ゾディアック編


《プロローグ》


鬼道、占星術、天文…
星には古くから神秘の力が宿るとされてきた
そう、奇跡を起こす摩訶不思議な神秘の力が…

『今夜、この配置です!私の奇跡パワーを増幅する神の配列!』
『今です!臨!闘!兵!者!悉…』

十字に並んだ星の力を借り、一挙に街を作り替えようと"儀式"を行う奇跡団首領・東風谷早苗だったが…

『なん…だと…?』
『…パワーの萃まるのが早すぎる!?…こ、これは…!』

何者かの介在によって失敗に終わる"儀式"

星の配列により増幅した奇跡パワーは十二の流星に姿を変え、幻想町の各地に落下

奇跡の力を秘めた星々は、手に入れた者に大いなる力をもたらす
しかし、それは諸刃の刃。手に余る力は必ず暴走し周囲に混沌と災厄をもたらす

「あの星がまさかそんな物だったなんて…」
「とにかく、厄介なことになる前に探して回収しないと…」
ミッドヴィリーム

『『奇跡パワーが使えない!?』』
『あの星に奇跡パワーを全て持っていかれまして…』
『…ご安心を、首領。我々が必ずや奇跡パワーを回収してご覧にいれます』
『奇跡の盾、御覧に入れましょう』
『我にお任せを!』
『まあ、どーんと構えときなって』
東風谷奇跡団

『いよいよ大詰めだ。ここでしくじっては意味がない…いいな?』
『へっへっへ、細工は上々、仕上げをごろうじろ…さ』
『Ahaaa…Uwuuu…♪』
そして、暗躍する第三勢力

果たして、十二の星は誰の手に集うのか!?
ミッドヴィリーム番外編・第二弾!!

  『十 二 星 座(ゾディアック) 編』!!  




【次回予告】
羊が一匹
羊が二匹…

つまらない現実より、幸せな夢
それがその少女の望みだった
そして、牡羊座の星がその願いに応えた…

羊が三匹
羊が四匹…

金の羊毛にくるまれて、少女は眠り続ける
逆転する夢と現実。
果たしてどちらが真実なのか
瞳を閉じて、少女は夢見る
幸せな、終わらない夢を。
次回、十二星座編・第一話『ヒツジノミルユメ』
誰に言い切れるのか。この世界が夢でないと

【流星の化身】
名前:アリエスクルスタ(『アリエス』(牡羊座)+『ミラ"クル"』+『"スタ"ー』)
宿った対象:古明地こいし
能力:目を閉じる程度の能力
(→眠っている間外から干渉できなくなる。能力の範囲内で眠ったものも同様)
解説:十二の流星の一つ・牡羊座の星が登校拒否中の生徒、古明地こいしに宿る。

(ストーリー)
十二の流星のひとつが落ちた場所を突き止め、その場所に急行したヴィリームたち。しかしそこにあったのは…
「いったい何があったんだ!?」
半透明の姿で幸せそうに眠る人々の姿。揺り起こそうにも手がすり抜けてしまい捉えどころがない。これが流星のパワーなのだろうか?
そして、ヴィリームたちにも流星の力が影響を及ぼし…
「なんだ?急に眠く…」
「みんな、寝ちゃだめだ、みん…な…」


周囲を現実と切り離し、夢に引き込む。
"もう何も見たくない。聞きたくない。ずっと眠ったまま楽しい夢を見ていたい"
というこいしの望み。それにより星が発現した能力はそういう力であった。
ヴィリーム達も夢の世界に引き込まれ、こいしと知り合いだったキスメだけがこいしのところに辿り着く。
必死にこいしを説得しようとするキスメだが…
「こいしちゃん、目を覚まして。一緒に学校に行こうよ」
『なんで?キスメちゃんも一緒にこっちにおいでよ…私、キスメちゃんのことは嫌いじゃなかったよ』
「ちょっと、こいしちゃん…は、離し…」
『おいでよ夢の世界に。一緒に遊ぼう?綺麗な首輪もつけてあげる…』
「だ…駄目だよ私たち…女の子同士なのに…」
『ほーらおいでー。モフモフの羊ベッドだよー…』
逆にこいしに誘惑され危険な状態に。
《こちらフォン・フォン。ターゲットの精神にアクセス完了。任務を開始する…あっ》

Beep!! Beep!! Beep!! Beep!!

「な…何の音?」
『ああもう、うるさいうるさい!』

間一髪、ひそかに夢の中に潜入していたフォン・フォンが解除を忘れていた目覚まし用アラームが鳴ったため全員夢の外に放り出され助かる
だが、
『消えろ!私が眠るのを邪魔する奴は、みんな消えちゃえ!!』
ヴィリーム達の目前で奇跡の力が暴走し、こいしの悪夢の世界が現実を押し退けその姿を現す…
全身に目のある巨人、鳥の頭をした人のようなもの、鮮やかな色彩のヨクワカラナイモノ。
「なんだこりゃ…こんなものどう戦えば…」
あまりに異様な光景に戸惑うヴィリームたち。しかし、
「…大丈夫。私に任せて」
すたすたと悪夢の怪物たちの方に向かっていくルクス。一斉に怪物たちがその腕を振るう
「…ルクス!?」
その腕はルクスをすり抜ける。
「これも夢…なんでしょ?わかってれば…怖くない。大丈夫。ねえ、こいしちゃん」
宙に伸ばしたルクスの手が”なにか”をつかみ、そして…
『わわっ!?』
こいしの手をつかみ、引き寄せた。
「ねえこいしちゃん。外は別に怖いところじゃないよ?アリス先生も私もいるし…一度来てみない?学校…」

こうして、十二の流星最初の異変はその幕を閉じた。
しかし、幻想町にはまだ、残り十一の流星が潜んでいる…
ヴィリームたちは果たして、残りの星が生み出す異変を解決し、
町に平和をもたらすことができるのであろうか…?
(次回へ続く)



【次回予告】
地を耕し、天に至る
それはこの国がまだ一面の焼け野原だったころの話…
一人と一機は願った
"あの日の栄光をもう一度"と
そして、雄牛の星がその声に応えた…

次回、十二星座編・第二話
『高度成長の亡霊』
過去が輝いて見えたら、もう若くはない

【流星の化身】
名前:トーラスクルスタ(『トーラス』(雄牛座)+『ミラ"クル"』+『"スタ"ー』)
宿った対象:八坂神奈子&万能重機『たぢからを』
能力:平らげる程度の能力
(→踏み潰した相手を紙のようにペラペラにする)
解説:十二の流星の一つ・雄牛座の星が建設会社の社長・八坂神奈子とその所有する大型万能重機『たぢからを』に宿る。

(ストーリー)
『さあ、日本列島再改造と征こうか、我が相棒よ』
『ギギギィィ…』
「待て!そうはさせぬぞ!」
「うーん、でも一度更地にした方が遊園地も立てやすいかも…」
「ま、まずはこいつを倒して星を回収してからに…」
風神区、八坂建設の格納庫。星の力を得て暴れ始めた神奈子と”たぢからお”の前に、まずは奇跡団が姿を現す
「行くぞ!牡羊座の星に続き、牡牛座の星も我らがいただきじゃ!」
ブレイド・チックが電柱を切り倒し足止めをし、ミセス・ウォッチのナイフがキャタピラの隙間に打ち込まれる。
「もらったニャー!」
そこにレトロ・トラックが無数の車輪を飛ばす。あたりがもうもうたる土煙で覆われ…

『なんだ、それで終わりか?』
「…!?」

土煙の中から、先ほどまでの重機の姿ではなく、鋼の猛牛と化した"たぢからお"が傷一つないその姿を現す
「変形ロボ!?」
「首領殿!喜んでいる場合ではござらぬぞ!?」
驚き騒ぐ奇跡団の面々を…
『では、さらばだ!』
鋼の猛牛が、その能力をもって平面に押し圧していった

「待て!私たちが相手になるぞ!」
奇跡団を倒した神奈子とたぢからおの前に、今度はヴィリームたちが立ちはだかる
しかし、
『ふっ、そのような豆鉄砲などいくら喰らおうと傷一つつかぬ!』
ヴィリームたちの攻撃は鋼の外皮の前にはじかれ、
『それ、お前たちも私の礎としてやろう!』
ヴィリームたちも一人、また一人と平面に押し圧されていく…


『もはや邪魔も入るまい、では列島再改造の続きと行くか、相棒』
『ギギギィィ…』
黒金の猛牛が道なき道に道を敷いていく
五条の鋤が大地を穿ち、鋼の蹄が踏み固める
「そこまでよ!」「そこまでです!」
爆進する猛牛の前に立ちはだかるは、一人の少女と奇跡獣…
リムフォールと、マイクロ・チンであった

『なんだ、まだ残っていたのか。』
「集合の合図を聞きのがしてしまいまして」「ち、ちょっと忘れ物を…」
『だが、たった二人で私にかなうと思っているのか?』

猛牛が再び進撃を開始する。
しかし、二人の顔にあきらめの色はなく…
『リムフォールさん、私に奇跡獣を強化する力があるのはご存じですね?今からその力をあなたに使います…』
「…!?」

マイクロ・チンの両腕から黄金の光がほとばしる!
その力を浴び、リムフォールの姿がさらにもう一段の変身を開始する!
「すごい…力が溢れてくるわ」
「…奇跡獣以外を強化するのは初めてですが、うまくいったようですね」
「リムフォール・マタドールフォームとでもいったところかしら?」

「さあ、かかって来なさい、鈍牛!」

深紅のマントを翻し、魔法少女は秋空を華麗に舞う
猛牛の角も蹄も、その身に触れること能わず

『くそっ、なぜ当たらん!』
『フシュー…ガシュー…』
「いまの私に怖いものは何もないの…さあ、そろそろ終幕(フィナーレ)といきましょうか!」

リムフォールが右手にミラクルパワーを結集させる
「ヴィリーム…」
「フォール…」
「バレストラ!!」
渺、と風が吹き抜けた。人の形をした、赤い風が。
『我らが…敗ける…だと?あの体のどこに、そんな…力が…?』
がしゃぁん、と鋼の猛牛は動きを止め、そして静かに崩れ落ちた。

呆気ない幕切れ…かと、誰もが思った…しかし

《非常電源モード・駆動開始します》
『リムフォォォォォル!まだだあぁぁぁぁ!』
「…!静葉さん、危ない!」
「……えっ?」

幕 は ま だ 、 降 り て は い な か っ た 。


断ち切られた筈の鋼を繋ぐのは、矜持か、執念か。
鋼の猛牛が立ち上がり、静葉の不意を衝いて最後の突進を放った!
静葉の華奢な肢体が秋空を舞う
『し、静葉さん!静葉さーーーん!?』

果たしてリムフォールの運命は?そして残り十の流星は果たしてだれの手に渡るのか!?
(次回に続く)



+ ※ストーリー説明前に注意点
《劇中、重要人物として堀川雷鼓が出てきますが、先に出た雷鼓さんの設定と食い違います。》
《二十歳の若き天才ドラマーで、堀川芸能事務所の女社長の堀川雷鼓とは同名の別人と御解釈ください》

【次回予告】
影。それは生まれついてのもう一人の自分
背中合わせの、双子の分身
いかに輝こうとも、己の背負った影を消し去ることは出来ない…
いや、むしろ輝きが強ければ強いほどに…

「あっ、RAIKOさんだ!」
「なんだ、有名なのか?」
「超!有名な!アーテストさん!ですよー!」
「作詞も作曲もドラムも出来るって凄いよねえ…」

捨て去った筈の過去が十字架のように重くのし掛かる
その重圧に耐えかね、若き天才ドラマーは、罰と救済を望んだ
そして、双子の星がその願いに答えた…
次回、十二星座編・第三話『リバースビート』
幾度裏返そうと、影の形は同じ

『なるほどそれがお前の願いか…よかろう、その過去私が消し去ってやろうではないか…』
「…だ、誰?」

影が光を覆う
表裏が入れ替わる
そして…

(prrrr…)
『屠自古~、久しぶり~♪』
「雷鼓さん!?いったいどうしたんです?」
『たまたまこっちに来てるから~、屠自古ちゃんの顔でも見たいなーって♪』
「…酔ってます?もしかして」

過去を喰らわんと、影は牙を剥く

『…いつから、気付いていたのかな?』
「雷鼓さんのバンド仲間や昔の知り合いが襲われてるって聞いてねえ…」
『なるほど…流石に鋭いわね、屠自古』
「…雷鼓さんと同じその声で、それ以上喋るな」

明かされる"過去"

『やめて!言わないで!』
『いいじゃないか、聞かせてやりなよ。蘇我屠自古、私のデビュー曲、あれはな…』


【流星の化身】
名前:ジェミニクルスタ(『ジェミニ』(双子座)+『ミラ"クル"』+『"スタ"ー』)
宿った対象:堀川雷鼓
能力:影を操る程度の能力
(→影を独立させて自由に操る。影のパワーは本体の心の闇の深さに比例する)
解説:十二の流星の一つ・双子座の星が人気アーティスト堀川雷鼓の影に宿る。
雷鼓の望み"過去の秘密を暴かれたくない/自分を罰して欲しい"という思いから雷鼓の過去を知る者を襲う
中学校の後輩だった屠自古も手にかけようとするが、見抜かれてそのままリムテスラに変身した屠自古と戦う
"自分を罰して欲しい"という願いから、与えたダメージは雷鼓に行く、と知って攻撃できないリムテスラを一方的に攻撃
諦めないテスラの心を折ろうと雷鼓の過去…

"大ヒットしたデビュー曲が、実は事故死したバンド仲間の遺作で、それを自分が作詞作曲したものと偽っていたこと"

…を明かすが、これが裏目に出る

「…なんだい、そんなことか」
『……えっ?』
「それがどうした、誰にでも秘密の一つ二つあるさ。気が済まないってんなら今からでもいい、真実明かして"ごめんなさい"って言やぁいいさ…な、雷鼓さん?」
『屠…自…古…』

雷鼓がジェミニの支配を逃れたことで分離し、テスラに襲いかかったジェミニだったが、テスラ怒りの特大雷撃を受け文字通り影も残さず爆発霧散した

その後、RAIKOこと堀川雷鼓はデビュー曲の件を記者会見で発表、ファンに謝罪してしばらく活動を休止すると発表
新聞・ワイドショーを賑わすことになる
屠自古がその話題で盛り上がる他のヴィリームたちを横目に雷鼓の最新曲のデモテープを再生するところでend→スタッフロール


【次回予告】
「じゃあ、静葉さんは…」
「命に別状はない。しかし、スペルカードにひびが入ってしまっている…残念だが、もう変身は…」
「そんな…」

慢心の報い
その代償として、失ったもの
かつて魔法少女だった少女は願った
"もう一度、あの赤に身を包みたい"
そして、巨蟹の星がその願いに応えた…

ふたたび魔法少女は戦場に舞う
血のあぶくでひびを塞ぎ、真紅の甲殻で傷を鎧いながら…

次回、十二星座編・第四話『赫き夢の器』
その身を染めるは返り血か、それとも自身の血の涙か。

【流星の化身】
名前:キャンサークルスタ(『キャンサー』(蟹座)+『ミラ"クル"』+『"スタ"ー』)
宿った対象:秋静葉
能力:命を刈る程度の能力
(→自らの手で倒した相手の生命力を奪い、自らのものにする)
解説:十二の流星の一つ・蟹座の星が変身する力を失ったヴィリーム・リムフォールこと秋静葉に宿る。

(ストーリー)
前々回の戦いで負傷した秋静葉は病院にいた
スペルカードにひびが入っており、もう変身は出来ないということを知ってしまった静葉の心に蟹座の星が語りかける

『その願い、叶えよう…』

元通りになったスペルカードを手に復帰するリムフォール。
しかし…

「静葉の様子がおかしい?」
「なんだか最近、奇跡団や奇跡獣に対して容赦ないような気がするんです…やけに攻撃的というか…」
「ふむ…」

蟹座の星が授けたのは、命を刈る能力
刈った命で欠けたスペルカードを補う
蟹座の散開星雲は、中国では積尸気…死体から昇る鬼気に見立てられる
蟹座は、死を司る星でもあった

「なんですって?」
『穴の空いた器に水を注ぐようなものなのだ、今のままではな』
「…そんな」
『だが、方法が無いわけでもない』
「どうすればいいの?」
『ひびの入っていないスペルカードを手にいれ、移し変える。他のヴィリームからな』
「そんなこと!」
『無理強いはしない。選ぶのは主、お前だ』
「……」

そして。

「お話って何ですか、静葉さん?」
「翠ちゃん…あなた以前に『戦いは苦手』って言っていたわよね?」
「えっ?…はい」

静葉は翠に言う
『あなたはもう戦わなくて済む、私はヴィリームに戻れる。一石二鳥でしょ?』

だから。

『あなたのスペルカードを私にちょうだい?』

「すみません、それはできません」
『…え?えっと…なんで?』
「戦うのは確かに苦手ですけど…でもこの力で守りたいものがあるんです!」
「だから、私のスペルカードは差し上げられません。ごめんなさい」

衝撃。失意。落胆。
ニア『ころしてでも うばいとる』
物騒な誘惑が脳内を駆け巡る
そして、静葉は…


『…良かったのか、主。本当に』
「仕方ないじゃない!あんな泣きそうな顔で言われちゃ…」
『…』
「私の我が儘のためにスペルカードを差し出して、なんて言えるわけ、ないじゃない…」
『わかった。…主よ、我がスペルカードとなろう』
「…え?」
『我の体は奇跡の力そのものの塊。なればスペルカードの代わりもつとまろうぞ』
「え、じゃあ…」
『ただし、我の力も無限ではない。これは先延ばしにしかならぬぞ、主よ』
「…うん。今はそれでいい。残りの力、あの子たちのために使わせて貰うね?」
『…御意』

ギリシャ神話における蟹座は、親友だったヒドラを救援しようとして
英雄ヘラクレスに立ち向かい踏み潰された大蟹が天に登った姿だと云われる…




【次回予告】
愚か者の案山子は、"知恵が欲しい"とオズに言った
無感情な木こりは、"心が欲しい"とオズに言った
臆病者の獅子は、"勇気が欲しい"とオズに言った
魔法使いは三人に言った『あなたたちは既にそれを持っているよ』

その少女は、ヒーローに憧れていた
一人悪に立ち向かい、獅子のように堂々と悪を倒す、無敵のヒーローに。
そして、獅子の星がその願いに応えた…
次回十二星座編・第五話『獅子身中の蟲』
打ち倒す者は強い。だが、倒されてなお起き上がる者はさらに強い

【流星の化身】
名前:レオクルスタ(『レオ』(獅子座)+『ミラ"クル"』+『"スタ"ー』)
宿った対象:伊藤リグル
能力:覇気をまとう程度の能力
(→"名誉力"とでも言うべきものをパワーに変える。宿る相手が名誉ある振る舞いをしている間は無敵だが名誉なき行いを取ると弱体化する)
解説:十二の流星の一つ・獅子座の星がヒーローに憧れる少女伊藤リグルに宿る。

(ストーリー)
霧湖学園の生徒リグルは、昔からヒーローもののアニメやコミックが好きな少女だった
そんな最中、偶然戦うヴィリームたちを目撃する
そして"私もあんな風になりたい…"という願いに星が応える

人形の奇妙な奇跡獣が現れたと聞き、まずグラースとセトネが駆け付ける
しかしその奇跡獣のひと蹴りでグラースが吹っ飛ばされ、セトネは怯えて逃走してしまう

その連絡を受けた残りのヴィリームたちは、レオを見通しのいい天狗岳の石切場へ誘い出すと全員で取り囲む
この数なら勝ち目はない…と思った瞬間、取り囲まれたレオが笑いだした!

「…?何が可笑しい?」
『多勢を以て一人を叩く…それは雑魚のやること』
「…なんだと?」
『一つ教えてやろう、追い込まれたのは私じゃない…』

『お前たちだ!』


多勢に無勢の窮地…とはたからは見えた。
しかし、"獅子"にとってはまさにその状況こそが自らの真価を存分に発揮できる狩り場であった

「…きゃあ!」「うわぁ!」
レオの蹴りが起こした拳風で、ウェールとモルテ、ルクスが揃って吹き飛ぶ。
「てめえ、よくもあたしの後輩たちを!」
怒髪天となったテスラが雷を叩きつける。
「やったか!?」
『…それも、雑魚の台詞だ』
煙の中から現れたレオの飛び蹴りでテスラが昏倒する。
「風よ!」
ファータがつむじ風で足を止め…
「もらった!」
ブレイブが斬りかかる
『…甘い』
その刀を受け止め、ブレイブの体ごと持ち上げると、ファータに向けて投げつける。折り重なって気絶する二人
『こんなもの?ずいぶん拍子抜け…ん?』
『何かした、今?』
「…えっ?」
信じられない、という顔で後頭部に不意打ちの杵を見舞ったハピネスが固まる
『そういうのは雑魚のやることって…言っただろうが!』
ハピネスを掴み、ぐるぐる回して地面に叩きつけるレオ。目を回してのびてしまうハピネス
『…さて、と。そっちのお姉さん二人は少しは楽しませてくれるのかな?』
「ですってよ、真夜さん?」
「…やれやれ、明日は筋肉痛ね」
リムビターがどこからか赤い星を取り出す
「あら、そっちですか?時計の方がいいのでは?」
「咲夜さんは"卑怯な技"と見なされて敵を強化してしまいかねませんから」
『…ん?もしかして私の能力を見切った?まあいいや、やることは同じ…』

『行くよ!』/「行くわよ!」

空中で、ビターとレオの飛び蹴りが交差する。気を纏った蹴りがレオの蹴りを相殺する
着地したレオに今度はフォールの鉤突きの連打が襲う
『いい加減に…しろっ!』
レオがカウンターの一撃を放つ。命中…と思われたがその一撃はフォールをすり抜け…
「残念、それはそこに残した私の"色彩"…私はここよ」
背後からの声。思わず振り向くレオに
「あら、私のこともお忘れなく」
ビターの発勁が腹部に炸裂。レオの体がくの字に曲がる
『グッ…ガアァ…』

『あ…あんたたちに…一つ忠告だよ…』
「何?」
『二対一での挟み撃ち…それは…』

『所詮、雑魚のする事』


「「…!」」

瞬間。倒れていたレオが独楽のように回転、両足でビターとフォールの頭部を薙いでいた

『はぁー…はぁー…や、やった!勝ったぞ!』
『やったな主よ。では存分に…喰らえ』
『え?』
『その者たちの力を喰らうのだ。勝者は主…なにを憚ることがある?』

レオが倒されたヴィリームたちに近寄る。
だが、

「待てッ!」

レオが振り向く。傘を構えて震える足でこちらをにらんでいたのは

「わちきが相手だッッ!勝負しろ怪人野郎ッッ!」
最初の戦いで逃げ出した、リムセトネであった

『…お前を倒したって名誉にならん。見逃してやるからさっさと失せろ』
「う、うるさい!行くぞ!」
セトネが飛び掛かる
しかし、レオの一撃でたやすく吹き飛ばされてしまう
『まったく、雑魚のくせに…』
再びヴィリームたちに向き直るレオ。しかし…
「まだ終わってないぞ!勝負しろ!」
傘を杖に立ち上がるセトネ
流石に苛立ってきたのかレオが殺気を込めた視線をセトネに向ける
『失せろ』
「ひっ…」

脚がすくむ。膀胱が収縮する。心臓が割れ鐘のように響く
恐い!恐い!恐い!恐い!
すぐにでも逃げ出したい衝動がセトネを襲う

「う…うわぁぁぁぁ!!」
『…!?』
セトネが駆け出した。
前方に居る恐怖の根源…レオに向かって

『…このっ!』
「うわぁぁぁぁ!!」
レオが突きだした脚に阻まれ、再び吹き飛ばされて倒れるセトネ
『恐怖のあまりおかしくなったのかな?まあいいや、もう邪魔は出来ないだろうし』

「待ぁ~てぇ~」
傘を杖に、三度立ち上がる。
『いい加減に…』

吹き飛ばす。
立ち上がる。
吹き飛ばす。
立ち上がる。
吹き飛ばす。
立ち上がる。

「わちきが…みんなを守るんだ…さあ…かかって来いよ…」
『な…なんなの一体こいつ…』
「来ないのなら…こちらから行くぞ…!」
セトネが、半ば倒れこむような突進をする。しかし…
『…えっ?』
レオが、半歩下がった。
セトネの背後になにか恐ろしいものでも見たかのように

…下がってしまった。己よりも遥かに弱い、相手に
獅子にあるまじき行い。名誉無き態度
無敵の甲殻を、ただの傘が貫く
薄れる意識の中、セトネは聞いた
『見事だ、真の強者よ…』
という、かすかな声を…


【次回予告】
その少女は、ずっと身体を動かすことができなかった
そんな彼女をずっと母親は愛情を込めて世話をして、話し掛けていてくれた
彼女は願った
"動けるようになりたい"と
そして、乙女の星がその声に応えた…

次回十二星座編・第六話『幻想の人の形』
人形は人の形を模した。人が神の形を模したように

【流星の化身】
名前:ヴァルゴクルスタ(ヴァルゴ(乙女座)+ミラ"クル"+"スタ"ー)
宿った対象:上海人形
能力:形象を操る程度の能力
(→形が同じものを"同一のもの"として扱うことができる。上海人形はまだ能力を扱いきれていないので、ヒトガタをしたものに生命を与える(またはその逆に人間を人形化する)ことしかできない)
解説:十二の流星のひとつ乙女座の星が、アリス・マーガトロイドの所有する人形に宿る

(ストーリー)
その日、妖山学園の教師アリス・マーガトロイドは大事にしていた人形の一体が無いことに気付き、
その次の日、その人形にそっくりな少女が自分の生徒たちと遊んでいるところを目撃する
不思議に思ったアリスだったが、その日家に帰ると人形が元の場所にあった
そうしたことが何度かあったが、アリスは"そういうこともあるか"と気にしないようにしていた
事件が起きたのはそれから数日後のこと…

『ねえ』
『…?』
『どうすれば、いつでも動けるようになるの?他の子供たちみたいに』
『力が足りませんね。もっと力が必要なのです、主様』
『だーかーらー、どうすればいいのよ!?』
『時間がかかる方法と、かからない方法。どちらがよろしいですか?』

その日、幻想町からすべての人形が消えた
そして、それと同時に意識を失い昏倒する人間が続出する

『助けて!私のお父さんとお母さんの工場が大変なの!』
ヴワルに飛び込んできたのは、キスメのクラスメイト、メディスンであった。
調査に乗り出したヴィリームたちは発見する
映塚区メランコリー人形工房に集結する、無数の人形の群れを…

人形工場に突入するヴィリームたちだが、さすがに数の暴力に圧倒される
苦戦するヴィリームたちの前に、星を探して来た奇跡団メンバーが登場
『星をどちらが手に入れるかはひとまず後回し、今はこの事態を解決いたしましょう』
人形たちを蹴散らし工場の奥に向かうヴィリーム+奇跡団の前に
上海人形とアリスの人形たちが現れる

『あなたたち、不思議な力があるのね』
『その力があれば、他の人形たちもたくさん人間にしてあげられるわ』
『その力、いただくわね』

上海人形の"形象を操る程度の能力"で次第に人形に変えられていくヴィリームと奇跡団たち
唯一、戦闘機形態で人形化をまぬがれたブレイド・チックにもアリスの人形たちが襲い掛かる
風前の灯火…と思われたその時、ルクスがブレイド・チックの翼に引っ掛かり叫んだ
「私をアリス先生のところに連れていって!」

キスメは気付いていた。あの少女がアリス先生の大事にしていた人形だと

ブレイド・チックに乗り、アリスが上海人形の前に降りてきた

『ただいま。ううん…はじめまして、かな?お母さん』
『上海…だったのね、やっぱり…』
『わたしね、ずっと動けるようになりたかった。やっと夢が叶ったの。お星さまが叶えてくれたんだよ、お母さん』
『……上海、すぐに街の人達を元に戻しなさい』
『なんで?わたしに元の人形に戻れっていうの?』
『でも人に迷惑をかけるのはダメ。そんな悪い子はお母さん、嫌いよ?』
『…え?あうう…』
『大丈夫よ上海。たとえ動けなくても、貴女には心があるんだってわかったから。それでもう充分よ』

かくして、異変は終わりを告げた
人形は人形に、意識を失った人間は無事目を覚まし
数日後には、町はすっかり日常を取り戻していた…


(アリス家)
『(ガチャ)ただいまー…』
『(オカエリナサイ)』

『…ええ、ただいま。上海』
Fin


【次回予告】
槌を打ち鳴らす。
『判決。証拠不十分により、無罪!』
傍聴席の老夫婦が唇を噛み締める
被告人の肥満した男は悠々とハンカチで汗を拭いている
『…豚め』
罪は明白。しかし、証拠がない以上、法では奴を裁けない
法に携わる者として、己の無力を感じたのはこれで何度目だろうか。
裁判官は思った
"私の手で、裁きを下せないか"と
そして、天秤の星がその声に応えた…
次回十二星座編第七話『天知る、地知る、我知る、君知る』
泰山府君の名において、裁き下すは我に有り

【流星の化身】
名前:リーブラクルスタ(リーブラ(天秤座)+ミラ"クル"+"スタ"ー)
宿った対象:四季映姫
能力:裁きを下す程度の能力
(→生物にかかる重力を倍加させる。増す重力は罪の重さに比例する)
解説:十二の流星のひとつ天秤座の星が、幻想町の裁判官・四季映姫に宿る。

(ストーリー)
『ん…?』
目を覚ます。自宅の部屋のモノトーンの壁が目に入る
頭が痛い。目の前には…缶ビールが二本。そして肩には毛布。加えて
『学校に行ってきます』
との書き置き。
四季映姫は状況を理解した
晩酌してそのまま寝てしまったらしい。子供にこんな醜態をさらしてしまうなど、法の番人として示しがつかない。
『黒にはあとで謝っておかないと…ん?』

『…次のニュースです。今朝未明、××氏が自宅で全身粉砕骨折の重体で発見されました…警察は事件と見て捜査を…』
あの男か。不思議な話だがこれも因果応報というものだろう…

それから数日おきに、幻想町各地で同一の事件が起きる
被害者はバラバラだが、みな一様に全身または体の一部を粉砕されていた

さらにそれから数日後、ヴワルにて…

「映姫さんが、そんなこと、するわけ、ないで、しょうがっ!!」
『お、落ち着…』
「黒ちゃん落ち着いて!」
黒リリーが火の玉の首を〆ながら叫ぶ。どの辺が首かはわからないが
『とにかく、現場周辺で映姫に似た人物が目撃されている、なにか関係があると考えた方が自然だろう』
「映姫さんがそんなことするはずない!わかった、私が映姫さんの無実を証明して見せるわ!」
啖呵を切って自宅に帰った黒リリー、朝はごめんなさいと言ってくる映姫に問う

「ねえ映姫さん、いくら悪党でも法を破って処刑していいわけじゃないよね」
『そうよ。いつも言っているけど、刑は復讐ではないの。罪を償わせ悪を更正させるためにあるの』
「…そうだよね」

しかし、その夜…
ガサゴソ…ガチャ

「…映姫さん?」
起き上がり、外に出ていく四季映姫。しかもなにやら様子がおかしい

不審に思った黒リリーがあとをつけると…

『や…やめてくれ…助けて…金なら幾らでも…』
『…駄目だな』
ベキッ ゴキッ ベキッ!
『ぎゃあああーっ!?』

黒リリーが飛び出す
「映姫さん!?そんなわけない…誰よあんた!」

映姫が答える
『私?私は四季映姫であって四季映姫ではない、"もうひとりの"映姫』
「どういうこと?」
『この女はずっと思っていた…法の網から逃れる悪党をいっそ自分で、と』
『その心が私を産んだ。そして星の力と融合してこうして表に出てこれたというわけよ』
「映姫さんを返して!」

黒映姫と黒リリーが睨み合う、そこに…
「いたぞ、ここだ!」
「覚悟するのですー!」
他のヴィリームたちも駆け付ける

黒映姫が叫ぶ
『誰であろうと私の正義を妨げるものは赦さんぞ!』

その瞬間
「きゃあ!」
「ぐええっ!?」
ビターとテスラ、ハピネスとモルテが膝を突く。フォールは膝こそつかないものの右手が地面にめり込んでいる

『その重さが貴様らの罪の重さ…充分に反省するがよい』
「その前にお前を斬る!」
若干体が重くなった程度のブレイブ、ウェール、ファータ、ルクス、セレネ、グラースの六人が黒映姫を取り囲む
しかし。

『私に逆らうのは無意味だぞ』
「「…!?」」
残りの六人も黒映姫の一喝と同時に地に膝を突いてしまう

『私は法の代理人、正義の地上代行者!その私に歯向かう行いはすなわち…有罪!』

「ま…待ちなさい…」
モルテが倒れたまま口を開く
『…?何だ、言ってみろ』
「あんたは正義の代理人なんかじゃ…ない」
『なんだと貴様!』
ズンッ

「あ…あぁ…」
モルテにかかる重力がその強さを増す。骨の軋む嫌な音が響く
「自分の考えが絶対の正義と思い上がり…己に逆らう者は力で押さえつける…」
『黙れと言っている!』
「それのどこに正義がある!答えろっ!四季映姫っ!」
『…!』

正義が揺らぐ。天秤が傾く。
ヴィリームたちを押さえつけていた力が、消えていく…


かくして、異変は終わりを告げた。
ヴィリームたちは再びいつもの日常に戻っていく…


「ねえ、映姫さん」
『ん?』
「正義って、なんだろうね…」
『そうね…螺旋階段があるじゃない?』
「うん?」
『螺旋階段を昇るのを上から見たら、ただぐるぐる回っているだけに見えるでしょう。実際には少しずつ、上に昇っているのにね』
『同じことよ。一歩一歩、理想に向かう。一朝一夕にはいかないわ。焦ることはないわ、あなたはまだ若いんだから』
「…うん」


※注意:長いです。ギャグ回です。ヴィリームが出てきません

【次回予告】
天の星に手を伸ばす。
自分には翼がない。"華"という名の翼が。
努力はしてきた。業界ではそれなりに知られた顔と自負もしている
だがそれでも、天性のスター性を持つ者にはやはり叶わない
少女は願った
"星を掴みたい。たとえ…"

"どんな手を使っても"
そして、蠍の星がその願いに応えた…

次回、十二星座編第八話『キャッチ・ザ・スター』
猛毒の針が、人を、大地を狂わせていく

【流星の化身】
名前:スコルピオクルスタ(スコルピオ(蠍座)+ミラ"クル"+"スタ"ー)
宿った対象:黒谷ヤマメ
能力:毒の針で狂わす程度の能力
(→ポニーテールが変化した蠍尾から毒の針を飛ばす。脈と名が付くものなら生物から竜脈までなんでも狂わせられる)
解説:十二の流星のひとつ蠍座の星が、伸び悩み気味のアイドル・黒谷ヤマメに宿る。

(ストーリー)
前回でヴィリームたちが戦っていた頃、その裏で…
『むう…?』
ここは奇跡団アジト。ブックスがなにやらベランダから山の方を見て唸る
『どうかしたのかい?』
トラックがそんなブックスの様子を見て尋ねる
『…天狗岳の地脈が乱れておる!これは十二流星の仕業に違いない!いくぞ、トラック!マイクロ!フォン・フォンは最近なにか変わったことがなかったか情報を集めよ!』
『あ、私もですか?』
"チャリン子チエの再放送が"とごねるトラックをなだめすかし、やって来たのは天狗岳の山頂。
そこには…
『なんだこれ?真っ赤な釘?』
『うーむ…この邪悪なふいんき…分かるぞ、これは地脈を狂わす呪いの類いよ』
『ほんまかいな』
『…しかし、この釘?がなにやら邪悪な気を帯びているのは事実』
『あ、マイクロもそう言うってことはホントにそうなんだ』
『ふはは、そうであろう』

アジトに戻る三人。するとフォン・フォンが頭のアンテナをぴょこぴょこさせつつパソコンでMiratubeを見ている
『こりゃ』
『あ、お帰りなさい…』
『情報収集はどうした』
『いや、さぼってる訳じゃないの…ほらこの動画』
『なんじゃこの女…ヤマメ・クロダニ?』
『この数日間で閲覧数がすごいことなってるの…これって』
『ふむ、流星の力をこの女が利用して…?フォン・フォン、このヤマメ・クロダニのこともう少し詳しく』
『ああ、ヤマメさんの動画ですかね、これ』
『『うわぁ!』』
『しゅしゅしゅ、首領殿!?いつからそこに!?』
奇跡団首領、東風谷早苗が四人の背後に立っていた

『いや、そもそも私の部屋ですしここ』

早苗から黒谷ヤマメについて聞いてみる四人
『前から面白い芸人さんでしたけど最近ブレイクしましてね、どのチャンネルにも…』
『あの、首領…情報によりますと、この人芸人じゃありません…たしかアイドル、です…』
『アイドルだったんですか!?自称だと思ってました…』
『ふむ』
ブックス、しばし黙考

『この女に直接問いただすが早かろう。フォン・フォン、こやつがこの近くに来るのはいつじゃ?』
『ええと…』カタカタ

『明後日…風神区電波塔のラジオ番組に…』

一方その頃…

『念鬼殿ぉぉぉ!その男の目を見てはならぬぅぅぅ!』

ブレイドは茶の間で『バジリスク』のDVDを正座して観ていた

『ええかロバート、白鵬は優雅に土俵を泳いでるように見えて、下では必死に稽古をしてはるんやで』
『ヤマメはん、それ白鵬やない、白鳥や!』
\ドッ/

『お疲れ様でーす』
『はーい、お疲れさまでーす♪』

トントン
『失礼するぞ』
『だ…誰よあんたたち!?』
『落ち着いてくれ、我々はけして怪しい者ではない』
『いや怪しいでしょどう考えても』
トラックの突っ込みを流し、ブックスがヤマメに言う
『これに見覚えは?』
天狗岳で見付けた赤い釘を見せる
『…!?…し、知らないわ』
『そうか。では、こっちはどうじゃ?』
前々回手に入れた"乙女座"の流星を見せる
『これは元々我が主のもの…お主が持っておるなら返してもらいたい』
『嫌よッ!』
ヤマメが血相を変える

『やっと私に巡ってきたブレイクのチャンスなのよ!絶対に渡さないわ!』
『やれやれ、では力ずくでも…トラック、マイクロ。やるぞ』
幹部三人がヤマメを取り囲む。絶体絶命…と思われたが、ヤマメの表情には余裕があった
『みんなー、助けてー♪』
『『ヴォーヤマメチャーン!』』

控室の奥から男たちが現れる。男たちの首筋には赤い針が刺さっていた
『人間も操れるのか!?』
『この男たちは忠実な私の僕たち…さあ、行くわよ!』
男たちと奇跡団が戦う。毒で正気を失った男たちに苦戦する幹部たち
だが、そこに…

『チェストォー!』
窓から飛び込んできたブレイドが男たちの首筋の針を切り落とす。倒れる男たち
『…今宵の勝利は、志半ばで倒れた蓑念鬼殿に捧げよう。ブレイド・チック、参る!』

四対一。さらに絶体絶命の状況。しかし…
『ククク…ハハハハ…』
『甘く見るんじゃないよ…こちとら弱肉強食の芸能界を生き抜いてきたんだ…おい、あんたたち…』

『アイドルを舐めるなよ?』

『…ぐわあっ!?』
『ブレイド!?』

ヤマメの後頭部から伸びた蠍の尾から赤い毒針が飛び、ブレイドの胸を射抜く。死にはしないものの麻痺して動けないブレイド
『ひ…百年目は拙者のほうでござったか…』

『ふふ…ヤマメちゃんのあまりの可愛さに心の臓、止まっちゃったかな?』
蠍の尾をゆらゆらと揺らしながら必殺の毒針を放つ機会をうかがうヤマメ
『トラック、マイクロ』
ブックスが口を開く

『ジェットストリームアタックをかける』


『…!?』
幹部三人がブックスを盾にするかたちで一列になって突っ込んで来る。
これでは毒針を撃っても後ろ二人は仕留めきれない。
…どうするか。
ヤマメはすばやくサイドステップすると毒針を三連射、みごと三連続ヘッドショットを決めた
『ぐわわっ…』
『ふん、フレンドパークよりずっと楽だねえ』

『"ヤマメちゃん、暴漢を撃退"?またファンが増えちゃうなー♪』
『待ちなさい!』

マイクロ・チンが立ち上がる
『なんで?毒針が完全に入ったのに…』
『針はこの予備の取っ手に当たりました』

黒谷ヤマメさん、貴女はアイドルのなんたるかを理解していません』
『…!?あんたにアイドルの何がわかるってのよ?』
『アイドルとはッ!』
マイクロが吠えた
『偶像、崇拝の対象!であれば、本尊であるわたしは、紛れもない"アイドル"です』
『ヤマメさん、毒で人を狂わし、偽りを積み重ねて、それでお天道様に顔を向けてアイドルをやれますか?』
『綺麗事を云うんじゃないよッ!』
ヤマメも吠える
『どんなに努力しても華の無い奴は華の有る奴には叶わない!アヒルはどんなに頑張っても白鵬にはなれないんだよッ!』

『それは違いますよ、ヤマメさん。あとサインください』
『し、首領!?』
突如現れた早苗が言う

『ヤマメさん、アイドルなどいかに頑張っても二十代まで。あとは若い子にとって変わられるだけ…』
『私思ってたんです。ヤマメさんはMC方面を目指した方がいいのではないか、と』

『いきなり現れてなに好き勝手言ってんだあんたはッ!』
ヤマメの毒針が早苗に飛ぶ!ナムサン!
今は奇跡の力の無いただの人間である早苗が毒針を受ければ命にかかわる!
危機一髪!

『…!?』
毒針が早苗をすり抜けた。まるで、一瞬時が止まったかのように…

『今の一撃、なぜ外したかお分かりですか、ヤマメさん』
マイクロが口を開く
『あなたの心に迷いがあったからです。そう、貴女は本当は正々堂々、お天道様に顔向けできるやり方でブレイクしたいと思っているのです!』
『…!』
ヤマメがうなだれる

『さあ、星を返してください。返して…もらえますよね?』
『…わかったよ。その代わり、次の私のライブ必ず見に来るんだよ。いいね?』
ヤマメは顔を上げ、太陽のような笑顔で、笑った。


かくして、異変は起きる前に奇跡団により鎮圧され、蠍座の星は奇跡団の手に渡った
残る流星はあと4つ
戦え!奇跡団!
征け!奇跡団!

【次回予告】
スミヨシプロジェクト。
今から十数年前、若き天才科学者が言った
『幻想町からロケットを打ち上げよう』
誰しもが無謀と断言したその計画は、苦難を乗り越え成就の手前まで辿り着く
しかし、若き天才科学者の死とともに計画は凍結
航海の神の名を冠したそのロケットは、静かに朽ちていった…

その少女は、子供の頃からロケットを見て育ってきた
ある日、少女はそのロケットとスミヨシプロジェクトについて知る
少女は願った
"このロケットで宇宙を目指したい"
そして、射手の星がその声に応えた…
次回、十二星座編 第九話『スミヨシプロジェクト』
朽ちかけた三矢は天を目指す。たとえ弓弦が弾けようとも

【流星の化身】
名前:サジタリアクルスタ(サジタリア(射手座)+ミラ"クル"+"スタ"ー)
宿った対象:北白河ちゆり
能力:住吉三神の加護を得る程度の能力
(→住吉三神の分霊を呼び出し代わりに戦わせる)
解説:十二の流星のひとつ射手座の星が、夢空区の天才少女北白河ちゆりに宿る。

(ストーリー)
緊急連絡により、ヴワルに集められたヴィリームたち
いつになく硬い表情で火の玉とビターが口を開く

『ヴィリームの諸君、緊急事態だ』
儚月区宇宙センターのロケット…通称"住吉ロケット"が何者かの手によって発射準備カウントダウンに入りました」
『スミヨシプロジェクト始動時ならよいが、今は周囲に民家がある。無理に発射しようものなら…大惨事だな』
「私たちはここで情報収集とサポートに回ります。住吉ロケット発射を食い止めてください」
《住吉ロケット発射まで、あと十二時間です》

ただちに儚月区宇宙センターに向かうヴィリームたち。しかし…

ドーン
「ぐわあぁぁぁ!」
「「こ、小傘ーーー!」」
ロケット基部は天才少女ちゆりの手による手製ブービートラップの雨嵐
《住吉ロケット発射まで、あと六時間です》

これでは間に合わない、一体どうすれば…
その時、リムハピネスが口を開いた
「私の足跡を踏んであとからついてこい。安心しろ…」

「私は罠のプロフェッショナルだ」

《住吉ロケット発射まで、あと二時間です》
罠の嵐をくぐり抜け、たどり着いたは住吉ロケット接続タラップ。ヴィリームたちは今まさにロケットに乗り込まんとするちゆりと対峙する
町に被害が出ることを説明し、ちゆりを説得するヴィリームたちだが、なにか様子がおかしい…?

『私"たち"は待ったんだ!十数年の間…今さら止められるかよッ!』
「私"たち"?」
「まさか…ロケット自身の…意思に操られて…?」
《住吉ロケット発射まで、あと一時間です》
『時間がないな…住吉さま!頼むぜッ!』
「なんだ、こいつら!?」


ちゆりの声と共に現れたのは、『波』『潮』『淵』の仮面を着けた三人の黒子
その正体は、航海の神にしてロケットの名付け元、住吉明神の分霊であった

「…!?強い…!」
「攻撃が、飲み込まれた?」
攻撃を飲み込む『淵』の底筒、飲み込まれたものを吐き出す『波』の上筒、そして二つのものの位置を瞬時に入れ換える『潮』の中筒…
本物の神様が相手とあってヴィリームたちも圧倒される

《住吉ロケット発射、カウントダウン開始》
「間に合わない!」
「くっ、あの緊急停止スイッチさえ押せれば…!」
必死にスイッチを押そうとするが、そのたびに住吉三神によって阻止される
《10…9…8…》
「もうだめだ…おしまいだあ…」

誰もが諦めかけたその瞬間!
そ の と き ふ し ぎ な こ と が 起 こ っ た !

なんと、住吉明神の分霊が消えていくではないか!
あっけにとられるヴィリームたち
《3…2…1…》
「危ねえ!」ポチッ

《緊 急 停 止 システム が 作動 し ま し た》


「ふう~」
ヴワルにて、リムテスラはため息をついた
蘇我グループから市長に働きかけ、プロジェクト名を『スミヨシプロジェクト』から『オリオンプロジェクト』に変更させて住吉明神の加護を断つ…」
「一か八かだったが、うまくいったようだな…やれやれ、兄貴に一つ借りができてしまった」

かくして、幻想町の危機はヴィリームたちによって未然に防がれた
北白河ちゆりは、『今度は自分の力でロケットを翔ばしてみせるぜ!』と
現在、飛び級で留学のために勉強中の日々を送っているという…
残る流星はあと3つ
果たして、次なる異変は…?
《第十話『暗黒の聖女』に…つづく》


【次回予告】
"生贄の山羊(スケープゴート)"となれ
我が身を捨てて、主の教えに殉じなさい

その通り生きてきた。だが…
主は眠っておられるのだろうか?世界は不平等・不公平に満ちている
皆、幸せになりたい。その為に争う、矛盾。
少女は閃いた

"そうだ、みんな一緒に不幸になればいいんだわ!"
そして、山羊の星がその声に応えた…
次回十二星座編第十話『暗黒の聖女』
彼女を救おうとする者は、黒い痛みを知ることになるだろう。

【流星の化身】
名前:カプリコンクルスタ(カプリコン(山羊座)+ミラ"クル"+"スタ"ー)
宿った対象:鍵山雛
能力:厄を操る程度の能力
(→原作の雛の能力とほぼ同じだが効果の及ぶ範囲が桁違い)
解説:十二の流星のひとつ山羊座の星が、世界を憂うシスター、鍵山雛に宿る。

(ストーリー)
「あっ、このアイス当たりだよ!」
「十円拾いましたー」
「おっ、『頭文字T』の新刊が…」
最近、なにかと運がいいヴィリームたち。
しかし、因幡てゐだけはなぜか微妙な顔をしていた
「どったのてーちゃん?」
「なにか運気の流れが不自然なんだよねえ…」

そんなある日、ヴワルに一人の客がやって来る
「失礼、喫茶ヴワルはここ?」

パルスィ・ミズハーシと名乗るその女性は、風神区はずれの教会に住む知り合い、鍵山雛の行方が分からなくなり
困っていたところに、この店がこうした奇妙な事件の相談をしていると聞いて来たと言う
「あいつ、度を越したお人好しだからさ。何か妙な事件に巻き込まれたんじゃないのかと…」

奇跡獣絡みの事件かも知れない、と捜査に乗り出すヴィリームたち
手始めに雛の住んでいたという教会に行くが…

「誰もいませんね…」
そこはもぬけの殻。荒らされた形跡は無く、聖書だけが一冊無くなっていた

「分からないわ。そっちは?」
「こっちもだ。一体、どこに…」
手分けをして教会の周辺も探し回るも雛の行方は分からないまま
分かったのは、鍵山雛が底抜けの善人だということ
そして、何か悩みを抱えていた様子だったこと位
結局、その日は解散となった…

「ん…」
その夜。なにか胸騒ぎを覚えた大空翠は、再び教会にやって来た
そこには…

「…ルーミアちゃん?」
翠のクラスメイト、ルーミアが両手を広げて立っていた

困惑する翠。
「ルーミアちゃん、どうして、こんなところに…」
『ねえ、大ちゃん』
ルーミアが口を開く

『"聖者は十字架に磔られました"って言ってるように見える?』
「…?」
『…』
「…」
気まずい沈黙が辺りを包む。


閑話休題。
『ここにいたお姉さんを探してるんでしょ?』
ルーミアが言う
「え?うん、そうだけど…」
『少名村の廃教会の地下にいるよ』
「なんで、ルーミアちゃんが…」
『んー…』
『急がないと、手遅れになるかも?』
「ええっ!?」

翌朝、輝針区の廃教会にやって来たヴィリームたち
そこには、明らかに禍々しい気配が渦を巻いているのが分かった

「雛さんは、この地下にいる、らしいです…」

地下への階段を降りるヴィリームたち。
長い階段を降りた先、扉の向こうには…

「あら、よくここが分かりましたね」
地下室の中心で祈りの姿勢を取る鍵山雛と、輝く"山羊座"の流星。そして…

渦を巻く厄を取り込む漆黒のマリア像だった

あっけにとられるヴィリームたちに、雛は言う
『このマリア像に世界中の不幸を集めて、世界中を等しく不幸にするの』
『みんな同じなら争いは生まれない。それはとてもとても素敵なことよ』

ヴィリームたちは口々に反論するが、雛の耳には届かない
ヴィリームたちに背を向けて、再び祈りの姿勢に戻る雛

ならば、とマリア像を打ち砕かんと攻撃を仕掛けるヴィリームたちだが…
「…!?」
「呑み込まれた?」

取り巻く厄の激流に吸収される
そればかりか、攻撃するほどかえって厄の量が増えていくことに気付く
「これでは手を出せない。どうすれば…」
手をこまねくヴィリームたち。
その時、ハピネスが言った

「私の幸運で厄を中和してみる。グラース、お前が一番地の運が高い。任せた」
ハピネス、手に四つ葉のクローバーを出すとグラースに渡す

「よーし、行くよッ!!」

「ヴィリーム・グラース…」
グラースが銃を構え、魔力を集中させる…

「ブラストォッ!!」
四つ葉のクローバーが輝き、一斉に葉を散らす。
光をまとい、厄を中和しながら飛んだ氷の弾丸は、

パリィィィィィン!
厄の渦を抜け、見事に黒いマリア像を打ち抜いた

「「やった!」」

しかし、次の瞬間
黒いマリア像を中心に渦を巻いていた厄が…
その支えを失い、爆ぜた!

「…!チルノちゃん、危ないっ!」


ファータが、咄嗟にグラースを突き飛ばす

「大ちゃん!?」


そして。
リムファータの、その小さな体が、荒れ狂う厄の奔流の中に。

「大…ちゃ…ん…?」
呑まれて、消えた。

「大ちゃあぁぁぁぁん!」

《次回、第十一話『Perfect Fleeze』に続く…》


【次回予告】
「大ちゃんは、あたいが守るからさ」
あの日の約束

…マモレナカッタ。
あたいが、もっと強ければ
"アタイ、モット…ツヨクナリタイ"
そして。
水瓶の星が、その叫びに応えた
次回、十二星座編第十一話『Perfect Freeze』
最強を目指し、魔法少女だったものが駆ける。たとえ何を犠牲にしようとも


【流星の化身】
名前:アクエリアクルスタ(アクエリア(水瓶座)+ミラ"クル"+"スタ"ー)
宿った対象:リムグラース
能力:最強の盾を喚ぶ程度の能力
(→六個の正八面体のビットを召喚し結界で身を守る、ビットが健在なうちは本体にあらゆる攻撃は無効)
(→ビットは撃破されてもしばらくすると復活する。ビット自体もそれぞれ攻撃に対し迎撃を行う。内容については劇中で)
解説:十二の流星のひとつ水瓶座の星が、ヴィリーム・リムグラースに宿る。
魔法少女の成れの果て。その願望は金剛不壊。最強を目指し甘さと弱さを切り捨てるためかつての仲間を討つ

(ストーリー)
体が熱い。全身に魔力がみなぎっている。
だが、
「まだ…足りない」
そう、こんな力ではまだ足りない

「チルノ!」「チルノちゃん!」

遠くで誰かが何かいっているが、よく聞こえない

「もっと力を…」
《力が欲しいか、主よ》
「欲しい。最強の力が」
《最強になりたくば甘さと弱さを切り捨てよ。そうすれば主は最強に一歩近づく》
「切り捨てる…」

チルノはゆっくりとヴィリームたちの方を向き…
言った。
「あたいは最強になる。そのために甘さと弱さを切り捨てる。さあ…」

「死ぬがよい」



「どうしちゃったのよ、あのバカは!?」
ヴワルに戻るなり、モルテが叫ぶ
「チルノちゃんが奇跡獣になっちゃった…」
セトネが涙声で呟く

あの後、襲いかかってきたグラースにヴィリームたちの攻撃はまったく効かず、厄に呑まれて意識を失った翠を拾い退却するしかなかった…

『ファータを助けられなかった、というグラースの絶望に星が降りたか…これは難敵だぞ…』
「そうなのか?」
『ああ。なにぶんヴィリームが奇跡獣化した事例など無いからな。どんな出鱈目な能力を持っているか見当もつかん…』
「そういえば、私達の攻撃も全く効きませんでしたね…」
「ああ。頑丈と言うには少し不自然な位にな」
『ふうむ…その際、何か変わったことは無かったか?』
「変わったこと?」
『なにか不自然な挙動だ。能力によるものならなにかアクションがあるはず』
「そういえば」
フォールが口を開く
「四方上下に水晶みたいな珠を出してましたね、最初に」
『それだ!』
火の玉が叫んだ
『おそらく"結界"の亜流…攻撃そのものを当たらぬよう逸らしておるのだ』
「なら、あの水晶を六つとも砕けば…」
『攻撃は通じるな』

「行こう!」
セトネが叫ぶ
「あのバカに負けっぱなしじゃ終われんなあ」
とテスラが返し
「引っ張って帰って、お説教ですね」
ビターが微笑む
「行こう…チルノちゃんを助けに…」
ルクスが顔を上げ、言った

ヴィリームたちは向かう
チルノを救うため…

《第一ビット/氷山》
「まさか、ビット自体も攻撃してくるとはね…」
フォールが呟く。目の前には巨大な氷山が浮かんでいる
ビットを破壊しようとしたその瞬間、厚い氷がビットを中心に形成された
フォールが氷を砕くも、砕く端から再生されてしまう
しかも。
「…!」
砕いた氷がつぶてとなって飛んでくる
「本体ごと一気にいかないと駄目…ってことかしら。仕方ないわね」

右手に同化する蟹座の星に語りかける
「あれを使うわ」
《主…よいのか、切り札をここで使っても》
「目の前の少女一人救えずして、何のためのヴィリームか」
静葉がきっぱりと言ってのける。その目に迷いは無かった
《わかった。では、主よ。行くぞ》
フォールの右手が赤く輝く
「絆を断ち、仲間を切り捨て、たった一人の"最強"…」

「チルノ」
「あなたは、強くなんか、ない」

「ヴィリーム・フォール…」
フォールが右腕に魔力を集中させ…

解き放つ。
「アトロポス!」

次の瞬間
フォールの右手から放たれた魔力が巨大な"鋏"を形成し…
本体ごと、氷山を握り潰していた

「あとは、任せたわよ…」
魔力を使いきったフォールが変身を解いてへたりこむ
残るビットは、あと五つ…

《第二ビット/オーロラ》
「ええい、ちくしょうめ!」
屠自古が吠える。眼前にはオーロラを纏う二つ目のビット
必殺の電撃はオーロラに吸収され、逆に球電の打ち返しが襲ってくる
「パワーが足りねえ…あのオーロラごとぶち抜くための電力が…ん?」

「おい」
懐の、双子座の星に語りかける
「静葉から聞いたが、お前らの体は奇跡パワーの塊なんだってな」
《それがどうかしたのか?》
「ちょっとパワーを貸してくれよ♪」
《断る。そもそも貴様を主と認めた覚えは無い》
「割るぞ?」
《一度だけ力を貸してやる》

屠自古の影が立ち上がる。左右対称に同じポーズを取り、指銃を構える
《「ヴィリーム・テスラ…」》
指先がくっつき…

《「ツイン・スパーク!!」》
二人ぶんの電力で放たれた電撃はほとんどビームの域に達し…
オーロラを消滅させ、ビットを両断していた

残るビットは、あと四つ

《第三ビット/雹の嵐》
「うーん…」
ハピネスは悩んでいた。目の前には荒れ狂う雹の嵐。
本体はおそらくこの中心に。さて、どうやってたどり着くか…

「気は進まないけど、仕方ないか…」
ハピネスは四つ葉のクローバーを出現させると、雹の嵐のなかにゆっくりと足を踏み入れた…

「私は幸運、私は幸運、当たるわけがない、当たるわけが…」
自分に言い聞かせながら一歩一歩進む

雹の嵐が激しさを増す。幸運にもハピネスには当たらないものの、至近を大粒の雹がビュンビュンと飛び交う
「ひゃっ!?」
近くの電柱に雹がめり込む。クローバーの葉が一枚落ちる。ハピネスの頬に冷や汗が流れる

「いた!」
ビットを発見。
左にクローバー、右にハンマー。目標を正面に全力で駆ける
雹が体を掠める。グレイズ音が響く。クローバーがまた一枚散る

「これで…終わりだッ!」
ハンマー一閃。見事にビットを叩き割る しかし…

「うわあぁぁぁ!?」
飛び回っていた雹が一斉に落ちてきた。雹に埋もれるハピネス
また一枚散って一枚だけ残ったクローバーがどこかに飛んでいく…
残るビットは、あと3つ

《第四ビット/霜柱》
「うおぉぉぉぉ!?」
ブレイブが空中を必死で走る。そのあとから見えない何かが追うように霜とつららが立ち上がる
慌てて空中に逃れるも、対空砲のようにつららが飛ぶ
「これでは近付けん…」
つららを切り払いながらブレイブが呟く
「そうだ!」
霧野湖の上にビットを誘き寄せ…

「水上なら霜は出せまい!」
しかし。
水面が瞬時に凍りつき、そこからつららがつき出される!
「なん…だと…!?」

「一体どうすれば…」
焦るブレイブの脳裏に祖父の声が響く

『なに、寒い?ではこれを懐に入れてじゃな…』

「よし!」
ブレイブ、なにを思ったか刀を石畳に突き立てて素手になり…
「こっちだ、ついてこい!」
ビットと追い掛けっこを始めた。一体何を…

「よし、もういいだろう!」
一周して刀を突き立てた地点に戻ってきたブレイブ、刀を抜くとビットに斬りかかる
当然ビットは、つららで迎撃しようとするが…
霜すら出ずに…

「斬!」
ブレイブに両断された

「その石畳は刀を通してよく焼いておいた。石は冷えるのに時間がかかるからな」
昔、祖父が椛に渡したのは、温石であった
残るビットは、あと2つ…

《第五ビット/大寒気》
「ぴゃあぁぁぁ寒いぃぃぃ」
小傘が叫ぶ。五つ目のビットが放出した寒気に、周囲は一気に氷点下となった
「光よ!」
ルクスが虹色のレーザーを放つ。が…
「氷の…粒?」
ビットの周囲できらきら光る小さな氷…いわゆるダイヤモンドダストに阻まれてしまう

「雨であいつごと解かしてやる」
セトネがゲリラ豪雨を呼ぼうとするが
「だ、駄目だ…」
気温が低すぎて雲すら出ない…

万事休す、かと思われたその時、ルクスがセトネの耳元に口を寄せ…

「ええっ!?大丈夫なの、そんなことして!?」
「大丈夫…受け身さえ取れば平気…って床屋さんのマンガに…載ってた」

「行くよ!わちき必殺!」
セトネが傘を広げ魔力を集中させる。
集中した魔力は渦を巻き、竜巻を起こす

「…!」
ルクスがその竜巻に乗り、飛ぶ。
ビットの真上へと

寒気に突っ込み、ルクスの体が凍るが、それで落下が止まるわけではなく…
次の瞬間
凍ったルクスの体が、ビットを粉砕していた

残るビットは、あと一つ!

《第六ビット/白鯨》
「ちょっと何ですかあれはあぁぁぁぁ!」
「知らないわよ私に言われても!」
ウェールとモルテが叫ぶ。目の前にはビットが変化した巨大な氷で出来た白い鯨
それが二人を呑み込もうと迫る

「ウェール、弱点はそこよ!」
モルテが白鯨の弱点を見定め…
「いきますよー!」
ウェールが巨大なポンポンを頭上に出現させ、

「ヴィリーム・ウェール…」
ゆっくりと凝縮。
そして、ソフトボール大の大きさになったそれを…
「バレットー♪」

トン、と押す
次の瞬間

沖合の灯台の上部が消し飛んだ


「どこに撃ってんのよあんたはぁぁぁぁ!!」

「反動(物理)が大きくて狙いにくいんですよー」
「仕方ないわね…」
モルテ、ウェールを抱き上げる

「ほら、狙いは私がつけてあげるから」
「いきますよー!ヴィリーム・ウェール…」
魔力を集中

「…ダムダム・バレットー♪」
凝縮されたポンポンは見事白鯨の"弱点"に命中
もうもうと氷煙が上がる
だが。

「「嘘ぉぉぉぉ!?」」


その頭部に大きな十文字の傷を負った白鯨がその大口を開け…
二人を呑み込んだ


「翠ちゃん!?」
ヴワルの二階で。
前回、厄に呑まれて意識を失った大空翠が目を覚まし
そのままよろよろと外へ飛び出して行こうとしているところをビターが見つける

「チルノちゃんが呼んでる…私、行かないと…」
「無理よ、さっきまで倒れてたんだから、まだ寝ていないと」
「行かせてください」

「チルノちゃんは私を守れなかったと絶望しています。私が、行かないと…」


リムファータに返信した翠、白鯨の前に立つ
「聞こえる?チルノちゃん…私は無事よ」

魔力を集中し、風の矢を放つ。狙うはウェールたちが付けた白鯨の十文字の傷。
「ヴィリーム・ファータ…」
「カルーセル・アロー!!」

風の矢は過たず傷跡の真ん中に命中。白鯨がその動きを止める!
「…やった!」


「…えっ?」

しかし、白鯨は大きくその頭部にひび割れを走らせながらも…
再び動き出した!

白鯨がリムファータを呑み込まんとその口を開く
ファータが目を閉じる

その時。
音を立てて、ひび割れが一際大きく広がり、白鯨がゆっくりと崩れ落ちていく
あっけに取られるファータの足元で、ハピネスの四つ葉のクローバーが
残った最後の一葉を落とした…

そして、破片の氷塊が、本体であるビットの上に落ち…
最後のビットを、破壊した!


アクエリアの能力による結界が割れる
チルノの体を覆っていた、氷の甲殻が剥がれ落ちていく。
チルノは目を開けた
翠が泣きながら飛びついてくるのが、チルノの目に、映った
「チルノちゃん!チルノちゃん!」
「大…ちゃん…?」


残る流星もいよいよ一つ
果たして、ヴィリーム達と奇跡団の戦いの行方は…?
《次回十二星座編最終話『デフレーションワールド』に、続く…》


【次回予告】
十二の流星が、幻想町に出揃った
星をその手に揃えるのは、果たして奇跡団か、ヴィリーム達か…
霧野湖、紅魔城跡を舞台にヴィリーム達と奇跡団の最後の戦いが幕を開ける…
次回、十二星座編最終話『デフレーションワールド』
広げた風呂敷を、畳むすべを知らない

【流星の化身】
名前:パイシーズクルスタ(パイシーズ(魚座)+ミラ"クル"+"スタ"ー)
宿った対象:霧野湖の"ヌシ"
能力:不明/水を操る程度の能力?
(→ヴィリーム達より先に奇跡団により倒されたため詳しいことは不明)
解説:十二の流星のひとつ魚座の星が、霧野湖のヌシである巨大魚に宿る…が、奇跡団により倒され、今はもうおとなしい

(ストーリー)
水瓶の星との戦いから数日たったある日
ヴワルに一通の手紙が届けられた
"最後の流星は我々奇跡団が回収した。紅魔城跡に来い、最後の勝負だ!"
どうやら最後の十二流星は奇跡団の手にわたったらしい

『奇跡団たちとの戦いもこれで終止符、か…』
『頼んだぞ、ヴィリーム達よ!』
火の玉が言う

「はい!」
「承知!」
「勝ちますよー」
「任せとけ!」
「いくぞ、紅魔城跡へ!」

「「オー!」」

ヴィリーム達の最後の戦いが、始まる…

紅魔城跡・城門》
「なんだ、この柱は!?」
テスラが言った。四つの門柱にはそれぞれ『避雷針』『通電』『フランクリン』『アース』の辞書のページ
『ふははは、雷が撃てまい』
ドクター・ブックスが笑う
『これぞ我が秘術"封雷陣"!モノノベ書房と奇跡パワーの融合…』

『とくと味わうがよい!』


紅魔城跡・資料展示室》
『目標をセンターに入れて、スイッチ…目標をセンターに入れて、スイッチ…目標をセンターに入れて、スイッチ…』
「おーい、大丈夫かー?」
なにやらブツブツ呟きだしたフォンフォンにハピネスが声をかけた
『…そこよっ!』
カシャッ!!

「…!?危ねゐっ!」
フォンフォンの眼が赤く輝いたその瞬間、ハピネスが先程までいた空間がまるで抉り取られたかのように消滅し…
フォンフォンの背中からその空間の写真がプリントアウトされた
『眼に映った像を写真にする…奇跡団の皆にも見せていない…私の"切り札(ジョーカー)"…』

『さあ、行くわよ!!』
「やれやれ、こいつは厄介だね…」


紅魔城跡・庭園茶店》
『怪我の方はどうですか、静葉さん?』
「ええ、平気よ。誰かが病院まで運んでくれたお陰で」
『そうですか』
マイクロ・チンと静葉は同時に湯飲みを置き立ち上がった
『自らに強化光線を使うのは初めてですが…ふむ、なるほど。これは暴走しても無理はない…静葉さん』
「なんでしょう、マイクロさん」
『今の私は少々狂暴です。ですから…』

『どうぞ遠慮なく、本気でおいでください!』


紅魔城跡・本丸廊下》
『行くよっ、ヨーヨード!』
『へいっ、姐さん!』
ヨーヨードが張り巡らした糸の上を、レトロ・トラックが駆ける
上へ。下へ。左へ。右へ。
「なかなかやるねえ。どう、うちのサーカスに入らない?」
対抗して、セトネが広げた傘の上を、ルクスが走る
「さあかかって来い、びっくりさせてやる!」


紅魔城跡・二階大廊下》
『貴様とは以前から、こうして一対一で勝負をしたかった』
ブレイド・チックが口を開く
「そうか…私もだ!」
ブレイブが刀を構える
『さあ!』
「いざ、尋常に!」
『「勝負!!」』


紅魔城跡・天守閣基部》
『無駄よ…』
「くっ、また消えた!?」
ミセス・ウォッチがビターを翻弄する
『あなた一人で良かったの?…わたしのこの能力相手に』
『首領から使用を禁止されていましたが、最終回なら構いませんね』

『ようこそ、私の"世界"へ』


紅魔城跡・天守閣展望台》
「なぜ、貴女が星の力を!?」
早苗を取り囲んだファータ、ウェール、モルテ、グラースが驚きの声を上げる
『"なぜ"とはおかしなことを。この星は元々、私の奇跡パワー…』
"牡羊座""牡牛座""乙女座""蠍座""魚座"の星が早苗の周囲を衛星のように回っている

『私が使えるのは当然ですよね。では…』
『行きますよッ!』



紅魔城跡・城門》
「…つかまえた」
『なっ…こら、離さぬか!?』
テスラがブックスにしがみつく
「この距離なら避雷針も関係ないなぁ…」
『おい待て!この距離ではお主もただでは済まぬぞ!?』
「そうか」

「それが、どうかしたか?」
『なっ…!?』
テスラの雷が、自身ごとブックスを黒焦げにしていた


紅魔城跡・資料展示室》
「あ、あぶないところだったウサ…」
ハピネスがへたりこむ。右手には展示品の鏡
そして、目の前には
「咄嗟に鏡で自らを撮影させる…うまくいったようウサね」
勝利を確信した顔のフォンフォンの"写真"があった…


紅魔城跡・庭園茶店》
『な…なぜ、わたしのレーザーが…』
「あなたの赤外線は"色のない光"…そして私は色を操ることが出来る」
『そ…そうか、色をつけることでレーザーをただの光に…』
『お見事…です』

紅魔城跡・本丸廊下》
『…!?姐さん、その糸はあっしの糸じゃ…』
プツンッ
『うわあぁぁぁぁ!!』
「残念だったなあ、すり替えておいたのさ!」
戦いの最中、セトネはヨーヨードの糸に一本ただの糸を忍ばせておいた
当然ただの糸にトラックの全力疾走を支える強度が有るわけもなく…
窓をぶち破り、トラックがお堀へと落下していく
『ぎゃあぁぁぁぁ錆びるぅぅぅぅ!?』
『あ、姐さん!?ちくしょう、今日はこれくらいにしといてやる!』
小傘の懐の獅子の星がなにか言いたそうに明滅した


紅魔城跡・大廊下》
「ぐっ…!」
ブレイブが刀を落とし、膝を突く
ブレイドは背を向けたまま、ブレイブに語りかける
『誇るがよい。貴様はこのブレイド・チックと一対一で渡り合い…』

『そして、勝った…のだから…な…』
ブレイドのプラスチックの体がぐらり…と傾き、
ガラガラガラ…と崩れ落ちた


紅魔城跡・天守基部》
『貴様、なぜ私の世界で!?』
ウォッチが驚愕する
「残念ですが…私の知り合いにも一人"いた"のですよ。貴女と同じ能力者が、ね…」
ビターの左手にある銀の懐中時計。時が止まった世界で、しかしその時計は正確に時を刻んでいた
「待っていましたよ、貴女が油断するその時を、ね…チェックメイト」
ビターの右手がウォッチの龍頭を突く。昏倒するミセス・ウォッチ


紅魔城跡・天守閣展望台》
『な、なぜ私の星が…』
早苗が茫然と呟く。早苗を取り巻く五つの星はヴィリームたちにより撃ち落とされていた
もっとも、ヴィリームたちもすでに満身創痍ではあったが…
「星の使い手は、貴女だけじゃないってことよ」
モルテが、グラースが、それぞれ天秤と水瓶の星を掲げる
「負けを認めて降伏してもらえませんか、手荒なことはしたくないんです」
射手の星を構えながらファータが早苗に言った

『……はあ。"三番。現実は非情である"ってやつですか…仕方ありませんね、降参です』
早苗が両手を上げる


しかし、
『…ごきげんよう、ヴィリームの皆さん』
そこに声が響いた


「「だ、誰!?」」
ヴィリームたちの背後に現れたのは、紫色のドレスを着た妙齢の美女
『これは申し遅れました。私はヴィオラ…この世界の裏側に潜む者たちの…』

『導き手…ですわ』
『私たちは長い長い間待っていました…機が熟するのを…』
『奇跡の力を増幅し暴走させる。そしてその力を狙いヴィリームと奇跡団を潰しあわせ、漁夫の利を狙う…』
『全ては、計画通り。さあ…星を、渡して戴きましょうか?』

「ふ、ふざけるな!」
「そうよ!あんたなんかに!」
ヴィリームたちが力を振り絞りヴィオラに立ち向かう。しかし…

『話になりませんわね』
奇跡団との戦いで力を使いきったヴィリームたちに勝ち目は無かった…


『さあ、今こそ奇跡の力をもって我等の悲願を実現する!』
『星たちよ!この世界の表裏を逆転させなさい!』
《《御意》》
《《断る!》》

「……はい?」
《策を用いて、漁夫の利を狙う…所詮は雑魚のすること》
《断る。私の主は一人だけだ》

星の寿命を即座に算ずる大妖怪に、一つだけ誤算があったとすれば、
それは、星に人格が宿ってしまったということであろうか

『……』
『仕方無いわ、一度引きましょう。とにかくも星は手に入ったのだし』
『……』
『後でゆっくり"説得"すれば…』
『……』
『…ちょっと、コックス?』
『……そーなのかー』
『…!?』

ヴィオラが息を飲む
『なぜ貴様がここに…』
『山羊の星が世界中の厄を集めた時に…さ。私も一緒に封印から吸い出された』
『…!』

『ヴィオラ、我等は結局は裏界の住人。表の世界に出るべきではない。そうは思わんかね』
『今さら説得に応じるとでも?』
『無理だろうね。じゃあ仕方無いわー』
『待ちなさい!…貴様、何を…!?』

『…星よ』

『因果を巻き戻せ。すべての始まりまで』
《《御意》》

その声とともに、時が逆回転を始める…
そして…


☆ミ

「ドラゴンパワー彗星さん、私の願いを叶えてください…

……



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最終更新:2023年08月27日 21:33