国民経済の視点で見ると、四半期毎決算が、会社株式を投機対象にする弊害を齎した一方で、株券廃止は、会社という有機組織に対する基本認識を麻痺させ、喪失させた。

会社とは、その定款に書かれた事業目的に賛同する人と、必要資金の出資で作られたものである。そして、その出資の額を証明し、株主としての権利行使の権限を表象するものとして「株券」が発行されていた。

株式の売買操作で利益を得ようという目的で、投資信託や年金ファンドあるいは投機家の便宜のために、その株券を、売買手続きの迅速化と簡素化、管理・保管費用の削減などの理由で廃止することは、会社という生き物を、無機質の対象物にすることである。

会社の株式が、ただの「通貨」か「外国為替」同然の扱いになって、投機対象となる危険を孕んでいる。通貨は、物の交換手段であるが、「株式」は交換手段ではない。

最終更新:2025年10月15日 00:10