前回までのあらすじ
全ての黒幕であるセケルは、アザリーを利用して、全てのギリシャの民を滅ぼそうとする。
それを阻止しようとするが、レイナ•ブラックローズは巨人に踏み潰され、ニキアスがヒエロに刺された。
残るはテレサとアザリーのみ。
その頃ヒエロは、冥界で歌って踊っていた。
全ての黒幕であるセケルは、アザリーを利用して、全てのギリシャの民を滅ぼそうとする。
それを阻止しようとするが、レイナ•ブラックローズは巨人に踏み潰され、ニキアスがヒエロに刺された。
残るはテレサとアザリーのみ。
その頃ヒエロは、冥界で歌って踊っていた。
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象の牙の形のような形をした大剣は、ニキアスの右肩を貫いていた。セケルが刺した剣をその体から抜くと、鮮やかな血しぶきが舞った。
「リーダァ!!」
テレサが叫びニキアスの元に駆け寄る。
致命的な部分は避けていたが、その体から赤い液体が流れている。
「…なん…てこと…ね…よ」
うわ言のように呟く。
致命的な部分は避けていたが、その体から赤い液体が流れている。
「…なん…てこと…ね…よ」
うわ言のように呟く。
セケルはテレサも刺そうかと迷ったが、次の手札にするために後回しにした。
「このまま放っておけば死ぬぞ?」
呆然と立ち尽くしていたアザリーに、優しく声をかける。
テレサがバッと振り返り、ヒエロの肉体に向かって必死に呼びかける。
呆然と立ち尽くしていたアザリーに、優しく声をかける。
テレサがバッと振り返り、ヒエロの肉体に向かって必死に呼びかける。
「おいヒエロ!!
いつまでそんな奴に体を貸しているつもりだ!!早く戻ってこい!!」
いつまでそんな奴に体を貸しているつもりだ!!早く戻ってこい!!」
テレサは赤の巨人が迫ってきているのを察知し、仕方なく離れる。
セケルはそれを完全に無視して。
「さぁどうする?」
セケルはそれを完全に無視して。
「さぁどうする?」
今すぐこの者の魂を死後の国に誘えば、まだ間に合うぞ?とジェスチャーする。
アザリーは恐怖を覚えた。
彼女自身は実験によって感情を失ったかと思っていたが、実際は心の奥底に封じ込めていただけにすぎない。
彼女自身は実験によって感情を失ったかと思っていたが、実際は心の奥底に封じ込めていただけにすぎない。
その様子を見てとったセケルは、ボコボコと変形し、自分の姿を変える。
「心」をどうすれば揺さぶれるかを、彼は熟知していた。
「心」をどうすれば揺さぶれるかを、彼は熟知していた。
褐色の肌。美しく、荘厳な顔立ち。
白いローブを身につけて、アザリーに手を差し伸べる。
白いローブを身につけて、アザリーに手を差し伸べる。
「あ…あ…」
アザリーの「最も会いたい」人がそこにいた。
先代トートの巫女、シファ。
とたんに彼女の思考が止まる。
先代トートの巫女、シファ。
とたんに彼女の思考が止まる。
「さぁ、私と一緒に」
みんなで永遠の世界を生きよう。
みんなで永遠の世界を生きよう。
心が弱っていた彼女は抗えなかった。
たとえ、それが幻だとわかっていたとしても。
シファの背後に、先程奥にチラッと見えた魔法陣が浮かび上がっていた。
たとえ、それが幻だとわかっていたとしても。
シファの背後に、先程奥にチラッと見えた魔法陣が浮かび上がっていた。
「ずっと会いたかった」
シファに手を伸ばす。
アザリーの周りで、黄金の光が輝く。
シファに手を伸ばす。
アザリーの周りで、黄金の光が輝く。
だがその光は
アザリーの体から発せられたものではなく。
彼女の首元にかけられていた、ネックレスの宝石から発せらていた。
アザリーの体から発せられたものではなく。
彼女の首元にかけられていた、ネックレスの宝石から発せらていた。
2000年前、シファがアザリーに手渡したお守りだった。
その宝石は、黄金の稲妻を走らせ、2人の間に激しい衝撃を起こした。
まるでセケルに拒否反応を示したかのように。
まるでセケルに拒否反応を示したかのように。
セケルの体が崩れ、のけぞり痺れた手を抑える。
「何が起きた?」
「何が起きた?」
アザリーは不思議そうに宝石を見つめる。
すると、宝石からかすかに声が聞こえてきた。
すると、宝石からかすかに声が聞こえてきた。
「やっほー!アザリー、聞こえてる?」
それはとても聞き馴染みのある声。
それはとても聞き馴染みのある声。
「ヒエロ!?」
一方、必死に赤黒い巨人の繰り出す拳を避け続けるテレサ。
その足元付近で、瀕死の重体だったレイナが、口元に「ふっ」と笑みを浮かべた。
その足元付近で、瀕死の重体だったレイナが、口元に「ふっ」と笑みを浮かべた。
"おそかったね ようやくおでましか"
瞬間。
超スピードで駆け抜ける3つの流星が、赤の巨人を貫いた。
超スピードで駆け抜ける3つの流星が、赤の巨人を貫いた。
何が起こったか理解できなかった巨人は、自分の胸元を見る。
ぽっかりと穴が空いていた。
途端に自分の体を制御できなくなり、崩れ始める。
ぽっかりと穴が空いていた。
途端に自分の体を制御できなくなり、崩れ始める。
「当機は自分の持ち場に戻らせていただきます」
流星のうちの一つが、AIのような口調で言い放ち、遠くへ飛び立つ。
流星のうちの一つが、AIのような口調で言い放ち、遠くへ飛び立つ。
ケセルは、目視でその実体を捉えた。
「テオドシア=コスモブロス…」
オリュンポスの巫女の1人だ。そうなると残りの2人もそうだろう。
オリュンポスの巫女の1人だ。そうなると残りの2人もそうだろう。
レイナはここに来るまでに、ちゃっかり救難信号をオリュンポスに送っていた。
水色のウェーブ髪の小柄な少女が、上空で腰に手を当て声をあげる。
「おい貴様らぁ!なぁにを企んでいるのか知らんが、この超ボスであるグラロス様に敵うと思うなよ!」
叫び声が洞窟に響き渡ると同時に、大地が揺れ、すきま風が甲高い音をたてる。
グラロスと名乗った少女は、王様マントをはためかせ、黄金のトライデントを勢いよく投げた。
衝撃をまとったそれは、赤い巨人に命中し、身を切り裂くほどの巨大な竜巻を引き起こした。
衝撃をまとったそれは、赤い巨人に命中し、身を切り裂くほどの巨大な竜巻を引き起こした。
巨人の体が破裂し、内部の5人の巫女がバラバラに散らばる。
「うおおお」
テレサは暴風に耐えながら、歓喜と驚愕の入り混じった表情を浮かべていた。
テレサは暴風に耐えながら、歓喜と驚愕の入り混じった表情を浮かべていた。
それと同時に、金髪で糸目の女性が、杖の先端から発生している白銀の杖で、レイナを炙っていた。
「あつ、あっつ!ちょ!キュテリラ!熱い!」
「あつ、あっつ!ちょ!キュテリラ!熱い!」
仮初の不死を与えるバフの付与だ。
「いい?レイナちゃん。もう1人で行動しちゃダメよ?
ちゃんと私達に相談して」
涙目で訴える。
ちゃんと私達に相談して」
涙目で訴える。
レイナは巫女連盟上層部の偉い人達から気に入られており、秘密裏に行動しがちだった。
そんなレイナから、説明もなしにヘルプ信号が送られてきた。
事情はよくわからないけど、急遽レイナの元に駆けつけよう。
ここに集まったのは、そんなお人好し達である。
事情はよくわからないけど、急遽レイナの元に駆けつけよう。
ここに集まったのは、そんなお人好し達である。
レイナはガバッと起き上がり、軽く柔軟する。
「キュテリラさ。医術の魔法って使えたっけ?」
「え?えぇ。ちょっとだけど」
「キュテリラさ。医術の魔法って使えたっけ?」
「え?えぇ。ちょっとだけど」
「良かった!じゃあ、あっちの方で倒れてる男を助けてやってあげてよ。
血を流してるから危ないと思う!
頼んだ!」
「え!?ち、ちょっとレイナちゃん!
無茶しないで!?」
血を流してるから危ないと思う!
頼んだ!」
「え!?ち、ちょっとレイナちゃん!
無茶しないで!?」
キュテリラが施したのは一時的な不死で、傷を治した訳ではないのだが、レイナはお構いなしに飛び出す。
駆けつけたオリュンポス、復活したレイナ、サポートに徹するテレサ。
特に、グラロスと名乗る少女は別格の強さを持っているようだ。
特に、グラロスと名乗る少女は別格の強さを持っているようだ。
セケルにとってこの状況は、最悪と呼べるもので、自分の計画の甘さを反省した。
「ともかくアザリーだ。」
5人の巫女が一斉にアザリーに向かってくる。
「しかしだね。あたしには今の状況がさっぱりわからないの」
宝石と変わり果てたヒエロがピカピカ点滅しながら喋る。
宝石と変わり果てたヒエロがピカピカ点滅しながら喋る。
「今!全員に狙われてる!」
アザリーは全力で走り抜けながら答えた。
アザリーは全力で走り抜けながら答えた。
その時、遠く離れた海から津波以上の勢いで洪水が押し寄せてきた。
5人の巫女はあっという間に飲み込まれる。
「あ」
グラロスが水でできた馬に乗ってトライデントを振りかざす。
「おい!貴様は味方なのか!?」
アザリーに並走しながらグラロスが聞いてくる。
「み、味方です」
「誰かは知らないけど、助けてくれてありがとう!」
アザリーに並走しながらグラロスが聞いてくる。
「み、味方です」
「誰かは知らないけど、助けてくれてありがとう!」
グラロスはアザリーの身につけていた宝石をムッと睨みつける。
「わたしさまの名はグラロス=イポヴリキオンなのだ!覚え」
言い終わる前に目の前にセケルが現れ、グラロスは風をまとわせ突進した。
代わりに宝石がピカピカ光る。
「いい?あたしの体は今、セケルっていう神に乗っ取られてるの」
「トート様ではないの?」
「ただの偽物よ。だから、あいつを追い出して元の体に戻る。
その為にこの宝石をあたしの首元に巻いてほしいの」
その為にこの宝石をあたしの首元に巻いてほしいの」
宝石を首元に巻いたらどうなるの?と聞こうとすると、ヒエロが続けて喋る。
「そしたら、あたしがなんとかするから」
「…わかった。」
アザリーは、ヒエロが何をしようとしてるのかは理解していなかった。
だが、咄嗟にヒエロを信じる事にした。
だが、咄嗟にヒエロを信じる事にした。
5人の黒ローブの巫女はグラロスに圧倒されていた。レイナが植物を生やして追い討ちをかけ、キュテリラがそれをサポートする。
セケルは周りを冷ややかな目で見渡し
「ここが潮時か。」
「ここが潮時か。」
このまま時間が経過すれば、さらに応援が駆けつけて来るだろう。
精鋭と呼ばれる奴らと戦っても勝機はない。
洗脳した巫女達から権能を没収し、一旦引く事にしよう。
精鋭と呼ばれる奴らと戦っても勝機はない。
洗脳した巫女達から権能を没収し、一旦引く事にしよう。
だがその前に。
「私の力はどれほど通用するのだろうな?」
試してみたくなった。
ヒエロの体がどうなろうと知ったことではない。
限界まで力を引き出してみよう。
ヒエロの体がどうなろうと知ったことではない。
限界まで力を引き出してみよう。
上空に浮かび上がり、その全身から赤黒いオーラを放ち始めた。
同時刻。2kmほど離れた場所でライフル型の対人用麻酔銃を構える者が1人。
白いバニースーツを着て、スコープ状のモノクルを覗き見ていた。
白いバニースーツを着て、スコープ状のモノクルを覗き見ていた。
そして、機械のような口調で喋る。
「ターゲットロックオン。射出します。」
得意の武器ではないが、地球上の約半分を見通せる彼女にとって、この程度の距離は朝飯前であった。
セケルの首元に、何かが当たった。
ダーツのような、針。
視界がぐらんと揺らぐ。
ダーツのような、針。
視界がぐらんと揺らぐ。
「なんだ?」
崩れ落ちる彼の背後から、アザリーが姿を現した。首元の宝石のついたネックレスを取り出す。
セケルは咄嗟にピンクの光線を放つが、テレサが身を挺して庇う。
「いけ!アザリー!」
アザリーは、テレサに助けられてばかりだなと、心の中で礼を言った。
そのまま空をきり、セケルの真上に移動し、流れるような動作で
その首筋に宝石をひっさげた。
テレサはその動きを見届けて彼女のそばに移動し、ドーム状のシールドを作り始める。
レイナが瞬時にそのドームの中に入り込み、裏面を樹木でコーティングした。
ヒエロの体はガクンと倒れ
そのまま動かなくなった。
無数の本棚が螺旋を描き、天井がドーム状に作られた空間。
ハヤブサの面をかぶり、包帯をぐるぐるまきにしたセケルがそこにいた。
ハヤブサの面をかぶり、包帯をぐるぐるまきにしたセケルがそこにいた。
「ここは時の書物庫か?」
なぜここにいる?
あの宝石は一体なんだ?
セケルは腕を組み、無表情に首を傾げる。
あの宝石は一体なんだ?
セケルは腕を組み、無表情に首を傾げる。
「あたしの体で随分好き勝手してくれたみたいだね?」
静寂を破る声がした。振り返ると、
白いセーラー服を着た、凛々しい顔の少女が立っていた。黒茶色のロングポニーテール、頭に青のリボンを付けている。
「馬鹿な」
確かに冥界に落としたはずのヒエロ•プトレマイスがそこに立っていた。
彼女はガツガツと歩を進め、近づく。
大袈裟ぎみにセケルを指刺した。
彼女はガツガツと歩を進め、近づく。
大袈裟ぎみにセケルを指刺した。
「もう一度あたしと勝負してもらうわよ。
何でもありのリベンジマッチ。」
何でもありのリベンジマッチ。」
よく通る声で話した。
目の前にいる本物の神に、宣戦布告。
目の前にいる本物の神に、宣戦布告。
「まだ懲りていないらしいな?」
セケルは失笑した。
目の前の人間に呆れ、尊敬すらした。
前の戦いで、並の人間ならトラウマになるほど痛みつけたのだが。
目の前の人間に呆れ、尊敬すらした。
前の戦いで、並の人間ならトラウマになるほど痛みつけたのだが。
恐らくエジプト人の魂に感化されたのだろう。アザリーの時もそうだった。コイツは本気で助けを求める人間に弱いのだ。
セケルは音もなく飛び上がり、ヒエロの腕を後ろから掴み上げる。前と同じように関節を捻じ曲げて。恐怖を思い出させてやろう。
「さぁ泣き喚け!」
その時。
ヒエロの体の中から、微かに魔力を感じた。
あり得ない。
確かに権能は奪ったはずなのに。
ヒエロの体の中から、微かに魔力を感じた。
あり得ない。
確かに権能は奪ったはずなのに。
そういえば、なぜヒエロはこの空間に現れた?
神が力でも貸さない限り、
生身の人間では冥界から脱出する事などできるはずがないのに。
神が力でも貸さない限り、
生身の人間では冥界から脱出する事などできるはずがないのに。
同時刻。
冥界の底。薄暗い洞窟の奥深く。
小さな赤子の頭上に、大きなホログラムでヒエロとセケルの様子が映し出されていた。
まるでライブ中継のように。
冥界の底。薄暗い洞窟の奥深く。
小さな赤子の頭上に、大きなホログラムでヒエロとセケルの様子が映し出されていた。
まるでライブ中継のように。
その映像を、彷徨えるエジプトの魂が緊張感のある眼差しで見ていた。
赤子は不思議な振り付けで踊りながら、四角い平面のホログラムをあちらこちらに出現させた。
赤子は不思議な振り付けで踊りながら、四角い平面のホログラムをあちらこちらに出現させた。
静まり返っていた冥界が一転、ざわざわとどよめき始めていた。
シファも、赤子のそばで共にヒエロを見守っている。
シファも、赤子のそばで共にヒエロを見守っている。
2000年前にシファがアザリーにお守りとして渡した宝石は、彼女の魔力を込めたものだった。
それを首にかけ、ヒエロは五大元素のうちの一つ、エーテルの力を利用して魂を肉体との狭間まで移動させた。
シファに力を与えた神は、今も冥界の中にいた。どれだけ力が衰え、弱ろうとも、彼らの事は見捨てておけなかった。
だから、共に過ごす事を選んだ。
だから、共に過ごす事を選んだ。
そして今、赤子の姿になったその神は、
冥界のそこかしこからヒエロに対する信仰を感じ取っていた。
想いは力となり、人々の信仰が星の川となって、踊る赤子を包み込む。そして、眩い光を帯びた。
冥界のそこかしこからヒエロに対する信仰を感じ取っていた。
想いは力となり、人々の信仰が星の川となって、踊る赤子を包み込む。そして、眩い光を帯びた。
「ヒエロ!!ワシの力…存分に扱え!!」
赤子は三日月の冠をかぶって、
トキやヒヒを合体させたかのような
神聖な獣に形を変えた。
トキやヒヒを合体させたかのような
神聖な獣に形を変えた。
「月輪よ、穿て」
ヒエロの脇腹付近から、回転する白の煌めく星が一斉に放たれ、セケルに向かって破砕した。
ヒエロの脇腹付近から、回転する白の煌めく星が一斉に放たれ、セケルに向かって破砕した。
セケルはバッとヒエロの腕から手を離し、旋回しながら後ろ飛び後ずさる。
腕の表面から煙が吹き出していたが、ダメージはない。
腕の表面から煙が吹き出していたが、ダメージはない。
ヒエロが指をちょいちょいとして挑発する。
「あんたがあまりにもカスだったからさ、神様の鞍替えしちゃった。」
セケルは首をゴキっと鳴らす。
あの光のつぶてを不規則に放つ魔法には見覚えがある。
あの光のつぶてを不規則に放つ魔法には見覚えがある。
トートだ。
二千年前、行方をくらませていたと思われる神が、ついに姿を現した。
二千年前、行方をくらませていたと思われる神が、ついに姿を現した。
私を滅ぼす為にヒエロに手を貸したのか
「ははははははははははははははははははははははははははは」
セケルは狂ったかのように、甲高い笑い声をあげた。
そして、ピタっと停止し。
そして、ピタっと停止し。
「決して殺しはしない」
それは通常とは真逆の意味で使われた。
その残酷さをヒエロはよく知っている。
セケルは両手を広げ、紳士的なポーズを取る。
その残酷さをヒエロはよく知っている。
セケルは両手を広げ、紳士的なポーズを取る。
「永遠の苦痛を与えよう」
悪意を帯びた声で、それまでの半生を共に過ごしたヒエロにそう言い放った。
その空間全体を、一気に緊迫感で覆い尽くされる。
その空間全体を、一気に緊迫感で覆い尽くされる。
「お前の未来永劫に、果てしない絶望があらんことを」
辺りから異様な気配がセケルに集っていた。
人差し指を突き出し、その指先から赤黒い球を形成した。
グツグツと蠢いている。
人差し指を突き出し、その指先から赤黒い球を形成した。
グツグツと蠢いている。
「"トート"の名において告ぐ」
ヒエロは意に介さず手のひらを縦に構え、詠唱を始める。
彼女の手を中心に、古代文字で描かれた魔法陣が浮かび上がる。
そして、時が一瞬止まったかのように、静まり返った。
彼女の手を中心に、古代文字で描かれた魔法陣が浮かび上がる。
そして、時が一瞬止まったかのように、静まり返った。
「ぶちかませ!」
「アシャード•ハムラ•シャッル」
「アシャード•ハムラ•シャッル」
2000年にも渡る怒りを体現したかのような黄金の炎が。
邪悪な欲望が育み続けた巨大な赤黒い光線が。
互いに押し潰そうとうねり、激しく混ざり合い、爆発した。
邪悪な欲望が育み続けた巨大な赤黒い光線が。
互いに押し潰そうとうねり、激しく混ざり合い、爆発した。
無謀なる戦いが、幕を開けた。