勢力が徐々に集まりつつある現状に希望を見出していた梨花。
彼女は辛い現実と向き合いつつも、決してめげることなくいつも活気に満ちた笑みを浮かべていた。
その笑顔にリンク自身、何度も心洗われただろう。
梨花はもう動かない。もう何も喋らない。
「にぱー」と言いながら満面の笑みを浮かべる彼女の顔は、もう見られない。
夜の空気に晒されてすっかり冷たくなってしまった梨花の体は、二度と温もりを帯びることは無い。
自分が守ると誓った少女が、あまりにもあっけなく死んでしまった。
それがリンクにとって、悔しくてたまらなかった。
ただ悔しいだけならまだよかった。
乱太郎の時のように殺し合いに乗った人物に襲われて、決死の想いで挑んだけれども結局救えなかったのなら、納得いかずとも踏ん切りがついたのかもしれない。
自分の力量不足が原因で悲しい結末を迎えてしまったのだから、潔く諦める他無かっただろう。
それ以上望みのある展開など無かったのだから。
それがリンクにとって、悔しくてたまらなかった。
ただ悔しいだけならまだよかった。
乱太郎の時のように殺し合いに乗った人物に襲われて、決死の想いで挑んだけれども結局救えなかったのなら、納得いかずとも踏ん切りがついたのかもしれない。
自分の力量不足が原因で悲しい結末を迎えてしまったのだから、潔く諦める他無かっただろう。
それ以上望みのある展開など無かったのだから。
だが、今回の場合は違う。明らかに自分の判断ミスによるものだ。
インデックス達が去った後、武器を探しに祭具殿へ行かず、先にエヴァの存在を確かめていれば。
馴染みのある建築物だからと単身で鍵を探そうとした梨花に無理にでも同行していれば。
……まだ幼くか弱い梨花に代わって、幾度となく身辺の危機を経験してきた自分がしっかりしていれば。
哀の時もそうだったが、自分は結局何も出来なかった。
インデックス達が去った後、武器を探しに祭具殿へ行かず、先にエヴァの存在を確かめていれば。
馴染みのある建築物だからと単身で鍵を探そうとした梨花に無理にでも同行していれば。
……まだ幼くか弱い梨花に代わって、幾度となく身辺の危機を経験してきた自分がしっかりしていれば。
哀の時もそうだったが、自分は結局何も出来なかった。
「あのとき僕がついて行けば梨花ちゃんは……糞っ!!」
激情のままにスコップを地面に突き立てる。スコップを握る手がぶるぶると震える。
怒りは専ら、自分に対して、だ。
当然、梨花を殺したエヴァも憎いが、それ以上にリンクは己の愚行が許せなかった。
一瞬の気の緩みがその後の悲劇を導く、ここはそんな世界だったのに。
リンク自身もそのことに関しては十分理解していたはずなのに。
梨花を残すことがどれほど危険なのか、先の一休との戦闘で身を持って体感したはずなのに――――――。
怒りは専ら、自分に対して、だ。
当然、梨花を殺したエヴァも憎いが、それ以上にリンクは己の愚行が許せなかった。
一瞬の気の緩みがその後の悲劇を導く、ここはそんな世界だったのに。
リンク自身もそのことに関しては十分理解していたはずなのに。
梨花を残すことがどれほど危険なのか、先の一休との戦闘で身を持って体感したはずなのに――――――。
絶えずこみ上げてくる自責の念に捕らわれながらも、リンクはようやく穴を掘り終えた。
それは少女一人がすっぽり埋まってしまうであろう、小さな穴だった。
土で汚れた衣服には目もくれず、リンクは最早動かない梨花の方へと歩み寄る。
その小さい手を握ると、とてもとても冷たかった。
それは少女一人がすっぽり埋まってしまうであろう、小さな穴だった。
土で汚れた衣服には目もくれず、リンクは最早動かない梨花の方へと歩み寄る。
その小さい手を握ると、とてもとても冷たかった。
その冷たい感触に触発され、リンクの体はまた悲しみに震える。
やりきれない想いがうずうずと募り、再びリンクの心を蝕んでいく。
やっても意味の無い仮定を繰り返しながらも、リンクは現実の非情さを忘れられない。
決して救えないわけではなかった少女の亡骸を見つめ、
やりきれない想いがうずうずと募り、再びリンクの心を蝕んでいく。
やっても意味の無い仮定を繰り返しながらも、リンクは現実の非情さを忘れられない。
決して救えないわけではなかった少女の亡骸を見つめ、
「ごめん……ね」
リンクはただ謝ることしかできなかった。
それだって意味の無い謝罪だと分かっていても。
それだって意味の無い謝罪だと分かっていても。
改めて梨花の死を認識し、リンクはまたむせび泣いた。
* *
梨花を埋葬した後、リンクは祭具殿の前に立っていた。
梨花が最後にやろうとしていたこと。この中にあると思われる武器を手に入れるためだ。
扉には南京錠が掛かっていたが、その鍵と思しきものは既に手中にある。
本殿の中を必死に探し回ったあげく、とある部屋の引き出しの中から発見したものだ。
梨花が最後にやろうとしていたこと。この中にあると思われる武器を手に入れるためだ。
扉には南京錠が掛かっていたが、その鍵と思しきものは既に手中にある。
本殿の中を必死に探し回ったあげく、とある部屋の引き出しの中から発見したものだ。
この鍵が祭具殿を開けるためのものだという保証は勿論なかったが、他にそれらしきものも見当たらなかった。
これがダメならまた神社内を探す羽目になる。
最悪、エヴァが持っていたランドセルに入っていた爆弾を使って強引に開けることも考えていたが……その心配は杞憂に終わった。
錠前に鍵を差込み回すと、カチャッと音が鳴り、難なく外れたのだ。
これがダメならまた神社内を探す羽目になる。
最悪、エヴァが持っていたランドセルに入っていた爆弾を使って強引に開けることも考えていたが……その心配は杞憂に終わった。
錠前に鍵を差込み回すと、カチャッと音が鳴り、難なく外れたのだ。
「この中に武器が……」
扉を開けずとも感じられる威圧感。
それはちょうど、ボス部屋に続く道を開いた時に感じるものとどこかしら酷似していた。
初めてデクの樹サマの中に潜んでいたゴーマと対峙した時なんかは、相手の未知なる力に酷く恐れをなしたものだ。
今の心境もそれと似たようなものだっただろうか。
別にこの中にモンスターが潜んでいるわけでもないのに。
それはちょうど、ボス部屋に続く道を開いた時に感じるものとどこかしら酷似していた。
初めてデクの樹サマの中に潜んでいたゴーマと対峙した時なんかは、相手の未知なる力に酷く恐れをなしたものだ。
今の心境もそれと似たようなものだっただろうか。
別にこの中にモンスターが潜んでいるわけでもないのに。
固唾を呑みつつ、リンクは祭具殿の扉に手をかける。
ギイと板が軋む音が響き渡り、薄闇の中に更なる闇が顔を出す。
中は真っ暗で何も見えない。当然と言えば当然だが。
後ろ手に扉を閉める前にランドセルから懐中電灯を取り出し、神聖なるこの建物の内部を照らし出す。
ギイと板が軋む音が響き渡り、薄闇の中に更なる闇が顔を出す。
中は真っ暗で何も見えない。当然と言えば当然だが。
後ろ手に扉を閉める前にランドセルから懐中電灯を取り出し、神聖なるこの建物の内部を照らし出す。
「うわ、大きいな……」
明かりの先にまず浮かび上がったもの、それは巨大な金色の像だった。
魂の神殿にあった巨大邪神像ほど大きくはないが、その荘厳たる立ち振る舞いには禍々しさまで感じられる。
魂の神殿にあった巨大邪神像ほど大きくはないが、その荘厳たる立ち振る舞いには禍々しさまで感じられる。
「これが梨花ちゃんの言ってた、オヤシロ様……かな」
梨花と出会った頃になんとなくしていた他愛も無い会話を思い出す。
なんでも梨花は古手神社の巫女を務めていたらしく、その神社ではオヤシロ様なるご神体が祭られていたんだとか。
その時は神社というものがどんなものなのかリンクにはあまりピンと来なかったが、要は自分の世界で言う神殿のようなものだ。
マスターソードを通して大人の体に成長した後、ハイラル各地の様々な神殿に赴いた経験を持つリンクには概ね想像はつく。
なんでも梨花は古手神社の巫女を務めていたらしく、その神社ではオヤシロ様なるご神体が祭られていたんだとか。
その時は神社というものがどんなものなのかリンクにはあまりピンと来なかったが、要は自分の世界で言う神殿のようなものだ。
マスターソードを通して大人の体に成長した後、ハイラル各地の様々な神殿に赴いた経験を持つリンクには概ね想像はつく。
神社の巫女、それは自分の世界で言う神殿を守る賢者に当たるのだろうか、とリンクは思っていた。
本当は外に出たいけれども、神殿を守るという重要な仕事のため、それが一切出来ない。
梨花の場合は外に出られたみたいだが、それでも自分のやるべきことは決して怠ってはならなかっただろう。
まだこんなに幼いのにサリアやダルニアのような凄い使命を担っていたんだなあ、とリンクは感心したものだ。
本当は外に出たいけれども、神殿を守るという重要な仕事のため、それが一切出来ない。
梨花の場合は外に出られたみたいだが、それでも自分のやるべきことは決して怠ってはならなかっただろう。
まだこんなに幼いのにサリアやダルニアのような凄い使命を担っていたんだなあ、とリンクは感心したものだ。
「それなのに……それなのに僕はっ!!」
ぎり、と無意識に拳を握り締める。
リンクの世界にいた賢者達は誰一人欠けることなくその使命を果たしてくれた。
サリアも、ダルニアも、ルトも……皆まだ生きている。だからハイラルの平和も保たれている。
リンクの世界にいた賢者達は誰一人欠けることなくその使命を果たしてくれた。
サリアも、ダルニアも、ルトも……皆まだ生きている。だからハイラルの平和も保たれている。
だけど、梨花の世界ではどうだろう?
神社の守り手としてはたらいていた梨花がいなくなった今、とんでもないことになっているかもしれない。
邪悪なる魔の力が蔓延し、大勢の人々が苦しみ嘆いているのかもしれない。
リンクの世界で言えば、かつてガノンドロフに支配されたコキリの森のように、ゴロンシティのように、ゾーラの里のように――――。
自分は梨花を助けられなかっただけでなく、梨花の住んでいた世界をも破滅に追い込んでしまったのではないか?
神社の守り手としてはたらいていた梨花がいなくなった今、とんでもないことになっているかもしれない。
邪悪なる魔の力が蔓延し、大勢の人々が苦しみ嘆いているのかもしれない。
リンクの世界で言えば、かつてガノンドロフに支配されたコキリの森のように、ゴロンシティのように、ゾーラの里のように――――。
自分は梨花を助けられなかっただけでなく、梨花の住んでいた世界をも破滅に追い込んでしまったのではないか?
「だめだ、こんなことばかり考えてちゃ……」
頭を左右にぶんぶん振り、ネガティブな思考を振り払う。
罪の意識を痛いほど感じるも、今はぐずぐずしている場合ではない。
自分は梨花の意思を継がなきゃいけないのだから。
もう二度と梨花のような過ちを繰り返さないためにも。
それに……武器を探し出して一刻も早くここを出たかった。
ここに居る限り、自分の心が罪悪感に呑まれて発狂してしまいそうだったから……。
罪の意識を痛いほど感じるも、今はぐずぐずしている場合ではない。
自分は梨花の意思を継がなきゃいけないのだから。
もう二度と梨花のような過ちを繰り返さないためにも。
それに……武器を探し出して一刻も早くここを出たかった。
ここに居る限り、自分の心が罪悪感に呑まれて発狂してしまいそうだったから……。
祭具殿の奥に行くと、なにやら色んな物が散布されていた。
懐中電灯で照らしてみると、どうやら梨花の言っていた通り、武器に使えるもののようだ。
鉄製の斧や、金属バット、先端が尖った鉈、所々錆付いた鉄パイプ、などなど……。
中にはリンクが見たことの無いような異質の代物も含まれていた。
懐中電灯で照らしてみると、どうやら梨花の言っていた通り、武器に使えるもののようだ。
鉄製の斧や、金属バット、先端が尖った鉈、所々錆付いた鉄パイプ、などなど……。
中にはリンクが見たことの無いような異質の代物も含まれていた。
どうしてこんなものが神を祭るための施設に納められているのか甚だ疑問だったが、リンクは敢えて考えなかった。
いや、考えたくなかったのだが、しかし新たに視界に飛び込んできたものを見て思わず息を呑んだ。
いや、考えたくなかったのだが、しかし新たに視界に飛び込んできたものを見て思わず息を呑んだ。
「これって、まさか……」
そこに在ったのは人型に模られた板、いわゆる貼り付け台のようなもの。
四足を拘束して身動きできなくした後で見るに耐えない拷問を加えるための。
リンクもこのテの処刑道具は一度見た事があるから分かる。
カカリコ村の井戸の底、そして闇の神殿の中に茫洋と広がっていた暗黒の世界。
鎖、牢屋、鉄格子、手錠。それは人を痛めつけるためだけに使われた空間。
木製の十字架におびただしい量の血痕が残っていた光景は、今なおリンクの脳裏に焼きついている。
四足を拘束して身動きできなくした後で見るに耐えない拷問を加えるための。
リンクもこのテの処刑道具は一度見た事があるから分かる。
カカリコ村の井戸の底、そして闇の神殿の中に茫洋と広がっていた暗黒の世界。
鎖、牢屋、鉄格子、手錠。それは人を痛めつけるためだけに使われた空間。
木製の十字架におびただしい量の血痕が残っていた光景は、今なおリンクの脳裏に焼きついている。
「どうしてこんなものが、まさか梨花ちゃんは……いや、そんなはずないか」
一瞬頭に浮かんだ事を、すぐに否定する。
梨花がこんな人道に反する野蛮な行為をするわけがない。
神社の巫女という大層な役目があったとはいえ、梨花はまだいたいけで純粋な少女だったはずだ。
哀の死を間近に感じ、高町なのはにあからさまな怒りをぶつけていた梨花が、拷問紛いの処刑なんてするわけがない。
梨花がこんな人道に反する野蛮な行為をするわけがない。
神社の巫女という大層な役目があったとはいえ、梨花はまだいたいけで純粋な少女だったはずだ。
哀の死を間近に感じ、高町なのはにあからさまな怒りをぶつけていた梨花が、拷問紛いの処刑なんてするわけがない。
それによくよく考えれば、ここはリンクや梨花が住んでいた世界とは明らかに違う世界なのだ。
梨花曰く、この神社は梨花の知る古手神社とそっくりの構造をしていたようである。
だが、それはあくまでも見た目だけだという可能性もある。
外観は似ていても、細部まで全く似ているとは限らない。
あのジェダのことだ、大方この神社を模倣する際に祭具殿の中にあったものを一新していたのだろう。
そして殺し合いがスムーズに行われるように、このような武器までご丁寧に配置していたのだ。
さらには本来ありもしない拷問道具も添えておき、参加者に恐怖感を植え付ける。
ジェダならやりかねないことだ。
何故わざわざ古手神社のコピーを造る必要があったのかは皆目検討がつかなかったが。
梨花曰く、この神社は梨花の知る古手神社とそっくりの構造をしていたようである。
だが、それはあくまでも見た目だけだという可能性もある。
外観は似ていても、細部まで全く似ているとは限らない。
あのジェダのことだ、大方この神社を模倣する際に祭具殿の中にあったものを一新していたのだろう。
そして殺し合いがスムーズに行われるように、このような武器までご丁寧に配置していたのだ。
さらには本来ありもしない拷問道具も添えておき、参加者に恐怖感を植え付ける。
ジェダならやりかねないことだ。
何故わざわざ古手神社のコピーを造る必要があったのかは皆目検討がつかなかったが。
梨花の言っていた武器がどんなものだったのかは最早知る由もないが、少なくともこんな非道極まりないものではないだろう、とリンクは結論付ける。
いや、武器に非道もなにもないとは思うが、仮にも神を祭るための建物である。
もっとこう……神殿を守る守護者が使うそれ専用的なものだと思っていた。
そして……同時にジェダに対する憤りも沸々と湧いてきた。
梨花にとっておそらく最も大切な場所であった古手神社の祭具殿を、こんな処刑場じみた恐ろしいものにすり替えたことが許せなかった。
ジェダのあくどさは重々承知していたが、嫌がらせにも程がある。
いや、武器に非道もなにもないとは思うが、仮にも神を祭るための建物である。
もっとこう……神殿を守る守護者が使うそれ専用的なものだと思っていた。
そして……同時にジェダに対する憤りも沸々と湧いてきた。
梨花にとっておそらく最も大切な場所であった古手神社の祭具殿を、こんな処刑場じみた恐ろしいものにすり替えたことが許せなかった。
ジェダのあくどさは重々承知していたが、嫌がらせにも程がある。
とはいえ、今此処にいないジェダに対して延々と憎しみの念を増幅させても仕方が無い。
リンクは自分の使えそうな武器をいくつか回収し、それらをランドセルに仕舞い込むと、足早に祭具殿から抜け出した。
念のため鍵を掛けておき、中にあったものを今一度封印しておく。
リンクは自分の使えそうな武器をいくつか回収し、それらをランドセルに仕舞い込むと、足早に祭具殿から抜け出した。
念のため鍵を掛けておき、中にあったものを今一度封印しておく。
もうこの中には入りたくない。ついでに言えば他の誰にも入って欲しくない。
――――中にあるものを誰にも見られたくなかった。
――――中にあるものを誰にも見られたくなかった。
* *
祭具殿を出た僕は再び神社の本殿へと赴き、とある一室に潜んでいた。
特に何をするわけでもない。今僕がすべきことは、ニケやインデックス達が帰ってくるのをひたすら待つのみ。
支給品の整理も、祭具殿で手に入れた武器の使い方の把握も、ばっちり終えている。
部屋の中は物音一つしない静寂に包まれていて真っ暗だけど、窓から外の様子なら分かる。
境内に誰か入れば、容易くその存在が確認できるだろう。
念のため左手に祭具殿で手に入れた斧を握りしめ、僕は外の様子を休むことなく監視していた。
背中の痛みも、もうほとんど感じない。いざとなれば、僕はいつだって戦える。
特に何をするわけでもない。今僕がすべきことは、ニケやインデックス達が帰ってくるのをひたすら待つのみ。
支給品の整理も、祭具殿で手に入れた武器の使い方の把握も、ばっちり終えている。
部屋の中は物音一つしない静寂に包まれていて真っ暗だけど、窓から外の様子なら分かる。
境内に誰か入れば、容易くその存在が確認できるだろう。
念のため左手に祭具殿で手に入れた斧を握りしめ、僕は外の様子を休むことなく監視していた。
背中の痛みも、もうほとんど感じない。いざとなれば、僕はいつだって戦える。
…………梨花ちゃんのことは、確かに悔しい。
悔しいどころか、自分が情けなくも思えてくる。
自分で守ると誓っておきながら、結局梨花ちゃんを助けられなかったのだから。
悔しいどころか、自分が情けなくも思えてくる。
自分で守ると誓っておきながら、結局梨花ちゃんを助けられなかったのだから。
でも、梨花ちゃんの死をいつまでも未練がましく反芻しているわけにはいかない。
もう起きてしまったことは変えられない。ここには時の歌なんて便利なものはないのだから。
僕は梨花ちゃんの意思を継いで、このゲームを破壊しなければならない。
あのにっくきジェダを倒して、梨花ちゃんみたいな善良な子供達をみんな救い出さなければならない。
これは僕に課せられた新たなる使命だ。
ハイラルを救うことができた僕になら、きっとできる。いや、必ずやり遂げてみせる。
今の僕には武器もあるし、仲間だってまだ沢山生き残っている。
一休みたいな変質者が相手だろうと、ゲームに乗った人殺しが相手だろうと、僕は絶対に屈しない。
諦めたらそこで終わりだ。ゲームオーバーだ。この島で辛い思いをしたのは僕だけじゃない。
どんな辛苦にぶち当たっても、どんな悲劇に見舞われても、みんなそれを乗り越えて奮闘しているんだ。
僕も梨花ちゃんの死を潔く受け入れて、ゲーム破壊のために頑張らなくちゃいけないんだ。
前向きに考えよう。悲観的になってちゃダメだ。
希望は……まだ残っているんだから。
もう起きてしまったことは変えられない。ここには時の歌なんて便利なものはないのだから。
僕は梨花ちゃんの意思を継いで、このゲームを破壊しなければならない。
あのにっくきジェダを倒して、梨花ちゃんみたいな善良な子供達をみんな救い出さなければならない。
これは僕に課せられた新たなる使命だ。
ハイラルを救うことができた僕になら、きっとできる。いや、必ずやり遂げてみせる。
今の僕には武器もあるし、仲間だってまだ沢山生き残っている。
一休みたいな変質者が相手だろうと、ゲームに乗った人殺しが相手だろうと、僕は絶対に屈しない。
諦めたらそこで終わりだ。ゲームオーバーだ。この島で辛い思いをしたのは僕だけじゃない。
どんな辛苦にぶち当たっても、どんな悲劇に見舞われても、みんなそれを乗り越えて奮闘しているんだ。
僕も梨花ちゃんの死を潔く受け入れて、ゲーム破壊のために頑張らなくちゃいけないんだ。
前向きに考えよう。悲観的になってちゃダメだ。
希望は……まだ残っているんだから。
「それにしても、遅いな……」
思考を戻す。過去のいざこざについて耽るのはもう終わり。
今、神社を離れて活動している人達はどうしているだろうか。
梨花ちゃんを埋葬したり、祭具殿の鍵を探してあちこち奔走してたりしたもんだから、予想以上に時間が経っている。
それなのに、神社の境内には人っ子一人現れる気配もない。
インデックス達の方はともかく、学校に斥候しているはずのニケは距離的に近いこともあって、もうそろそろ戻ってきてもおかしくないはずだ。
アラストールも『すぐに帰ってくるだろう』と言っていたし……。
今、神社を離れて活動している人達はどうしているだろうか。
梨花ちゃんを埋葬したり、祭具殿の鍵を探してあちこち奔走してたりしたもんだから、予想以上に時間が経っている。
それなのに、神社の境内には人っ子一人現れる気配もない。
インデックス達の方はともかく、学校に斥候しているはずのニケは距離的に近いこともあって、もうそろそろ戻ってきてもおかしくないはずだ。
アラストールも『すぐに帰ってくるだろう』と言っていたし……。
「まさか、何かあったんじゃ……!」
予感はいやでも悪いほうへと傾く。
もしかしたらゲームに乗った参加者に襲われて、戻ろうにも戻れない状況なのかもしれない。
それに学校は今火事になっているはずだ。逃げ遅れた人を偶然発見して、それを救出するのに時間が掛かっている可能性も否定できない。
だとしたら一刻も早く助けに行かなければ……。もう梨花ちゃんみたいな犠牲者は出したくないから。
もしかしたらゲームに乗った参加者に襲われて、戻ろうにも戻れない状況なのかもしれない。
それに学校は今火事になっているはずだ。逃げ遅れた人を偶然発見して、それを救出するのに時間が掛かっている可能性も否定できない。
だとしたら一刻も早く助けに行かなければ……。もう梨花ちゃんみたいな犠牲者は出したくないから。
でも、一方で単なるとり越し苦労だ、とも思う。
例えば学校で他の参加者と出会って情報交換でもしていれば、帰りが遅くなるのも頷ける。
もしそうだったなら、僕が神社を出てすぐに入れ違いで戻ってくることだってありうるだろう。
例えば学校で他の参加者と出会って情報交換でもしていれば、帰りが遅くなるのも頷ける。
もしそうだったなら、僕が神社を出てすぐに入れ違いで戻ってくることだってありうるだろう。
インデックス達の方も、もしかしたら今すぐにでも戻ってくるかもしれないし。
だったら僕はここに残ってみんなの帰りを待ってた方が――――
だったら僕はここに残ってみんなの帰りを待ってた方が――――
『すぐに戻ってくるので心配しなくてもいいのですよ。この神社は僕の庭みたいなものなので任せてほしいのです』
「……待ってた方がいいなんて、そんなことあるかっ!!」
下手したら誰かが死ぬかもしれないのに? 冗談じゃない。
僕はもう同じ過ちは二度と犯さない。犯すわけにはいかないんだ。
入れ違いになるかもしれない? 確かにそうなることも考えられる。
けど、それがなんだ。人が死ぬのに比べれば入れ違いになることなんて大したことじゃない。
なに、そんなに遠くへ行くわけじゃないんだ。ちょっと確認して、何事も無ければすぐに戻ってくればいい。
予感が的中してニケ達が何か危険な目に遭っていたなら、加勢して片付ければいい。
律儀にずっとここで待ちぼうけしている必要なんて、全くない。
僕はもう同じ過ちは二度と犯さない。犯すわけにはいかないんだ。
入れ違いになるかもしれない? 確かにそうなることも考えられる。
けど、それがなんだ。人が死ぬのに比べれば入れ違いになることなんて大したことじゃない。
なに、そんなに遠くへ行くわけじゃないんだ。ちょっと確認して、何事も無ければすぐに戻ってくればいい。
予感が的中してニケ達が何か危険な目に遭っていたなら、加勢して片付ければいい。
律儀にずっとここで待ちぼうけしている必要なんて、全くない。
僕はすぐさま荷物を抱えて部屋を飛び出した。もう、いてもたってもいられなかった。
僕はもう迷いはしない。助けるべき人がいれば、躊躇うことなくそこへ向かう。
何もしないで後悔するよりは、何かしてから後悔するほうがよっぽどマシだ。
自分の手で望みある未来に貢献できるなら、それを実行するのに越したことは無い。
僕はもう迷いはしない。助けるべき人がいれば、躊躇うことなくそこへ向かう。
何もしないで後悔するよりは、何かしてから後悔するほうがよっぽどマシだ。
自分の手で望みある未来に貢献できるなら、それを実行するのに越したことは無い。
本当に、何事も無ければいいんだけれど――――。
もし……、いや、『もし』なんて仮定は要らない。
いずれジェダを倒してこの世界を脱出したら、できることなら僕は梨花ちゃんの世界を訪れたいと思う。
梨花ちゃんは僕のせいで死んでしまったようなものだ。その事実はいつまでも僕の心に残るだろう。
だから、許してもらおうとは思わないけど、せめて梨花ちゃんの知り合いの人達に謝罪の言葉を言わせて欲しいんだ。
謝ったところで梨花ちゃんが戻ってくるわけじゃないけど……それでも僕は何もせずに終わらせることなんて出来ない。出来るわけがない。
いずれジェダを倒してこの世界を脱出したら、できることなら僕は梨花ちゃんの世界を訪れたいと思う。
梨花ちゃんは僕のせいで死んでしまったようなものだ。その事実はいつまでも僕の心に残るだろう。
だから、許してもらおうとは思わないけど、せめて梨花ちゃんの知り合いの人達に謝罪の言葉を言わせて欲しいんだ。
謝ったところで梨花ちゃんが戻ってくるわけじゃないけど……それでも僕は何もせずに終わらせることなんて出来ない。出来るわけがない。
それと、これは是非ともあって欲しくはないことだけど……。
もし梨花ちゃんの死が原因で梨花ちゃんの世界がとんでもない事態に巻き込まれていたら――――。
その時は僕がちゃんと責任をとって、梨花ちゃんの世界に平和を導いてみせる。
なんとしてでも。絶対に。
もし梨花ちゃんの死が原因で梨花ちゃんの世界がとんでもない事態に巻き込まれていたら――――。
その時は僕がちゃんと責任をとって、梨花ちゃんの世界に平和を導いてみせる。
なんとしてでも。絶対に。
【C-4/古手神社入り口/1日目/夜】
【リンク(子供)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]:左太腿、右掌に裂傷(治療済み)、左肩に打撲
[装備]:勇者の拳@魔法陣グルグル、鉄製の斧
[道具]:基本支給品一式×5(食料一人分-1)、クロウカード『希望』@CCさくら、歩く教会の十字架@とある魔術の禁書目録
時限爆弾@ぱにぽに、じゃんけん札@サザエさん、エスパー錠とその鍵@絶対可憐チルドレン、
ふじおか@みなみけ(なんか汚れた)、5MeO-DIPT(24mg)、祭具殿にあった武器1~3つ程、祭具殿の鍵
[服装]:中世ファンタジーな布の服など。傷口に包帯。
[思考]:何事も無ければいいけど……。
第一行動方針:学校へ行き、ニケらの安否を確かめる。
第二行動方針:もし桜を見つけたら保護する。ニケたちに会ったらエヴァの伝言を伝える。
第三行動方針:祭具殿には出来ればもう入りたくない。
基本行動方針:ゲームを壊す。その後、できることなら梨花の世界へと赴き、梨花の知り合い達に謝罪したい。
参戦時期:エンディング後
[備考]:リンクが所持している祭具殿にあった他の武器が何なのかは次以降の書き手さんに任せます(少なくとも剣ではないと思われます)。
リンクは祭具殿の内部を詳しく調べていません。
※斧はアニメで圭一が使っていたものをイメージしています。
※神社の本殿のわきに古手梨花の死体が埋められています。
古手梨花の平常時の服は梨花の死体とともに埋められています。
[状態]:左太腿、右掌に裂傷(治療済み)、左肩に打撲
[装備]:勇者の拳@魔法陣グルグル、鉄製の斧
[道具]:基本支給品一式×5(食料一人分-1)、クロウカード『希望』@CCさくら、歩く教会の十字架@とある魔術の禁書目録
時限爆弾@ぱにぽに、じゃんけん札@サザエさん、エスパー錠とその鍵@絶対可憐チルドレン、
ふじおか@みなみけ(なんか汚れた)、5MeO-DIPT(24mg)、祭具殿にあった武器1~3つ程、祭具殿の鍵
[服装]:中世ファンタジーな布の服など。傷口に包帯。
[思考]:何事も無ければいいけど……。
第一行動方針:学校へ行き、ニケらの安否を確かめる。
第二行動方針:もし桜を見つけたら保護する。ニケたちに会ったらエヴァの伝言を伝える。
第三行動方針:祭具殿には出来ればもう入りたくない。
基本行動方針:ゲームを壊す。その後、できることなら梨花の世界へと赴き、梨花の知り合い達に謝罪したい。
参戦時期:エンディング後
[備考]:リンクが所持している祭具殿にあった他の武器が何なのかは次以降の書き手さんに任せます(少なくとも剣ではないと思われます)。
リンクは祭具殿の内部を詳しく調べていません。
※斧はアニメで圭一が使っていたものをイメージしています。
※神社の本殿のわきに古手梨花の死体が埋められています。
古手梨花の平常時の服は梨花の死体とともに埋められています。
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