上洛せよ、東夷。我が夫、電皇陛下の詔勅なるぞ
…『digital butterfly dream』をローディング中…完了。
アカウントを確認…Extra_Account…認証中…完了。チュートリアル破棄。権限・能力の限定を全解除
カーバーギア起動。経脈・絡脈・七魄を接続…80…90…92…94…95…96%…
wellcome to hellic heaven!HAHAHA!
【概要】
ミッドヴィリームHighのスピンオフストーリー・
劇場版三部作の二作目。
前作のラスト、白鷺会組長の秘宝『国崩』の在処が彼の孫娘…鷺ノ宮鳴=
稀神サグメのペンダントに隠されていると知った早紀と八千慧。
ペンダントの中から出てきた暗号を解読し、示された場所は隣町、
角迅町の裏通りにある怪しげなバー。その地下に居た
老人に暗号を告げると…
『なんじゃ、雉彦の知り合いか?お前たちも"国崩"を手に入れに来たのか…』
『この機械とアカウントを使ってゲームにログインして、"老鷺"を捜し出せ。そいつが"国崩"の手掛かりを握っとる、』
『ただそのアカウントは特別製でな、ゲームの中で"死ぬ"と本当に……遅かったか』
電脳空間の架空都市『幻想京』を舞台に、劇場版第二章の幕が上がる!
【登場人物】
→
『勁牙組』組長の娘で朱雀組のリーダー格の一人。
秘宝『国崩』を求めてDBDにログイン。なお、オンラインゲームの類の経験は『一切やったことがない』。
初期職は『破壊僧』を選択。装備が貧弱な代わりに高い敏捷と筋力で肉弾戦(特に蹴り技)を得意とする
→
『鬼傑組』組長の娘で朱雀組リーダー格の一人。
秘宝『国崩』を求めてDBDにログイン。オンラインゲームの類は一昔前に『少しかじった程度(本人談)』。
初期職は『半人半妖』を選択。武器も魔法もなんでもこなす万能職、悪く言えば器用貧乏
→
合翼連盟の連盟長・虎喰餮男の姪で、白虎組の生徒の一人。フェムトファイターの一人でもある。
前作ラストで餮男から授けられた綺石獣を失った失点を取り戻すため、『国崩』の手掛かりを求め友人・
ちやりを伴いDBDにログイン。オンラインゲームの類は『昔、何回かやったことはある(尤魔)』『引きこもり時代にハマり倒した(ちやり)』
初期職は『金掘衆(尤魔)』と『竜脈師(ちやり)』を選択。フィールドでの採掘に特化した職業だが、ちやり曰く…?
→合翼連盟六枚羽根のひとつ『紅鶴会』の総帥。同じく六枚羽根のひとつ白鷺会の秘宝『国崩』の奪取を目論む
→『紅鶴会』の息のかかった企業傘下の
Miratuber事務所に所属する
XIIber四人組。宇田に唆され試作型カーバーギアを使ってDBDにログインするが…
→元・白鷺会所属の逆詐欺師。雉彦の遺した暗号を解読し、早鬼と八千慧をDBDへと導く。
→『国崩』の手掛かりを握っている…らしい謎のNPC。
→最近追加されたNPC。幻想京を総べる帝の筆頭側室で、黒髪に天藍色の瞳の見目麗しい女性。
→合翼連盟六枚羽根のひとつ『爻凰会』に所属する天才ハッカーで、唯一の構成員。同じく六枚羽根のひとつ『白鷺会』の秘宝『国崩』の奪取を企ててDBDのサーバーにハッキングし…そのまま消息を絶つ。
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▽物語の舞台 |
バーチャルリアリティMMORPG・
『digital butterfly dream』
のステージの一つで、和風伝記物+ホラーな世界観
モデルとなっているのはおそらく平安末期(応仁の乱時代説も)の京都。
長い歴史を持つ古都だが戦火により街は荒廃し、月に一度朔月の夜には百鬼夜行が徘徊し、"世界の終わりが来る"と説く新興宗教の団体が都の一角を占拠している魔都。
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▽用語集 |
【レバレッジ/Leverage】
→直訳すると『梃子』の意味だが、VR内戦闘においては『行動倍率』を意味する。実際にプレイヤーが動かそうとした動作に対してゲーム内でキャラの動きへの倍率を差す
デフォルトの設定である『レバレッジ1.0』なら実際に動かそうとした分だけ動き、『レバレッジ2.0』ならその2倍の速さ、強さで動く。
倍率を高くすればしただけ早く強く動けるが、その分制御は難しくなる
『…レバレッジ10倍のときクシャミ出たらどうするますか、貴女?』
【カーバーギア/kȝ-bȝ Gear】
→プレイヤーの魂魄をゲーム内の分身と直接接続するバイザー付きヘルメットと赤と青の血管のような模様の入ったスーツ。従来のバーチャルコントローラーとは一線を画する操作性を誇る
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ただし… |
これを着用してログイン後、HPがゼロになったり正当な手順を踏まずログアウトしようとすると現実世界の五体とゲーム内の三魂七魄との繋がりが絶たれ、戻ることが不可能になる。
つまりはサイバースペース内を彷徨う地縛霊である。
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【Digital Butterfly Dream(DBD)】
→世界的な大ヒットを飛ばすバーチャルMMORPG。今作の舞台である和風ホラー世界観ステージ『幻想京』のほか、アラビアンダークファンタジー『アルフ・ライラ』や、王道ファンタジーやスチームパンク、スペースオペラな世界観の別ステージが存在する。
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【あらすじ】
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第一幕『四凶混淆』/早鬼&八千慧編 |
「とにかく、その"老鷺"って奴を捕まえりゃあいいんだろ?よし、ここは一つ全員ぶっ飛ばして…」
「待ちなさい脳筋馬鹿、時間の無駄ですよ。ついて来なさい」
DBDにログインした早鬼と八千慧、さっそく一暴れしようとし始めた早鬼を押し留め、八千慧が向かった先はDBDでも指折りの武闘派かつ古参ギルド《修羅印》…
☆
「おい立てよ、まだ暴れ足りねえぞ!」
「……さて、まだ続けますか?」
『『『…降参です…』』』
リアル世界での変身時の動きがそのままゲーム内に反映されるカーバーギアの特性と、コントローラーとしての性能差によるゴリ押しで《修羅印》リーダーはじめ幹部連中をしばき倒す早鬼
「こちらとしても無駄な戦闘は避けたいんですよ、ところで貴方たちの中に"老鷺"という名のNPCを見た聞いたという方は…」
『あ、あのう…』
《修羅印》の下っ端が遠慮がちに手を挙げた
『都の外れの荒れ寺に妙なNPCが居て…そいつが呟いてたセリフの中にたしか、そんな名前が…』
★
「おい、ここで間違いないんだな…?ってあれ?あの下っ端どこ行った?」
「…!?早鬼、後ろに!」
『む、不意を突いたつもりでしたが…残念』
案内して来た下っ端の姿がぼやけ、異形の獣人の姿に変ずる…
《NPC?:▼■▲〓◆》
(…名前表記が読めない?秘匿データ…ではないようですが…なるほど、複数の名前が重なって表示されて…?)
ドゥン! ドゥン!
「おい、どうした!?頭イカれたか?」
二人の目の前で、荒れ寺の壁面に連続して尻をぶつけるという奇行に走る異形の獣人。まるで意味不明な行動に呆気に取られる二人だったが…
『OK!把握したぜ…このっ…角度…だッ!』
壁をすり抜け姿を消す獣人。予想外の行動に動きの止まる二人。そして…
『隙だらけだぜッ!』
反対側の壁から出現した獣人。その虎の爪が八千慧に迫り…
「壁抜けバグ…ですか。令和の時代にまた、随分とレトロな技法ですね」
それを咄嗟にスキル《護法符》で防ぐ八千慧。ふたたび壁を抜けて姿を消そうとする獣人。しかし、そこへ…
「そうは、させるか!」
獣人が壁に半分めり込んだ状態で、早鬼がその壁を蹴り壊す。
『しまっ…!?』
どういう物理演算が行われたものか、ピンボールのように荒れ寺内を跳ね回る獣人。
「さあ吐いてもらうぜ、"老鷺"とやらの居場所をな…」
『ひょっ、ひょっ、ひょっ…』
獣人の口から先程とはまったく違う、老翁の如き嗄れ声。いつのまに立ち上がったものか、1ドットたりとも微動だにせず焦点の定まらぬ目で二人を見据え…
ぶるり。
「…八千慧、避けろ!」
「…えっ?」
獣人が微かに身じろぎした。次の瞬間、吹き荒れる暴風と、それに乗って先ほど破壊した壁の瓦礫が飛来する。
早鬼が八千慧を突き飛ばす。八千慧の居た場所を瓦礫が通り過ぎる…
(術スキルではない?…なるほど、そういうカラクリで)
「貴方のその技、レバレッジを異常な倍率にしてただ"微動した"だけですね?」
『おや、見抜かれたか…さて、饕姫ちゃん。どうしたものかのう?』
「?」
『…すみません、私"たち"降伏します…』
異形の獣人がふたたび姿を変える。今度は白髪に羊角を生やした少女の姿に…
Miratuberグループ「4 Perils」の一員、四京饕姫だと名乗る少女は二人に事情を語る。
- 『最新式のバーチャルコントローラー』だと騙されてカーバーギアのテストプレイを企業案件として引き受けたこと。
- しかしそれは依頼人…紅鶴会の組長・宇田の罠で、"ゲーム内で死ぬとログアウトが不可能になる"ことを隠されていたこと。
- 饕姫以外の3人が死んで、何処かに漂って行きそうだった3人の魂を饕姫が取り込んで融合することで引き留めていたこと。
- ここに来る早鬼と八千慧をキルすれば全員ログアウトできるように取りはからうという約束で二人の命を狙ったこと。
「"ゲーム内で死ぬとログアウト不可能に"?…ふむ、にわかには信じ難い話ではありますが…早鬼。…早鬼?」
「…………。」
先程から一言も発せず、話を聞いていた早鬼がゆらり…と地面に倒れる。
「早鬼!?」
…その背には、深々と先程の瓦礫が突き立っていた…
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第二幕『伏龍潜影』/尤魔&ちやり編 |
『う〜〜〜む…』
一方その頃。饕餮尤魔はひとり悩んでいた。
前回、同盟長・虎喰餮男から授けられた、変身能力を持つ綺石獣。それを使い、鬼傑組・勁牙組・白鷺会残党たち、『国崩』を狙う連中を同士討ちさせたまでは良かったが…
『どうしたもんかな…』
最後の最後でその策を逆用され、同士討ちさせた筈の連中の罠に掛かり、辛うじて脱出したもののその変身能力を持つ綺石獣を失ってしまう。
これでは組に戻れない。なにか失態を取り返せるような手掛かりは無いか?『国崩』入手、あるいは重要な手掛かりなどは…
そんな最中、尤魔の元に合翼連盟『金鷲会』の後継・ 鷲尾殉(わしお じゅん)から
"早鬼と八千慧が行方不明。最後に姿を見せていたのはオンラインゲーム『digital butterfly dream』内"との知らせが齎される
『…… "老鷺"?』
「ああ。二人はその名のNPCを探し回っていたらしい。あとは紅鶴の組長に爻凰のハッカー達もな。金鷲は白鷺会の秘宝に関わる気は無いが、お前には 以前の事件で恩義があるので、知らせておく」
『へっ、ありがとよ』
☆
『オンラインゲームか…あまり良く知らねえが…いや、詳しそうな奴が一人居たな、そう言えば』
★
「DBD?ああ、昔ずいぶん遊んだっすねえ…」
宇田から試作型のカーバーギアを二機強奪手に入れ、饕餮尤魔は友人・天火人ちやりを伴い『幻想京』へとログイン…した、までは良かったのだが…
『どうなってんだ、見つかりゃしねえぞ…』
「でも尤魔、もう幻想京のエリア内は隠しも含めて全部見たッスよ…?」
古参勢であるちやりの知り合いに声を掛け、幻想京を虱潰しに探すこと三日。未だNPC"老鷺"の居場所は掴めず
『こりゃあ、まともな所には居ない可能性もあるな?』
「尤魔、あのう…ひとつだけまだ探してないところ、思い出したッス。まず一度キャラメイクをやり直して…ごにょごにょ」
☆
…そしてしばらく後の新月の夜。ツルハシと羅盤を手にした尤魔とちやりは、幻想京の中心、皇宮の地下深くに掘り進んでいた
『本当に座標はここで合ってるんだろうな?』
「デバッグされて無ければ、ここから入れるはずッス」
数年前。暇を持て余した天火人ちやりがただ深く深く地面を掘って行った時のこと。位置座標は幻想京の中心点/時刻はゲーム内で月の切り替わる一瞬、"それ"は姿を現した…
『白黒の幻想京…?』
「たぶん、あれはβ版マップって奴だと思うッス。正式に発売される前のサンプルデータ、いわゆる試作品…」
そして…
『座標、東西/南北ともにゼロ。時刻は…』
「……あと10秒ッス……5,4,3,2,1…ゼロ…!?」
その瞬間。わずかな浮遊感とともに、二人の視界が真っ白に染まり…
次の瞬間には、尤魔とちやりの二人は、色彩を失った幻想京の上空に浮かんでいた
(ここがβ版幻想京マップか…?いや、待てよ…あれは、なん、だ…!?)
目の前に広がるのは、色がモノクロという以外現行の幻想京のマップと寸分変わらぬ景色だった。
ある、一点を除いては。
「お…思い出したッス…でも、何で忘れてた?あんなモンがあったら、真っ先に思い出すはずなのに…」
幻想京の中心、皇宮の中庭から伸びている根本と先端が霞んで見えないほどの巨大な銀色の八角柱。そして…
『…………龍?』
それに巻き付いた、巨大な半透明の龍神の姿だった。
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第三幕『八尾錯綜』/?????・????編 |
《name:藍玉妃》
《data:(L1)帝の寵愛を受ける筆頭側室。低い身分の生まれながらもその才知と容貌から成り上がる/(L2)当然のことながら妬む者も多く『狐狸精と契約して美貌を得た』『あいつ自身が狐狸の変化に違いない』との風説も流れている/(L3)千年生きた大妖狐の生まれ変わりであるが、まだ前世の記憶は戻ってはいない》
《masked date:【天藍浄眼/射程:視界内。敵味方問わず、すべての《幻術》スキルの効果を無効にする】》
(……違う。この名・この記憶の私は"わたし"ではない。"この世界のわたし"のものではあるが、"ほんとうのわたし"では、ない)
("ほんとうのわたし"は、かつて"なにか"を為すためにここに来た。そして何かが起きて今"この世界のわたし"の中に閉じ込められている)
(…そこまでは推測できる。だがその"なにか"が思い出せぬ…"ほんとうのわたし"は何を為しにここに来た…?)
『…ま…』
『…さま?』
『藍玉妃さまー!?』
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…慌ただしい声と足音が、私を夢から呼び覚ましました。
私は藍玉妃。陛下にお仕えする側室のひとり。そして…
『藍玉妃さま、またお部屋に妙な手紙が…』
(この子は橙猫。都に登る際、ただ一人故郷からついて来た…唯一私が信頼できる相手…)
「おはよう、小橙。また、例の手紙?」
橙猫が持って来た一枚の紙片。そこには…
「…?相変わらず、よく分からない手紙…心配することはないわ、小橙。私を良く思わない者は山ほどいる。きっとその者たちの嫌がらせでしょう」
☆
『では、お休みなさいませ、藍玉妃しゃま…』
「お休み、小橙…」
一日の勤めを終え、床に入る。そして…
「…?」
深夜。奇妙な浮遊感を感じ、目を開ける。
「!?あれは…私?」
夜の皇宮中庭。夢遊病者めいた足取りで歩を進める私。そしてそれを空から眺めるワタシ…
「…幽霊?」
幻想京中から集って来る半透明の人影たちが、皇宮の上空で渦を巻く。
そして、"私"の双眸が天藍色に輝いた…
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最終幕『電脳飛鷺』 |
『現実』を『虚構』に、『虚構』を『現実』に…
メビウスの輪は永劫に、反転を繰り返す!
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最終更新:2025年03月22日 07:48