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死の先を逝く者たちよ

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死の先を逝く者たちよ ◆x/rO98BbgY 氏



清潔な白い壁面を、飛び散った血潮が鮮烈な真紅に塗り変える。

金属が擦れ合うような耳障りな唸り声が、一騎の鼓膜を酷く軋ませた。

「が、ががっげぼぐあがぁっ!」
「ハハ、ハハハハハ、ハハハハハハハッ!!」
「やめろっ! やめろっ! やめろおおおおおぉーーーーーー!! 甲洋ーーーーーーーーーーーーっ!!!!」


抉られていた。


一騎の友人である春日井甲洋の持つ、チェーンソーに。


ゴリゴリという硬質な音は、シャーリーの肉体を貫通した回転鋸が、背後の壁面をも削っている音であろうか。
それとも壁面に磔にされている、シャーリーの背骨が砕ける音であろうか。
どちらにしても、あれではもう助かりっこない。

完全に脱力してしまったシャーリーの柔肉は、いまやチェーンソーのエンジンが刻むビートに合わせて、ブルブルと揺さぶられるのみ。
時折大きく痙攣すると、それに合わせて大量の血反吐を少女は吐いた。
コバルトブルーの瞳は虚ろに伏せられ、自重すら支えられなくなった剥き出しの脚が、力なく崩れ落ちる。
グラマラスな肢体を包んでいたジャケットのボタンが弾け飛び、シャーリーの肉体はチェーンソーによって縦へ縦へと切り裂かれていった。
両断され、露わにされた血塗れの内臓は、回転する鋸によってめちゃくちゃに蹂躙され、辱められている。
それを見ても真壁一騎は、肩を震わせてただ叫ぶ事しか出来なかった。

「やめろ、やめろよ甲洋……もう、やめてくれ……俺が憎いなら、俺をやればいいだろっ!?
 シャーリーさんは……もう、許してやってくれぇーーーー!!」

――俺のせいだ……俺に付き合わせたばかりに、こんな目に合わせてしまった……。

自己嫌悪に、涙する。
胸中に去来するのは、取り返しのつかない喪失感。
快活だった、年上の少女。
その彼女を助けたいと思っても、四肢にはまったく力が入らない。
土下座をするかのような体勢で、少年は目前の惨劇を見ているしかなかった。
極度の無力感と挫折に打ちひしがれる一騎に、甲洋が声をかける。

「ははは、どうだ一騎。苦しいか。だけど、こんなものじゃないぞ。
 遠見も、総士も、みんなお前の目の前で殺してやる。
 それが……俺が、お前に与える罰だっ!」

少女の鮮血に濡れた顔で、甲洋は嗤う。
これこそがお前の罪に相応しい罰だと。
誰も助けられずに、死んで行けと。

甲洋の狂笑を聞きながら、一騎は呆然としていた。
俺たちはいったいどこで、ボタンを掛け違えてしまったのだろうかと。





「こう……よう……みんなで……島に……」
「……ふん。俺くらい、手加減しても簡単に倒せるとでも思っていたか?」

薄暗い、病院のロビー。
土下座の体勢で、なにやらぶつぶつ呟いている一騎を、甲洋は見下ろしている。
ひどく気分が高揚していた。

――見たか翔子。あの一騎に、俺は勝ったんだっ!

甲洋は、一騎よりも力がある事を示したかった。
示せれば、自分なら翔子を助けられたという証になる。
最初のファフナーのパイロットに、自分ではなく一騎を選んだ総士が間違っていたという証明になる。

そうだ。総士がそんな判断ミスをしたから、俺は翔子が出撃した時も、トイレの片隅で震えているしかなくて――

「違う!!」

甲洋は激情のままに、病院の白い壁を殴りつける。

最初からファフナーのパイロットに選ばれていれば、俺はあんな風に逃げてなどいなかった。
翔子を守る為に、ちゃんと戦っていた。
間違っていたのは、総士と一騎だ。

「そうだ、俺なら翔子を助けられた。一騎に勝ったんだからな、俺は……」

リノリウムの床に這いつくばる一騎を見下ろしながら、甲洋は勝利の実感に浸る。
そして確か、シャーロット・E・イェーガーと言ったか。
あの時、勝負に水をさした女が、芋虫のように這っているのも気分が良かった。

「うう……あたしがおそい? あたしがスロゥリー?」

如何なる幻を見ているのか、一騎と同じように何事かを呟きながら、剥き出しの下半身をもぞもぞと動かしている。
もう一人、甲洋の知らない黒髪の女は、うつぶせのまま微動だにせずに倒れ込んだままだ。

春日井甲洋が、数で上回る彼ら三人をこのように無力化出来たのは、彼が所持する二つ目の武装錬金に秘密があった。


――時を遡る事、十分前。
爆発音に導かれて近くの森へと赴いた甲洋は、思わぬ拾い物を得て病院へと戻ってきた。
そしてソレのテストをしようとしていた所に強襲をかけてきたのが、一騎たち一行である。
雷神の如きスピードで迫るシャーリーの存在に気付いた時、甲洋は既に上半身を裸に剥かれていた。

なぜそんな事をしたのかは知らないが、彼らは甲洋が手に持つ核鉄のほうを先に取り上げるべきだった。
その核鉄を見逃した時点で、勝負は既に決まっていたのだ。

チャフの武装錬金アリス・イン・ワンダーランド。
この武装錬金によって密集させたチャフによる発光は、それを見た者に強度の幻覚を見せるのだ。
一騎と問答している間、甲洋が秘かに散布したチャフの光を受けて、皆一瞬で動かなくなった。
そして今頃は、とびきりの悪夢でも見ているのだろう。
虚ろな表情で、床を転がっている彼らは既に敵ではなかった。

「とりあえず、女たちは殺しておくか」

幻覚によって無力化した一騎は、総士をおびき寄せる餌にでも出来るだろうが、女たちは甲洋にとって無価値であった。
あまりにも人質が多いと、いざという時立ちまわる事が出来なくなる。
ゆえに、ここでの殺害を決意し、鞄からチェーンソーを取り出そうとした甲洋は――

「痛っ!?」

突如、飛来した石礫に手の甲を打たれて、短い悲鳴をあげた。
礫の飛んできた方向に振り向くと、倒れていたはずの黒髪の女――アルファルドが、スリングを構えて立っている。

「お、おまえ……幻覚から目覚めたのか!?」

さきほどまで倒れていた女の復活に、甲洋は僅かな動揺を見せた。
チャフの武装錬金による発光を、再び女に浴びせかけるが、もはやその光にアルファルドが怯む事はない。

「幻覚だと? そうか、この幻は、その武装錬金によるものか。色々とあるものだな……。
 だが、あいにくと、私はそれくらいの悪夢は見慣れているのでな」

アルファルドは、床に落ちていた青龍偃月刀を拾い上げると、何もない虚空を一閃する。
その虚空に、何を見ていたのか。
口角を片側だけ吊り上げて、女はシニカルに微笑んだ。

そんなアルファルドを前にして、甲洋はまるで蛇に睨まれた蛙のような心境であった。
武芸の心得などない甲洋であったが、それでも目前の女が、自分よりもはるかに場馴れしている事は判る。
甲洋は、自己の保有戦力を素早く計算し――。

 チャフの武装錬金アリス・イン・ワンダーランド――効果なし。
 シェルターの武装錬金アンダーグラウンドサーチライト――あと数時間は使用不能。
 チェーンソー――鞄の中。エンジンの始動には、時間がかかる。そんな暇はない――

いずれも、戦力足り得ないと判断した。
せっかく無力化した一騎たちは惜しかったが、じりじりと出口の方へと後退しながら、アルファルドの出方を窺う。

「ホムンクルスじゃないなら、お前に用はないが……その武装錬金には興味がある。
 どうだ。それを渡すなら、私はこの場から立ち去ってやってもいいが?」
「なん……だと? どういうつもりだ?」

女は、核鉄と引き換えに、一騎とシャーリーを渡すと言っている。
どこまで本気なのかは知らないが、虎の子たる核鉄を簡単に渡せるはずがない。
殺し合いに抗う者たちが、集団を作るのは自明の理だ。
この武装錬金は、そういう者たちに対しての切り札となる。
渡した所で、女が約束を守る保障もなく、乗れるはずもない条件だった。
その意思を、甲洋の表情から読み取ったのか、アルファルドは軽い溜息を付く。

「交渉決裂か。それなら、実力で奪い取るしかないな」

青龍偃月刀を構えた女が、ゆらりと揺らめくと、リノリウムの床を蹴って甲洋へと迫る。
その速度は、甲洋の想定よりもはるかに速いものだったが、なんとか床へと転がりこむ事でその一撃を避けると、
甲洋は最後の持ち札を切った。

「来いっ! メカ沢あああああああっ!!」
「ブルァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

破砕音と共に、壁が砕ける。
コンクリートの破片が飛び散り、白塵の粉が舞った。
甲洋の呼び声に応え、薄壁一枚向こうから『何か』がロビーに突入してきたのだ。


――それは、人と言うにはあまりにも丸すぎた。
大きく、ぶ厚く、重く、そして大雑把すぎた。
それはまさにドラム缶だった。


メカ沢新一
彼は甲洋が森で見つけ、洗脳をほどこしたサイボーグ戦士である。
円柱型の体躯から伸びた鉄板のような足が床を踏みしめれば、ガシャリガシャリと金属音が鳴り響き、
どうやって動いているのかも判らない、か細いアームには巨大なドリルが取り付けられている。
メカ沢は、壁を粉砕したそのドリルでアルファルドを不意打ちし、その重厚な威圧感を持って彼女を退けたのである。

「……なんだこのドラム缶は」

サイボーグ戦士である。

「メカ沢、撤退するぞ。スモーク弾だっ!」
「ラジャァー」

甲洋の指示に野太い声で応えると、メカ沢の頭部がカパッと開き、グレネードの発射装置が展開される。
発射されたグレネードは、スモーク弾。
有色の煙を拡散させ、視界を遮る事を目的とするグレネードだ。
甲洋とメカ沢は、その煙に紛れて病院を脱出しようとする。しかし――

彼らが相対する敵は、『極限』であった。
視界を遮る煙をものともせずに、飛び込んできた褐色の影が甲洋を狙う。

「危ねェッ! 甲洋っ!」
「メカ沢っ!?」
「――!? 硬いなっ!」

甲洋に向かって鋭く突き出された偃月刀の刃を、メカ沢が体を張って受け止めた。
更に連続して放たれた薙ぎ払いをも、その円柱型の体で受けきると、メカ沢は右手のドリルで反撃に移る。
ロビーに充満した煙ごと螺子切るかのような、ドリルの一撃。
その攻撃を如何にして察知しているのか、アルファルドは上体を逸らして華麗に避ける。

「ここはオレに任せて、先に行きなぁ。なぁーに、このお嬢を足止めしたら、オレもすぅぐに行く」
「メ、メカ沢……よし、合流場所は打ち合わせた通りだぞ!」
「おぅ」

メカ沢は甲洋を先に逃がし、単独でアルファルドと向かい合う。
黄色い両眼が発光し、煙の中のアルファルドを睨みつけていた。

「ちぃっ、待てっ!」
「おおっとぉ、通さねェーよっと。」

アルファルドにとって、用があるのは甲洋の武装錬金だ。
先の巨人との戦い。
戦士としての技量で劣っていたとは思わないが、武装の性能差は、二対一という人数差を持ってしても如何ともし難かった。
プライドを傷つけられたアルファルドは、奴と同等の武器さえあれば――と、思わずにはいられなかったのだ。
それに所持していれば、錬金戦団への足掛かりとなるだろう武装錬金には武器以外の価値もある。
核鉄を餌に錬金戦団にもぐりこみ、錬金術の秘奥を盗み出せれば、ダイダラ社にとって大きな儲け口となるだろう。
ここで逃すにはあまりにも惜しい獲物だ。
しかし

「こぉれでお前を、バァーラバラに分解してやろぅかぁーーーーーー!?」
「それはひょっとしてギャグで言っているのか!?」

メカ沢が左手のドライバーを閃かせる。
さほど俊敏でもないその一撃を避けるのは容易かったが、こちらの攻撃も通らない。
アルファルドの青龍偃月刀は、かなりの業物であったが、下手に攻撃すれば手が痺れてしまうほどメカ沢は硬いのだ。
さて、どうするかと考えながら動きまわり、メカ沢の攻撃を凌いでいたアルファルドは、彼の後頭部に一つのボタンを発見した。

「……しかし、お前を置き去りにして行ってしまうとは酷い奴だな。知っているか?
 あいつは、かつての味方を殺そうとしていたんだぞ? お前も使い捨てられてしまうかもな」

「あいつが何をしようとしているかなんて、関係ねェーのよ。オレぁあいつの味方をするってェ決めたんだ。
 それなら、友達(ダチ)の為に体を張ってやるのは当たり前の事じゃねェか。
 女のお前さんには言ってもわからねェだろうが、そいつが不良(ワル)の――」

アルファルドの挑発。
だが、それに対しても、洗脳されたメカ沢は大地に根を張る巨木のように揺るがない。
渋い声で滔々と語り――
そしてその隙をアルファルドに突かれた。

跳び箱のように、メカ沢の天頂に手を突いて飛び越える。
そのまま背後に回り込んだアルファルドは、ファミコンのリセットボタンのような赤いボタンを押したのだ。
鬼がでるか、蛇がでるか。
固唾を呑んでアルファルドは、何が起こるのかを見守った。そして――。


『ただいまデータを初期化しました』

メカ沢は無力化された。





『音声ガイダンスに従って、名前を入力してください』


メカ沢を無力化したものの、時既に遅く。
甲洋には逃げ切られてしまったアルファルドは手に入れた戦利品をどう扱うか悩んでいた。
設定を変更して、自分の兵士にしてもいいが、単に装甲が硬いだけで使い勝手は悪そうであった。

「ふむ……」

しばらくメカ沢を前に考え込んでいたアルファルドは、いつしかドライバーを手の中に弄んでいた。

――分解してみるか。

人とは違い、メカであれば首輪を取ってしまっても倫理的な問題はない。
それに、どういう構造で動いているのかという興味もあった。
解析できるようであれば、ダイダラ社で量産を考えてもよい。
要人警護のSPくらいには使えるだろう。
それに壊れてしまったアレの補修用パーツも取れる可能性がある。

「やるか」

呟き、メカ沢へと近付く。

そして、数十分に渡る、機械との格闘が始まった。



『ドッドッドッドッドッド』

特徴的なエンジンサウンドが、ロビーの中に木霊する。
スタイリッシュだった大型バイク『MTS1200S』の面影は既になく、その姿はメカ沢の外装に取って代わっていた。

「ふ、む?」

小首を傾げる。
アルファルドとしては、ここまでパーツを流用するつもりはなかったのだが、気が付いたらなぜかこうなっていた。
何が何だかよくわからなかったが、メカ沢の硬い装甲板は何かの役に立つかも知れなかったので、気にしない事にした。
メカ沢の首輪や、余ったパーツを鞄に仕舞い、アルファルドはとりあえずその場を離れる。
結局の所、メカ沢の構造については、謎のままだった。


さて、それはともかくとして一騎とシャーリーの二人である。
幻覚の果て、失神してしまったらしい二人の様子にアルファルドは呆れていた。
甲洋に二人の生死を委ねると言った、アルファルドの言葉は嘘ではない。
主催者の狙いを知る為には、ある程度ゲームが進んでみない事には始まらないからだ。

とはいえ、自ら手を汚すという選択肢はなかった。
正義を標榜する錬金戦士団と接触するため、なるべく足のつくような真似をしたくなかったという事もあるが、
観測者が自ら殺して回っていては、正しい測定結果など得られるはずもない。
なるべく殺し合いとは無関係な、傍観者としての立場を守らなければ、正しい測定結果は得られないのである。

もっとも、結果的にこの二人を助けた事や、津村斗貴子の死に影響を与えた事のように、この地に招かれた参加者である以上、
完全な傍観者となる事は不可能だ。
アルファルドが、殺し合いを観測しようという意思を持つ事。
それ自体が、既にこのゲームに影響を与えてしまっているのだ。
自覚はしていたが、自己の生存や、社の利益といった無視出来ない要因が絡む以上、割り切る他はない。

「だが、これ以上この二人と一緒にいる必要もないか」

シャーリーの足に付いた武装錬金「モーターギア・アナザータイプ」を奪うと、アルファルドは病院のメモ用紙を使った書き置きを放る。
ひらひらと舞い落ちたそれには『逃げた少年を追う為に、これを借りる』という趣旨の文章が、簡潔に記されている。

方便である。
とりあえず武装錬金を手に入れた今、これ以上の干渉は好ましくない。
この場から逃走した春日井甲洋が、あの武装錬金で如何なる惨事を起こそうとも、もはやアルファルドは止めるつもりもなかった。
進行していくプログラムの中で、どのような結果が出るのか。
それを知る事で主催者の狙いを突きとめ、交渉へと持ち込むのが彼女のプランなのだから。


アルファルドは、MTS1200S改めメカ沢バイクにまたがると、病院のロビーから飛び出した。
いまだ冷たい早朝の風を切りながら、アルファルドは次なる殺し合いを目撃するべく動きはじめる。

『ブルーン! ブルンブルーン!!』
「気のせいだろうか。少し鬱陶しくなったような気がするんだが……」


【メカ沢新一@魁!!クロマティ高校 バイク化】
【残り40人】


【一日目 C-4 道路 早朝】

【アルファルド@CANAAN】
[状態]:軽傷(手当て済み)、疲労(小)
[装備]:青龍偃月刀@真†恋姫無双、核鉄「モーターギア・アナザータイプ」@武装錬金、メカ沢バイク@魁!!クロマティ高校
[道具]:基本支給品×2、ボイスレコーダー@DARKER THAN BLACK、自作のスリング、確認済み支給品0~2、デイバッグ×2
    メカ沢の余りパーツ、首輪、ドライバー@現実
[思考]
基本:主催者と交渉に持ち込み、脱出する。他者の犠牲も厭わない
1:カナンに絶望を与える。
2:錬金の戦士との接触。
3:ヴィクターの末路への興味。

※ボイスレコーダーには津村斗貴子との会話が録音されています。
※メカ沢バイクにはグレネード詰め合わせ(スタン、スモーク、白燐各種2個づつのグレネード6個セット)が搭載されています。
 スモーク弾は一発消費しました。


【一日目 C-4 病院 早朝】

【シャーロット・E・イェーガー@ストライクウィッチーズ
[状態]失神
[装備]
[道具]基本支給品×1、不明支給品0~1
[思考]
基本:501航空団の仲間と合流して脱出する
1:あたしが遅い? あたしがスロゥリー!?
2:ルッキーニと芳佳が心配


【真壁一騎@蒼穹のファフナー】
[状態]失神
[装備]宝剣・靖王伝家@真・恋姫†無双
[道具]基本支給品×1、不明支給品0~1
[思考]
基本:竜宮島の仲間を島に帰す
1:俺のせいでシャーリーさんが……
2:総士、翔子を守る
3:竜宮島の仲間を探す





「はぁ、はぁ、はぁ」

病院から走って逃げてきた甲洋は、追手がかかっていない事を確認すると歩調を緩めた。
メカ沢には、はぐれた時の合流ポイントをインプットしてある。
甲洋はそこまで辿りついたら、しばらく待ってみるつもりであった。

「一騎……もうしばらくはその命、預けておくぞ」

思わぬ邪魔が入ったが、一騎に勝利しえた事実には変わりはなく、甲洋にさほどの落胆はない。
未だ戦力は十全。
幻覚が通じないイレギュラーへの対処法を考えれば、まだまだ優勝を狙えるだろう。

「翔子……待ってろよ。俺が必ず……生かして帰してやるからな」

雲一つない空を見上げて、甲洋は呟く。
空へと翔けていった少女を、今度こそは守るのだと決意を新たにした彼は、街の一角に敵影を発見する。
向こうは、まだ気付いていないようだった。
朝靄に紛れつつ、チャフの武装錬金アリス・イン・ワンダーランドを展開。

神経系に作用して方向感覚を狂わせる、この武装錬金の拡散状態での効果を活用すれば、このまま明後日の方向へと人影を
誘導する事も可能だろうが、甲洋はそうはしない。
新たに出会った人物から、翔子の情報を聞きだしたいからだ。

だから武装錬金を散布した目的は、防衛の為。
先程戦闘に及んだアルファルドは、この状態でも甲洋へと肉薄してきたのだが、保険はかけておいた方がいいだろう。
実際、彼女の攻撃を間一髪避けられたのは、その保険のおかげでもあったのだから。

そしてこれは情報を聞きだした後、速やかに攻撃へと移行する為の準備でもある。
人当たりのいい笑顔に殺意を隠し、甲洋は人影と接触を図った。

「あの……少しお尋ねしたいのですが……」
「ああーん?」

相手に害意を与えない為、二十メートルほどの距離を開けて話しかけた甲洋であったが、その女性の姿に思わず絶句する。
はいていないシャーリーや、アルファルドの軽装にも秘かに面食らっていたが、この相手はそれ以上であった。

なにせ上下ともに黒で揃えた、きわどい下着姿なのだ。
その他に身につけているものといえば、シースルーのスリップと、太腿までのストッキングだけだ。
島の外の女性は、皆こんな格好をしているのだろうか。

そもそも、竜宮島には中学校以上の学校がない。
卒業を迎えた上級生たちは、島の外の学校に進学する為、島には成熟した若い人間が極めて少なかった。
ファフナーに乗る様になった今では、その裏に隠された真実を知ってはいるが――
そういう環境で育った甲洋たちには、その手の刺激に対する免疫が極めて不足していた。

(く、くそ、何動揺してるんだ俺はっ!)

「あ、あの……翔子を……ストレートのロングヘアの、翔子という女の子を見ていませんか?
 俺と同じくらいの年の子で、大人しそうな感じの子なんですけど……」

動揺しつつも両手をあげて、ゲームには乗っていない事を示しながら尋ねる。
そんな甲洋の様子に警戒を解いたのか、女性は話を聞いてくれそうな様子を見せた。

「翔子……翔子……うーん、どこかで聞いたような名前のような気もするけど……どこだったかしらねぇ」
「し、知ってるんですか!? 思いだして下さい! お願いします、どこで……どこで翔子の名をっ!?」

翔子の事を知っている。
そんなそぶりを見せた女性の言葉に、甲洋は食い付く。

「あらあら、必死ねぇ。そんなにその翔子って子の事が大切なの? 愛しちゃってるのぉー?」

愛してる。
そんな事は考えた事もなかったが、この胸の中で熱く翔子を思う気持ちが愛というものなのだろうか。
戸惑いながらも、甲洋は頷く。
その感情は、とても誇らしいものに思えた。

「そうなの……あっ、思い出したわ。翔子……羽佐間翔子よね。その子だったら――」

そんな甲洋を、微笑みながら見ていた女性が不意に翔子の事を思い出す。
甲洋は告げられる翔子の話を、一字一句聞き漏らすまいと息を呑み――

「ぶっ殺したわよっ! こーやってねェー!!」

横殴りに叩きつけられた爆風に、堪らず転倒した。
極至近距離で、突然何かが爆発を起こしたのだ。
鼓膜が破れたような衝撃に、頭の中がキンと痺れた。

「あらぁ? あの子と同じように頭をぶっ飛ばしてやろうとしたのに――あんた、なんかしたぁ?
 火薬が勿体ないだろーが。ふざけやがってこのヘナチョコがぁ」

「おま……え、翔子を……」

下着の女――リャン・チーが告げた言葉を、倒れ伏した甲洋は信じられない気持ちで聞いていた。
翔子を……殺した?
翔子が、死んだ?
こんなに早く?
本当に?

いや、そうなる事も覚悟はしていた。
覚悟した上で、それでも奇跡を信じて戦っていた。
元々、彼女の蘇生は、その奇跡から齎されたものだ。
だから、例え彼女が途中で死んだとしても、自分が優勝する事で彼女を蘇らせて――。
だから、絶対負けられなくて――。

そのつもりだったのに、不意に聞かされた翔子の死は、甲洋をどうしようもなく動揺させた。
再び翔子を失った悲しみと、翔子を助けられなかった悔しさと、翔子を殺した相手への怒りがごっちゃになった。
そして、

――翔子が、もういない。
過去、一度味わった寂寥感が、再び甲洋の中に蘇っていた。
頭の中が翔子の思い出で飽和して、他の事が考えられなかった。
結局の所、甲洋は翔子の死を、今の今まで受け止めきれていなかったのだ。
だから、近付いてきたリャンに銃を突きつけられるまで、甲洋は何も反応出来なかった。

「愛なんてもんは、私と姉さまの間にだけあればいいのよ。
 その辺ちゃぁんと自覚して、脇役は大人しく引っ込んでなさぁい」

(あ……俺は、また翔子を守れなかったのか……)

硬く冷たい鉄の感触に、意識が戻る。
いつのまにか、目が涙でぐしゃぐしゃになっていた。
しゃくりあげるように痙攣する喉が、最後の言葉を紡ぐ。

「頼む、一騎……翔子を……」

だが、轟いた一発の銃声が、その言葉をかき消した。
だからその言葉は、誰にも届くことなく大気の中に溶けて消えた。





核鉄の形に戻った武装錬金を回収しようと、少年の傍に跪いたリャン・チーは、そこに姉と慕うアルファルドの匂いを感じた。
……ような気がした。

「これは……姉さまの残り香っ!? おい、お前! 姉さまに会ったのか!?
 どこだ、どこで会った!? どっちから来たぁっ!?」

肩を鷲掴みにして、揺さぶる。
なぜか裸の上半身を、爪が食い込むほど強く握り、何度も地面に頭を打ち付けるが、反応はない。
当然だ。
少年は、たった今リャン・チー自身が殺害したのだから。

「勝手に死んでるんじゃねえええええーーーーーーーー!! このダボがぁっ! 答えろ! 姉さまはどこ!? どこにいるの!?」

両頬を往復ビンタで張り飛ばす。
脇腹をつま先で蹴り飛ばす。
己が猛りを、思うがままに死体にぶつけながら、リャン・チーは喚いた。
だが、その問いに答えられる者は、もはやどこにもいなかった。


【春日井甲洋@蒼穹のファフナー 死亡】
【残り39人】

【一日目 D-4 市街地 早朝】


【リャン・チー@CANAAN】
[状態]:疲労(小)
[装備]:核鉄「ニアデスハピネス・アナザータイプ」@武装錬金、グロック17(16/17)@現実
[道具]:基本支給品×3、マイクロUZI、チェーンソー@現実、核鉄「アンダーグラウンドサーチライト・アナザータイプ」@武装錬金
    ドライバー@現実 、核鉄「アリス・イン・ワンダーランド・アナザータイプ」@武装錬金、メカ沢改造マニュアル@オリジナル
[思考]
基本:アルファルドのために他の参加者を皆殺しにする
1:アルファルドと合流する
2:打倒カナン
3:はいてない奴らに復讐する

※ニアデスハピネス・アナザータイプの火薬量が半分を切りました。



052:熊が火を発見する 投下順に読む 054:[[]]
時系列順に読む
035:混浴~ふれあい~ アルファルド 0:[[]]
シャーロット・E・イェーガー 065:MOTER
真壁一騎
028:フォークト=カンプフ検査法 メカ沢新一 バイク化
春日井甲洋 死亡
020:悪魔が目覚める日 リャン・チー 0:[[]]

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