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元気なぼくらの元気なおもちゃ

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元気なぼくらの元気なおもちゃ ◆S5tuZW5RXw



百年前、錬金戦団最強の戦士、ヴィクターはホムンクルス首領との戦いで致命傷を負った。
組織は彼を治療するため、超パワーを生み出す黒い核鉄を心臓代わりに移植した。

だが、それにはエネルギードレイン体質という、予期せぬ副作用があったのだ。
彼はまるで呼吸をするように、周囲の生命からエナジーを吸収してしまう。
その結果、一瞬で多くの同胞が命を落とす羽目になった。
ヴィクターは誰かを傷つけることを恐れ、人里離れた僻地へ逃げ込んだ。

だが、組織はヴィクターの抹殺を決定、そのために彼の娘をホムンクルスに改造さえした。
この忌まわしい戦いは彼の休眠と共に中断、百年後、その復活と共に再開された。
だが、武藤カズキと戦団長の勇気ある行動によって、双方に和解が訪れたのだった。


それなのに、錬金の戦士たちは過ちを三度繰り返すのか。


「贓物をぶちまけろっ!」

女子高生の引き締まった腕から放たれる穿鋼の突き、それに伴う十字の刃。
大男は槍を片手で掴み、相手の身体ごと5mほど放り投げる。
小柄な肉体は錆びかかった鉄柵に突き刺さる。
青と白のセーラー服は千切れ、左肩は紅に染まる。

「今の俺はただのホムンクルスだ。このまま静かに立ち去れば、無意味に命を奪うつもりは無い」

2メートル越えの巨漢が小ぶりの少女に向かって言い放つ。
その身体は褐色ではなく肌色、髪の色も茶で蛍火のように輝いてはいない。
彼は白い核鉄によって一度人間に戻り、エネルギードレイン体質は失われているのだ。
その後、ホムンクルスになったのも、月で娘のヴィクトリアと静かに暮らすためだった。
それも二人を人間に戻す技術の開発を待つためだ。

彼は自分達が人間と相容れない存在であるのは知っている。誰かと積極的に手を組めるとは期待してない。
だが、せめて放っておいてはくれないのか。この非常時に対立を選ぶのは正気の沙汰ではない。

「馬鹿を言え。ホムンクルスだからこそ、始末するのだ。この場で仕留めなければ犠牲者が増える」

錬金の少女は杭から身体を引き抜いて叫んだ。
その瞳には激しい憎悪、容赦ない軽蔑、そして戦士の強い決意。


ああ、いつの間にか、慣ってしまった光景、何度ぶつけられたか分からない感情だ。
だが、一度は希望を味わってしまった身には一層堪える。
落胆と失望で体中が焼き尽くされてしまいそうだ。

津村斗貴子、お前は武藤カズキの理解者ではなかったのか。
あの少年が黒い核鉄を使ってエナルギードレイン体質となり、錬金戦団に命を狙われた時、
お前は彼に寄り添い、守ろうとしたのではないか。
それは戦団のでっち上げた、美談に過ぎなかったのか。


彼女はこちらと一定の距離を保ちながら、公園の林を駆け抜ける。
その僅かな時間で肩の傷口は塞がれていた。

「超再生能力のある武装錬金か。ならば、それ以上の攻撃で核鉄ごと破壊するまで。武装錬金!」

ヴィクターは心臓に手を当てて核鉄を取り出し、斧型の武装連金に変換する。
人を守るという口実でホムンクルスを殺害する気なら、こちらも娘に害なす者を皆殺しにする。
殺し合いに乗った者、人外に無差別の憎悪を抱く者、そして忌むべき錬金術に携わる者、
そして言うまでもなく、この殺人遊戯を開催した連中もだ。






男の血管に灼熱の激昂が駆け巡り、憎しみの焔が絶望の業火とまぐわって渾然一体となる。

「まさか、お前はカズキと同じなのか?」

少女は口を閉じるのを忘れたまま、二歩、三歩と後ずさりする。
ヴィクターは彼女の言葉に違和感を覚える。この光景は以前にも披露した筈だ。
それに彼女の武装錬金は槍ではなく、脚に装着する何枚もの刃だった気がする。

その時、男は後方から迫る物体を感知する。唸る鈍い機械音。

「近寄るな、普通の人間に勝てる相手ではない!」

斗貴子が吼える。振り返ると、ジャケットを羽織った女性が二輪車でこちらに近づいてくる。
これは確かバイクという乗り物だったか。見たところ、武装連金ではなさそうだ。
ホムンクルスの肉体に傷ひとつ付けられないだろう。

だが、女からは殺意も恐怖も勿論好意も、いかなる意思も読み取れない。
相手に感情が存在しないわけではない。奇妙な形容をすれば「色が見えない」のだ。
戦士の直感は慢心を封じ込める。この地に連れて来られてから、身体の調子が悪い。
何かしらの手段で力の枷を嵌められている。武装連金以外でも傷を負うかもしれない。

「余所見をするな、キサマの相手はこの私だっ!」

少女は樫の木を三角蹴りし飛翔。急降下する。
狙いは胸の章印か。いや違う、首輪だ。衝撃を与え、爆発させるつもりだ。

ヴィクターは彼女の攻撃を跳ね返さんと、斧を構える。
ただ、それは一瞬だけ、バイクの女に対して無防備になることを意味する。

タイヤの金切り声、ドリフトで方向転換した合図。
刹那、男の視界は注意に値する攻撃を捉える。
身長の2倍はある鉄柱が大鷲よりも早く飛んできた。




フルスロットルでバイクは走る。敗走した二人を乗せて。
斗貴子は二輪車のライダー、アルファルドの背に声をかける。

「部外者の君を巻き込んでしまってすまなかった」
「それはこちらの台詞だ。私が加勢しなければ、お前はそのまま撤退できただろう」
「いや、君に落ち度は無い。ホムンクルスがあれほどの実力者とは誰も予想できん。
 ……あの化物は下手をすると戦士長どころではないな」



確かに、アルファルド自身、渾身の一撃があのような形で無効化されるとは思わなかった。
デイバッグに入ったものは出し切る瞬間まで、少しの力で動かすことができる。
勿論、一定の速度以上で取り出すためには、本来の重さに近い力が必要になる。でないと、お手軽投擲器になってしまう。
だが、抜け道は存在する。それは慣性の法則、入れ物そのものを加速させることだ。
例えば、時速200kmの電車に乗ってボールを投げれば、電車の外の人間にとっては、200km以上の剛速球になる。
これが長さ4m、重量5tの鉄柱の高速射出の種明かしだ。

だが、怪異を使いこなすのは敵も同じだった。
男が斧をかざすと、重力法則を無視して、空へ空へと上がっていった。

アルファルドには、他に武器として有用な支給品は存在しない。
最悪でも、この牽制で僅かな時間を稼ぎ、少女を連れて撤退するつもりだったのだ。


そして、鉄柱はセーラー服の少女と共に大地に叩きつけられる。
アルファルドは立ち上がった彼女に武器を求める。そして、中国風の太刀を受け取る。
この怪物に近接武器は相性が悪すぎる。だが、自作のスリングショットが通用する相手とも思えない。

そこから先はまるで悪夢のような光景だった。今はまだ、回想する気さえ起こらない。
彼こそが超人、人間という枠組みを遥かに超えた力を持つ存在。
人は戦場で怪物を目の当たりにした時、ただ、無力に絶望するしかない。

されど、孤独なる蛇、アルファルドの心は原初の衝動に囚われず、ただ嗤っていた。
なぜなら、あの怪物はそれだけの力がありながら、瞳に絶望を宿していたからだ。
彼の魂は死んでいる、いや、死に掛けている。最後の光に縋り辛うじて生き長らえている。
それを男は守り抜けるのか、僅かながら、興味が沸いた。



彼女は怪物が追ってこないことを確認し、裏路地でエンジンを止める。
斗貴子はバイクから降りて、青く茂った花見月に背を預ける。
アルファルドはサドルに腰掛けたまま口を開いた。

「お前はホムンクルスから市民を守るのが仕事だそうだな。
 だったら、私が生き残るために、その怪物の情報を教えてもらいたい」

斗貴子は厳しい顔で、早口気味に語り始める。
彼女の説明には武装錬金、核鉄、錬金戦団と言った聞き慣れない単語が並ぶ。
アルファルドは他分野に渡って情報網を持ち、禁忌のテクノロジーにも精通している。
それにも関わらず、まったく聞いたことの無い内容ばかり、というのは奇異に感じた。
まるで、パラレルワールドの物語のようであり、実際そうなのかもしれない。

斗貴子の話を掻い摘んで要約すると、あの男の正体はホムンクルスと呼ばれる人造生命体らしい。
彼らは人食いを本能としており、時に友好的な振りをして寝首を掻いてくる油断ならない存在とか。

――見ての通り、彼女のように、皆さん八十人の中には殺人を厭わない者も多く含まれます。

忌避するどころか、種としてのサガだったという訳か。会場にいたピンク髪の少女も同類なのだろう。
殺し合いというよりも怪物の餌付けショー、厄介な余興に付き合わされたものだ。
無事帰還したら、ホムンクルス技術を兵器に転用して、一儲けできなければ勘定が合わない。

では、ホムンクルスを判別する方法は無いのか。
彼らには身体の何処かに章印と呼ばれる印があり、弱点でもあるそうだ。
それは人間型なら左胸に限定され、人にも姿を変える動物型では主に頭部に集中している。
だが、例外もある上、ただの人間にもホムンクルスの信奉者がいるらしい。


「それでは相手を丸裸にした上で、尋問でもしなくてはならないな」

アルファルドは皮相気味に笑う。錬金の戦士は首を左右に振る。

「いや、部外者にはなるべく負担をかけたくない。
 それに猜疑心の嵐が吹き荒れれば、協力し合うのも難しくなる」

女はバイクから降りて、お手上げのポーズを取りながら言う。

「だったら、具体的にどう対処しろと言うんだい。
 いったん人食い事件が発生すれば、魔女狩りは誰にも止められなくなるぞ」
「そうさせないために、錬金の戦士がいる。
 彼らと情報交換して、それとなく怪しい参加者をマークする。これが地味ながら最善の方法だ」

斗貴子によれば、確実にシロと言い切れる人間は、後輩である武藤カズキと中村剛太、


直接の面識はないものの、戦士長の一人である火渡赤馬。彼は強硬派らしい。
他には学友の早坂姉弟も恐らくは善良な一般人だろうとのこと。尤も、殺し合いに乗るかは別問題だが。

「ただ、武藤カズキには探査能力を期待しないでやってくれ。
 彼は馬鹿でお人よ――いや、戦士としては不適格なのだ」
「彼は平和ボケしたどうしようもない役立たず、ということか」
「そういうわけではない。カズキは強い。信頼のおける男だ。
 ただ、彼は戦いの世界に入るべき人間ではなかった、それなのに――」

彼女はこれまでにない表情を見せる。やけに歯にものの詰まった言い方だ。
アルファルドは掌を前に出し、

「ストップだ。もしも、私が例のホムンクルスと共謀していたらどうするつもりだ」

斗貴子は咳き込む。アルファルドはあまり気にしない様子で、

「安心しろ、ただのジョークだ。私もあの戦いで何度も死の憂い目を見ている。
 彼の信奉者だったら、もっとマシな演技をしてくれと頼んでいるさ」

バイクを指差しながら言った。新品同様だったものがスクラップ寸前まで損傷している。
修理しなければ、これ以上走るのは不可能だろう。

「いや、それは分かっている。だが、私はもう、笑えるような状況ではない」
「モルヒネか何かが調達できればよかったのだがな。辛いなら、この場で楽にしてやろうか」

アルファルドは相手の脇腹を真剣に見つめながら言った。
制服の切れ目から、内臓まで食い込んだ裂傷が覗いている。
これは斗貴子が自分を庇った時にできた傷だ。

再生効果のある激戦はあのホムンクルスに一閃されてしまった。
これは制限による核鉄の弱体化を差し引いても、ホムンクルスの攻撃力の高さを物語っている。
ただ、怪物が大技で消耗した隙を突き、ここまで逃げ切れたのは不幸中の幸いと言える。

少女は彼女の問いには答えずに語りかける。

「君の性格が良いかは少々疑わしいが、理性的で現実主義者なのは違いない。
 この場で殺しあうこと……の愚かさは分かっている、はず……」
「ああ、怪物が跳梁跋扈する舞台で80人中1人まで生き残れる可能性は低いだろう。
 それに私はチンケな魔法の杖で叶えられるような願いには興味が無いし、意味も無い」

アルファルドは少女の目を見ながら、質問に答えた。

「それから、戦えない……無力な民間人を、危険から遠ざけて欲しい。
 同行させなくとも、安全な場所に避難させておけば、足手纏い、にはならないだろう」
「おいおい、信用が無いな。半死半生のお前をここまで運んだのは私だぞ。可能な限り善処はする」

斗貴子は安堵の息を漏らす。一応、アルファルドを信じてくれているらしい。
いや、藁だろうが縋らなければやっていけないと言うべきか。もう命も長くはあるまい。
満身創痍の少女は歯を食いしばり弱々しい声で、

「カズキに伝えて欲しい……」

武藤カズキ、それから中村剛太への遺言をやっとのことで搾り出した。
そして、濁った血を垂れ流して動かなくなった。よくぞここまで気力がもったものだ。


――私が突撃しなければ、そのまま撤退できただろう。

アルファルドにとっても、ホムンクルスの強さは想定外だった。
だが、彼女の戦略は不確定要素を加味し、どう転んでも目的の道筋を切り開くというもの。


その過程で何人犠牲が出ようと知ったことではない。

彼女はボイスレコーダのスイッチをオフにする。
実はバイクを止めてから少女が死ぬまでの会話を、全て録音していたのだ。

あの時、斗貴子に加勢したのは人脈を構築するため。ただし、相手の生死は問わない。
実際、この記録音声は錬金戦団との交渉で活用できるだろう。
彼女との会話で猫を被らなかったのは、会場にアルファルドの知り合いがいるため。
この状況で偽名を使っても、長期的には信用を失うだけだ。
どうせ名簿の名前も彼女本来のものではないのだから。

それに加えて、子飼いのリャンチーが暴走して、自分の評判を下げてくれるのは想像に難くない。
ならば、冷酷でも全体の利益を考えるリアリスト、ということにしておいたほうが都合が良い。

「私に関する推測は、半分は当たっている、だが、半分は外れだ」

斗貴子のデイバッグを拾い上げながら言った。
本当は彼女の首輪も欲しいところだ。だが、死体の損壊は、戦場で兵士が敵に行う性癖とされている。
戦団に悪印象をもたれないようにするため、避けることにした。またいつか手に入るだろう。
当面は優勝を狙うつもりは無い。最優先課題は主催との戦闘を避けた脱出だ。
定期放送や施設などの傾向から、敵の目的や思考を分析し、交渉の場に引き摺り下ろす。

だが、この行動指針は組織全体としての目的。
犯罪組織『蛇』の首謀者、民間軍事会社『ダイダラ社』の筆頭株主としての計画でしかない。
これと並立し、両立する形で、彼女個人として欲望が存在する。存在してしまった。

それはカナンに絶望を与えること。
あの女にとっての守るべき光、大沢マリアを追い詰め、その力を極限まで覚醒させる。
その上でカナンと決着をつけ、『ともだち』を失わせ、深い絶望の中で殺害する。
その時、私は彼女を超越し、過去の亡霊、シャムの呪縛から解放されるだろう。

ああ、この地は絶望の舞台として何と相応しいことか。





【津村斗貴子@武装連金 死亡】

【残り61人】


【一日目 C-7 森林 深夜】

【ヴィクター@武装連金】
[状態]:疲労(小)
[装備]:核鉄@武装連金
[道具]:基本支給品×1、確認済み支給品1~3(核鉄はありません)
[思考]
基本:絶望した!
1:ヴィクトリアの保護、および彼女に危害をなす可能性のある存在の抹殺
2:武藤カズキへの興味
※ 26話、ホムンクルスになった後での参戦。既にヴィクター化していません。
※ 核鉄は本人の心臓として一体化しています
※ 食人衝動の大きさは次話以降にお任せします

※ 激戦@武装連金は破壊されました


【一日目 C-6 裏路地 深夜】

【アルファルド@CANAAN】
[状態]:軽傷、疲労(小)
[装備]:青龍偃月刀@真†恋姫無双
[道具]:基本支給品×2、大型バイク『MTS1200S』@現実、ボイスレコーダー@DARKER THAN BLACK、
    自作のスリング、確認済み支給品0~2、デイバッグ×2
[思考]
基本:主催者と交渉に持ち込み、脱出する。他者の犠牲も厭わない
1:カナンに絶望を与える。
2:錬金の戦士との接触。
3:ヴィクターの末路への興味。
※ バイクは修理しないとあまり走れません
※ ボイスレコーダーには津村斗貴子との会話が録音されています。







009:ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ 投下順に読む 011:契約の星は流れた
時系列順に読む
000:胎動 ヴィクター 038:絶望と、希望と
アルファルド 035:混浴~ふれあい~
津村斗貴子 死亡

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