カントリー・ロード ◆PuVQoZWfJc 氏
先ほどまで大声を張り上げて走っていた神山からすればそろそろちゃんと休んで睡眠の一つも取りたかった所だ。
それがどうだろう。目の前の少女は一般人どころか分身までするではないか。
自分を助けてくれた黒衣の男性の放った爆撃さえ物ともしない。彼はこの理不尽を誰かに問い正したくなった。
それがどうだろう。目の前の少女は一般人どころか分身までするではないか。
自分を助けてくれた黒衣の男性の放った爆撃さえ物ともしない。彼はこの理不尽を誰かに問い正したくなった。
「反則です!首輪を付けてない人がいます!責任者の方ー!」
咄嗟に悲鳴に近い抗議の声を上げて泣きつくとさっき聞いたばかりの声が上空から響いてくる。
違っているのはその場でのみ聞こえるような声であることと少しの焦りが声に滲んでいることだ。
咄嗟に悲鳴に近い抗議の声を上げて泣きつくとさっき聞いたばかりの声が上空から響いてくる。
違っているのはその場でのみ聞こえるような声であることと少しの焦りが声に滲んでいることだ。
「え、どこですか、そんなはずは......!」
「なんかいきなり女の子が分裂したみたい。ちぎれるとかじゃなくて」
「なんかいきなり女の子が分裂したみたい。ちぎれるとかじゃなくて」
こんな些細なことでアノ主催を呼ぶ方も呼ぶ方だが応える方も大概だ。二人の立華かなでは
自分たちがルールに抵触することで本体とサイスマスターに累が及ぶ事を危惧して判断を待つ。
黒はこの間にフリーガーハマーを置く。
自分たちがルールに抵触することで本体とサイスマスターに累が及ぶ事を危惧して判断を待つ。
黒はこの間にフリーガーハマーを置く。
「......なんだ、ただの分身じゃないですかあ、驚かさないで下さい。こんな事なら別に反則でも
なんでもないですよ。本体を殺すなり分身を殺すなりすればいいでしょう、追尾ミサイルみたいなものです。
万一本体が死んで彼女たちが残っても分身が立華かなでに成り代わることはありません」
なんでもないですよ。本体を殺すなり分身を殺すなりすればいいでしょう、追尾ミサイルみたいなものです。
万一本体が死んで彼女たちが残っても分身が立華かなでに成り代わることはありません」
最後に「安心して殺し合って下さい」とだけ言うとそれきりいくら呼びかけても応えなくなる。
「待って下さい、そんな殺生な、っは!?」
「待って下さい、そんな殺生な、っは!?」
気付いた時には腹を思い切り蹴飛ばされて神山は地面を転がる。服がボロボロの方のかなでが
口元に冷たい笑みを浮かべてそこにいた。
口元に冷たい笑みを浮かべてそこにいた。
「ちょっとだけ冷やっとしたわ。そういう形で逃れようとするとは思わなかった。でも、残念だったわね」
そして地面に横たわる神山を石同然に蹴飛ばしていく。その表情はどこか楽しげだ。
そして地面に横たわる神山を石同然に蹴飛ばしていく。その表情はどこか楽しげだ。
「ぐっ、がっはぁ!ぇふっ」
如何にシルバースキンのおかげ致命傷は負わなくとも、自分の体が浮くほどの力で蹴り転がされては
たまったものではない。神山はこの少女の皮を被った州知事をどうやってやり過ごすか必死に考えていた。
如何にシルバースキンのおかげ致命傷は負わなくとも、自分の体が浮くほどの力で蹴り転がされては
たまったものではない。神山はこの少女の皮を被った州知事をどうやってやり過ごすか必死に考えていた。
「もし駄目だったらどうしようって思ったけど、問題ないみたいだし、他にも色々分かって助かったわ」
かなでは小さく呟くと手甲剣を先ほどのシルバースキンの帽子を貫いた三又槍へと変えて神山へ迫る。
横へ転がることで何とかこれを避けるが神山には最早余裕がない。意を決して起き上がるとかなでへ向け
手を突き出す。
かなでは小さく呟くと手甲剣を先ほどのシルバースキンの帽子を貫いた三又槍へと変えて神山へ迫る。
横へ転がることで何とかこれを避けるが神山には最早余裕がない。意を決して起き上がるとかなでへ向け
手を突き出す。
「こうなっては仕方がありません。反則でない以上、僕も分身をする以外ないようですね」
デイパックに右手を差し入れると彼は「彼」を取り出す。かなでも神山の行動が読めずに「それ」を警戒する。
神山が右手に彼に差し込んだ瞬間、それは意思を持つ。そして彼は名乗りを上げた。
デイパックに右手を差し入れると彼は「彼」を取り出す。かなでも神山の行動が読めずに「それ」を警戒する。
神山が右手に彼に差し込んだ瞬間、それは意思を持つ。そして彼は名乗りを上げた。
「こんにちわ、ぼくポールくん!」
神山高志に渡された最後の支給品、それがこの神山そっくりの腹話術人形、ポールくんだった。
「こっちはぼくのご主人です!」
「こっちはぼくのご主人です!」
ポールくんに促され神山が息を整え自己紹介をする。
かなでの目が驚愕に見開かれる。人形劇かと思ったがポールくんが喋る間に神山の口は動いていない。
しかし動揺したことで却ってかなでは攻撃を再開してしまう。
かなでの目が驚愕に見開かれる。人形劇かと思ったがポールくんが喋る間に神山の口は動いていない。
しかし動揺したことで却ってかなでは攻撃を再開してしまう。
(アレが何かする前に仕留めないと)
吹き飛ばされた神山が左手とポールくんを前に出して待ったをかけるが聞く必要はない。止めに槍を
突き出した次の瞬間、神山が命乞いをする。
吹き飛ばされた神山が左手とポールくんを前に出して待ったをかけるが聞く必要はない。止めに槍を
突き出した次の瞬間、神山が命乞いをする。
「 待ってください! 命だけは ご勘弁を」
「ご主人、声、声!」
「ご主人、声、声!」
神山の発声と口の動きがちぐはぐな事にかなでは違和感を覚え、急いで神山を飛び越えてる。
「あなた、今一体何をしたの?」
「あなた、今一体何をしたの?」
神山からすれば何が起こったのかは分らない。腹話術を止めることが間に合わなかったのでそのまま続けて
しまったが、どうやら州知事は腹話術を警戒しているようだった。
(そういうことなら、やって見ますか)
しまったが、どうやら州知事は腹話術を警戒しているようだった。
(そういうことなら、やって見ますか)
「 あれ声が? 遅れてきますよ」「 ぼくの声も 遅れて いますね」
神山(とポールくん)が声を送らせて出すという芸を披露した瞬間、かなでの顔から余裕の色が抜ける。
神山(とポールくん)が声を送らせて出すという芸を披露した瞬間、かなでの顔から余裕の色が抜ける。
「あなたも、使えるのね、ディレイを......!」
どうやらこの芸は海外ではディレイというらしいとが彼女はそれを明らかに警戒している。
よく分らなかったが何にせよこれで蹴り回される状態からは脱出できた。ここからどうするか。
どうやらこの芸は海外ではディレイというらしいとが彼女はそれを明らかに警戒している。
よく分らなかったが何にせよこれで蹴り回される状態からは脱出できた。ここからどうするか。
一方で黒はもう一人の、正確には三人目の立華かなでと対峙していた。
両方の裾から生えた半透明の手甲剣による攻撃を見た目からは想像できない力と速さで繰り出してくる。
神山と異なり黒は冷静だった。いや、どちらかといえば心ここにあらず、といった方がいいだろう。
両方の裾から生えた半透明の手甲剣による攻撃を見た目からは想像できない力と速さで繰り出してくる。
神山と異なり黒は冷静だった。いや、どちらかといえば心ここにあらず、といった方がいいだろう。
先ほど助けたと思った少年はフリーガーハマーを食らわせた相手に蹴飛ばれてどこかへと運ばれてしまった。
今は彼を助けにいく方法はない。せめて時間稼ぎになってくれたと思うべきか。
今は彼を助けにいく方法はない。せめて時間稼ぎになってくれたと思うべきか。
紙一重で剣の切っ先を手持ちの短刀で弾き、捌くが殆ど防戦一方だった。
僅かな隙を突いてもそれはきっちり回避されてしまう。
僅かな隙を突いてもそれはきっちり回避されてしまう。
(一度距離を取るか)
そう思いかなでが大ぶりに剣を振り抜くのに合わせて鼻先へと短刀でフェイントをかけて黒は飛び退こうとする。
しかし目の前の少女が何かを呟くのと同時に背後から重たい衝撃が伝わり体勢を崩してしまう。
そう思いかなでが大ぶりに剣を振り抜くのに合わせて鼻先へと短刀でフェイントをかけて黒は飛び退こうとする。
しかし目の前の少女が何かを呟くのと同時に背後から重たい衝撃が伝わり体勢を崩してしまう。
(また増えたのか......!)
しかし視線を上げれば少女の姿はなく背後から声がかけられる。増えていない、一人のままだ。
「増えたと思った。残念外れよ」
しかし視線を上げれば少女の姿はなく背後から声がかけられる。増えていない、一人のままだ。
「増えたと思った。残念外れよ」
瞬間移動、それは契約者の中にも見られる能力だった、しかし彼女は明らかに複数の能力を所持していた。
(分裂、瞬間移動、そしてさっきの攻撃に耐える能力、契約者だって一人一つだってのに)
今かなでが使ったのはガードスキル「delay」、高速で移動し、対象に少し前の自分を認識させる能力。
(分裂、瞬間移動、そしてさっきの攻撃に耐える能力、契約者だって一人一つだってのに)
今かなでが使ったのはガードスキル「delay」、高速で移動し、対象に少し前の自分を認識させる能力。
遠距離攻撃においては「ほぼ」無類の強さを発揮するかなでの懸案事項たる接近戦、そして咄嗟に防御を
行う為に強引に自分に時間を稼ぎ出す手段でもある。先のフリーガーハマーもこれで防御を間に合わせた。
行う為に強引に自分に時間を稼ぎ出す手段でもある。先のフリーガーハマーもこれで防御を間に合わせた。
黒が足元に置いておいたソレを再度使おうとした時、かなでが猛突進してくる。しかしそれは使わせまいと
する動きではなく勝機を見出した者の目であった。無防備に突っ込んでくるかなでに違和感を覚えながら
黒は蘇芳と分かれる前に拾っておいたガラス片を投げつける。
する動きではなく勝機を見出した者の目であった。無防備に突っ込んでくるかなでに違和感を覚えながら
黒は蘇芳と分かれる前に拾っておいたガラス片を投げつける。
それは案の定当たっても割れて弾けるばかりで傷を負わせるには至らない。
不安を確信に正して黒もまたかなでへと突っ込む。
不安を確信に正して黒もまたかなでへと突っ込む。
(遠距離攻撃は鴨ってことか、そしてこの瞬間移動は)
追い詰められた黒が取った行動は言ってみれば捨て身で同然のものであった。
しかし後は処理して終わりのはずのこの特攻に、かなでは怯んだ。
追い詰められた黒が取った行動は言ってみれば捨て身で同然のものであった。
しかし後は処理して終わりのはずのこの特攻に、かなでは怯んだ。
相打ちを覚悟で強引に拳や足、短刀を剣と剣の間に捩じ込もうと打って出る。
次第に黒の体の各所に浅傷が増えていくが傷の数に比例して黒の攻撃も激しさを増して行く。
「くっ、急に動きが、ガードスキル、delay!」
次第に黒の体の各所に浅傷が増えていくが傷の数に比例して黒の攻撃も激しさを増して行く。
「くっ、急に動きが、ガードスキル、delay!」
拳が残像の頭を打ち抜いたと認識した時にはかなでは少し離れた場所にいた。息がほんの僅かに乱れている。
(やはり、接近戦を嫌っている。奴自身は遠距離から敵を攻撃する能力はないようだ、おかしいとは思った。
重火器には無防備だが接近戦では回避行動をとる。攻撃が通じないならそのままこっちの攻撃を受けて反撃
すればいい。だが奴はそれをせず退いた。つまり近距離での攻撃は通る可能性がある。)
(やはり、接近戦を嫌っている。奴自身は遠距離から敵を攻撃する能力はないようだ、おかしいとは思った。
重火器には無防備だが接近戦では回避行動をとる。攻撃が通じないならそのままこっちの攻撃を受けて反撃
すればいい。だが奴はそれをせず退いた。つまり近距離での攻撃は通る可能性がある。)
攻撃の瞬間に最も危険が高まる、その弱点を補うための能力の数々だったのだろう。
微かに見えた巧妙に黒は意識を研ぎ澄ます。今はこれでいいと自分に言い聞かせながら。
(あれが分身なのがせめてもの救いか)
微かに見えた巧妙に黒は意識を研ぎ澄ます。今はこれでいいと自分に言い聞かせながら。
(あれが分身なのがせめてもの救いか)
敵を見据えながら黒は奥の手の一端を使うことにする。黒目の中が赤く染まり黒の体がから青白い光が
出始めると持っていた短刀に電流が走る。契約者と呼ばれる者達の中で、黒が持っている能力の一部である。
出始めると持っていた短刀に電流が走る。契約者と呼ばれる者達の中で、黒が持っている能力の一部である。
「あなたも使えるのね、ガードスキル」
帯電し火花を散らせる短刀を見てかなでは黒を自分と同類かと思案するが直ぐに思い直す。どうでもいいことだ。
帯電し火花を散らせる短刀を見てかなでは黒を自分と同類かと思案するが直ぐに思い直す。どうでもいいことだ。
「能力とは違うのか?まあいい、お前の手の内は知れた。さっさと助けを呼べ」
剣を構えなおし攻撃の機会を伺っていると黒が挑発してくる。ハッタリだと分かってはいたが
どこまで把握されたのかまでは分らない。だがこの「かなで」が本体よりもプライドの高い性格であったことが
災いして挑発に簡単に乗ってしまう。
剣を構えなおし攻撃の機会を伺っていると黒が挑発してくる。ハッタリだと分かってはいたが
どこまで把握されたのかまでは分らない。だがこの「かなで」が本体よりもプライドの高い性格であったことが
災いして挑発に簡単に乗ってしまう。
「別にいいわ、何人でも同じ。私一人でも同じ」
そう告げると獲物を狩るべくかなでは黒へと跳びかかっていく。
そう告げると獲物を狩るべくかなでは黒へと跳びかかっていく。
その頃神山はというと三度追い詰められていた。
少女がディレイがどうこうと言った後に襲いかかって来て身体的な能力差から組み敷かれてしまったのだ。
少女がディレイがどうこうと言った後に襲いかかって来て身体的な能力差から組み敷かれてしまったのだ。
「ディレイはあっても、武器もなければオーバードライブもない、思えばそんなに焦ることなかったわ」
最早どうにもならない。先程の男性が助けに来てくれる様子もない。
神山はダメもとでこの少女面したターミネーターへ命乞いをするほか無かった。
最早どうにもならない。先程の男性が助けに来てくれる様子もない。
神山はダメもとでこの少女面したターミネーターへ命乞いをするほか無かった。
「お、お願いします。この防弾ジャケットは差し上げます。ですからこの場は見逃してもらえないでしょうか」
息も絶え絶えに声を絞り出す。こちらのかなでは少し思案すると要求を却下する。
「あなたが死んだ後に脱がせばいいだけじゃないかしら」
息も絶え絶えに声を絞り出す。こちらのかなでは少し思案すると要求を却下する。
「あなたが死んだ後に脱がせばいいだけじゃないかしら」
「そんなこと言わずにお願いします!三分でいいんです、見逃してくれませんか!」
神山の文字通り必至の嘆願にこちらのかなでは考える。どちらにせよこの戦利品の入手は確定だ。
これはサイスマスターの身を守るのに大いに役立つだろう。
神山の文字通り必至の嘆願にこちらのかなでは考える。どちらにせよこの戦利品の入手は確定だ。
これはサイスマスターの身を守るのに大いに役立つだろう。
そしてこの男を仮に三分釈放した所でなにも困らない、直ぐに追いついて始末できる。いや、服を
脱がせたらその時点で殺してしまってもいいだろう。そう思うと聞いてやってもいい気がしてきた。
脱がせたらその時点で殺してしまってもいいだろう。そう思うと聞いてやってもいい気がしてきた。
「いいわ、三分だけね。じゃあ早くソレを脱いで」
実を言うと脱ぎ方は分らなくて四苦八苦していたのだがそんなことを言っている場合ではない。
付いてるだけで外せないホックはそのままに、ずるりと乱雑に脱ごうとしてもたついてしまう。
実を言うと脱ぎ方は分らなくて四苦八苦していたのだがそんなことを言っている場合ではない。
付いてるだけで外せないホックはそのままに、ずるりと乱雑に脱ごうとしてもたついてしまう。
「そんなに焦らなくてもいいわ、ホックを外したらどうかしら」
至極当然の言葉をかけられるがホックが何故か外れない事を説明するとかなでが、試しに外しにかかるが
全く外れない。穴が小さいとかではなくある所から動かないのだ。仕様がないので神山にそのまま続けるように
言い渡す。
至極当然の言葉をかけられるがホックが何故か外れない事を説明するとかなでが、試しに外しにかかるが
全く外れない。穴が小さいとかではなくある所から動かないのだ。仕様がないので神山にそのまま続けるように
言い渡す。
帽子を外し、肩周りの辺りがピッチリしていて脱ぎづらそうな上着を脱ぐと今度はズボンを脱ぐ。
数時間ぶりに学生服に戻ると外気が涼しかったが。状況が状況だけにまるで嬉しくない。
数時間ぶりに学生服に戻ると外気が涼しかったが。状況が状況だけにまるで嬉しくない。
裏返しになったままの服を元にもどそうとするとかなでが警告を発する。
「何をしているの?」
「いえ、裏返しはだらしがないので戻しておこうと」
「変な真似はしないで、そういうのはあとで私がするから」
「何をしているの?」
「いえ、裏返しはだらしがないので戻しておこうと」
「変な真似はしないで、そういうのはあとで私がするから」
そうして神山に三分間の猶予を与えると今度は自分でそのジャケットを着込もうとする。
「付かぬ事をお伺いしますが、何をしようとしているんですか」
神山が聞くとサイズの合わないジャケットを着ようと苦労しているかなでが返事をする。
「付かぬ事をお伺いしますが、何をしようとしているんですか」
神山が聞くとサイズの合わないジャケットを着ようと苦労しているかなでが返事をする。
「これを着てあの子を手伝いにいくの、袖はまくれば大丈夫。あなたももう行っていいわ、三分だけだけど」
神山を動物にするように手でしっしと追い払うとぶかぶかの上着を着こむと異常がないか確かめる。
軽い。これなら充分使える。そう思った矢先、その変化は現れた。
神山を動物にするように手でしっしと追い払うとぶかぶかの上着を着こむと異常がないか確かめる。
軽い。これなら充分使える。そう思った矢先、その変化は現れた。
服のサイズがかなでに合わせられたかと思った瞬間、服が縮み、めきめきと音を立てて肌にめり込むんでいく。
「これは、一体、あ、あなた、あ、なにを、した、の......?」
シルバースキンが更にかなでを締め付けると小さく悲鳴が上がり腕は後ろへと回る。
「これは、一体、あ、あなた、あ、なにを、した、の......?」
シルバースキンが更にかなでを締め付けると小さく悲鳴が上がり腕は後ろへと回る。
「い、言われた通りに脱いだだけですが」
シルバースキンは裏返すことにより着るものを拘束する「ストレイト・ジャケット」へと特性を変える。
持ち主が死亡していない、または解除されていない状態で裏返しのままこのジャケット着込んでしまったが
為にかなでは文字通り拘束されてしまった。
シルバースキンは裏返すことにより着るものを拘束する「ストレイト・ジャケット」へと特性を変える。
持ち主が死亡していない、または解除されていない状態で裏返しのままこのジャケット着込んでしまったが
為にかなでは文字通り拘束されてしまった。
超人的な力を持っていたかなででさえその縛めを解くことはできない。藻掻いても一向にびくともしない。
次第に反応も弱まると何故か手甲剣が引込み、ぐったりとして動かなくなる。
次第に反応も弱まると何故か手甲剣が引込み、ぐったりとして動かなくなる。
神山は何が起こったのかは理解できなかったが明らからしいことは、この服を誤って裏返して着ていれば
自分もこうなっていた可能性があることと、全くの偶然だが危機を脱したということだった。
一息付いて思考をまとめようと思ったところ、かなでがばね仕掛けのように足の力だけで飛び起きると
猛然と走り去ろうとし、力尽きる。
自分もこうなっていた可能性があることと、全くの偶然だが危機を脱したということだった。
一息付いて思考をまとめようと思ったところ、かなでがばね仕掛けのように足の力だけで飛び起きると
猛然と走り去ろうとし、力尽きる。
「.........念のためズボンと帽子も着せておきますか」
ふう、と息を吐くと作用を終えた神山は手をぱんぱんと払う。目の前にいるのは自分の何度か殺しかけた少女だが
今はずだ袋に入ったよう格好になっている。あの後ズボンを履かせてご丁寧に帽子まで裏返して被らせたので
仰向けに海老反りの状態で頭は孫悟空の金の輪っかのように帽子に絞めつけられている。
今はずだ袋に入ったよう格好になっている。あの後ズボンを履かせてご丁寧に帽子まで裏返して被らせたので
仰向けに海老反りの状態で頭は孫悟空の金の輪っかのように帽子に絞めつけられている。
「もうこれで当面動けないでしょう」
まだまだ疑わしいがこれでいいはずだった。彼女の事は後回しにしてさっきの男性を
助けに行かねばならなかった。
まだまだ疑わしいがこれでいいはずだった。彼女の事は後回しにしてさっきの男性を
助けに行かねばならなかった。
そう思った時、向こう側から黒衣の男がとぼとぼと歩いて来る。服の右肩に
「あ、あなたは!よかった、ご無事だったんですね......うっ」
神山は安堵の声を漏らすすぐに顔を顰める。黒が微かに異臭を纏っていたからだ。
「あ、あなたは!よかった、ご無事だったんですね......うっ」
神山は安堵の声を漏らすすぐに顔を顰める。黒が微かに異臭を纏っていたからだ。
「手こずったがな、お前も......予想外だな、捕まえたのか」
黒の驚きの問にええまあ、と生返事をするが神山はさっきの少女をどうしたのか非常に気になった。
生きていて尚且つ異臭を纏っているということから見当はついたが聞きたくはなかった。
黒の驚きの問にええまあ、と生返事をするが神山はさっきの少女をどうしたのか非常に気になった。
生きていて尚且つ異臭を纏っているということから見当はついたが聞きたくはなかった。
「こいつらの死体は消えないらしいな」
聞きたくないのに黒が説明してくる。どうやらもうひとりの少女は殺害したらしい。
聞きたくないのに黒が説明してくる。どうやらもうひとりの少女は殺害したらしい。
神山が追い剥ぎに遭っている時には既に決着が付いていた。
飛びかかられてから、黒はあっさりと短刀を投げ捨てるとぎりぎりで剣が届く距離に身を置き
わざと刺されてからかなでのハンドソニックに直に高圧電流を流したのである。
飛びかかられてから、黒はあっさりと短刀を投げ捨てるとぎりぎりで剣が届く距離に身を置き
わざと刺されてからかなでのハンドソニックに直に高圧電流を流したのである。
感電のダメージから剣が消失すると急いで飛び退くが今度は投げ捨てた短刀を介した電流に
直撃される。直接黒に触れていないにも拘らず電流が自分を打っていることに驚愕するかなでに
黒は電流を止めることなく告げた。
直撃される。直接黒に触れていないにも拘らず電流が自分を打っていることに驚愕するかなでに
黒は電流を止めることなく告げた。
「『触ったものに電流を流す』わけじゃない。生憎に俺にも俺の能力がある」
そのまま少女が白から黒に変わるまで感電させ続ける。真っ黒く染まり蒸気と共に人が揚がる匂いが
辺りに立ち込める。分身であるはずのかなでの体は消えずにその場へ崩れ落ちた。
そのまま少女が白から黒に変わるまで感電させ続ける。真っ黒く染まり蒸気と共に人が揚がる匂いが
辺りに立ち込める。分身であるはずのかなでの体は消えずにその場へ崩れ落ちた。
人が内側から水分が蒸発する嫌な匂いが鼻腔を突き刺す
胸に苦いものを覚えながら、黒は蹴り飛ばされていった青年と新しい方のかなでを追った。
今は感傷に浸る時間はない。
胸に苦いものを覚えながら、黒は蹴り飛ばされていった青年と新しい方のかなでを追った。
今は感傷に浸る時間はない。
だが追いついてみれば外見からは分かりづらいが少女は無傷、青年はぼろぼろと対照的な構図で
青年が勝利を収めていた。
青年が勝利を収めていた。
「全くわからないんです。追い剥ぎされて、このジャケットをこの人が着たらこんなことに。何故なんでしょう」
経緯を説明してきた神山は疑問を口にする。
経緯を説明してきた神山は疑問を口にする。
「恐らくは生体認証だろう。その服は最初に着た奴以外が着ようとすると拘束服へ変化するようになっていた、
大方そんなところだろう。兵器には珍しい作りじゃない」
大方そんなところだろう。兵器には珍しい作りじゃない」
そう言うとお互いに今更感が強かったが、自己紹介と情報交換を済ませて今後の方針を話し合う。
「一応聞いておくが、一緒にくるつもりはないか」
黒から同行を打診されるが神山は首を振る。
「一応聞いておくが、一緒にくるつもりはないか」
黒から同行を打診されるが神山は首を振る。
「そうしたい所ですが、半日歩きづめで、しかもこんなことがあった後では足手まといになります」
路上で寝るわけにはいかないので近くの建物で睡眠を取る旨を伝える。
路上で寝るわけにはいかないので近くの建物で睡眠を取る旨を伝える。
「ならこの先の警察署へ行ったらどうだ、留置場に毛布くらいはあるだろう」
自分も装備を調達するつもりだと言うと神山は神妙な顔をして項垂れる。
自分も装備を調達するつもりだと言うと神山は神妙な顔をして項垂れる。
「また留置場ですか、仕方ありません。そこまでご一緒願えますか」
そう頼むと二人は警察署へ向かい歩き出した。
そう頼むと二人は警察署へ向かい歩き出した。
「ところでこの人どうしましょう」
海老反りのままのかなでを小脇に抱えて神山が呟く。拘束が強すぎたためか今は気を失っている。
目の前で黒が手を下すのを諌めたまでは良かったのだが。
海老反りのままのかなでを小脇に抱えて神山が呟く。拘束が強すぎたためか今は気を失っている。
目の前で黒が手を下すのを諌めたまでは良かったのだが。
「いらないなら海でも、所内でも好きなところに捨てればいい。何だったらこっちで引きとるが」
その後どうなるかは想像するに難くないので神山は考えておきますとだけ答えた。
その後どうなるかは想像するに難くないので神山は考えておきますとだけ答えた。
【一日目 G-4 道路 午前 】
【黒@DARKER THAN BLACK】
[状態]健康、肩に刺創(止血済み)
[装備]椎名の短刀×2@Angel Beats!
[道具]基本支給品×2、ロープ@現実、フリーガーハマー(残弾60%)@ストライクウィッチーズ
[思考]
基本:銀とともに殺し合いから脱出する筈だったが…
1:銀…
2:観測霊や時間を操る契約者(アンバー)との接触を図る
3:とにかく、なんとか逃げ延びる
4:警察署へ行く
[備考]
※一期最終回後から参加。契約能力使用可能。
※蘇芳の事は別の時間から来たと考えています
[状態]健康、肩に刺創(止血済み)
[装備]椎名の短刀×2@Angel Beats!
[道具]基本支給品×2、ロープ@現実、フリーガーハマー(残弾60%)@ストライクウィッチーズ
[思考]
基本:銀とともに殺し合いから脱出する筈だったが…
1:銀…
2:観測霊や時間を操る契約者(アンバー)との接触を図る
3:とにかく、なんとか逃げ延びる
4:警察署へ行く
[備考]
※一期最終回後から参加。契約能力使用可能。
※蘇芳の事は別の時間から来たと考えています
【神山高志@魁!!クロマティ高校】
[状態]:胸部に痣、疲労(大)、喉が痛い 打ち身多数
[装備]:拡声器@現実 ポールくん@魁!!クロマティ高校 立華かなで(B)@Angel Beats!
[道具]:基本支給品×1
[思考]
基本:この島から逃げる為に仲間と協力者を集める
1:一刻も早くメカ沢くんを手に入れる
2:留置場(警察署)で休息を取る
3:この子どうしましょう
[状態]:胸部に痣、疲労(大)、喉が痛い 打ち身多数
[装備]:拡声器@現実 ポールくん@魁!!クロマティ高校 立華かなで(B)@Angel Beats!
[道具]:基本支給品×1
[思考]
基本:この島から逃げる為に仲間と協力者を集める
1:一刻も早くメカ沢くんを手に入れる
2:留置場(警察署)で休息を取る
3:この子どうしましょう
【立華かなで(B)@Angel Beats!】
[状態]:疲労(小)、制服ボロボロ、全身火傷、捕獲
[装備]:制服、エンジェルプレイヤー、核鉄「シルバースキン・アナザータイプ」(ストレイト・ジャケット状態)@武装錬金
[道具]:なし
[思考]
基本:マスターの命令に従い、参加者を駆逐する
1:神山高志を殺す
2:失神中
[状態]:疲労(小)、制服ボロボロ、全身火傷、捕獲
[装備]:制服、エンジェルプレイヤー、核鉄「シルバースキン・アナザータイプ」(ストレイト・ジャケット状態)@武装錬金
[道具]:なし
[思考]
基本:マスターの命令に従い、参加者を駆逐する
1:神山高志を殺す
2:失神中
059:『ハムレット』の四人の亡霊 | 投下順に読む | 061:再殺部隊、始動? |
時系列順に読む | 000:[[]] | |
043:思い出は奪われ、憎しみの熾火が燻ぶる | 神山高志 | 000:[[]] |
黒 |