21世紀深夜アニメバトルロワイアル@ウィキ

知らぬが仏

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知らぬが仏◆PuVQoZWfJc


「あ"あ"あーーーあぁー、生きてて良かったああぁー」

そこは日が登っても依然として湯けむりの衰えぬ温泉だった。
その湯船に今緊張感の欠片もない声を挙げて浸かっているのは、放送時点でもう一人と
並んでトップマーダーに輝いた女だった。

既に五人は殺害しているというのに気後れや後ろめたさは微塵も感じられない。
寧ろそれ故にこの短時間にこれだけの人間を殺せたのだとも言える。というよりも彼女にとって
はたかが五人、たったの五人ということが些か不満であった。

しかしそれでも放送時に下手人が告知され出したとき、彼女は表彰台に登ることが確定した女優かアイドルの
ような高揚感と多幸感に包まれた。

結果は自分の独り勝ち、一番多く名を呼ばれるだろう。そう予想していたのに蓋を開けてみれば
聞いたこともない奴が自分と同着タイと来た。その事実に約束された栄光にミソが付けられたような
気分になった彼女、リャン・チーは折角落ち着いた気分をもう一度かき乱す事となった。

思わずに自分が殺したばかりの少年の死体に再度八つ当たりしたくらいだ。
極めつけに自分のいる場所が禁止エリアに指定され移動を余儀なくされたことでここに来るまでに
リャン・チーは怒りに顔を歪めながら悪態の限りを吐いていた。

「姉さまの一番に成り損ねた......これじゃ姉さまに褒めてもらえねえじゃねぇかよぉおおおーーー!」

途中から自分の盲愛する女性への申し訳なさから思わず涙ぐんだほどだ。
目的地へと着いた時には全力で走ったせいもあって裸に近い体に汗を浮かべ息切れを起こしていた。

場所を移す際に何の考えもなくこの温泉を選んだ訳ではない。少年の来たであろう方角を考えて
アルファルドが同じ場所に留まる可能性は低いだろうと洋館か温泉のどちらかへ当たりを付ける。

次に合流した時の可能性、その場合はアルファルドの命に従うつもりだった。その上である物の存在が
リャン・チーの足を温泉へと向かわせた。

即ち風呂である。洋館になければ例え会えたとしてもこの状態のままという事になる。
血と硝煙に塗れているならまだしも泥と汗で汚れたまま再会するのだけは絶対に避けたかった。

よって確実に「禊」の行える方へとリャン・チーは向かったのである。
結果から言えば空振りに終わったのだが彼女にとってはこの上ない戦利品に在り付くことができた。
それは
「これは......!間違いない!姉さまの髪の毛!他には、他にもっとねえのか!ここは風呂だろが!」

脱衣所と覚しき東屋で自分だけは絶対に間違えないと自負している女性、アルファルドのものらしき毛髪を発見
すると彼女は一気に興奮して他の籠をひっくり返し始める。

ここで他人の縮れ毛でも見つかっていれば或いは何か違っていたのかも知れない。しかし何も見つからなかった
ことで彼女はまた別の確信を得てしまう。

(姉さま以外はまだ入ってない?まだ?まだ......まだ!?)
ゴクリ、と生唾を飲んで目の前の湯船を見る。あって無きが如しの黒い上下の下着を外し一糸纏わぬ姿となると、
最低限に核鉄を持って湯に近づいてゆく。湯をじっと睨む。ここで他の誰かが入った痕跡が全てが台無しだ。
しかし幸か不幸か誰の毛も見つからない。

ゴクリ、ともう一度唾を飲む。禊に使うにこれ以上ない素材だ。武器と趣味と美容には自費と公費双方の
金に糸目を付けなかった彼女がどうしても手に入れられなかった物の一つが確かに目の前にあった。

手に入らなかったというのは忠誠心から敢えてやらなかった事を除けばアルファルドにプライベートと
言える部分がかなり少なかったことや採取ができない場所で行われることが殆どなのが原因である。

少なくともリャン・チーが手を出せる範囲でそれらをした事など恐らく一度もない。
だからこその衝撃だった。だからこその感動だった。

アルファルドの前では反吐が出るような乙女に早変わりする彼女からすれば正に黄金の泉だった。
そして今、自分の周囲には誰もいない。他ならぬアルファルドさえも。

(姉さまの湯に私が一番乗り、そーよ日頃の行いってのはこういうとこに出るもんよ!)
丸出しのままガッツポーズをとると手近にあった桶に湯を汲んで頭からかぶる。

「ふう......」

そのまま数回湯を浴びて頭と体の汗を流した後には湯あたりとは全く別の意味で体を火照らせていた。
残るはメインディッシュだけである。恥じらいながらもしずしずと爪先を湯船へ付けるとその温もりに
思わず身を引いてしまう。畏れに近い感情に二の足を踏んでしまう。

(やれ!イケ!ここが正念場だって分かってんだろ!ビビってんなダボ助が!)
「フー、フー、姉さま、私も今行きます..................っ!」
自らに発破をかけて気を高めると、リャン・チーはタイミングを合わせ思い切り大地を蹴り、吠える。

「ゲッサム!」

荒ぶる鷹は勇気を奮い立たせると、遂に獲物へと飛びかかったのである。全裸で。
そして今に至る。

始めの内は何かを克服した事に歓喜して年甲斐もなくはしゃいだり厳かな気持ちになったりしていたが
最後にはだらしなく湯船に浮かんでは体を大開きにしてすっかり寛いでいる。時折恍惚に身を震わせては
子猫が甘えるような声を出す。

「あ"あ" あーーーあぁー、生きてて良かったああぁー」
もう何度目か分らない台詞を口にすると何かに気付いたかのように頭を振る。
飛び散った水滴が湯船へと戻って行く。

「いや、私は今、新しく生まれ直したんだぁ。この姉さまの泉でぇ」
でろでろに締まらなくなった顔で粘ついた足し湯をしながらそんなことを言う。彼女の頭の中からは
今までの緊張感が嘘のように無くなってしまっていた。

(姉さまが死ぬはずないし、シミとかできたら最悪だから休んじまうかあ
私が一番殺れなかったのはムカツクけど頑張ってくれちゃってるのが他にいるみたいだし、
このまましばらく楽してズルして、その後オイシク頂いちまおっかなあ。)

品のない笑いを浮かべると肌に擦り込むように湯を浴びる。湯気の中に惜しげもなく
開かれた均整のとれた彼女の体は朝の光と湯の照り返しを受けて艶めかしく輝いていた。

「もうずっと!このまま!姉さまの湯から出たくなぁ~い」


【一日目 D-5 温泉 朝】

【リャン・チー@CANAAN】
[状態]:恍惚 
[装備]:核鉄「ニアデスハピネス・アナザータイプ」@武装錬金、グロック17(16/17)@現実
[道具]:基本支給品 ×3、マイクロUZI、チェーンソー@現実、核鉄「アンダーグラウンドサーチライト・アナザータイプ」@武装錬金
    ドライバー@現実 、核鉄「アリス・イン・ワンダーランド・アナザータイプ」@武装錬金、メカ沢改造マニュアル@オリジナル
[思考]
基本:アルファルドのために他の参加者を皆殺しにする
1:アルファルドと合流する
2:打倒カナン
3:はいてない奴らに復讐する
※ニアデスハピネス・アナザータイプの火薬量が半分を切りました。

062:2つの想い 投下順に読む 064:世界の蝶番はうめく
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053:死の先を逝く者たちよ リャン・チー 0:[[]]

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