◯月◯日の午前7時。
私は、ヨーロッパにて壊滅した『モノリス』拠点より入手した研究資料に目を通していた。
「理論はわかる、理論はわかるけれど……とても看過できないわね」
オクタヴィア・サルバドーリなる人物が残したとされる研究は、前に閲覧した他の違法組織の開発する眉唾ものの信仰集めの薬とは別の意味で嫌悪感を覚えるものだった。
人間の信仰の量や、記憶に上限があるという序章の理論におかしなところはない。そういった主張を発言している表の巫女研究所の研究員もいるのだから。けれど、問題はその後の本題だった。
惚れ薬を元にした薬品を用いて、その人物が元々有していた信仰も記憶も人間性をも塗り替え全ての思考を決まった一神の信仰に傾倒させる。つまりは全ての人間を信仰を貢ぐだけの人形へと変貌させる具体的な計画が記されていた。
理論は理解できる。確かに実行に移せば信仰を多く手に入れることができるだろう。けれどそれは超えてはならない一線を踏み越えて得たもので、人が人であることを失くすも同然であり到底許されるはずがない。
それからも胸糞が悪くなるような数々の資料に憤りを抱きながら読み進め、押収できた最後の一枚に目を通し終えた頃には午後の三時となっていた。