──────屍が累々と積み重ねられた荒野にて。
「はぁ……、はぁ……!」
ただ一人息を乱した少女が佇んでいた。
「これで、ようやく……!」
「最後の巫女」を降誕させる聖戦。
昨日までの友すら手にかけ、敵に媚を売り、晒した背中を刺す。
そのような裏切りを幾度も繰り返し、繰り返し、繰り返し──────。
繰り返し続けた結果、最終的に彼女は勝者となった。
昨日までの友すら手にかけ、敵に媚を売り、晒した背中を刺す。
そのような裏切りを幾度も繰り返し、繰り返し、繰り返し──────。
繰り返し続けた結果、最終的に彼女は勝者となった。
「がふッ……ぉ!ゴホッ……!」
口から少なくない量の血液が呼吸の度に溢れ出て、全身が痛みに苛まれている。
無茶を重ねた巫脈はズタボロで禄に巫力を練れなくなっていた。おかげで自然治癒が満足に機能しない。
骨折している箇所と流れ出た血液の量を数えるのは億劫になって辞めた。数えるための指の本数が全て揃っていないのだから。
まさに満身創痍。
無茶を重ねた巫脈はズタボロで禄に巫力を練れなくなっていた。おかげで自然治癒が満足に機能しない。
骨折している箇所と流れ出た血液の量を数えるのは億劫になって辞めた。数えるための指の本数が全て揃っていないのだから。
まさに満身創痍。
それでも最後まで残った。
ならば競い合って求めた戦利品が授けられて然るべきだ。
少女は高らかに天に向かって叫ぶ。
少女は高らかに天に向かって叫ぶ。
「さぁ!私が『最後の巫女』だ!全人類よ!私に信仰を注いで大いなる力を授けろ!」
しかし、何も起こらない。
ゴウゴウと吹く風の音だけが耳障りに鼓膜を刺激する。
ゴウゴウと吹く風の音だけが耳障りに鼓膜を刺激する。
「そんな、どうして……?」
身体が輝いたり、傷が治っていくといったわかりやすい「兆し」は無く、明確に何かが変わった気配を感じ取ることができない。
傷を負っているからだとか、疲弊しているからというわけでもなさそうだ。
ならば何故?
傷を負っているからだとか、疲弊しているからというわけでもなさそうだ。
ならば何故?
「…………………………………………」
辺りを思い出したかのように見渡してみる。
──────そして。
──────そして。
「あぁ、そうか。とっくにこの星は……」
巫女だけではない多くの者が理性の箍を外して暴れ回る狂騒が繰り広げられた。
その結果山脈、海洋、草原、森、雪原、砂漠、ジャングル、都市。
そこに住まう生物。
そして信仰を捧げ巫女に力を与える無辜の人々。
その結果山脈、海洋、草原、森、雪原、砂漠、ジャングル、都市。
そこに住まう生物。
そして信仰を捧げ巫女に力を与える無辜の人々。
「だれ……か……。……誰か」
全てを尽くを壊してしまった。
自分達の手で。
もう取り返しがつかない程に。
自分達の手で。
もう取り返しがつかない程に。
残されたのは平らに均された大地と「最後の巫女」にして唯一の人類となった傷だらけの自分。
想像していた全能に等しい力を手に入れることは叶わず、朽ち果てた世界でただ死を待つだけの存在。
想像していた全能に等しい力を手に入れることは叶わず、朽ち果てた世界でただ死を待つだけの存在。
「あは」
これまで少女の内側を支えていた何かが。
「あははっ」
決壊した。
「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっっっっ!!」
けたたましい狂笑が無の荒野に木霊する。
誰の耳にも届かず。
ただ虚しく、寂しく、侘しく。
誰の耳にも届かず。
ただ虚しく、寂しく、侘しく。
「はははははははははつ!は、はぁ……!………………………ふ、ぐ……」
嗚咽と共に片方だけ残った瞳から涙が零れ出る。しかし、滴った雫は無意味な痕跡を残すことすら許さず、落ちた側から乾いた大地に吸い込まれていく。
「う……ぅ……、何のために……私は、私達は……!」
どうして『最後の巫女』になりたかったのか。
何を救い、何を壊したかったのか。
もう何も思い出せない。思い出したくない。
はたして最後に少女の心に過った感情は如何なるものだったか。
それはたった一人、空っぽとなったこの星に取り残された彼女にしかわからないだろう。
何を救い、何を壊したかったのか。
もう何も思い出せない。思い出したくない。
はたして最後に少女の心に過った感情は如何なるものだったか。
それはたった一人、空っぽとなったこの星に取り残された彼女にしかわからないだろう。
これは既に終わった物語。
故に語るべきことなど最早これ以上無く、ただ結末を告げるのみ。
故に語るべきことなど最早これ以上無く、ただ結末を告げるのみ。
「こうしてこの世界は滅びを迎えましたとさ」。