冷静と情熱のあいだ◆vS6itX.Qts
そこはG-8、空港の近く。
月明かりに照らされ影が地に写される。
一人の少年は肉体が再生されたこと、多くの犠牲になった仲間がここにいることに驚きながらも動き出す。
この殺し合いから逃れるため、皆と共に生きるため。
月明かりに照らされ影が地に写される。
一人の少年は肉体が再生されたこと、多くの犠牲になった仲間がここにいることに驚きながらも動き出す。
この殺し合いから逃れるため、皆と共に生きるため。
「……」
少年、皆城総士は観察していた。
上半身裸、サスペンダーつきのズボン、生い茂った胸毛に腋毛、特徴的な髭。
往年のロックスターを思い起こさせる、年輪が重なった風格のある顔つき。
対象を間違いなく竜宮島にはいない、時代のねじれから生み出されたような存在と総士は断じた。
一目見たときにはまるで未確認生命体と遭遇したような、しかし喜びが込み上げることなく、フェストゥムとはまた別種の不安が彼を襲った。
ここでは便宜上、事前に暗記しておいた名簿から無作為に異邦人の名前を選び、彼の中でフレディと呼ぶことにした。
島の子供たちの中でも頭一つ抜けて聡明な総士は息を潜め、フレディの挙動を観察し、
スタンスを分析、接触の可否を判断しようとしたのだ。
上半身裸、サスペンダーつきのズボン、生い茂った胸毛に腋毛、特徴的な髭。
往年のロックスターを思い起こさせる、年輪が重なった風格のある顔つき。
対象を間違いなく竜宮島にはいない、時代のねじれから生み出されたような存在と総士は断じた。
一目見たときにはまるで未確認生命体と遭遇したような、しかし喜びが込み上げることなく、フェストゥムとはまた別種の不安が彼を襲った。
ここでは便宜上、事前に暗記しておいた名簿から無作為に異邦人の名前を選び、彼の中でフレディと呼ぶことにした。
島の子供たちの中でも頭一つ抜けて聡明な総士は息を潜め、フレディの挙動を観察し、
スタンスを分析、接触の可否を判断しようとしたのだ。
「……」
しかし判断しようにも男、フレディは動かない。
ルールブックを逆に見て、目を細めていた。
かと思えばいきなり腕立てを始めた。
総士には理解できなかった。
今から腕立てを始めても疲労するだけで、つまるところ無駄だからだ。
だがフレディはまだ腕立てを開始して1回目だというのに早くも挫折してしまった。
ルールブックを逆に見て、目を細めていた。
かと思えばいきなり腕立てを始めた。
総士には理解できなかった。
今から腕立てを始めても疲労するだけで、つまるところ無駄だからだ。
だがフレディはまだ腕立てを開始して1回目だというのに早くも挫折してしまった。
(な、なんて根気の無い奴だ……!!)
格闘家ではないかという予想を淡くも裏切られた総士は呆然とした。
地に堕ちたフレディを見て総士が意識せず小さく息を吐くと、フレディが人間の反応とは思えぬ速度で総士の方に振り向いた。
視線と視線がかち合い、互いに逸らそうとしない。いや逸らせない。
総士の中で後悔、恐怖が芽生えた。
常人ならば何らかの感情が表象する筈であろうに、フレディの瞳から感情が読み取れない。
むしろ自分こそ覗かれているような錯覚すらする。
地に堕ちたフレディを見て総士が意識せず小さく息を吐くと、フレディが人間の反応とは思えぬ速度で総士の方に振り向いた。
視線と視線がかち合い、互いに逸らそうとしない。いや逸らせない。
総士の中で後悔、恐怖が芽生えた。
常人ならば何らかの感情が表象する筈であろうに、フレディの瞳から感情が読み取れない。
むしろ自分こそ覗かれているような錯覚すらする。
先に動き出したのはフレディ、一歩一歩近づく彼の右手には月光を受け煌く『何か』。
総士は緊張しフレディの瞳から視線を離せず対策を取れないが、構うことなくフレディは近づいた。
フレディの日本人とは一線を画す、年代物のワインのような濃厚で熟された香りを嗅ぐことができるほど近くに。
総士は緊張しフレディの瞳から視線を離せず対策を取れないが、構うことなくフレディは近づいた。
フレディの日本人とは一線を画す、年代物のワインのような濃厚で熟された香りを嗅ぐことができるほど近くに。
するとフレディの左手が獲物を狩る獰猛な獣のように総士の右腕を掴んだ。
総士はその左手の強さに顔を歪めた。
痛みが混乱に陥っていた彼を覚醒させる。
総士はその左手の強さに顔を歪めた。
痛みが混乱に陥っていた彼を覚醒させる。
(こいつ……!!)
総士が考えを巡らせようとすると、次にフレディは右手に持っていた『何か』を総士の右手に握らせた。
そうすることで総士の意識が遂にフレディから逸れ、『何か』に向かった。
そうすることで総士の意識が遂にフレディから逸れ、『何か』に向かった。
トランペットである。
総士には意図が読み取れなかった。
ジークフリード・システムを制御し、時には冷徹な態度を取る彼には珍しいことに再び、混沌の渦中にあった。
フレディの意図を探ろうとすると、フレディは目を閉じ待ち望んでいる。
ジークフリード・システムを制御し、時には冷徹な態度を取る彼には珍しいことに再び、混沌の渦中にあった。
フレディの意図を探ろうとすると、フレディは目を閉じ待ち望んでいる。
「……」
総士はトランペットを一瞥し、恐る恐る口に近づけていった。
彼自身の意思か、空気に流されているのか。
いずれにせよマウスピースを口にくわえ、力強く吹いた。
彼自身の意思か、空気に流されているのか。
いずれにせよマウスピースを口にくわえ、力強く吹いた。
プ~~~~……
情けない音が出た。
といっても総士はトランペットを吹いたことが無いので責めるのは酷であるが。
バツが悪い総士がフレディのほうを再び見ると、言葉は無く、しかしトランペットを求めていた。
トランペットを渡すと、フレディは間接キスになることも躊躇わずマウスピースを口に咥え、吹いた。
といっても総士はトランペットを吹いたことが無いので責めるのは酷であるが。
バツが悪い総士がフレディのほうを再び見ると、言葉は無く、しかしトランペットを求めていた。
トランペットを渡すと、フレディは間接キスになることも躊躇わずマウスピースを口に咥え、吹いた。
プォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!!!!
「……」
「……」
「やめろ!!!!!!!」
しばしの放心の後、総士は激怒した。
【一日目 G-8 空港近く 深夜】
【フレディ@魁!!クロマティ高校】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:トランペット@現実、基本支給品、ランダム支給品×2
[思考]
基本:総士につきまとう
1:???
※総士になつきました。
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:トランペット@現実、基本支給品、ランダム支給品×2
[思考]
基本:総士につきまとう
1:???
※総士になつきました。
【皆城総士@魁!!クロマティ高校】
[状態]:激怒
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考]
基本:皆を探す、殺し合いには乗らない
1:フレディィィィ!!!!!!
[状態]:激怒
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考]
基本:皆を探す、殺し合いには乗らない
1:フレディィィィ!!!!!!
※トランペットの音がG-8周辺で響きました。
010:契約の星は流れた | 投下順に読む | 013:闇の中の少年 |
時系列順に読む | ||
000:胎動 | 皆城総士 | 039:メイドインヘブン |
フレディ |