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とある路地裏の小夜曲(セレナーデ)

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とある路地裏の小夜曲(セレナーデ)◆x/rO98BbgY


ピンクのツインテールが宙に揺れる。
突然、闇の中から伸びてきた掌が、一人おっかなびっくり夜道を歩いていた留奈の口を塞いだ。

「んうぅー!?」

いきなりの事に目を見開く暇すら与えられず、流れるような手捌きで首元に押し当てられる冷たい金属の感触。
金属。ナイフ。頸をかっ切られる。
瞬間的にそう連想したが、押し当てられた金属から、少女はわずかな逡巡を感じる。そして――

「んーーーっ!!」

次の瞬間、首筋ではなく、少女の着ていた制服を、ナイフは一気に切り裂いた。
ポリエステルの生地を裂く、軽やかな音が耳朶に響く。
容易く縊れそうな細い喉を仰け反らせて、少女は拘束から逃れようとするが口元を抑える腕は小揺るぎもしない。

(や、だァッ!)

この瞬間、命ではなく、少女としての貞操の危機を感じて――留奈の脳髄が白熱する。
薄手のスリップの上を、無骨な男の指が這いずり、ミニスカートの裾野から無遠慮に手を突っ込まれる。
怖気を振るうような嫌悪感に、強く歯を噛み締め――
次の瞬間、留奈はあっけなく解放された。

「えっ?」

逃れようとしていた力の反動で、僅かにたたらを踏んだ留奈が振り向くと、そこには外国人らしき金髪の男が立っていた。
その手には、留奈が服の下や、太腿のガンホルダーに隠していた武器がある。
交渉も何もなく、いきなり支給品を奪われた。
その事実に恐怖を覚えたが……収奪した武器を懐に仕舞った男の様子から、とりあえず自分を殺すつもりはなさそうだと判断して
留奈は制服の裂け目を手で抑える。

「ちょ、ちょっとっ! アンタ、私様(ワタクシさま)にいきなりなんて事すんのよっ!
 こう見えてもアイドルLUNARって言ったら一杯ファンがいて――って、聞いてんのっ!?」

男――。いや、まだ少年と言ってもいいかもしれない金髪の外国人は、まるで留奈の言葉が聞こえないかのようにそこを立ち去ろうとしている。
日本語が通じないのかも。
そう思い、留奈は一瞬不安を覚える。
あんな父親を持つとは言え――留奈は英語を(も)不得意としている。

「五月蠅いな。せっかく見逃してやったんだ。殺されたくなければ……とっとと僕の前からいなくなれよ」
「なっ……」

だが、そんな心配をしたのが馬鹿らしくなるほど、流暢な悪態を留奈は聞く事となる。

「死体は人を呼び寄せるって言うからね。別に優勝するつもりもないし――ここは見逃してあげるよ。
 もっとも、武器もないんじゃ、どれほど生きられるか判らないけどね」

まるで人の命など、どうなってもいいかのように少年は語る。
その表情は、まるで願いなど持たぬ人形のようで――留奈は少し背筋が寒くなる。だが。

「だったら……アンタが私様を守りなさいよっ!」
「……はぁ?」

あくまでも強気に、高飛車に留奈は決め付ける。
こんな所で死んでなどいられない。
この男に優勝する気がないと言うのなら、狙いは脱出か何かだろう。
脱出なら、自分にも少しは目処がある。


何せ、浚われた参加者たちは留奈が知るだけでも、
瀬戸内魚類連合の跡取り娘、瀬戸燦と、その構成員たち。
関東水中生物連合会の跡取り娘、江戸前留奈。
三河財閥の御曹司、三河海。
そして警視総監の娘である銭形巡という錚々たる面子なのだ。

下僕(満潮永澄)まで連れて来られているのは、きっと自分たちの付属物と看做されたからなのだろうが――
正直言ってどれだけの組織であろうと、これだけの勢力に敵対して、ただでは済むはずもない。
           ・・
きっと、一日もたたずにあの父親が迎えに来るだろう。
だが、それまでに死んでしまっては意味がない。
そこで留奈は、この裏社会特有の雰囲気を持つ男に、乾坤一擲の交渉を持ちかける。
武器は『くれてやった』んだから、その代償として自分を守れと。

「……やれやれ、ずうずうしいな。これだから女の子は苦手なんだ……」
「なによそれー。いーい? しっかり私様を守りなさいよね。傷一つでもつけたら承知しないんだから。
 私様は江戸前留奈。アンタ、名前はなんていうの?」
「……ピノッキオ」

名前だけは名乗ったが、護衛の件については否とも応とも答えずに歩く少年に、留奈は勝手に付いていく。
その足取りは、恐れを知らぬようでいながら、少し震えている。
しかし、それでも今はこの少年を利用するしか、他に手はないのだ。

(武器は全部取りあげたって思ってるんでしょうけど……甘いわ。人魚の武器は、歌なんだから)

実は人魚である留奈には、人魚古代歌詞(にんぎょエンシェントリリック)『戦いの詩』という切り札がある。
如何にこの男が戦いを拒絶しようが、この歌さえあれば自分の為に強制的に戦わせる事が出来るのだ。
留奈は手元に残った唯一の支給品――武器ではないからと、見逃して貰えたらしいマイクを握り締めて決意する。
絶対、下僕たちと一緒に生きて帰るのだと。


【一日目 F-5 道路 深夜】

【江戸前留奈@瀬戸の花嫁】
[状態]:健康
[装備]:拡声器(マイク)@真・恋姫†無双
[道具]:基本支給品×1
[思考]
基本:生きて帰る
1:下僕たちと合流する

【ピノッキオ@GUNSLINGER GIRL】
[状態]:健康
[装備]:ゆりっぺのナイフ@Angel Beats!、コルト ガバメント(7/7)Phantom ~Requiem for the Phantom~
[道具]:基本支給品×1、ランダム支給品0~3 、コルトガバメントの弾倉×4
[思考]
基本:おじさんの元に帰る
1:生きてここから脱出する。



江戸前留奈。
彼女は知らなかった。
自分の持つ、何の変哲もなさそうなマイクが、自分の歌に魅了された人間になんでも言う事を聞かせられるというマジックアイテムである事を。
そしてそれを使えば使うだけ、この戦いの黒幕である于吉の持つ、太平要術の書に邪悪な力を与えるという事を。


023:doll 投下順に読む 025:DEAD OR ALIVE !?
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000:胎動 江戸前留奈 039:メイドインヘブン
ピノッキオ

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