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冷徹少女は偶像劇の夢を見るか

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冷徹少女は偶像劇の夢を見るか

そこはサッカー場だった。
それは比喩表現でもなんでもない。
実際目の前に広がっているのはサッカー場だった。

見たことがないといえば嘘になる。
いや、それどころが記憶にはかなり強く残っている。
なぜなら、そこはかつて自分がプレーした場所だからだ。
だがしかし、北沢志保は女子サッカー選手だったわけではない。
アイドルとしての仕事のひとつで、ブラジルまで行きサッカー大会に参加したのだ。

今考えれば非常にありえないと言える。
アイドルがサッカーをする、というのならまだ百歩譲ろう。
実際にアイドルがサッカーをやっているテレビ番組はたまに放映されている。
そもそもそういう仕事をするためにアイドルをしているわけで はないが仕事ならば仕方がない。
だが、そこから話がおかしくなる。
私たちはサッカーの大会に出るために、ブラジルまで行ったのである。

地球上で日本の反対側に存在されるといわれる、あのブラジルにだ。
忘れられるわけがない、あんな強烈な仕事を。
そして、その仕事の舞台になった場所を。

それがこのサッカー場なのである。
で、今どうしてそこにいるか――――はっきり言って理由はない。
単純にあの場から離れたかったから、その後行く施設の候補として選んだ場所がここだった。
ただそれだけの話でそれ以上の意味も理由も何もなかった。

「……サッカー場、ね」

別に遊園地に行ってもよかった、警察署に行ってもよかった。
だが遊園地は最初の時点 で選択肢からは外れた。
理由としては、望月杏奈がすでに遊園地に向かっている可能性を考慮したから。
彼女はしばらく見たくない、というのが感想だ。
あそこで殺してしまえば良かったと言えばそうなのだろう。
だが、自分は彼女を壊した結果殺さずに放置した。
今の自分に似ていた、ただそれだけの理由で。
やっと振り切れた自分の意思を止めるような可能性がある事はしたくなかったから。

ならば警察署に行ったほうが武器の補充なども滞りなく出来るのではないか。
しかし、現状武器に困っているわけではない。
それに警察署にある武器と言ってもせいぜい警察が使用している拳銃がせいぜいであろう。
だがそういった武器だろうと欲しがる他のアイドルが警察署まで来ていたとしよう。
そしてもし戦いにでもなったらそれは非常に面倒な事になる。
別に交戦になったとして負けることはないと言っていいだろう。
慢心ととられるかもしれないが、少なくともこの殺し合いという点においては明確に差が出る。
少しでも殺すのを迷っているのならば殺すことは容易い。

だがそれはそれ、これはこれだ。
少なくとも移動した後すぐに交戦が始まるような状況は避けたい。
その大きな理由は、第一回放送にある。
万が一交戦中に第一回放送を迎えた場合、情報戦という点において他との差が出来てしまう可能性があるのだ。

時間があったならば警察署に行きそこで遭遇者を殺し警察署を放送までの拠点にするのも悪くはなかっただろう。
しかし今は時間 がない、警察署に行った場合とサッカー場に行った場合、どちらが他の参加者と遭遇しにくいかと考えた結果サッカー場になった。


ただそれだけの安直な理由でサッカー場に来て、観戦席に座っていた。
放送までそこまで時間はない、だからそこで準備をするべき――――そう、それくらいはわかっていた。
実際放送を確実に聞き逃さないためにここに来ているのだから。
だが、このサッカー場を見て、いろいろと思うところがあったのだ。

「…………」

かつて自分が立っていたグラウンドを見る。
今は誰もいない、何もないグラウンドだが記憶だけは鮮明だ。
自分が守備を任されていたこと。
プロデューサーさんが私を抱きかかえて医務室にまで連れて行ったこと。

そして――――

『行け行け志保~♪ 頑張れ可奈~っ♪』

矢吹可奈が、自分のそばにいてくれたこと。
私がパスを出そうとした先に、必ず彼女がいてくれた。
そのパスをゴールにまで持って行ってくれていた。

「……っ」

背負い込むと言ったのに、結局このザマかと自分自身に対し毒を吐きそうになる。
いや、背負い続けるからこそこうなるのかもしれない。
彼女を忘れたら、背負い込むことにならない。
それはただ、逃げるということだ。
彼女を殺した罪から、目を背け昔に依存する。
間違いなく今の自分は、可奈の死と自分決意を冒涜している。


だがもうそこまで時間が経たずとも、放送が始まる。
そこで、嫌でも再び背負い込む事になるのだ。
だから今この瞬間だけは浸っていたかった。


アイドルとして過ごしてきた、もう戻れはしない思い出の日々に。


【一日目/昼/F-2サッカー場】


【北沢志保】
[状態]ストレスによる軽度の体調不良、焦燥
[装備]ベレッタM92(13/15)
[所持品]基本支給品一式、不明支給品0~1、9x19mmパラベラム弾入りマガジン(2)
[思考・行動]
基本:"ジョーカー"として動く
 1:とにかく、人を殺して行く
 2:嘘をついてなくちゃ――――
 3:可奈の『呪い』を背負い続ける
 4:放送を聴き終わるまでサッカー場に篭城する


※ジョーカーとして訓練を受けているため拳銃などの扱いを把握し、ある程度の経験を持っています。


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