21世紀深夜アニメバトルロワイアル@ウィキ

闇の中の少年

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闇の中の少年 ◆RwUmY1K.wU


真壁一騎は竜宮島にすむ14歳の少年だ。
少しぼんやりしているところがあるものの、父子家庭という境遇にもめげずそれなりに正直に育ってきた。
決して人付き合いが得意なタイプではないが、幼い頃からの友人もいて孤独を感じることはさほどなかった。

彼の日常は、フェストゥムの襲来によって幕を閉じた。
人型兵器ファフナーに乗って戦うことを宿命付けられ、親友である皆城総士とともに島を守るために一騎は戦っていた。

そんな中、一騎は仲間を失った。
島を守るために命を落とした羽佐間翔子と、翔子を守れなかった怒りを一騎らにぶつけ同化されていった春日井甲洋、この二人を。
甲洋は正確に言えば生きてはいる。だが、死んでいないだけだ。
現時点では目を覚ます可能性は限りなく低い。
ファフナーに乗り、敗北した者の末路だ。
だが、本当に一騎を打ちのめしたのはそれではなかった。


――――ファフナーと俺たち……お前にとって、どっちが大切なんだ?

――――ファフナーだ


親友は、皆城総士はそう言った。
ずっと一緒に生きてきた仲間ではなく、戦うための機械であるファフナーの方が大事だと。
そのとき、一騎の中で何かが切れた。

疑いながらも目を背けてきた、この世界の本当の姿。
島を守ることが何よりも、仲間の命よりも優先するという総士の言葉。

何が彼をそこまで変えたのか。
楽園の外では一体何が起こっているのか。
それを知るために、一騎は島を出たのだった。



だが、一騎が今いる場所はファフナーの操縦席ではなかった。
アルヴィスでの上官である狩谷と竜宮島を出て本土に向かう途中、目についた廃墟で野営をしていたはずだった。
といってもいつフェストゥムが出るかわからない世界だ。ファフナーの中で眠りについたはず、それなのに。

「殺し合い……だって? 何なんだよ、これ……」



一騎がいる場所は、見覚えのない病院の前だ。
四人の人間が殺されたときは夢でも見ているのかと思っていた。
一瞬で景色が切り替わり、暗い夜道へと放り出されたのは数十分前。
一騎はとりあえず屋内に入ろうと目についた建造物に寄ってきていた。

自負しているわけではないが、一騎の運動能力は島内でもおそらく最高レベルだろう。
走る・跳ぶ・打つ・投げる・泳ぐ、およそ体を動かすあらゆる分野において一騎はオリンピックを狙える逸材である。
ここに来るまで十分以上も全速力で走り続けてきたのに少しも息切れしていない。
病院の中に入り、外から見えないように奥の個室に入り、鍵を閉めて明かりをつけた。
とりあえず外界と隔離されたことでようやく一騎は人心地ついた。

「っと、そうだ。名簿があるとか言ってたな」


ソファに座り、一騎はデイバッグの中を改めた。
取り出したのは名簿など記載されたルールブック、食料、水、コンパスなど数日サバイバル生活をする最低限の装備と、

「……何だこれ。け、剣?」

どう考えてもバッグの中には納まらないであろう長さの、立派な拵えの剣が一騎の手によって引き出された。
ファフナーの装備する剣とは違う。
どこかの美術館に飾られているのが自然であると思わせる、華美な装飾。
作り物かと思うにはずっしりと重く、刃に指を這わせてみると薄く血が滲む。
包丁やカッターナイフなどとは一線を画する、人を切るための本物の剣だ。

ごくりと唾を鳴らして一騎は剣をバッグに戻そうとした。
だがふと思いとどまる。

「もし、誰かに襲われたら……戦わなくちゃ、いけないんだよな」

ファフナーに乗ってフェストゥムと戦うのとは訳が違う。
人と人との殺し合いなのだ。
人の命を奪い合う戦いなのだ。

一騎は剣を戻す手を止めた。しかしそれを剣を抜く覚悟ができたわけではない。
今はいつでも最適な助言をくれる総士はいない。自分の身は自分で守らなければならない。
だからと自分に言い訳をして、一騎は刀をそばに置いた。


次にルールブックをぺらぺらと確認していく。
放送、禁止エリア……基本的な事項を確認し終え、名簿を開いたとき、一騎の手が止まった。

「……羽佐間翔子? それに……春日井甲洋だって?」

名簿には知っている名前が固めて記載されていた。

 真壁一騎
 皆城総士
 遠見真矢
 羽佐間翔子
 カノン・メンフィス
 春日井甲洋
 近藤剣司
 小楯衛
 要咲良

この内自分を除けば7人、一騎の知り合いがいる。
カノンという名前は知らない。島にそんな名前の人はいなかった。
だが今一騎の頭を占めているのはそのカノン何某でも島に残っているはずの総士や剣司、咲良のことでもない。

羽佐間翔子、春日井甲洋

文字にしてたった十文字。
この二つの文字列が、激しく一騎を動揺させていた。

「甲洋、回復したのか? それにしてもまだ動ける状態じゃないはず……い、いやそうじゃない! なんで、なんで……!」

震える指でなぞる。
羽佐間翔子、の文字を。
いなくなったはずの友達――ファフナー・マークゼクスごと竜宮島の空に散った、儚い少女の名を。

「なんで翔子の名前が載ってるんだ……?」

あのとき戦えたのは一騎だけだった。
そして一騎は間に合わなかった。
翔子は無理を押してファフナーに乗り込み、島を襲ったフェストゥムを引き連れフェンリルを起動――自爆し果てたはずなのだ。

島の墓地には翔子の墓がある。
だがその下には彼女の痕跡は何一つ埋まっていない。
ファフナーが消滅するほどの規模の爆発だったのだ。
遺体が残るはずもない。


ルールブックを取り落とした。
拍子でページがめくれる。
ふと視線を落とした先に、一騎は瞠目した。

「死者の蘇生?」

優勝したものに与えられる報酬には、死者の蘇生を含むと書かれていた。
皆城総士なら鼻で笑っただろう。死人が生き返るはずがない、と。
彼が今この場にいれば、一騎と同じかそれ以上に取り乱していたか――否。
何せ総士は翔子が逝った瞬間、クロッシングで意識を繋いでいた。
つまり誰よりも確実に翔子の死亡を知っているのが総士だ。
彼ならば間違いなくその「羽佐間翔子」は偽者であると断定しただろう。

だが、ここにいるのは真壁一騎だ。
論理よりも感情を優先する、まだ幼い子供なのだ。

「あいつらが羽佐間を生き返らせたっていうのか?」

だから、信じてしまう。
羽佐間翔子がここにいる。
手の届く場所で生きているのだと。

「……!」

荷物を乱雑にデイバッグに詰め直し、刀を握り締めて一騎は立ち上がった。

翔子が生きているのなら、今度こそ守ってみせる。
そうだ、総士も探さないと。
俺は戦うことしかできないけど、あいつならきっとこの島から逃げる方法だって考え付くはずだ。
遠見、剣司、咲良、衛。お前らもこんなところで死んじゃ駄目なんだ!
甲洋、元気になったのかな。でもあいつは翔子を探すために無茶するかもしれない。早く見つけないと。
みんなを生きて島に帰らせるんだ。それが、俺の……

「……誰だ!?」

一騎は個室を飛び出した。
100メートルを10秒で駆け抜け、暗いエントランスから外に出ようとした一騎の前に影が伸びていた。
扉を守る門番――あるいは囚人を見張る看守のように。
そいつは、病院の中に押し入った獲物を逃さないために、ここで待ち伏せしていたのだ。


一騎はマグライトをその影に向けた。
外からの光でシルエットだけ見えていたそいつの姿が一瞬明らかになる。
そいつは、何かを振りかぶっていた。

ギャリリリリリリリリリリリリッ!

小型バイクの排気音に等しい獰猛なエンジンの唸り。

空気を裂いて自分の顔へと迫ってくるその塊に圧倒的な脅威を感じ、一騎は即座に横転した。
転がって、しかし相手は追ってくると感じた一騎はそのまま片手を地面につく。
バク転の要領で身軽に体を跳躍させ、足に触った物体――おそらく受付待ちのソファだろう――を思い切り蹴っ飛ばす。
反動でさらに一騎の体は大きく跳び、襲撃者との距離を離した。

ドッドッドッドッド……。
腹に響く重たげな音は続いている。
ちらりと見えた形状の影とその作動音から、それが何か予想がついていた。
そう、それはチェーンソー。
鎖状の刃をモーターないしはエンジンで高速駆動させることによりすさまじい切断力を発揮する自動鋸だ。
樹木伐採用の物だとは知りつつ、一騎は竜宮島で目にしたことがない。
どこかにはあったのだろうが子供の手には危険すぎるし、扱いには資格もいる。
ときおり見るテレビや新聞などで存在は知っていたというだけだ。

当然それは人に向けるべきものではない。
それほどの殺意を持って一騎を殺そうとしている人物がいる。
今度は慎重に、ライトをそいつの顔に向けた。

「……え?」

そこにいたのは。
一騎に向けてチェーンソーを構えているのは。

「甲洋、……なのか?」

紛れもなく一騎の友。
戦いの末に同化され隔離されたはずの、春日井甲洋だった。

本当に回復していた……?

自分の正体が露見したというのに、甲洋は何の感情も浮かべずチェーンソーのパワーを上げた。
唸りを増す鋸に一騎は我に帰る。


「こ、甲洋! 俺だ、真壁一騎だ!」

叫ぶ一騎。
だが甲洋はむっつりと押し黙ったまま、チェーンソーで切りかかってきた。
慌てて身をかわす一騎。
ソファが切り裂かれ、詰まっていた綿がばらばらに引き裂かれて宙を舞う。
そこに一騎は本気の殺意を見た。
一騎自身がファフナーに乗っているときフェストゥムに抱くような、怒りとも憎しみともつかない激しい感情のうねりを。

「甲洋っ!」
「一騎、ここには翔子がいる」

淡々と、ぞっとするくらい冷たい声で甲洋が口を開いた。
聞いたことのないその声に一騎は戸惑うが、何か理由があるのだろうと必死に言葉を紡ぐ。

「そ、そうだ! どういうことかわからないけど、翔子が生きているんだ!だから……」
「だから、俺はお前を殺す」

それでお終いだといわんばかりに甲洋は切りかかってきた。
剣を抜いて応戦しようかとも考えたが、チェーンソー相手にこんな棒切れ一本で勝てるとは思えなかった。
何より、甲洋は仲間だ。
仲間に剣を向けることなど、一騎にはできなかった。
しかし甲洋は一騎に一片の慈悲さえ見せず苛烈な攻撃を繰り返す。

一騎と甲洋では基礎的な運動能力がまさに桁違いなので、一騎はなんとか避け続けることができていた。
だが、いつしか全身にびっしょりと汗をかいていた。
体を動かしたことによる発熱ではない。
本気の殺意をぶつけられたゆえの恐怖。それをしているのが友達だというこの状況。
優しかった面影はどこにもなく、冷徹な殺人者の顔で一騎の前にいる甲洋。
その現実をどうしても受け入れられず、一騎の精神は確実に疲弊していた。

「甲洋、どうして……?」
「言っただろう、一騎。翔子のためなんだ」
「俺を殺すことがどうして翔子のためになるんだ!?」

チェーンソーの音がうるさくても、甲洋の声はやけにはっきりと一騎に届く。
それは決意の表れだ。
迷い流されて戦うことを選んだ一騎と違い、甲洋は今この瞬間はっきりと自分の行為を認識し、肯定し、受け入れている。
一騎を殺すこと、それを純然たる自らの意志で実行していた。

「理由はどうだっていい。翔子が生きてるなら、俺は翔子を守るだけだ」
「守る? じゃあ俺と同じじゃないか!協力して証拠を探そう!」
「違う」

一騎の必死の説得を、甲洋はばっさりと切り捨てる。


                               ・ ・
ルールを読んでないのか、一騎。生き残れるのは一人だけだ」
「ひと……り?」
「そうだ。お前は翔子を探すといったが……総士や他のやつらも探すんだろ?」
「あ……ああ。総士ならこの島から脱出するための考えを持ってるかもしれない。剣司たちだっている」
「それでみんなが集まって……それからどうする? どうせ最後には殺し合わなくちゃいけないんだぞ」
「そ……そんなことはない! 殺し合わなくたってなんとかなるはずだ! 翔子だって今度こそ守れる! きっと総士が何とかしてくれる……」





「嘘だッッッッッ!!!」



咆哮。
若虎のごとき甲洋の叫び。

「そうやって、お前らはそうやって、また翔子を使い捨てて最後には見殺しにするんだろう! 翔子が死んだときのように……お前達だけが助かるために!」
「こ、甲洋……」
「俺はお前らを信じない。もう誰も信じない。俺がこの手で翔子を守るんだ! 他のやつらを皆殺しにしてでも翔子を生き残らせるんだ!」

冷静の仮面をかなぐり捨て、烈火の形相で甲洋は怒鳴る。

「ち、違う! 俺と総士は翔子を見殺しにしたわけじゃない!」
「結果的にそうなっただろう! 島のやつらは翔子のおかげで生き延びられたって言うのに誰一人感謝もしない!
あまつさえ翔子の墓を汚した! ファフナーの方が大事だと言っ 総士もだ! そんなやつらが翔子を守るだと? ふざけるのもいい加減にしろっ!」

まなじりは釣りあがり、血が上った顔は真っ赤に染まっている。
今まで見たことのない甲洋の怒りに晒され、一騎は慄いていた。


「……俺は翔子以外の全ての人間を殺す。最後には俺も死ぬ。それで……翔子が優勝だ。翔子は生きられるんだ……」
「…………こ」
「だから、一騎」

恐怖に竦み動けない一騎に、甲洋が一歩二歩と静かに歩み寄ってくる。
手の届く距離。
甲洋がチェーンソーを振り上げる。





「翔子のために、死んでくれ」




振り下ろし――今、一騎の視界が銀色の刃で埋め尽くされた。





「ちょっと待ったァァァァァアアアアアアァァァァアアアアア―――――ッッッ!!!!」




      ・ ・ ・ ・ ・
銀色の、ガラスの刃で。



エントランスのガラス戸を突き破り。
病院内に「出現」してきたのは。

「この勝負、リベリオン合衆国第8航空軍第357戦闘飛行群第363戦闘……飛行隊、中尉……はぁ、はぁ。ごめん、ちょっと待って……」

息継ぎせずに言ったため途中でむせた。
バッグからペットボトルを取り出す。
キャップを捻り、腰に手を当てて豪快に水をのどへと流し込む。

「――プハァッ!……よし、えっとどこまで言ったっけ?ああそうだ、まあとにかく中尉の!」


指を突きつけ、決めポーズ。ビシッ!




突然現れた軍服の女は、胸を揺らしつつそう言った。
ただし下半身は目にもまぶしい脚線美を惜しげもなく晒す、いわゆるローレグの下着一枚だけだった。


「えっ、と……?」
「いかんよ君たち! こんな状況で混乱するのは分かるけど、人間同士で殺し合いなんてやっちゃいけない!」
「……何なんだ、あんたは」

お姉さんぶって言う痴○としか思えない格好の女。
一騎は呆然と、甲洋は苛立ったようにシャーロット、以下シャーリーへと声をかける。
一騎を襲おうとしたチェーンソーはシャーリーに弾かれていた。
艶めかしい脚の先、こちらもチェーンソーに負けず劣らずの回転音を発する小型のリング――チャクラムによって。


「事情はわかんないけどさあ、そういうのは止めときなよ。見たとこ私より年下みたいだけど、やるならこう、素手での殴り合いとかにしときなさい」
「関係ないくせに、邪魔をするな!」
「へ?……わわっ!」

のんきにシュシュッと宙にパンチを繰り出しているシャーリーへ、甲洋はチェーンソーを叩きつける。
だが、たしかに殺したと甲洋が思った瞬間、シャーリーの姿はふっと雷のように消えた。


「なにっ!?」
「ふわぁ、危ない危ない。いくらウィッチでもそんなの当たったら間違いなく死ぬって」

甲洋は振り返る。
10メートルほど離れた場所で、一騎の肩に手を掛けてシャーリーが立っていた。

「すごい、なんて速さだ!」
「そ、これがあたしの魔法なわけよ。ストライカーユニットじゃないから全速ってわけにはいかないけどね」

シャーリーの回避を見ていた一騎には分かった。
チェーンソーが当たる瞬間、シャーリーの足首に装着されたチャクラムが高速回転し、またシャーリー自身の体も発光したことが。
次の瞬間シャーリーは音速もかくやという速度でチェーンソーを回避、一騎の背後にまで回ってきたのだ。
甲洋を迂回するルートで地面に傷跡が残っている。
チャクラムが移動した跡が。

「これがあたしの武装錬金・モーターギア・スカイウォーカーモード! へへっ、すごいだろー!」
「この……馬鹿にするな!」
「おっと、怖い怖い。君、とりあえず逃げるよ!」

激高した甲洋を茶化しつつ、シャーリーは一騎の頭をしっかりと抱え込んだ。胸に。
一騎は双丘に半ば埋まる形になる。

「わ……!?」
「しっかり掴まってなよ!」

気合一声、再びシャーリーの体が発光した。

「待てぇっ!」
「甲よ――――――――!」

吹き上がる衝撃波が散ったガラスを舞い散らし、甲洋の足を止める。
躊躇したその一瞬。
シャーリーと一騎の姿は一瞬にして消失した。

後にはただ呆然とする甲洋だけが残された。





【一日目 C-4 病院 深夜】

【春日井甲洋@蒼穹のファフナー】
[状態]健康
[装備]チェーンソー@現実
[道具]基本支給品×1、不明支給品0~1
[思考]
基本:羽佐間翔子を優勝させる
1:真壁一騎、皆城総士を殺す
2:出会った人間に翔子のことを聞いて、情報を得た後に殺す
3:竜宮島の他の仲間は……


「あ、あの……」
「シャーリーでいいよ。仲間はみんなそう呼ぶ」
「シャーリー……さん。ありがとうございます、助けてくれて」


いまだシャーリーに抱き締められたまま(腰に掴まろうと思ったがほぼ何も履いてない下の方が危険だと一騎は判断した)、一騎は礼を言った。
病院を飛び出して今、シャーリーと一騎は二階建ての家よりやや高い位置を飛行している。
なんでもそれが彼女に支給された道具、そして彼女自身の能力なのだとか。

「俺、真壁一騎です」
「マカベカズキ……ああ、扶桑の子か。宮藤と同じだな」
「宮藤?」
「私の仲間さ。まあ、その辺は落ち着いたら話すよ。もうちょっと我慢してくれ」

一騎には良く分からないが、空気抵抗や風の影響などウィッチには関係ないらしい。
だからこうして高速で空を飛んでいても声が届くし、風で目を閉じることもない。

「派手にやってたからね。用心してもうちょっと距離を取ろう」
「は、はい……」

あくまで冷静にシャーリーは言う。
さほど自分と歳が離れているようには見えないのに……と一騎は思ったが、同世代の女生徒にはないこの弾力……いや凶器ですらあるかもしれない。
とにかくこの状況、彼女の胸にぎゅっと締め付けられている状況から早く逃れたいと一騎は願った。
あまり恋愛に興味のない一騎とてさすがに恥ずかしかったのだが、シャーリーは気にした風もない。
喋って口を動かすと余計に柔らかな感触が伝わるため、ひたすらに一騎は縮こまる。

(駄目だ、俺……もっと別のことを考えろ!そう、総士とか甲洋のこととか……!)

とたん、甲洋が自分を殺そうとしたことを思い出し一騎の血の気は一気に引いた。
シャーリーが安全そうな場所を見つけて降下するまで、彼はしばらくその状態のまま苦しむことになる。






そして胸の中で赤くなったり青くなったりする一騎を見て、シャーリーは


(とりあえず助けたけど、この子は危ないって感じはしないなー……でももう一人の方は警戒しとこう)

(このモーターギアは使えるって分かった。私の魔法と相性もいい)


(でもなんだ、やけに疲れるな……ストライカーじゃないからか?)


(とにかく……ルッキーニ、宮藤、みんな。すぐに見つけてやるから、死ぬんじゃないぞ!)


そんなことを、つれづれに思っていた。





【一日目 D-5 温泉 深夜】

【シャーロット・E・イェーガー@ストライクウィッチーズ
[状態]健康
[装備]核鉄「モーターギア・アナザータイプ」@武装錬金
[道具]基本支給品×1、不明支給品0~1
[思考]
基本:501航空団の仲間と合流して脱出する
1:ひとまず安全なところへ
2:ルッキーニと芳佳が心配
3:甲洋には注意する



【真壁一騎@蒼穹のファフナー】
[状態]疲労(小)
[装備]宝剣・靖王伝家@真・恋姫†無双
[道具]基本支給品×1、不明支給品0~1
[思考]
基本:竜宮島の仲間を島に帰す
1:総士、翔子を守る
2:竜宮島の仲間を探す
3:甲洋を説得したい


012:冷静と情熱のあいだ 投下順に読む 014:Phantom Beats...
時系列順に読む
000:胎動 シャーロット・E・イェーガー 035:混浴~ふれあい~
真壁一騎
春日井甲洋 028:フォークト=カンプフ検査法

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