(投稿者:A4R1)
「藤十郎の事に関して他にもいろいろ言いたいところだが、
それ以外にも重要な事があるからこの辺で話題を進める。
この間、お前等の命を狙った奴らが出現したと、
楼蘭発の高速連絡船に乗り組んでいた海軍の人から聞いたのだが。」
智代ちゃんの目の前のお皿にせっせとロールケーキを切り分けながら、一弥さんが尋ねた。
「あぁ、いたな。」
「楼蘭アルトメリア間を運航している高速船に乗った時に、自らを
スポーンだとよんでいた男が…。」
「なんてったっけなぁ…。」
イイがうなりながら髪を掻き毟る。
思い出そうと躍起になってる…。
「サーナインってたっけ。」
「それだ!!」
隣で合点したというようにイイがテーブルを叩いた。というか、殴った。
一瞬、テーブルが割れたんじゃないのかなと思った…。
「過去に確認されていなかった新種のGを引き連れて私達を襲撃してきました…。」
「自らをスポーンと呼び、
フライを上回る機動力を誇る飛行型のGに乗っていましたね。」
「移動手段のGも新種の物!?」
「うむ。ワシも今まで一度も見ておらぬ種類じゃった。」
「それだけじゃないよ、いっぱいの
ワモンをかかえたおっきなGも飛んできたんだよ!!」
「連絡船の甲板が3匹でいっぱいになるぐらいのサイズだったわね。
写真に収めておいたけど…現場に居ない人は最初、合成か何かと疑ってたわ…。」
「船に乗り合わせていた一部の乗り組員さんや、他のMAIDの方々も所属組織へ報告に向かったけど…。
まだ他の発見報告は無いみたい…。」
「そうですか…。」
「しかし、連絡船に同乗し、交戦した海兵隊員やMAIDの提案もあり、
交戦した新種のGのデータベースを新たに設ける事が決定された。」
智代ちゃんのほっぺについたクリームを拭きとりながら言う。
「―
プライマー―…ね?」
「ああ。銃を扱う技能は人間より遥かに低いらしいが、炸裂弾とかをぶち込む個体もいると報告されている。
油断は禁物だな。」
「それに、戦っている時に気がついたんだけど…。」
「何に?」
「プライマーとワモンに同時に襲われた時に、こう…、
ワモンがプライマーの銃撃の妨げにならないような動きを見せた気がしたんだ…。」
「まさかぁ。偶然じゃないの?」
疑う仁恵さんに「偶然じゃないと思います。」と口を開いたのはリリさんだった。
「私も戦いましたが、ワモンのみとの交戦した時とは格段に行動能率の進歩が見て取れました。」
「具体的にはどのように?」
「ワモンやフライが、私達が狙うプライマーと私達の間に積極的に入り込み、
プライマーへの攻撃を妨げるかのように動いていたんです。」
「ワモンがてきとーに動いてるような感じじゃなかったよ!」
「プライマーが自分に有利な立ち回りができるように、ワモンやフライを操っている…。
そう言うことなのか…?」
「そういや、バズーカ(US M1A1に見えたが)持ったプライマーもいたが、そいつの前に出て来る奴は、
一段と攻撃的になっていた気がしたぜ。」
「対装甲火器の射線上に躍り出る事は、
いくらGでも、長い間銃火器類を扱う私達と交戦を続け、
危険であるということを学習しているはずです。」
「危険であるからこそ身を投げ出しているとも考えられるな。あくまで推測だが…。」
「あやつらが至近距離で爆散しようものなら、簡易瘴気爆弾となりうる可能性も否定できんしのぅ…。」
「Gをそう仕向けるように調教している奴がいても不思議じゃない。
新たなスポーンやプロトファスマが発見されている昨今ならなおさらな…。」
「やばいなぁ…。」
ヴィンセントさんが、展開された資料を読み、メガネを掛け直しながら弱気につぶやく。
「もしかすると、プライマーというGを何者かが作り出している可能性も…?」
「否定したいところだが…説としてかなり有力そうだよな…。」
「説ね…ふっふっふ…。」
「な、なんじゃ仁恵、その笑い方は…。」
仁恵さんは辺りをキョロキョロと見回した後、目の前のテーブルに写真の束をどんと置いた。
「分厚いなんてもんじゃないわねこれ。」
「(束を手に取りながら)もう、鈍器の次元だぞ。この重みは。」
「撮影場所は書き忘れたけど、ちょっとすごいわよ。」
みんなが食いつくように束に身を乗り出した。
「あぁ!コイツ!!」
木陰に佇む一人の男性が写された写真。
右目の眼帯にツンツン頭、そして三本の頬の傷…!!
「こいつがサーナインっていう奴か?」
「間違いないよ。」
「小癪にも俺達が乗り込んでいた船に、
粘着剤をべったりつけた爆弾そっくりの時計を置いていきやがったんだ…。」
「茶筒型時限弾だな。わかるぞ。」
「しってるの!?」
「藤十郎が俺の寝室に大量に置いて行ったからな。
毎朝うるさいったらありゃしない。」
「スイッチ切れよ。」
「それもそうだな。」
「でも…それを使ったフェイントを行うだけあって、おちょくるだけの知能と余裕があるってことだよね?」
「…そうかもしれません…。」
「あなどれんのぉ…。」
「ところで、写真にサーナイン以外にも何人か映っているが…。」
イイが写真を次から次へと捲りながらボクらを見回す。
「こいつら、サーナインとか言っていたやつの仲間か?」
「えぇ。今までのプロトファスマの群衆とはまた違う勢力よ。」
新たなGの勢力!?
「純粋に力と数で優勢なGが軍勢を作ってしまうと、我々人類の勝ち目は一層希薄になってしまう…。」
「その上、また新たなGの種を増やすつもりでおるようじゃな…。」
まさか…Gがボクらを本気で殲滅をする準備を始めているっていうこと…!?
「未知のGを倒すための手段を考え、撃破したとしてもまた新たなGが…クソッ、きりがねぇ…。」
た、大変だ…。
「ト、トーマスさん、トイレはどこに…。」
「どうしたのかね?」
「顔が蒼いようだが?」
「ストレスが胃に来ているみたいです…。」
「それは大変だ。ついて来て。」
ナナ>
「キキ?どこに?」
「体調を崩したみたいなので、トーマスさんの案内で厠へ…。」
「あっそう。」
リリさんがそう言った時突然、ガタリとした音が聞こえた。
「!!」
「何?」
イイが手にした数枚の写真を見て、破顔させたまま笑い声をこらえている。
「な、んでボッコボコになってる仁恵の姿が映ってんだ…!!」
「うわわっ。」
「こりゃひでぇ。」
物凄いサイズの甲冑を着込んだ何者かに、仁恵が後ろ襟を掴まれた状態で掲げ揚げられている一枚だ…。
片方の手には人の背丈程、いや、それ以上はあろうかという刀身が見受けられた。
「あぁ…それは隠し撮りしてるのがばれて、デカいヤツの峯打ちの嵐をくらっちゃってねぇ…。」
このでかさの剣の峯打ち…。
もうほとんど鉄の塊と同じようなもんじゃない…。
「よくまぁ死なずに済んだのぅ…。」
「お化粧してなかったら即死だったわ…。」
「厚化粧してたのか…。」
四谷怪談のお岩さんが心配するよ。この顔。
「え、こ、この写真…。」
「え?」
写真をさらさらと眺めていたヴィンセントが、突如頬を赤くした。
「あ、そ、それは…。」
「何焦ってんの?」
どぎまぎする二人につめ寄り、写真をかっさらった。
「もーらい!!おっひょあー!!」
仁恵ではない艶やかな女性が写されてるじゃあないか!!
な…なんて…えr「この写真は何ですかーーーーー!!!!!」
横からちらりと写真を覗き込んできたミミちゃんが、
一瞬で顔を赤くしてガタリと立ち上がり散弾銃を仁恵に対して振り上げた。
「ま、まってまってまってーーー!!」
「こんな写真も好んでとるとはヘンタイのいちみですかー!!!」
「やべぇ!ミミをおさえろ!!」
「きゅうにどうしたの!?」
「ミミはイヤらしい物事に対して、過剰に反応するって藤十郎が言っていた!!」
「仁恵君離れて!!本当に危ない!!」
MAID四人(拙者とイイとリリとヨヨ)がかりですら押し負けそうな力で仁恵に飛び掛かろうとするミミ。
アラキの中で一番小柄(とはいっても5尺{≒150cm}ぐらいあるけど…。)なのに、
それを全く感じさせない重みをかけて、仁恵に襲いかかろうとするる!!
「こ、これにはわけがあるのよ…。」
「なーにぃおぉーーー!?」
その一言が聞こえると、また一段と強い力を掛けてきた!!
「あぎゃあ!!」
拙者の背骨からみしぃと音が鳴る。
「うおぉやべぇ完璧に押してやがる!!」
や、ヤバい。このままでは背骨を折られるやもしれぬ…!!
「おや?どうしたのですか?」
トーマス殿が、お盆を携えた子を引連れて再見した!!
「あートーマスさんいいところに!!」
「ミミが突然暴れだしやがった!落ち着かせる方法は無いか!?」
「それなら…おぉ、ロビン君。」
「プリンおかうぁりドゾ。」
「!!」
ロビンさんが持って来たプリンを見た瞬間、襲撃をやめてプリンをかっさらい席に戻った。
「た、たすかった…。」
ため息をついてそれぞれの席に戻ったけど、まだミミはムスッとした顔をしてる…。
「で、そのさしんはどういう事ですか。」
「その人にそんな感じで撮影しろって言われたのよ…。
断ってたら命は無かったかもしれなかったのよ…。」
「助かりたきゃ撮りなってか?」
「変わり者っちゃあ変わり者じゃな…。」
「まぁ確かにね。何と言うか…彼らの態度からは、かなりの余裕が感じられたのよね…。」
「余裕?」
「えぇ。よそ者かつ侵入者である私を逃がしたのもそうだけど、ご丁寧に自己紹介までしたのよ…。」
「…どういうことだ?」
「何か意図があるのじゃろうか…。」
サーナインを始めとした面々が写された写真を配られるのを眺めつつ、ヨヨさんが気難しそうにつぶやく。
「サーネン・ネイジェ」 srnan nyge
「この人が名乗ってたときとちがう読みのふりがなだね。」
「そういやたしかにそうだな。コイツはサーナイン・ニーガって名乗ってたっけな。」
「早口で良く聞き取れなかったし、しゃべり方も訛りが掛かってたからね。
よく聞こえなかった部分はスペルからの推測よ。」
「プロトファスマも色々じゃのう…。」
「コイツの特徴は新種のGを引連れたり、さまざまな道具を駆使する戦い方をするということね。
昔の軍隊が扱っていた物から、最近採用されたばかりの物まで、多数の銃火器を所有してたわよ。」
「Gに人間の重火器を扱わせるという事!?」
「いや、人間の重火器を扱えるようなGの開発をしているのかも知れないな。
いずれは扱う事の出来ない銃器が無いようにするつもりだろうな…。」
「かもね。」
「かもね。じゃないでしょ!?」
ヴィンセント君が顔を蒼くしてまで声を張り上げたのは、ズバリ、恐怖ね。
解るわよ。一体多数じゃ分が悪過ぎるもの…。
「ただでさえ多くて厄介なGなのに、人間と同様の戦闘手段を扱えるようになったら手も足も出なくなっちゃうよ!!」
「いくつかのGとコミュニケーションをとってたし、最前線での実動指揮担当かもね。」
「コイツをGの群れから引き離せばなんとかなるんじゃねぇか?」
「そんな無茶な!!」
「一手としては悪くは無いと思うな。」
「うそぉ!?」
「ヴィンセント。確かに能力類は脅威だがこいつはグループの一人だ。
そいつの周りも抑えて対策を練る方が良い成果に繋がりやすくなるはずだ。」
「それもそうだろうけど…。」
「お前は踏み込む肝の強さを付けたほうがいい…。」
「う、うん…。」
なよなよしたヴィンセントさんに呆れる一弥さんを横目に次なる写真が差し出された。
次に写っていたのは、先ほど仁恵を掲げ揚げていたゴツいG…。
「ランズ・オウゥ」 lanz ohw
「他のメンツに比べ…。」
「ガタイがスゲエ…。」
「『
タワー』よりも、一回りもふた回りも大きいわよ。
声もかなり重厚だから、圧迫感もハンパじゃないわよ…。」
「刀…のような武器も…あれ?」
「どうしたの?」
「この刃物…ところどころに切れ目がある…?」
7-8尺程の長方形の長剣に有るまじき横線が見えたけど…単なる装飾じゃないよね?これ。
「よく気づいたわね。そう。それは小型の
特殊なGが集まって出来た刀剣なのよ!!」
「「「「「「えぇっ!?」」」」」」
その機能に言葉を暫時失い、やっとで出た言葉は奇しくも重なり合った。
「「便利…。」」
「「べんり…。」」
「ベンリ…。」
「いやいや、驚く所間違ってるから…。」
「ふぇ?」
気を取り直して差し出された写真…の束じゃない…。
何枚撮らせてんのよこの被写体の女は。
まーたミミちゃんが暴れだしそうな写り方しちゃって…。
く…くびれが羨ましい…!!!
「キディ・イニヤ」 cide ynr
出るわ出るわこの女の写真…。
サーナインとかランズが写りこんでるのもあるけど、
その次の写真は、何かいちゃもんをつけてるように見える…。
「『アンタ達入ってこないでよ!!』って言ってたのよね。ソレ。」
「やっぱり…。」
「なんだか…一冊の本になりそうな枚数ですね…。」
「ミミをオトしておいた。安心しろ。」
キディの写真に順番が巡る前に、イイがミミに「すりいぱあほおるど」を決め、しっかりと気絶させていた。
「え、ええ…。(なにも白目向いて泡吹くにまでしなくても…。)」
「いくら密林とはいえ、何故之程までに布地を省いた衣類を纏っておるのじゃ…。」
「なんでも…Gを操るフェロモンの研究に力を注いでいるとの事らしいの…。」
「フェロモン?」
「フェロモンって何だ?」
「あぁ、フェロモンっつーのは、主に昆虫とかの動物に何かしらの行動を促す分泌物質のことで…・
後は、図書館やらで各自調べるように。」
「「端折るな!!」」
「要するに、意思の安定化の見込めぬGの群れを統一するために、
生物の本能の部分からコントロールするということじゃろうな…。」
「ヨヨさん冷静ですね…。」
「あ!自分にそのフェロモンとやらを塗ったくってるって事!?」
「ありうるな。」
「ありうるどころか、事実らしいよ…?」
「「マジ!?」」
「えぇ。…でも、フェロモン操作されてない普段のG達の反応は冷めたものって聞かされたんだけど…。」
「それって…フェロモン無しの時は嫌われてるって事か?」
「…多分。」
「うっわ…。」
「…よく判らんが、憐れみを覚えそうじゃ…。」
「そりゃそうだけどな…。」
「そんなことより
ラストラスト!!」
「そ、そうね…。えーと…あ、この男ね…。」
なんかいかにもたくらんで居るって感じのメガネ男…。
地形に、いや他のメンツとも馴染まないよく仕立てられた衣類…。
「ラーナ・イ・カッエ」 lrna E kce
「奴らの頭脳的存在か…。」
「えぇ。今までで私が知る限りのGのどれにもあてはまらないGの開発と、総指揮を執り行っていると言っていたわ。」
「開発と指揮だと?」
「な、なんだコイツの後ろのGの群れ!?」
そこに居合わせていた全員がその写真群に群がる。
暗すぎて見えなくなったから全員どきなさい。
「どうどうと、彼自信がプライマーを造り出した張本人だって公言してたわ…。」
「信じられん…半数近くに対しては、これまでにリストアップどころか、
存在しているという報告すらもされておらんぞ…!!」
「いよいよ新勢力としての頭角を表したって感じね!!」
「彼らの居た森の奥が、新たなGの開発研究所っぽかったわね。さすがに確信を持ってるわけj
「製造過程は押さえる事が出来たか!?」
「お兄!?」
『研究所』という餌の臭いを嗅ぎ付けたと思わせる程に、一弥さんが食いついて迫る。
「あ、あくまで、っぽいって思っただけよ!!
捕まった時点で、おびただしいGの監視を受けている時点で、
深入りは自殺行為に決まってるでしょ!!」
昂る一弥さんに潰されぬよう、突っぱねるような返事を返した。
「それもそうだな…。」
残念そうに一弥さんが席に戻った。
いつの間にかうたた寝している智代ちゃんの髪の毛を肩から降ろしてあげた。
「でも、代わりと言っちゃなんだけど、新型Gの仕様書らしき紙束をくすねてきたわ。」
「そうきたか。」
テーブルの上に置かれた紙束に、再び群衆が集う。
というか、テーブルに乗っかる猛者まで出る始末。降りんか。
「三つの束になってるが…一つに付き一種類か?」
「じゃない?」
「所々に挿絵があるわね。」
「なかなかうめえな。コレ、プライマーだって一目でわかったぞ。」
前後上下左右あらゆる角度の視点からGを見た挿絵が中々の出来映え。
敵ながら…いい仕事をしていると個人的には思う。
「しっかし…文章は凄まじい走り書きになっておる…。」
「何所の国の文体なのかすら判断できないな…。」
「それに、泥水で字がにじんじゃってる…。」
「極極極一部しか読み取れません…。」
泥汚れと水濡れのせいで、文章の九割以上が染みてしまって、殆ど読み取れない…。
「帰る途中で何回かこけちゃったし、雨にも打たれちゃったから…。」
「どれがどのような能力を有してるのか解ればいう事無しなんだがなぁ…。」
まるでもう一度行ってくれないかと言うように仁恵さんをチラリと見る一弥さん…。
見る見るうちに血のkのひいた蒼白面に変化する。
「むッ、無理無理無理無理!!!!もうアイツらの尾行は真っ平御免よ!本当に勘弁して!!」
水門が決壊したのかと口にしたくなりそうなほどに、仁恵が大量の汗を流し、
捻取れそうなぐらいの勢いで首を左右に振る。
「今度アイツらに捕まったら間違いなく私に未来は無い…!!」
「僕らとしては、未知のGの存在を前もって知る事が出来ただけ良かったと思うよ?」
「それもそうじゃ。僅かでも情報は身を助けるものだからのう。」
「残念…。」
仁恵の顔色が元に戻ったのは、イイがその発言から2分後に注文した『溶岩飯』をたいらげた頃だった…。
関連項目
最終更新:2009年12月09日 23:48