Happy! Happy!! Happy!!! ◆yX/9K6uV4E
「肇ちゃんってさークソ真面目だよねぇ」
「は、はぁ……それはどういう意味でしょう」
「あ、おっちゃーん、ジンジャーエールお替り宜しく」
「あ、私もバニラオレお願いしますね」
「美波ちゃんはお酒じゃないの?」
「そういきたいんですけど……私も一応未成年ですし」
こ洒落たダーツバーで、私――
藤原肇は同じアイドルの仲間達とご飯を食べていました。
本当にお洒落なところで、こんな幼い私がいていいのかと少しドキドキしてしまいます。
そんな私を気楽そうに見つめるのが
塩見周子さん。
その隣で微笑んでいたのが
新田美波さん。
二人とも私と同じプロデューサーにプロデュースされているアイドルです。
一緒にやってきて、結構仲もいいんです。
「いや、もっと肩肘張らなくてもいいんじゃないかなーって」
「……はぁ」
「真面目すぎるけど、視野狭くなっちゃうよーって」
「周子さんは気楽過ぎると思いますけどね」
「げっ……美波ちゃん藪蛇……」
……真面目、すぎるんでしょうか。
私は、私らしくのつもりでいたつもりなんですが。
深く考えようとして、結局上手く考えが纏まらない。
よく解からなくなって、私は自分の抹茶オレを啜った。
甘くて苦い、不思議な味だった。
「だーかーらー、そう難しく考えるのがよくないって事よん」
そんな私に周子さんは微笑む。
手に持ったジンジャーエールを一気に飲み干して。
立ち上がって、ダーツを一本持つ。
その姿は、凛としていて、まるで妖精のよう。
「こう、力を抜いて……さ、よっと」
そうして、放れた矢は、まっすぐ的の真ん中を射抜いた。
柔らかくて、けれど綺麗な軌道だった。
「あるがままに、受け止めるってのも楽しいよん」
あるがままに、受け止める。
自然の流れに、身を任せるように……って事でしょうか?
気取らず、自分らしく……?
「そうですね、アイドルになって、わたしの世界はぐんと広がった気がするけど……それでも、アイドルの私という新しい私を……」
そう言いながら、美波さんも、ダーツを手にとって、そのままダーツを放つ。
「受け止めて……楽しんでますよ♪ だってワクワクして、本当楽しいっ♪」
ふわっとしながらも、真っ直ぐ中心を射抜く。
「お見事……美波ちゃんもやるね」
「いえ、それ程でも♪」
新しい自分。
自分が成りたい、アイドル。
そんなものを考えて。
そして、ふーっと思いっきり息を吐いて、思って。
力を抜いて、イメージしてみる。
そしたら、簡単に、浮かんだ気がして。
「私も……」
私は、お二人と同じようにダーツを手に取ってみる。
当てるべき的は思ったより遠いけれども、
「一番私らしい、私を、私らしく受け止めて……」
ふっと、力を抜いて、ダーツを放つ。
「イメージした私を、そのまま、表現できたら、いいな」
それは、迷うことなく、まっすぐへ――――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……っ!?」
ドーン!と、まるで映画の中でしか聞けない爆発音を聞いて、私は我にかえる。
ボーっとしていた訳ではないが思索に耽っていたのは事実ですから。
思い出していたのは、同じく殺し合いに巻き込まれた仲間であり……大切な友達。
私にとって、大事な出来事を思い出していました。
周子さんと美波さんとのひととき。
今の私を作った大切な思い出です。
二人が名簿に書かれた時、胸がしめつけらるような気持ちに襲われました。
ただ、無事であればいい。そう願うばかりで。
「いかないと……」
だから、今の爆発も見逃す訳には行きませんでした。
其処に大切な人達が巻き込まれてるかもしれない。
夢を、願い踏みにじられるようなことになっているかもしれない。
そんなのはいけない、許してはいけない。
皆にも、アイドルで居て欲しいから。
だから、私は駆け出したんです。
あの時、想った事を胸に――――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「おっすおっす! 杏ちゃんげんきぃー?」
「あーきらり?……だるい」
「うきゃー元気ですにぃ☆ 杏ちゃんもハピハピすゆ?」
「……帰りたい」
「むーん」
「くー(寝たふりしたら帰ってくれるだろう」
「にゃは☆杏ちゃん寝てる姿もちょーカワイイ! お持ち帰りするにい☆」
「なっ……ちょ、きらり……片手で、もちあげるなぁああああ!?!?!?!?」
「どーう? きらりんぱわー☆」
「きらりんぱわー……じゃない、落ちる……ぅーーーーーーーー!?」
「うぇへへ! にょわー!」
「おろせぇえぇぇぇ」
「杏ちゃん、一緒にはぴはぴすゆ?」
「する! するから、離せ!」
「うふふ、じゃあ、このまま一緒にいるんだにい!」
「わ、解かった」
「杏ちゃん、ぎゅーーー☆」
「ぎゃ、ぎゃああああ!?」
「杏ちゃん」
「……ぜーはーぜーはー……何?」
「ぜーーったい一緒にトップアイドルなって……ずーっとハッピーよねー☆」
「……ああ、解かった解かった」
「にょわー☆」
「なったら即引退するけどね」
「むぇー!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「むぇ?」
どーんと大きな音がしたんだにぃ。
なんだろー、なんだろー?
何か嫌な予感がすゆー……
杏ちゃん…………きっと寝てるんだにぃ。
……心配だにぃ。
むー!
そんな気分じゃ、駄目なの!
もっと、ハピハピすゆー☆
きらりんがハッピーなら、きっと皆ハピハピ!
うぇへへ……それなら、きらりん頑張っちゃう☆
よーっし!
なら、その現場まで、きらりんふるぱわー!
にょ、にょ、にょわーー☆
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――ちりんちりーん☆
「急がないと……!」
「もし生きてる人が居るなら……」
――――うぇへへ……にょわ!
「うん……いそが……」
――――あーーーぶーーーーなーーーい!
「えっ……!?」
どーーーーーーーーーん☆
【藤原肇 死
「じゃないです!」
………………失礼しました】
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「いいですか、きらりさん! 貴方はもう……」
「……にょわ」
「聞いてますか!」
「ふぁい……」
………………本当死ぬかと思いました。
猛スピードで自転車が突っ込んでくるのは恐怖です。
寸前で避けられたものの……。
あ、さっきの衝突音はきらりさんが電信柱にぶつかった音です。
幸いきらりさんも自転車も大丈夫でしたが。
とはいえ、怖かったのは事実なので、大説教です。
彼女が
諸星きらりだった事は知っていたので。
……まあ、知らない人はいないでしょう。
あのインパクトですし。
「くどくどくどくど……」
「む、むーん……」
自己紹介も程ほどに愚痴とも言えない説教していました。
だって、スピード出しすぎであり得ない。
ぶつかったらただ事じゃない。
死んでしまうかもしれない。
そんな駄目です。
そんなよくないです。
「も、もう、怖かったんです……から……」
ぽろっと雫がこぼれちゃい……ました。
だって、怖かったんですから。
死ぬ時は、きっと怖いんだなって、思っちゃいました。
皆、どんなに覚悟しても、きっと怖いんだ。
震えが、止まらない。
でも、皆、そんな震えを抱えて、生きてるんだと、思いました。
「………………御免ねぇ」
「……え、きらりさん?」
そして、そっと、大きな温もりに包まれました。
すっぽりと。
私は、きらりさんに抱かれてました。
凄い温かくて。
「きらりん、気をつけるにぃ……だから、泣くの、やめるにぃ」
「きらりさん……」
「肇ちゃんも、ハピハピすゆー?」
「えっ……?」
ハピハピ?
何か、ふあっとした言葉でした。
不思議な、柔らかさがある。
「笑って、きらりんも、ハピハピ☆」
「はぴ……はぴ?」
「肇ちゃんもだにぃ!」
「ハピハピ……」
「そう、きらりんも、ハピハピ☆ 肇ちゃんも、ハピハピ☆ みんなもハピハピ☆」
そしたらねと、きらりさんはいって。
「みんな、きっと、ハッピーだにい!」
きらりさんが笑って、幸せになって。
私が笑って、幸せになって。
皆が笑って、幸せになって。
そしたら、世界のみんなが、幸せ。
彼女は、笑ってそんなことを言う。
だから、私も笑って。
「そうですね……ハピハピです」
そしたら、何か、恐怖が薄れたんです。
不思議ですね。
これが、諸星きらりさんの魅力……なんでしょうか。
私も、笑えてました。
「うぇへへ……きらりん、どーん!としたの向かったんだけど、肇ちゃんもー?」
「はい……気になって」
「……一緒にいくー?」
「いいんですか?」
「おっすおっす、みんなでハピハピだにぃ☆」
「……そうですね、よろしくお願いします」
どうやら、向かう方向も一緒のようだ。
なら、一緒に行きたい。
この、不思議な輝きを放つ少女に。
そう、思ったから。
「じゃー、出発進行! 自転車にのるにぃ!」
「ふ、ふたりのりですか!?」
「いいから、いいから☆ ごーごー!」
「ってきゃーー!?」
そして、ほぼ、強引に出発する事になったけど。
私は笑ってて。
これが、きらりさんの言う事かなと思って。
――――ハピハピ
……なんて、思っちゃいました。
【C-6/一日目 黎明】
【藤原肇】
【装備:ライオットシールド】
【所持品:基本支給品一式×1、アルバム】
【状態:健康、決意】
【思考・行動】
基本方針:殺し合いを回避するために出来ることを探す
1:きらりさんと行動。
2:アイドルを殺すことは、自分自身を殺すこと
3:プロデューサーを危険に晒さないためにも、慎重に……
※塩見周子、新田美波と同じPです
【諸星きらり】
【装備:折りたたみ自転車】
【所持品:基本支給品一式×1、くまのぬいぐるみ(時限爆弾内蔵)、不明支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:杏ちゃんが心配だから杏ちゃんを探す☆
1:きゃほーい! 肇ちゃんと自転車で爆発の方向までまできらりんだっしゅ☆
最終更新:2013年03月26日 00:03