辺り一面の砂漠。
空は青みがかった黒、地平線近くは砂が舞い上がり、薄茶色に見える。
空は青みがかった黒、地平線近くは砂が舞い上がり、薄茶色に見える。
「ここはどこだ?」
2億年後の地球にセケルは立っていた。
辺りを飛び回って調べるが、クレーター、谷、砂漠、極地の氷冠。そこは火星を思わせるかのような荒れた大地だった。
人類は滅びたのか、それとも宇宙に飛び立ったのかわからないが、生命が存在しない。
冥界も座も何もない。
神もない。
「なに も」
神もない。
「なに も」
「あ」
セケルの体に異変が起きた。
信仰を失いその体を維持できくなっていた。
徐々に化け物に姿を変える。
信仰を失いその体を維持できくなっていた。
徐々に化け物に姿を変える。
「がぎゃあ」
知能を失い、心を失い。
次第にそれはドラゴンになる。
次第にそれはドラゴンになる。
星が滅びるまで孤独に世界を彷徨い続けることになるだろう。
この終わった世界で
「ん」
ヒエロはゆっくりと目を開ける。
その目には覗き込むアザリー、テレサ、レイナが映る。
その目には覗き込むアザリー、テレサ、レイナが映る。
「何よ、元気そうじゃない。」
軽口を叩くヒエロを見て、テレサは瞬時に全てを悟る。
「…おかえり、ヒエロ」
外ではオリュンポスのメンバーが5人のセケルの巫女を完全に無力化していた。
その上で、権能が完全になくなっているのを確認する。
その上で、権能が完全になくなっているのを確認する。
アザリーはセケルの呪いが解けおそらく普通の人間の巫女に戻っていた。
ニキアスのそばでキュテリラがガッツポーズをしている。大事には至らなかったらしい。よかった。
ニキアスのそばでキュテリラがガッツポーズをしている。大事には至らなかったらしい。よかった。
ヒエロは皆に肩を借り、立ち上がる。
「終わったよ、全部ね」
やさしくほほえんだ。
大きく広がる穴から
夜明けの光が差し込んでいた。
夜明けの光が差し込んでいた。
数日後
ギリシャの首都アテネの郊外にある国際空港でヒエロはアザリーを見送りに来ていた。
ギリシャの首都アテネの郊外にある国際空港でヒエロはアザリーを見送りに来ていた。
なんでもギリシャからの指名手配は続いていて、逃れるついでにアフリカに渡るのだとかなんとか。
パスポートなどの手続きはレイナがすべて手配してくれたらしい。
パスポートなどの手続きはレイナがすべて手配してくれたらしい。
「えぇ!?あんたも行くの!?
聞いてないんですけど!?」
聞いてないんですけど!?」
テレサが一回り大きいスーツケースを持って来ていた。
「よく考えたんだがな、ヒエロ。
アザリーを1人にしちゃあ可哀想だ。私が守ってやらないと。」
アザリーを1人にしちゃあ可哀想だ。私が守ってやらないと。」
過保護だ!とヒエロは思った。
でも、1人じゃ心配なのは確かにそう。
でも、1人じゃ心配なのは確かにそう。
「まぁ、私は年内には帰ってくるよ」
「ねぇ、ヒエロも来る?
トート様もエジプトを取り戻したがってるんじゃない?」
トート様もエジプトを取り戻したがってるんじゃない?」
アザリーがウキウキした声でヒエロを誘う。
が、ヒエロは手を横に振る。
が、ヒエロは手を横に振る。
「あたしゃパス。2000年前に滅びた国を今更取り戻そうとは思わないね。」
あと、入院してるリーダーの見舞いもたまには行きたいし。
「でも」
ヒエロはアザリーに手を差し出す。
「助けを呼んでくれたら。
いつ、どこにいたってあたしが駆けつけるから」
いつ、どこにいたってあたしが駆けつけるから」
アザリーはうなづき、ヒエロとかたい握手を結んだ。
空港の中に入っていくアザリーとテレサを見送ると、頭上から声がする。
空港の中に入っていくアザリーとテレサを見送ると、頭上から声がする。
「1人になったでちな」
頭が重い。気がつくと赤子の姿のトート神がヒエロの頭の上に乗っていた。
「邪魔よ、ん?なんで赤子?」
「邪魔よ、ん?なんで赤子?」
「信仰が足りないでち。」
トートの信仰は冥界にいる魂達のものが大半だった。それが消えた今、トートは自分の姿を維持できなくなっていた。
「まぁ、現実はそんなに甘くないか。
…ちょっと!?あんた消えかかってるわよ!?」
…ちょっと!?あんた消えかかってるわよ!?」
「あ、やばいでち。なるでち。
どらごんになるでち。」
どらごんになるでち。」
「うえぇ!?我慢して!?もうちょっとだけ我慢して!!」
ヒエロは大急ぎで街に向かって駆け出した。
その口元にふっと笑みを浮かべる。
その口元にふっと笑みを浮かべる。
1人になってもやる事は変わらないな
と思った
と思った
今日も誰かのためにライブをしよう
いつもの場所で
おまけ 切なげな秋の白昼夢
ある秋の日、ギリシャの地元グループ
wild mummysのヒエロは夢を見た。
wild mummysのヒエロは夢を見た。
それは見知らぬ少女との慌ただしくも充実した日々の思い出の夢。
でも、その黒髪褐色の少女はメンバーにはいないし、会った事もない。
だけどなぜだか気になった。
だけどなぜだか気になった。
周囲を探すも痕跡はない。
ドラゴンに記憶を奪われても、写真や存在した証は残るものなのだが、一切ない。
ドラゴンに記憶を奪われても、写真や存在した証は残るものなのだが、一切ない。
トートに聞いても
「wild mummysのメンバーはヒエロとテレサの2人だけじゃろ」
と答えた。
「wild mummysのメンバーはヒエロとテレサの2人だけじゃろ」
と答えた。
じゃあ気のせいかな?
遠くでテレサとリーダーが呼んでいる。
あぁ、そうだ。
今日はライブの日だ。
あぁ、そうだ。
今日はライブの日だ。
ニキアスが嫌味ったらしく喋り出した。
「目標は500人だからな。そんな調子じゃ今日中に解散かもなぁ?」
「余裕よ。よ、ゆ、う。」
その日ライブは500人以上の大盛況を収め、何事もなく無事に終わりを迎えた。
ニキアスは感動して男泣きをしていた。
ヒエロは夢であった出来事が、
なぜだか思い出せなかった。
なぜだか思い出せなかった。
でも、そういうものだと思った。
そんな、過ぎゆく時の中の
とある1日
とある1日
どこかにあったかもしれない
世界線のおはなし
世界線のおはなし
ーおわりー