クロマティ 逃げた先にも クロマティ ◆x/rO98BbgY
乾いた拳銃の発砲音が、オフィス然とした警察署内に木霊する。
背後に向けたガバメントのトリガーを連続で引きながら、中央ホールを通して左右に伸びている通路の角に一旦逃げ込むと、
ピノッキオは使いきったマガジンをリリースした。
背後に向けたガバメントのトリガーを連続で引きながら、中央ホールを通して左右に伸びている通路の角に一旦逃げ込むと、
ピノッキオは使いきったマガジンをリリースした。
ベルトに差し込んでおいた新しいマガジンを取り出して、装填。
落下した空のマガジンがタイル張りの床を叩くよりも先に、殺し屋の少年はその場から飛び出した。
しつこくピノッキオを尾けてくる追手の足音が、すぐそこまで迫っていた。
落下した空のマガジンがタイル張りの床を叩くよりも先に、殺し屋の少年はその場から飛び出した。
しつこくピノッキオを尾けてくる追手の足音が、すぐそこまで迫っていた。
「ピノッキオ! 大人しく投降しないならっ」
天井に取り付けられた蛍光灯は、自分の役割を忘れたかのように惰眠を貪っている。
島を満たしつつある朝の光も、いまだ建物の中までを充分に照らす事が出来ずにいた。
そんな薄暗い中央ホールの中に、色鮮やかな金色のツインテールが翻った。
大人びたスーツに身を固めたその追手の姿は、先程別れた留奈とさして変わらぬ年頃の女の子のものだ。
しかし、ピノッキオは、かつてモンタルチーノで交戦した、この少女の尋常ならざる戦闘力を知っている。
あの時は右手の負傷と引き換えに、かろうじて勝ちを収めたが――
島を満たしつつある朝の光も、いまだ建物の中までを充分に照らす事が出来ずにいた。
そんな薄暗い中央ホールの中に、色鮮やかな金色のツインテールが翻った。
大人びたスーツに身を固めたその追手の姿は、先程別れた留奈とさして変わらぬ年頃の女の子のものだ。
しかし、ピノッキオは、かつてモンタルチーノで交戦した、この少女の尋常ならざる戦闘力を知っている。
あの時は右手の負傷と引き換えに、かろうじて勝ちを収めたが――
「ッ!」
疾駆するピノッキオが、敵の位置を視認すると同時に、一瞬前まで彼がいたポイントを破壊の雨が吹き抜けていく。
それはモンタルチーノの女の子――トリエラがその手に持つウィンチェスターから放たれた散弾だ。
壁の外装が砕け、その破片がピノッキオの白い肌を切り裂く。
久しぶりに味わう死と隣り合わせの興奮に、脳髄が痺れた。
農園暮らしで錆付きかけていた肉体に、アドレナリンという名のオイルが流し込まれた。
それはモンタルチーノの女の子――トリエラがその手に持つウィンチェスターから放たれた散弾だ。
壁の外装が砕け、その破片がピノッキオの白い肌を切り裂く。
久しぶりに味わう死と隣り合わせの興奮に、脳髄が痺れた。
農園暮らしで錆付きかけていた肉体に、アドレナリンという名のオイルが流し込まれた。
とはいえ、ピノッキオは職業的な暗殺者だ。
戦闘の狂騒に気を取られて、このポンプアクション式の骨董品が持つ、決定的な隙を見逃したりはしない。
第一次世界大戦の頃に使われたウィンチェスターM1897は、セミオートの新型とは違い、連発して撃つ事が出来ないのだ。
戦闘の狂騒に気を取られて、このポンプアクション式の骨董品が持つ、決定的な隙を見逃したりはしない。
第一次世界大戦の頃に使われたウィンチェスターM1897は、セミオートの新型とは違い、連発して撃つ事が出来ないのだ。
リロードするまでは、次弾が来る事は有り得ない。
それを知るピノッキオは、少女がフォアグリップを引こうとする動作を、拳銃によって牽制しながら――
獣染みた俊敏な動きで、トリエラに肉薄していく。
抜き放ったナイフが、鈍い光を放つ。
ホールに備え付けられた、小さなテーブルを利用して跳躍。
数メートルの距離を一気に詰め、渾身の体重を乗せた一撃が、トリエラに迫る。
それを知るピノッキオは、少女がフォアグリップを引こうとする動作を、拳銃によって牽制しながら――
獣染みた俊敏な動きで、トリエラに肉薄していく。
抜き放ったナイフが、鈍い光を放つ。
ホールに備え付けられた、小さなテーブルを利用して跳躍。
数メートルの距離を一気に詰め、渾身の体重を乗せた一撃が、トリエラに迫る。
そのピノッキオの一撃を、トリエラは銃の先端に装備した剣を使って受け止める。
そしてその接触面を支点として、少女の体躯は独楽のように回転する。
トリエラは剣を装備した銃身の逆、硬い木製の銃底を振り回す事で、防御から攻撃へと転じていた。
そしてその接触面を支点として、少女の体躯は独楽のように回転する。
トリエラは剣を装備した銃身の逆、硬い木製の銃底を振り回す事で、防御から攻撃へと転じていた。
自分の攻撃の力を利用したトリエラの反撃を、ピノッキオは軽くスウェーバックする事でいなす。
だが、トリエラの攻撃はそれだけでは終わらない。
続けざまに放たれた回し蹴りは、まともに受けてしまえば内臓破裂しかねない威力のものだ。
それを避けるため、ピノッキオは更なる後退を余儀なくされる。
だが、トリエラの攻撃はそれだけでは終わらない。
続けざまに放たれた回し蹴りは、まともに受けてしまえば内臓破裂しかねない威力のものだ。
それを避けるため、ピノッキオは更なる後退を余儀なくされる。
そうして伸びた間合いを――槍の如き銃剣の薙ぎ払いを持って更に広めると、トリエラはフォアグリップを引いてリロードを済ませてしまう。
ピノッキオは慌ててナイフを投げつける事でトリエラの体勢を崩すと、間一髪通路の角に退避した。
そしてそのまま、牽制射撃を行いながら通路の奥へと逃げだした。
ピノッキオは慌ててナイフを投げつける事でトリエラの体勢を崩すと、間一髪通路の角に退避した。
そしてそのまま、牽制射撃を行いながら通路の奥へと逃げだした。
――前に戦った時よりも、格段に強くなっている。
トリエラと一戦交えてみた感触は、以前とは違うものだった。
力任せの攻撃は鳴りを潜め、体系化された格闘の術理を感じた。
自分が農園で漠然と過ごしていた頃、訓練に明け暮れていたのだろうか。
だとすれば、彼女が強くなった時間の分だけ、自分は弱くなったのかもしれない。
『情に触れると弱くなる』
先生の教えに背き、農園で人間らしい暮らしをしていた分だけ、迷いが生まれてしまっていたから。
力任せの攻撃は鳴りを潜め、体系化された格闘の術理を感じた。
自分が農園で漠然と過ごしていた頃、訓練に明け暮れていたのだろうか。
だとすれば、彼女が強くなった時間の分だけ、自分は弱くなったのかもしれない。
『情に触れると弱くなる』
先生の教えに背き、農園で人間らしい暮らしをしていた分だけ、迷いが生まれてしまっていたから。
だが、だからこそ先の攻防をノーダメージのまま、やり過ごせたとも言えるだろう。
双方ともに本気で殺し合えば、確実にどちらかが死んでいたはずだから。
ピノッキオに戦闘への積極的な意欲が欠けていたために、今回はこれで済んだのだ。
双方ともに本気で殺し合えば、確実にどちらかが死んでいたはずだから。
ピノッキオに戦闘への積極的な意欲が欠けていたために、今回はこれで済んだのだ。
「いや、まだ終わったわけじゃないか」
ピノッキオはトリエラとの無駄な交戦を避けて逃走するつもりになっていたが、相手はまだまだやる気充分のようだ。
背後から追いかけてくる物音を聞きながら、ピノッキオは逃走プランを練る。
窓を破って逃げるか、それとも玄関まで回りこむか。
どちらにしても、しつこく追い続けられそうだが……。
少し考えた後に、ピノッキオは通路の先にあった階段を、上へと昇って行った。
背後から追いかけてくる物音を聞きながら、ピノッキオは逃走プランを練る。
窓を破って逃げるか、それとも玄関まで回りこむか。
どちらにしても、しつこく追い続けられそうだが……。
少し考えた後に、ピノッキオは通路の先にあった階段を、上へと昇って行った。
トリエラは、ウィンチェスターを腰溜めに保持しながらピノッキオの後を追いかける。
狭い屋内での戦闘に備え、ただでさえも長い銃身から銃剣を取り外し、腰のケースに収めていた。
狭い屋内での戦闘に備え、ただでさえも長い銃身から銃剣を取り外し、腰のケースに収めていた。
『ねぇ、こんなことしてる場合じゃないんじゃないの? 別に殺し合いとか乗ってないんだけど?』
ピノッキオの言葉が、耳に残っている。
五共和国派(パダーニャ)のテロリストのくせにと思うが、トリエラもそれについては一抹の躊躇いを感じずにはいられなかった。
公社に敵対する人間とはいえ、ピノッキオに構っている場合ではないのではないかと。
五共和国派(パダーニャ)のテロリストのくせにと思うが、トリエラもそれについては一抹の躊躇いを感じずにはいられなかった。
公社に敵対する人間とはいえ、ピノッキオに構っている場合ではないのではないかと。
実際の所、トリエラは担当官のヒルシャーの方針もあり、条件付けの緩い義体だ。
生来の恵まれた才能と、成熟した精神とを持つ彼女は、自己判断でも行動出来る人間味の残った義体なのだ。
生来の恵まれた才能と、成熟した精神とを持つ彼女は、自己判断でも行動出来る人間味の残った義体なのだ。
しかし、そうは言っても所詮は義体。
限られた寿命と、公社に依存しなければ生きられない肉体を持つ、どっちつかずの存在でしかない。
――人間らしく、普通に生きる事なんて出来ない。
そう観念しているトリエラは、努めて義体らしくあろうと心掛けている。
公社の仕事を確実にこなし、仲間たちの面倒も見て、義体として精一杯の誇りを胸に生きてきた。
だから、ピノッキオを取り逃すような事は、あってはならないのだ。
限られた寿命と、公社に依存しなければ生きられない肉体を持つ、どっちつかずの存在でしかない。
――人間らしく、普通に生きる事なんて出来ない。
そう観念しているトリエラは、努めて義体らしくあろうと心掛けている。
公社の仕事を確実にこなし、仲間たちの面倒も見て、義体として精一杯の誇りを胸に生きてきた。
だから、ピノッキオを取り逃すような事は、あってはならないのだ。
(状況は色々大変だろうけど……全部、アンタを倒してから考える!)
そう決意しなおしたトリエラは、ピノッキオが階段を昇っていく姿を目撃した。
てっきりこのまま、建物の中から逃げるつもりなのかと思っていたので、困惑を覚えたが相手がそのつもりならばと気合を入れ直す。
ウィンチェスターの銃底に巻き付けられたシェルホルダーから数発のショットシェルを抜き取ると、機関部の下から弾を詰め込む。
そして上階で待ち伏せているだろうピノッキオを倒すべく、猛然と階段を駆け上って行った。
てっきりこのまま、建物の中から逃げるつもりなのかと思っていたので、困惑を覚えたが相手がそのつもりならばと気合を入れ直す。
ウィンチェスターの銃底に巻き付けられたシェルホルダーから数発のショットシェルを抜き取ると、機関部の下から弾を詰め込む。
そして上階で待ち伏せているだろうピノッキオを倒すべく、猛然と階段を駆け上って行った。
結論から言うと、ピノッキオが途中で仕掛けて来る事はなかった。
トリエラはピノッキオの足音を追って、どこまでも階段を昇り続けていき、やがて屋上――行き止まりへと辿り着く。
トリエラはピノッキオの足音を追って、どこまでも階段を昇り続けていき、やがて屋上――行き止まりへと辿り着く。
「ここで決着をつけるつもり? ピノッキオ」
ひっそりと、自分の正面に佇む少年に呼び掛ける。
朝日に照らされつつある屋上には、トリエラの背後にある出入り口以外には逃げ場などなく、銃弾を遮る遮蔽物も何もない。
そこはどちらかが死ぬまでやりあうには、これ以上ないステージと言えた。
朝日に照らされつつある屋上には、トリエラの背後にある出入り口以外には逃げ場などなく、銃弾を遮る遮蔽物も何もない。
そこはどちらかが死ぬまでやりあうには、これ以上ないステージと言えた。
「君だけが僕の名前を知ってるなんて、不公平じゃないか? 君の名前も教えてくれよ」
答えるピノッキオは、腰の後ろから二本のブレードが取り付けられた異形のナイフを抜き払う。
刀身は、光を吸い込むかのような漆黒の黒に染まっていて、どこか不吉な印象を強く受けた。
刀身は、光を吸い込むかのような漆黒の黒に染まっていて、どこか不吉な印象を強く受けた。
「……トリエラ」
「トリエラか。君みたいな女の子には……二度と会いたくないな」
「トリエラか。君みたいな女の子には……二度と会いたくないな」
それだけを言うと、ピノッキオは手に持ったナイフを明後日の方向に投げつける。
一瞬、なんのつもりかと思ったトリエラだったが、昇りかけの太陽の光がそのナイフに隠されたギミックを暴き出す。
ピノッキオが投擲したナイフには、一本の細いワイヤーが連結されていたのだ。
一瞬、なんのつもりかと思ったトリエラだったが、昇りかけの太陽の光がそのナイフに隠されたギミックを暴き出す。
ピノッキオが投擲したナイフには、一本の細いワイヤーが連結されていたのだ。
「――ワイヤー!? 待て、ピノッ――!!」
だが、気付いた時にはもう手遅れだった。
警察署の近くにあった建設現場の鉄骨にそれを絡み付けたピノッキオは、躊躇うことなくその身を宙に踊らせていた。
そして軽業師のように身軽に建設現場に降り立つと、そのまま西の方角へと走って行ったのだ。
警察署の近くにあった建設現場の鉄骨にそれを絡み付けたピノッキオは、躊躇うことなくその身を宙に踊らせていた。
そして軽業師のように身軽に建設現場に降り立つと、そのまま西の方角へと走って行ったのだ。
「くっ!?」
慌てて銃を構えても、目標は一瞬にして散弾銃の有効射程距離を外れている。
トリエラは悔しげに表情を歪ませると、その姿を追い掛けて警察署を出て行った。
トリエラは悔しげに表情を歪ませると、その姿を追い掛けて警察署を出て行った。
そして彼女は、ピノッキオの姿を探しながら、自らの担当官の訃報を聞く事になるのだがそれはまた次のお話。
【一日目 F-3 市街地 早朝】
【トリエラ@GUNSLINGER GIRL】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ウィンチェスターM1897(5/5)@GUNSLINGER GIRL、M1897用のバヨネット@GUNSLINGER GIRL
[道具]:基本支給品×1、予備弾×15、ランダム支給品0~2(未確認)
[思考]
基本:ヒルシャーさんを生還させる
1:効率よく生き残る
2:ピノッキオを探す
[状態]:疲労(小)
[装備]:ウィンチェスターM1897(5/5)@GUNSLINGER GIRL、M1897用のバヨネット@GUNSLINGER GIRL
[道具]:基本支給品×1、予備弾×15、ランダム支給品0~2(未確認)
[思考]
基本:ヒルシャーさんを生還させる
1:効率よく生き残る
2:ピノッキオを探す
トリエラが去った後の警察署の前を、モヒカンの少年が涙ぐみながら歩いていた。
それはジョゼッフォ・クローチェとの戦いで、親友(マブダチ)と別れてしまった林田慎二郎であった。
それはジョゼッフォ・クローチェとの戦いで、親友(マブダチ)と別れてしまった林田慎二郎であった。
「ちくしょう……オレは……最低の男だぜ……」
不良(ワル)ってのは、とかく世間様の鼻つまみ者で、誰にも振り向いてもらえない存在であったが、だからこそ仲間内の
友情や信頼って奴は大切にしなければならないと、林田は思っていたのだ。
なのに、不良のレベルを超えた殺し合いの中で、林田に出来たのは親友を犠牲にして逃げる事だけだった。
友情や信頼って奴は大切にしなければならないと、林田は思っていたのだ。
なのに、不良のレベルを超えた殺し合いの中で、林田に出来たのは親友を犠牲にして逃げる事だけだった。
客観的に言えば、それは林田に可能な最善手であっただろう。
あの時点で林田が駆けつけても、銃で撃たれた神山の生死は覆らない。
死体が一つ、無駄に増えるだけだ。
あの時点で林田が駆けつけても、銃で撃たれた神山の生死は覆らない。
死体が一つ、無駄に増えるだけだ。
だが、それでも林田は神山の元に駆けつけてやりたかった。
賢い選択肢なんて、知らなかった。
自分なら、そうすると信じていた。
賢い選択肢なんて、知らなかった。
自分なら、そうすると信じていた。
今までは。
「済まねえ神山……オレはどうしようもねえ臆病者みたいだぜ……」
死なんて、高校生の自分には縁遠い話だと思っていた。
ケンカに明け暮れてはいても、怪我なんて一週間もすれば全快するだろうと軽く考えていた。
人生の全てが、唐突に終わりを告げてしまうだなんて、これまで考えた事もなかったのだ。
ケンカに明け暮れてはいても、怪我なんて一週間もすれば全快するだろうと軽く考えていた。
人生の全てが、唐突に終わりを告げてしまうだなんて、これまで考えた事もなかったのだ。
だから、怖くなった。
足が勝手に、ホテルから離れた。
逃げ出したのだ。たった一人神山を残して。
「オレとオマエ、役割が逆なら良かったのによぉ……これじゃあべこべじゃねえかよ……」
不良の意気地をなくした今の林田に残されているのは、メカ沢たちと合流しようという、神山が遺してくれた指針だけだ。
だが、それからどうすればいいのだろう。
メカ沢と合流して、神山は何を試すつもりだったのか。
だが、それからどうすればいいのだろう。
メカ沢と合流して、神山は何を試すつもりだったのか。
判らない。
林田が困った時、いつも方針を打ち出してくれた神山はもういない。
朝日が昇りつつあるというのに、林田は暗闇の中を手さぐりで歩いているような心境だった。
林田が困った時、いつも方針を打ち出してくれた神山はもういない。
朝日が昇りつつあるというのに、林田は暗闇の中を手さぐりで歩いているような心境だった。
そんな林田の後姿を、背の高い金髪の少年が窺っていた。
それは先程、警察署の屋上から姿を消したピノッキオであった。
彼は西へと逃走するように見せかけて、実はこの近辺に潜んでいたのだ。
そしてトリエラが西に移動した事を見届けて、警察署のホールで投擲したナイフを回収しに戻ったのである。
それは先程、警察署の屋上から姿を消したピノッキオであった。
彼は西へと逃走するように見せかけて、実はこの近辺に潜んでいたのだ。
そしてトリエラが西に移動した事を見届けて、警察署のホールで投擲したナイフを回収しに戻ったのである。
(見た所素人みたいだけど……やるか?)
トリエラとの戦いで弾丸を消費してしまったピノッキオは、武器の補充を必要としていた。
積極的に優勝を目指すつもりはなかったが、あのトリエラのような相手から身を守る為には武器がいる。
容易くそれを奪えそうな相手がいるなら、略奪を迷う理由はなかった。
積極的に優勝を目指すつもりはなかったが、あのトリエラのような相手から身を守る為には武器がいる。
容易くそれを奪えそうな相手がいるなら、略奪を迷う理由はなかった。
だが、留奈から武器を奪った時のようには行かないだろう。
見ればそれなりに鍛えられた体のようだし、武器を奪っても反撃してくる可能性もある。
だから――ピノッキオは素早く少年の殺害を決めた。
殺しが好きなわけではなかったが、必要とあれば息を吸うように人殺しが出来る。
それがピノッキオという少年であった。
そして、一旦殺人を決意したからには、それは抵抗してきたら殺そうなどという、行き当たりばったりのものでは有り得ない。
最初から明確な殺意を持って、林田の荷物を奪う事をピノッキオは決意していた。
見ればそれなりに鍛えられた体のようだし、武器を奪っても反撃してくる可能性もある。
だから――ピノッキオは素早く少年の殺害を決めた。
殺しが好きなわけではなかったが、必要とあれば息を吸うように人殺しが出来る。
それがピノッキオという少年であった。
そして、一旦殺人を決意したからには、それは抵抗してきたら殺そうなどという、行き当たりばったりのものでは有り得ない。
最初から明確な殺意を持って、林田の荷物を奪う事をピノッキオは決意していた。
――あの、掴みやすそうな髪の毛を掴んで、喉をかっ切るか。
殺しのイメージを固めたピノッキオは、後ろ手にナイフを隠し、無造作とも言える歩調で林田に忍び寄る。
林田がそれに気付かないのは、神山の死に思い悩んでいる事もあったが、ピノッキオの暗殺者としての技量の高さを示すものでもあろう。
林田がそれに気付かないのは、神山の死に思い悩んでいる事もあったが、ピノッキオの暗殺者としての技量の高さを示すものでもあろう。
そして林田の真後ろを、なんなく取ったピノッキオは、殺しのイメージに従ってモヒカン刈りの髪の毛を掴む。
それで顔を仰け反らせて、首輪に隠された喉を一瞬でかっ切るつもりだった。
それで顔を仰け反らせて、首輪に隠された喉を一瞬でかっ切るつもりだった。
そう――それが唐突に、すっぽ抜けさえしなければ。
ずぽっと音を立てて、林田の髪の毛が抜ける。
いや、それはかつらだったのだろう。
頭頂部の髪だけではなく、剃髪してある部分まで一緒にすっぽ抜けたのだから
いや、それはかつらだったのだろう。
頭頂部の髪だけではなく、剃髪してある部分まで一緒にすっぽ抜けたのだから
だから、ピノッキオの心中を占めたのは、たった一つの疑問であった。
(なぜ、モヒカンの下から、七三分けの髪の毛が出てくるんだ――)
あまりの衝撃に、殺す事も忘れてピノッキオは立ち竦む。
そして、いきなりかつらを脱がされた林田もまた、声を失っていた。
唐突に現れた金髪の白人――外人の姿に。
日本語ですらまともに書けないバカに、英語が話せるはずもない。
だから英語の出来る竹之内を探していたのだが――まさか彼と再会する前に、外人と出会ってしまうとは。
だから英語の出来る竹之内を探していたのだが――まさか彼と再会する前に、外人と出会ってしまうとは。
いや、それをいうなら、先程出会ったジョゼも外人ではあったのだが、黒髪だったため林田はそれをあまり意識していなかった。
だが、ピノッキオの場合、典型的な白人の特徴を備えている。
林田は頭が真っ白になり、何かを言わなければという脅迫的な思いに捕らわれる。
だが、ピノッキオの場合、典型的な白人の特徴を備えている。
林田は頭が真っ白になり、何かを言わなければという脅迫的な思いに捕らわれる。
(な、なにを言えばいいんだ――私は英語を話せませんって、英語でどう言えばいいんだ――
っていうか、それが言えたら英語話せるって事じゃねーか!
くそ、こんな事だったら――神山の言う通りちゃんと授業に出てるんだった!)
っていうか、それが言えたら英語話せるって事じゃねーか!
くそ、こんな事だったら――神山の言う通りちゃんと授業に出てるんだった!)
まともな教育を受けていないピノッキオは英語など使えないのだが、林田にとって外人とは英語を使うものなのだ。
だが、知らない言語を話せるはずもなく、林田もまた立ち竦む他はなかった。
だが、知らない言語を話せるはずもなく、林田もまた立ち竦む他はなかった。
だから、二人の少年はまるでお見合いのようにお互いを見つめ合い――永遠とも思える空白の後に、先手を取ったのは林田の方であった。
「ワ、ワタシハ、エイゴガ、ハナセマセーン」
とりあえず、カタカナで話しかけてみた。ロボットのように。
それに対し、ピノッキオは遠くのほうを茫洋と見つめながら呟く。
それに対し、ピノッキオは遠くのほうを茫洋と見つめながら呟く。
「……それはひょっとしてギャグで言っているのか?」
あ、通じるじゃん。
異文化コミュニケーション。
異文化コミュニケーション。
【林田慎二郎@魁!!クロマティ高校】
[状態]:健康、疲労(大)、自責
[装備]:首輪探知機残り@バトロワ 使用回数4回
[道具]:基本支給品×1 未確認支給品1~2
[思考]
基本:とにかくクロ高の仲間を集める
1:あ、オレの英語が通じるぞ!?
2:神山の遺志を継いでメカ沢たちを見つける
3:神山の敵を討つ
備考:洋館方面へ逃走、自分を逃がすために神山が死んだと感違い
[状態]:健康、疲労(大)、自責
[装備]:首輪探知機残り@バトロワ 使用回数4回
[道具]:基本支給品×1 未確認支給品1~2
[思考]
基本:とにかくクロ高の仲間を集める
1:あ、オレの英語が通じるぞ!?
2:神山の遺志を継いでメカ沢たちを見つける
3:神山の敵を討つ
備考:洋館方面へ逃走、自分を逃がすために神山が死んだと感違い
【ピノッキオ@魁!!クロマティ高校】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ゆりっぺのナイフ@Angel Beats!、黒のナイフ(ベルトのギミック付き)@DARKER THAN BLACK、コルト ガバメント(7/7)@Phantom ~Requiem for the Phantom~
[道具]:基本支給品×1、ランダム支給品0~2 、コルトガバメントの弾倉×2
[思考]
基本:おじさんの元に帰る
1:なんだこいつは……!?
2:トリエラとは二度と会いたくない
3:武器が欲しい
[状態]:疲労(小)
[装備]:ゆりっぺのナイフ@Angel Beats!、黒のナイフ(ベルトのギミック付き)@DARKER THAN BLACK、コルト ガバメント(7/7)@Phantom ~Requiem for the Phantom~
[道具]:基本支給品×1、ランダム支給品0~2 、コルトガバメントの弾倉×2
[思考]
基本:おじさんの元に帰る
1:なんだこいつは……!?
2:トリエラとは二度と会いたくない
3:武器が欲しい
049:座敷童子の親心 | 投下順に読む | 051:バタフライエッジ |
時系列順に読む | ||
039:メイドインヘブン | トリエラ | 0:[[]] |
ピノッキオ | 0:[[]] | |
037:我が良き友よ | 林田慎二郎 |