シンデレラ・ファーザー ◆PuVQoZWfJc
島の全土に響き渡った盛大な訃報は、ある男にも影を落とした。
ヴィクトリアの名前が呼ばれた時、ヴィクターはその意味をすぐには理解できなかった。
いや、理解することを拒否したという方が正しい。
ただ既視感はあった。以前錬金の戦士たちによって似たような事をされた為に今のヴィクターと
ヴィクトリアの関係があったのだから。
いや、理解することを拒否したという方が正しい。
ただ既視感はあった。以前錬金の戦士たちによって似たような事をされた為に今のヴィクターと
ヴィクトリアの関係があったのだから。
(どうして、あの子が)
それは以前にも思ったことだ。最低の事態に自分の家族が巻き込まれることをどこか想像できない。
『自分の子に限って』などという考えは無かったがそれでも、死んでいるなどとは思いたくなかった。
ようやく今までの埋め合わせをできる時を、家族の時間を取り戻せたと思ったのに。
『自分の子に限って』などという考えは無かったがそれでも、死んでいるなどとは思いたくなかった。
ようやく今までの埋め合わせをできる時を、家族の時間を取り戻せたと思ったのに。
(何故、殺されなければならなかったのか)
粘つき止まりかけた思考のままヴィクターは別室にいる少女に声をかけずにふらりと外に出た。
辺りに人影はなく、戦いの音も聞こえない。本当にこの島のどこかで娘は死んでしまったのか、
本当は呼ばれたのは自分だけで娘はこの殺し合いに参加などしていなかったのではないか、
自分でも信じられなかったが、それでもそう思いたかった。
本当は呼ばれたのは自分だけで娘はこの殺し合いに参加などしていなかったのではないか、
自分でも信じられなかったが、それでもそう思いたかった。
質の悪いことに娘の敵は既にいないらしいということだった。体に起こる衝動に任せて島中を
捜し回ることもできない。自分のことでもないのに走馬灯のように娘のことが脳裏に過る。
悲惨なことが思い過ごしであったことは、彼に人生にとってはただの一度もない。
それ故に他者から告げられた死を、何一つ軽減できずに受け止めてしまう。
捜し回ることもできない。自分のことでもないのに走馬灯のように娘のことが脳裏に過る。
悲惨なことが思い過ごしであったことは、彼に人生にとってはただの一度もない。
それ故に他者から告げられた死を、何一つ軽減できずに受け止めてしまう。
(ヴィクトリア......)
思考が纏まらなかった。まるで全ての配線が切れ燃料も尽きて、心身が錆びてしまったかのようだった。
もしも出会ったら、守ってやろうと思った。もしも望まれなくても味方でいようと思った。他の参加者
も主催も何もかも皆殺しにしても、その決意の全てが、音もなく崩れていく。
もしも出会ったら、守ってやろうと思った。もしも望まれなくても味方でいようと思った。他の参加者
も主催も何もかも皆殺しにしても、その決意の全てが、音もなく崩れていく。
(済まない、ヴィクトリア、済まない......)
とうの昔に人の身では無くなっていたが、それでも自分の子どもの死に対して何も感じ無いほど
化物ではなかった。それでもヴィクターは人の親だった。項垂れた彼を撫でるように風が吹く。
風に持ち上げられるように顔を上げると、視界の遠く先からこちらへ向かってくる影が二つあった。
化物ではなかった。それでもヴィクターは人の親だった。項垂れた彼を撫でるように風が吹く。
風に持ち上げられるように顔を上げると、視界の遠く先からこちらへ向かってくる影が二つあった。
その内の一つは彼に取って、遠目であっても間違えようのない男のものだった。自分も津村斗貴子を
殺害している。それを思い出すと、なんとも誂え向きなお迎えだと、思わずにはいられなかった。
「パピヨンさん、その、なんて言ったらいいか」
殺害している。それを思い出すと、なんとも誂え向きなお迎えだと、思わずにはいられなかった。
「パピヨンさん、その、なんて言ったらいいか」
塔へと向かうカズキとパピヨンマスクこと趙雲の気持ちは火渡を撃退した時とは打って変わって
通夜のように落ち込んでいた。自分の知り合いは連れてこられていない様なのでそこだけは安心だったが
あれだけの数の人の名前が呼ばれたのだ。案の定、趙雲の仲間も命を落としたようだった。
通夜のように落ち込んでいた。自分の知り合いは連れてこられていない様なのでそこだけは安心だったが
あれだけの数の人の名前が呼ばれたのだ。案の定、趙雲の仲間も命を落としたようだった。
放送の後趙雲は息を飲むと厳しい表情を浮かべ静かに眼を閉じた。そしてしばらくの間、
佇みやがてカズキを促して歩き出したのだ。
佇みやがてカズキを促して歩き出したのだ。
(俺が、俺がもっと、ちゃんと何かできてれば......)
「気に病むな、君のせいではないんだ。言ってしまえばこれは、仕方のないこと、とも言える」
「気に病むな、君のせいではないんだ。言ってしまえばこれは、仕方のないこと、とも言える」
趙雲は俯き何も言えないカズキの心情を察して逆に気遣う。流石に今はマスクを外している。
「仕方がないって、何が仕方ないんですか。こんなことになって、それで死ぬなんて」
告げられた言葉に噛み付くと趙雲はああ、と言って手をぱたぱたと振る。
「そういう意味じゃない。確かにこんな事態に納得なんかいかない。だがなカズキ君、私たちは互いに
戦う為に武器を取った身だ。戦となればこの手を汚さざるを得ない」
戦う為に武器を取った身だ。戦となればこの手を汚さざるを得ない」
空を見上げるとこの状況を関係ないと言わんばかりの晴れ空が広がっている。
「使い道をどうしたところで力が暴であることには変りない、人より多めに恨みも買うさ、だから
私たちは自分の死に方に文句を言える立場じゃないんだ。それは彼女たちも分かっていたはずさ」
私たちは自分の死に方に文句を言える立場じゃないんだ。それは彼女たちも分かっていたはずさ」
カズキに言い聞かせるように話す横顔には悲嘆も憎しみも見えない。
「心残りがあるとするなら一つ、最後を看とってやれなかったことだろうな......」
「パピヨンさん......」
「パピヨンさん......」
少しだけ寂しそうな笑みを浮かべると、行こう、とカズキを促してまた歩き出す。
大きい、とカズキは思った。僅かに前を歩く女性は、自分と背格好も年も然程離れてはいない。それなのに
趙雲の背中はとても大きく見えた。そうして彼女の背中を見ながら歩いていると急に止まったので
危うくぶつかりそうになる。
「どうしたんですか、パピヨンさん」
問うが趙雲は答えない。視線を辿ればこちらにゆっくりと歩いて来る大男に注がれている。
趙雲の背中はとても大きく見えた。そうして彼女の背中を見ながら歩いていると急に止まったので
危うくぶつかりそうになる。
「どうしたんですか、パピヨンさん」
問うが趙雲は答えない。視線を辿ればこちらにゆっくりと歩いて来る大男に注がれている。
前に出ようとするカズキを無言で制すると趙雲は火渡の時よりも強く警戒した。
目の前の男、いや人かどうかの判断にも自信が持てないくらいの驚異を放つアレは何者なのか、
カズキを襲っていた男が可愛く見えるほどの重圧、それとは裏腹に幽鬼のような空虚さと容貌から
発せられる違和感、どれ取っても普通でないその男に趙雲の中のあらゆるものが警報を鳴らしていた。
目の前の男、いや人かどうかの判断にも自信が持てないくらいの驚異を放つアレは何者なのか、
カズキを襲っていた男が可愛く見えるほどの重圧、それとは裏腹に幽鬼のような空虚さと容貌から
発せられる違和感、どれ取っても普通でないその男に趙雲の中のあらゆるものが警報を鳴らしていた。
(此奴、人間なのか、恐ろしいまでの危険を感じる......!)
友の死を悼む時間をぶつ切りにされてなおそれを仕方ないと思えるほどの驚異を前にして、気を張り詰めて
いると大男、ヴィクターの方からこちらに声をかけてくる。
友の死を悼む時間をぶつ切りにされてなおそれを仕方ないと思えるほどの驚異を前にして、気を張り詰めて
いると大男、ヴィクターの方からこちらに声をかけてくる。
「久しいな、武藤カズキ。まさかこのような形で再会することになるとはな」
名を呼ばれてカズキが動揺する。また自分の名前を知っている、自分の知らない人がいた、と
名を呼ばれてカズキが動揺する。また自分の名前を知っている、自分の知らない人がいた、と
「放送を聞いていただろう、ヴィクトリアは死に、津村斗貴子は俺が殺した。お前には俺を殺す
理由がある、と言えばお前はどうする」
理由がある、と言えばお前はどうする」
問いかけながら歩み寄ってくるヴィクターを見て二人は大男のイメージを訂正した。巨人といった方が正しい。
瞳に悲しみの色を浮かべた巨人が眼前まで来たとき、どちらも動けなかった。敵意こそ感じられないが
逃げ出せるものとも思えない。
瞳に悲しみの色を浮かべた巨人が眼前まで来たとき、どちらも動けなかった。敵意こそ感じられないが
逃げ出せるものとも思えない。
「どうした、お前も胸に核鉄を宿しているのならそれで俺の首を突け。それとも他の者を犠牲に
しなければならんか」
しなければならんか」
「ま、待ってくれ!あ、あんたもオレのこと知ってるのか!いや、ですか」
一応初対面の目上ということで言葉遣いを直す。ヴィクターはカズキの言葉に小さく眉を寄せる。
一応初対面の目上ということで言葉遣いを直す。ヴィクターはカズキの言葉に小さく眉を寄せる。
「何を、言っているんだ......お前は」
「さっきもオレの事を知ってる人がいた、でもオレはその人は知らない......教えてくれ!オレは一体なんなんだ!」
カズキの言葉にヴィクターの中に一つの怖れとも焦りともつかない感情が湧く。咄嗟にカズキの胸に手を当て
自分のと比べる。ない。彼と自分に共通してあるはずの物が。核鉄という偽りの心臓が。
「ッ!離れろ!」
ヴィクターの行動を見て趙雲がカズキから受け取った鈍器を首に突きつけるが彼は意にも介さない。
自分のと比べる。ない。彼と自分に共通してあるはずの物が。核鉄という偽りの心臓が。
「ッ!離れろ!」
ヴィクターの行動を見て趙雲がカズキから受け取った鈍器を首に突きつけるが彼は意にも介さない。
「あ、あの、なにを」
カズキが戸惑っていると神妙な顔をしていたヴィクターが小さく肩を震わせる。震えが大きくなりやがて
声を上げて笑い出す。滑稽で醜悪な事実に気づくといよいよもって全てが莫迦らしくなる。
カズキが戸惑っていると神妙な顔をしていたヴィクターが小さく肩を震わせる。震えが大きくなりやがて
声を上げて笑い出す。滑稽で醜悪な事実に気づくといよいよもって全てが莫迦らしくなる。
「お前は、あの武藤カズキではないのか」
その言語が二人の疑問の答えだった。
カズキに彼自身のことを教える代わりにこの島へ連れてこられるまでを含めたこれまでの経緯を聞くと
ヴィクターは納得したように頷くと一つの答えを導き出す。
ヴィクターは納得したように頷くと一つの答えを導き出す。
(恐らく異なる時間の中で「始めの」彼がここに連れてこられたのだろう)
そう思うといくつかのことに合点がいく。武藤カズキがまだ戦士でなく核鉄を宿していなければ錬金の戦士たち
との接触もない。彼が自分以外の人物を知らず、彼の周辺人物が彼を知っている。
そう思うといくつかのことに合点がいく。武藤カズキがまだ戦士でなく核鉄を宿していなければ錬金の戦士たち
との接触もない。彼が自分以外の人物を知らず、彼の周辺人物が彼を知っている。
(他のブロック分けされた人物との接触や検証ができないのでなんとも言えないが)
だか少なくとも彼が津村斗貴子の事を知らないと言うには他に有り得そうにない。そして既に自分が殺めた
彼女もまた自分のことを知っているはずなのに知らないようだった。
彼女もまた自分のことを知っているはずなのに知らないようだった。
ヴィクターは、カズキ達に錬金の戦士とホムンクルス、自分とヴィクトリアのこと、そして
自分が知っている限りのカズキのことを隠さずに話した。
自分が知っている限りのカズキのことを隠さずに話した。
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「お、オレってそんなにエラいことになるのか」
素直にヴィクターの言う事を信じるカズキに趙雲が待ったをかける。
「待ちたまえカズキ君、君はこの男の言う事を真に受けるのか。いやまあ丸きり嘘とは私も思わんが」
そう言いつつヴィクターをちらと見る。言ってることはほとんど分らなかったがこの男が人食いであることだけは
分かった。ある意味いらぬ告白だった。
「信じろとは言わん、だが俺の言えることはこれだけだ」
衝撃を受けるカズキとは対照的に沈黙するヴィクター。結局この男は何をしに来たのかと趙雲が
訝しんでいるとヴィクターはデイパックから徐ろに何かを二人に差し出す。
分かった。ある意味いらぬ告白だった。
「信じろとは言わん、だが俺の言えることはこれだけだ」
衝撃を受けるカズキとは対照的に沈黙するヴィクター。結局この男は何をしに来たのかと趙雲が
訝しんでいるとヴィクターはデイパックから徐ろに何かを二人に差し出す。
「前置きが長くなったな」
カズキが手渡されたのはボタンが一つだけついた小さなリモコンだった。
カズキが手渡されたのはボタンが一つだけついた小さなリモコンだった。
「なんですか、これ」
カズキが聞くとヴィクターは首輪の起爆装置らしくそれを自分に向かって押せと言った。
カズキが聞くとヴィクターは首輪の起爆装置らしくそれを自分に向かって押せと言った。
いきなりのことに二人はヴィクターを見る。先程から表情に変化がない。
「本当は、万一に備えて娘の為にとっておいたのだがな。丁度いいだろう」
最悪の事態に陥ったら娘を優勝させようと思っていた。そしてもしも先に娘が死んでいたらと、自分が優勝
しようと考えなかったわけではない。ただカズキの話を聞いていて死者の蘇生に見当が付いた辺りから
その気も失せてしまった。
しようと考えなかったわけではない。ただカズキの話を聞いていて死者の蘇生に見当が付いた辺りから
その気も失せてしまった。
(異なる時間の者を連れ出せるのなら、異なる時間の当人を拐ってくればいい。ホムンクルスとは別の
技術でもあるかと思えば、期待はずれだった)
技術でもあるかと思えば、期待はずれだった)
異なるいつかの娘を拐った所で自分は彼女の父にはなれないし、やはり「自分」が娘を失うことは避けられない。
そう結論付けたヴィクターはカズキと会ったことを幸いに終わりにしてしまおうと思った。
そう結論付けたヴィクターはカズキと会ったことを幸いに終わりにしてしまおうと思った。
「だ、駄目に決まってるじゃないか!そんなこと!」
案の定反対の声を上げるカズキにヴィクターは趙雲の方を見る。首を横に振ると同じように反対する。
「恐らくそうするのが私たちにとっても良いのかも知れん、だが妖怪の類であっても自殺の手助けはできん」
気の強い眼差しで睨み返してくる。
気の強い眼差しで睨み返してくる。
「しかし俺が人を喰うことは変わらない。ここで始末せねば被害が増すだけだぞ、それとも
更に犠牲者を出してからでないと押す気にならんか」
更に犠牲者を出してからでないと押す気にならんか」
ヴィクターがそういうとカズキは違うと声を張り上げた。
「オレからは何て言えばいいのか分らないし、言う資格もないかも知れない、でもそれで
あんたが死んでいいことにはならないだろう!」
「オレからは何て言えばいいのか分らないし、言う資格もないかも知れない、でもそれで
あんたが死んでいいことにはならないだろう!」
「ヴィクトリアはもういない、そして俺が人を喰うことも避けられない、それでもいいとお前は言えるのか」
否定するカズキに問い掛けるヴィクター、それに対してカズキは答えられない。
「良くない!もしアンタが襲ってきたら、オレ達は戦うしか無いかも知れない、だけど、それでもやっぱり
アンタが死んでいい理由になんかならないんだ!」
「良くない!もしアンタが襲ってきたら、オレ達は戦うしか無いかも知れない、だけど、それでもやっぱり
アンタが死んでいい理由になんかならないんだ!」
ひたと巨人を見据える少年の瞳は、強い意思を秘めていた。ヴィクターはこの目に見覚えがあった。
「諦めるなよ!もう取り戻せなくたって、それでも諦めたら、それで死んじゃ駄目なんだ、絶対!」
「武藤カズキ......」
「諦めるなよ!もう取り戻せなくたって、それでも諦めたら、それで死んじゃ駄目なんだ、絶対!」
「武藤カズキ......」
間違いなくこの少年は武藤カズキだ、そしていつかあの日の武藤カズキになる。元の世界に戻れば
成り行きは異なってもいずれ戦いの日々に足を踏み入れるだろう。そしていつかの日の自分を
救ってくれる。ヴィクターはそう思った。
成り行きは異なってもいずれ戦いの日々に足を踏み入れるだろう。そしていつかの日の自分を
救ってくれる。ヴィクターはそう思った。
不思議な気持ちだった。先程まで何も考えられない状態から少しだが持ち直している自分に気付く。
もう少しだけ生きてみようという気持ちが湧いてくる。
もう少しだけ生きてみようという気持ちが湧いてくる。
「こんなもの!」
渡された起爆装置を海へ向けて投げ捨てるとカズキはヴィクターへと向き直る。
渡された起爆装置を海へ向けて投げ捨てるとカズキはヴィクターへと向き直る。
「殺し合いなんかいけないけど、それで自殺なんてやっぱり駄目だ、その、子どもに悪いと思うし」
言われてようやくヴィクターは気付いた、そういえば彼もまだ少年だったのだ。子どもに自殺幇助をさせようと
していたことが分かり彼の良心は遅まきながら痛んだ。
言われてようやくヴィクターは気付いた、そういえば彼もまだ少年だったのだ。子どもに自殺幇助をさせようと
していたことが分かり彼の良心は遅まきながら痛んだ。
「しかし、それでこの男はどうするんだ。戦って勝てる相手じゃないんだ。今のが最後の好機だったかも分からん」
今まで成り行きを静観していた趙雲がカズキに聞くが流石に答えは出ない。そもそも出せるような問題でもない。
今まで成り行きを静観していた趙雲がカズキに聞くが流石に答えは出ない。そもそも出せるような問題でもない。
「分かった」
あれこれ思案しているとそう呟く声が聞こえた。見ればヴィクターが少しだけ疲れた笑みを浮かべている。
「もう少しだけ生きてみよう、だがそれでも駄目なら今度こそ終わりにする」
そう言うと巨人は踵を返して歩き去ろうとする。趙雲にやはり人を喰うのかと聞かれると小さく頷く。
そう言うと巨人は踵を返して歩き去ろうとする。趙雲にやはり人を喰うのかと聞かれると小さく頷く。
「まだ俺用の食料も『ここ』にあるし、それなりに我慢もできる。それに幸いに、と言ってはなんだが
これだけの死人が出た以上死体の一つや二つは直ぐ手に入るだろう」
これだけの死人が出た以上死体の一つや二つは直ぐ手に入るだろう」
デイパックを軽く叩く彼の言わんとしていることが分かると二人はなんとも言えない表情になる。
「虫のいい話だが、もし私と同じ年頃の娘の死体を見つけたら遺髪を取って葬ってやって欲しい。
余裕があればでいい、どちらも髪が長かった......から、すぐ分かると思う」
余裕があればでいい、どちらも髪が長かった......から、すぐ分かると思う」
趙雲がそう頼むとヴィクターは「ああ」とだけ返して歩み去る。その背中にカズキが声をかける。
「ヴィクター!オレは死なないから、ヴィクターも死ぬな!いや、オレがもし死んでも、お前は早まるなよ!」
「武藤カズキ!覚えておけ、俺の心臓はお前の心臓でもある。俺が先に死んだら連れていくがいい!」
辺りに誰かいるかも分らない中で大声で互いを見送る。それが済むとカズキと趙雲は目の前の塔へと
歩き出す。
辺りに誰かいるかも分らない中で大声で互いを見送る。それが済むとカズキと趙雲は目の前の塔へと
歩き出す。
塔の入り口まで来るとカズキは趙雲が自分を見ていることに気付く。何か聞く前に先に言われてしまう。
「君は人が良すぎるな、私の知人にもそういうのがいたよ」
「君は人が良すぎるな、私の知人にもそういうのがいたよ」
若干トゲのある言い方だったがカズキとしては言い返せる言葉がない。素直に誤ろうとすると人差し指を
口に当てられて言葉を遮られる。
口に当てられて言葉を遮られる。
「謝らなくていい、悪いことをした訳でもあるまい。たぶん......ただ、どう転んでも受け止めなければいかんぞ」
趙雲にそう言われるとカズキは短く、しかしはっきりと返事をする。そこで二人は会話一度終わらせた。
趙雲にそう言われるとカズキは短く、しかしはっきりと返事をする。そこで二人は会話一度終わらせた。
趙雲は思い出す。親友の姉となった人、そして自分を率いた少女のことを。
(せめて二人とも無事でいればな)
(せめて二人とも無事でいればな)
一方でヴィクターは研究所の少女の事を話し忘れていたことを思い出すが、あの二人ならおそらく大丈夫だろう
と先を急ぐことにする。彼は良くも悪くも行動に迷いが無かったがそれも今では一層そうなったようだ。
と先を急ぐことにする。彼は良くも悪くも行動に迷いが無かったがそれも今では一層そうなったようだ。
(武藤カズキ......元の世界に戻ってもまた、私と娘を救って欲しい)
少年が、再びいつかの自分たちの救いとなることを願うとヴィクターは塔を後にした。
【一日目 B-6 塔 朝】
少年が、再びいつかの自分たちの救いとなることを願うとヴィクターは塔を後にした。
【一日目 B-6 塔 朝】
【趙雲@真・恋姫†無双】
[状態]:健康
[装備]:バールのようなもの@現実 、ヘルメスドライブ@武装錬金、
パピヨンのマスク@武装錬金
[道具]:基本支給品×1、ピリ辛メンマのレトルトパック×20@現実、ランダム支給品0~1
[思考]
基本:美と正義の使者として振る舞う
1:ヘルメスドライブの扱いに慣れる
2:カズキを仲間に加える
備考※ヘルメスドライブを上手くコントロールする事が出来ません
[状態]:健康
[装備]:バールのようなもの@現実 、ヘルメスドライブ@武装錬金、
パピヨンのマスク@武装錬金
[道具]:基本支給品×1、ピリ辛メンマのレトルトパック×20@現実、ランダム支給品0~1
[思考]
基本:美と正義の使者として振る舞う
1:ヘルメスドライブの扱いに慣れる
2:カズキを仲間に加える
備考※ヘルメスドライブを上手くコントロールする事が出来ません
【武藤カズキ@武装連金】
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×1、ランダム支給品0~2(確認済み)
[思考]
基本:生き残る
1:真矢ちゃんの所に戻る。
2:友好的な参加者を探す。
3:殺し合いが起きているかどうか確かめ、起きていれば止める。
4:パピヨンさん蝶格好いい……。
[備考]
※一話にて、斗貴子を助ける為に飛び込む寸前からの参加です。
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×1、ランダム支給品0~2(確認済み)
[思考]
基本:生き残る
1:真矢ちゃんの所に戻る。
2:友好的な参加者を探す。
3:殺し合いが起きているかどうか確かめ、起きていれば止める。
4:パピヨンさん蝶格好いい……。
[備考]
※一話にて、斗貴子を助ける為に飛び込む寸前からの参加です。
【ヴィクター@武装連金】
[状態]:疲労(小)
[装備]:核鉄@武装連金
[道具]:基本支給品×1、確認済み支給品0~1(核鉄はありません)
アレクサンドリアのミートパイ×12@武装連金
[思考]
基本:もう少し生きる
1:生存優先だが殺し合いに乗った者や錬金の戦士などは排除する。
2:万一の時は武藤カズキの優勝
3:死体の確保
※ 26話、ホムンクルスになった後での参戦。既にヴィクター化していません。
※ 核鉄は本人の心臓として一体化しています
※ 食人衝動は通常のホムンクルスよりも強まっています
※ 首輪の起爆装置はB-6の海に投げ込まれました。
[状態]:疲労(小)
[装備]:核鉄@武装連金
[道具]:基本支給品×1、確認済み支給品0~1(核鉄はありません)
アレクサンドリアのミートパイ×12@武装連金
[思考]
基本:もう少し生きる
1:生存優先だが殺し合いに乗った者や錬金の戦士などは排除する。
2:万一の時は武藤カズキの優勝
3:死体の確保
※ 26話、ホムンクルスになった後での参戦。既にヴィクター化していません。
※ 核鉄は本人の心臓として一体化しています
※ 食人衝動は通常のホムンクルスよりも強まっています
※ 首輪の起爆装置はB-6の海に投げ込まれました。
067:順応 | 投下順に読む | 69シミュラークル |
時系列順に読む | ||
051:バタフライエッジ | 趙雲 | 0:[[]] |
051:バタフライエッジ | 武藤カズキ | 0:[[]] |
052:熊が火を発見する | ヴィクター | 0:[[]] |