「ふわぁぁドロシーちゃんはー花畑に来てるれす。さっきまでぐっすりしたのれす。おかげでイメージわいたなの。だから、えっとえっと配信なの?多分取ってくれてるはずなの。だからはじめるのれす。」
それだけ言うとドロシーは花畑に真ん中にイーゼルを起き、キャンバスを立てかけると、かばんからパステルを取り出した。
「今日はドロシーちゃんパステルさんのきぶんなのれす。だからパステル画なのれす。今日書くのは夢のいつもの世界なの。パンタソスさんのお導きれす。夢に出てきたのれす」
それだけ言うとカメラはもう気にせずに、キャンバスに直接パステルを描き出す。パンタソス、幻想や夢を司る巫女のドロシーにとっては当たり前でいつも見ている世界。
けれど突発的に頼まれたカメラマンの私にとっては、初めて見る世界がキャンバスに広がっている。他の人間にも見えるように、カメラが邪魔にならない程度に見やすくなる位置へと動く。けれどカメラを通して覗きながら、確実に私は描かれた幻想世界の虜になっていた。
それから、数時間後。
描かれたその絵は、この世界ではありえない空の色と雲。虹色の飛跡を残しながら飛び立つ七色の鳥。薄ピンクに銀色の光り輝くユニコーン。どこからか落ちてきた流れ星。そのどれもが喧嘩をしていない。美しい光景だった。それでいて、何故か「本当にありそう」と想わせる力が在る。そんな絵だった。
そして、作品を描き終えたドロシーは視聴者へと別れを告げる。
「今日の絵はこんなかんじなのれす!ドロシーちゃんの今日見た風景、すっごいきれいだったので絵を通してみんなにも見てもらえたのが嬉しいのれす。また今度なの!」
この挨拶に合わせて私もカメラを切り、今日の突発的配信を終えるのであった。