留守番◆PuVQoZWfJc
朝靄は晴れ、室内に差し込む光もその強さを増して行く。しかしそれとは裏腹に室内を選挙している
少女の瞳は夜が明ける前よりもずっと濁っていた。じっとりと濡れた瞳は空を睨んで動かない。
少女の瞳は夜が明ける前よりもずっと濁っていた。じっとりと濡れた瞳は空を睨んで動かない。
(銀が死んだ......)
先程の放送を聞いた時、彼女の胸には達成感に近い歓喜が湧いた、だがその昏い喜びはすぐに
自己嫌悪と怒りによって打ち消された。
自己嫌悪と怒りによって打ち消された。
(違う、銀はたぶん、もっと早くに死んでたんだ。でも銀は死なない。意味が無いんだ)
先程撃ち砕いた洗面台に銀はいたのだ。だからこそ蘇芳は彼女の訃報に苛立ったのだ。
亡くなった女性は少女、蘇芳の嫉妬の対象だった。いつも蘇芳の求める男性、黒の心中に居続ける。
亡くなった女性は少女、蘇芳の嫉妬の対象だった。いつも蘇芳の求める男性、黒の心中に居続ける。
(足りない、足りないんだ。銀が死んだって、黒はきっとずっと、銀の事を......)
蘇芳は黒に張られた頬を触る。既に痛みは無かったが、それでもさっきまでの痛みと熱さを忘れることはできなかった。
黒は自分に何もするなと言って出ていってしまった。銀との決着は流れてしまったがどちらにせよ
黒が戻ってきてくれるかは疑わしかった。
黒は自分に何もするなと言って出ていってしまった。銀との決着は流れてしまったがどちらにせよ
黒が戻ってきてくれるかは疑わしかった。
(黒はずっと銀のことを思い続けるだろうな......ボクよりも、ずっと。あいつが死んでも意味なんか、ううん、
死んだから前よりもっと黒の中にいるんだろうな。黒......)
死んだから前よりもっと黒の中にいるんだろうな。黒......)
黒に縋りつきたくなったがここにはいない。それに嫌われてしまったとも思った。
蘇芳はふと考える。この先二人で生き残って、島から脱出できたら、その後どうなるだろう。
黒と一緒に生き残ってもその隣に自分は立てず、黒の中にはいつも銀がいて、それを思い知らされる。
蘇芳はふと考える。この先二人で生き残って、島から脱出できたら、その後どうなるだろう。
黒と一緒に生き残ってもその隣に自分は立てず、黒の中にはいつも銀がいて、それを思い知らされる。
堪え切れないほどの怖気と憎しみがこみ上げて来ると、蘇芳は耐え切れずに悲鳴を上げて壁を殴った。
拳が痛むのも気にせず、片手で髪を掴み、片手で壁を殴り続ける。
拳が痛むのも気にせず、片手で髪を掴み、片手で壁を殴り続ける。
(嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!そんなの嫌だ!)
小さく嗚咽を漏らしながら蘇芳は何とかしなければと必死に考える。
どうすれば黒に自分を見てもらえるか。どうすれば黒の隣に立てるか、どうすれば黒の中にいられるか、
そして、どうすれば黒の中から銀を消せるか。
小さく嗚咽を漏らしながら蘇芳は何とかしなければと必死に考える。
どうすれば黒に自分を見てもらえるか。どうすれば黒の隣に立てるか、どうすれば黒の中にいられるか、
そして、どうすれば黒の中から銀を消せるか。
それは淡い恋心であり幼い独占欲だった。しかしその気持ちに落とし所を見つけるには
蘇芳は若すぎたし余計な知識も多すぎた。
(どうすればあいつを消せる、どうすれば黒に振り向いてもらえる、どうすれば・・・!)
焦る気持ちを表すかのように思考は空転し続ける。
蘇芳は若すぎたし余計な知識も多すぎた。
(どうすればあいつを消せる、どうすれば黒に振り向いてもらえる、どうすれば・・・!)
焦る気持ちを表すかのように思考は空転し続ける。
結局何も思い付かず、気疲れした蘇芳はまず荷物の整理をすることに決めた。
デイパックの中身を取り出しては確認し、自分の取り出しやすいように詰め直す。
デイパックの中身を取り出しては確認し、自分の取り出しやすいように詰め直す。
黙々と作業をこなしながら蘇芳は、「そういえば」と心の内でつぶやいた。
(黒、帰ってこないな、当たり前か、言う事聞かなかったもんな)
明らかに冷たくなった黒の態度を思い出してはまた気分が沈む。
(もう嫌われないように、やっぱり待ってた方がいいのかな......)
最後の言いつけを守ることを優先するかどうかを迷いながら、自分の契約の対価の為に
破いたルールブックの残りのページ数を確認する。手付かずの分も含めてまだまだ余裕がある。
確認を終えて閉じようとした時、開いていたページの一文が目に映る。
破いたルールブックの残りのページ数を確認する。手付かずの分も含めてまだまだ余裕がある。
確認を終えて閉じようとした時、開いていたページの一文が目に映る。
『優勝者の帰還は保証し、ありとあらゆる願いを一つ叶える』
死者の蘇生も含むと補足された文章から蘇芳はふと、真逆のことを考える。
もし優勝すれば、銀を完全に世界から、黒の中から全て消すことができるのだろうか。
黒の中の銀を自分にすることができるのだろうか。
もし優勝すれば、銀を完全に世界から、黒の中から全て消すことができるのだろうか。
黒の中の銀を自分にすることができるのだろうか。
突然湧いた思考に蘇芳の心臓は徐々にだが脈打つ早さを増して行く。
もしも、黒が自分の望みどおりになったら?
もしも、黒にふさわしい自分になれたとしたら?
もしも、最初から銀じゃなくて、自分が黒の隣にいられたとしたら?
もしも、黒が自分の望みどおりになったら?
もしも、黒にふさわしい自分になれたとしたら?
もしも、最初から銀じゃなくて、自分が黒の隣にいられたとしたら?
追い詰められた少女の思考が支えにもなりそうな欲望へ頭を振ることはなかった。
ただ優勝するための絶対条件が行動に出ることを躊躇わせた。
ただ優勝するための絶対条件が行動に出ることを躊躇わせた。
(黒を殺さないといけない。でもそんなことはできない。黒は......できるのかな......
優勝したら、やっぱり銀を生き返らせるのかな。ボクは......)
優勝したら、やっぱり銀を生き返らせるのかな。ボクは......)
不安になってくる。こんな事ならせめて別れる前に本人に聞いておくべきだったかも知れない。
返答の内容を考えれば聞かないほうがいい可能性もあったが。
どうしたいかも、どうするべきかも分らなくなってしまった。黒といっしょにいたいがそれは
拒絶されてしまった。追いかけたとしてもう一度同じことがあったら耐えられる自信はない。
返答の内容を考えれば聞かないほうがいい可能性もあったが。
どうしたいかも、どうするべきかも分らなくなってしまった。黒といっしょにいたいがそれは
拒絶されてしまった。追いかけたとしてもう一度同じことがあったら耐えられる自信はない。
優勝するには黒を殺さなければならない。しかしそれもできない。結局蘇芳はここで黒の
帰りを待ちながら、この建物の近くを遠った者を殺すことを続けることにした。既に半数の人間が
死んでいるのだ。ならば残っているのは元の世界でも殺す側だった者ばかりのはずだ。
帰りを待ちながら、この建物の近くを遠った者を殺すことを続けることにした。既に半数の人間が
死んでいるのだ。ならば残っているのは元の世界でも殺す側だった者ばかりのはずだ。
なら数を減らすのが一番堅実な黒の安全を得るための方策だった。代替案が思い付かなかった
こともあって彼女のこの考えは変わらなかった。失われた信頼を取り戻すことは容易ではない。
その為にはせめて言いつけを守りながら当面は出来ることをするしかない。
こともあって彼女のこの考えは変わらなかった。失われた信頼を取り戻すことは容易ではない。
その為にはせめて言いつけを守りながら当面は出来ることをするしかない。
殺人への抵抗が消えた訳ではないが既に自分は自分とそう年の変わらない少女を撃っているのだ。
後戻りできるとは思えなかった。
後戻りできるとは思えなかった。
(何もするなって言ってたけど、黒の為だから)
万一成功したなら自分と関係ないように何かしなくては、と頭の片隅に書き留めると蘇芳は
窓から外の様子を伺った。誰もいないが晴れた空の下での狙撃は自分の居場所を報せやすく
するので危険だった。行動にでるなら一層の注意が必要となる。
窓から外の様子を伺った。誰もいないが晴れた空の下での狙撃は自分の居場所を報せやすく
するので危険だった。行動にでるなら一層の注意が必要となる。
遅まきながら、少女は一人になったことに不安と孤独を思い出していた。
「黒......」
いくら名を呼んでも、彼は帰っては来なかった。
【一日目 G-4 ビル 朝】
【蘇芳・パヴリチェンコ @DARKER THAN BLACK】
[状態]疲労(中)、頬に腫れ 不安
[装備]なし
[道具]基本支給品×1、特別支給品0〜1個(確認済)、ルールブック2冊(黒と蘇芳)、核鉄@武装錬金
[思考]
基本:黒と旅を続ける
1:黒と一緒にいたい
2:これ以上黒に嫌われたくない
3:もしも優勝できたら......
[備考]
※二期最終回、銀に魂を吸われた直後からの参加。
※ルールブックのページを数枚消費
[状態]疲労(中)、頬に腫れ 不安
[装備]なし
[道具]基本支給品×1、特別支給品0〜1個(確認済)、ルールブック2冊(黒と蘇芳)、核鉄@武装錬金
[思考]
基本:黒と旅を続ける
1:黒と一緒にいたい
2:これ以上黒に嫌われたくない
3:もしも優勝できたら......
[備考]
※二期最終回、銀に魂を吸われた直後からの参加。
※ルールブックのページを数枚消費
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043:思い出は奪われ、憎しみの熾火が燻ぶる | 蘇芳 | 0:[[]] |