アットウィキロゴ
人外と人間
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

人外と人間

改造人間×吸血鬼娘 いつか、道の果て 6

最終更新:

monsters

- view
管理者のみ編集可

いつか、道の果て 6 5-177様

滑稽な話だった。それはもう、声を上げて笑い出したい程に。
利用して、利用されて、そんな名分を固辞したまま傍らに居て、願ってしまったことはおそらく、鏡合わせのように同じ。
ただ、耐え切れなかったのだ。おそらくは。孤独に。ただの孤独に。
彼と彼女の違いは一つ。少女の側は何よりも、彼を傷つけることを恐れていたけれど、その結果が余計に彼を苦しめることは、意識の外に押しやって。
そして、彼は、それまでふたり過たず守り続けた境界線を、踏み越えることを選んだ。確実に、その行為が、更に傷付けることだと知っても。

思い起こすのは、ほんの少し幸せだった遠い時間のこと。兄がいて、傍らにはあの女性がいて。笑うことが出来た。今とは違うやり方で。彼も、今、触れている少女も忘れてしまったやり方で。だから―――手を離したら後悔することも、また、知っていた。いや、全ては釈明、釈明に過ぎない。

激しい所作に、癒えきらない傷口がじわりと熱を持つ。構うまい、と思った。
少女の震えが、指先からそのままに伝わる。
―――この、白い少女にならば殺されても構わない。
それもまた、半ば本心だった。倒錯した願望に、ぞくりとする。
(近付きすぎてしまった。君も、僕も)
力が平衡を失っている今ならば、尚のこと、彼女が本心から拒絶すれば、何者も彼女に触れることなど叶わない。けれど今、彼は彼女に触れられてしまう。こんなにも容易に。埋め得ない距離があった筈なのに。

(君はきっと、覚えていない)
それは、彼がまだただの人であったころ。

強化硝子の向こうに、彼女は居た。世界に産みおとされたばかりの小鹿を思わせてふらりと首を傾げる姿を見た、そのとき、彼は、自分が居るべきではない場所に足を踏み入れたのだと、知った。無垢な瞳に宿る、底なしの虚無に恐怖した。
―――そうやって、そのときは未だ名を持たない、白い少女に出遇った。
ときを経て再会した少女は、陽だまりのなかで笑っていた一向に焼けない白磁の肌も、殆ど白に近い、プラチナブロンドも、無機物じみた、異端たることを宿命づけられた琥珀の瞳も、その姿を構成する要素はそのままに、けれど花開くように。。
彼女自身の裡にあるものなど、すっかり忘れてしまったように。曇りのない笑顔で。
憎んだ。自分が既に失ってしまったものを、何も保たないはずの少女が手にしていることを、只管に憎悪した。

忘れもしない、あのとき。

組み敷いた肢体、銀糸が古いシーツの上に、冗談の続きのように広がっている。
未だ塞がりきらない疵の痛みを、ふたたび意識する。
彼女を守り、そして今、害している。勲章ではない。只の執着の報酬。
(階下の、戦闘は)
意識の端で分析する。回の襲撃は、恐らくは牽制。或いは、標的を誘きだすためのもの。構う事はないと、直感は判断を下していた。まぁ、此処の人々は異種と人との関わりで鍵となる人物のひとりを保護する為に戦っているのであって、こんな茶番を許す暇をつくるために、血を流しているのではなかったろう。けれど、
―――構うこともない。生きる時間が、彼らには必要だ。その欺瞞を、彼は笑う。
自身の悲しみに閉ざされて、そこに耽溺することを覚えてしまった眼下の少女も、覚えて滑稽。ひどく滑稽だ。
それでも、熱は生まれる。
「こんなときに……!」
「今だから、だ」
癒しもなく、救いもなく。唇を被せて、もう一度、舌で、歯列を割る。
不意打ちだった先ほどと違い、受け入れさせるのは容易ではない。
それでも受け入れられてしまうのは、他者を求める、心と肉体ある生物の性か。
「っ、ん」
ベッドが軋む、少女の肢体が、半ば以上までシーツに埋まる。触れ合った下半身の熱に息が詰まる、昂ぶる。どうしようもなく。
指先、舌、それ以上のものまでが、自分の意識から巻き取られてゆく。
「ん、ッ!」
つと、乾いた感触が胸元に触れて、直後、肌が外気に触れる。
目を薄く開けば、淀みない動作に、外衣を暴かれていた。
「―――!」
暴れる。否、少女は、暴れようとした。
経験の浅い少女を陥落させることは容易い。
後ろ髪を掻き分けてやれば、彼を押し停める上腕の力が失われ。
感じやすい耳元をなぞれば、きつく立てられた膝先が解ける。

肌蹴られた頂きに、舌先を当てる。
薄く色づいた先端の周囲をゆっくりと、ゆっくりとなぞる。
―――震える。与えた刺激の量には似つかわしくない敏感さで。
ひく、と腰が跳ねる。
「や、ぁ……な、に」
もう一度。かたかたと笑い出した膝を割るのは容易で、少女のほうはというと、彼の動きを阻もうと、脚を寄せようと試みたところでのっぴきならぬところまで侵入されている事態に気がついたようだった。
愚かにも身体を引き剥がそうとして、けれど、未知の感覚の前に挫折する。唾液で滑る指先で、更には反対の頂きを、弄る。そっと、円を描くように。
「あ。やッ………ん、ぁ、っ……!」
時折揶揄っては怒らせた、てんで質量のない性の証。
けれど、少女は、否、女は、そこで彼を感じている。
身を任せてしまおうと囁く本能の声と、理性との板挟みに、こんなにも声を上げる。
―――見下ろして、彼はひとつ息を吐く。
彼の所作に、彼女が反応を返す、それだけの応酬。
アラムは、たったそれだけの事に、箍を失って往く自らを認める。
自嘲。「……っ、あ」
押し殺した声が、またひとつ。
「こんなことをして、意味、なんて」
―――その言葉は、彼女自身が裏切っている。
「な……っ、ぅ」
弱い場所。左の耳元、喉元の、咽頭にほど近い場所、頂きの周囲、背中のある一箇所。不慣れな癖に、彼のひとつひとつの所作に可愛らしい反応が返ってくる。全ては、身体を密着させていれば筒抜けで。愛おしい、と感じる。
時折跡を残してすらいるのに、今でさえ、意識のたがをすべて外せば、貪りつくせそうなほど。
これほどの衝動が自分の中にあることが意外だった。
限界の一線、押し停め続けることすら、苦しい。
―――いっそ止めてくれないかと、心の片隅で念う。
彼を拒絶するカードなら、異種たる彼女の手元に、今はちゃんとあるのに。
「意味、か」
意味なら、ある。
「すぐにわかるよ」
言って。手を掛ける。砦。最後の。
「……!」
息を呑む様子に、怯えの気配。
(君が、止めないのなら)
この息を止めないのなら、容赦はしない。

く、と、彼の脚を阻む膝先に力が籠もる。当然のことながら効果はない。
拒絶の囁きを無視して、あるいは受け止めて、名無しの男はその場所を開いた。
体毛が無い、という事実に対しての驚きは薄い。僅かな背徳感はあったけれど。
この少女ならあるかもしれないと、そう思ってしまう。
「濡れている、か」
聞こえるように、それだけを告げた。
「―――っ!」
羞恥に滲む呼吸。
中指が、ゆっくりと潜り込む。
いたづらに苦痛を与える気は無かったけれど、思い返せば、経験の無い相手、というのは初めてかもしれない。かるく指を二本差し入れて、押し開く。少女がきりと歯を噛み締めた。わずかに強張る四肢。これでは意味がないのだろう。
(痛みには強い、君だ)
突き崩すならば、ここまでと同じように。
もう一度、唇を塞ぐ。
口腔内をざらりと舐め回すと、それだけで面白いほどに反応が返った。
先の、ただただぎこちない反応とは違う。硝子の瞳に微かな欲情の色が翳して、揺らめいて、消える。
じわりと潤む胎内。

「……アル」
きり、と胸が痛む。なつかしい呼び名。
初めて会ったとき、彼女が知るのは彼の偽名のみだった。
縮めて、アル。本名と殆ど変わらなかったのは偶然とも必然とも。
「これ以上、は」
「久しぶりにそう呼ばれたな」
そして、マリィは目を見開く。
自嘲めいた口調の裏に、寂しさと、安堵。
感じ取って一瞬、言葉を失った。
(だめ)
彼女は、気付かないふりをする。
腕がら逃れんと、足掻く。まるで意味はない。意味はないどころか、
(何、これ―――作り物のからだ、なのに)
以前、戯れに触れたことはあってもまるで実感が沸かなかったはずの場所だった。
なのに、そこが身の裡なのだと、はっきりとわかる。
異物を受け入れる、その為の身体器官。そして、耳元でぬちゃりと音がして、耳朶を生暖かい感触が撫ぜる。意識が散る、その隙に一層深く男の指が食い込んだ。
「っ」
く、と爪を立てられて、思わず声が漏れる。ぎりぎりの力加減で、繰り返し。
其処が『いい』のだと、とっくに気付いている調子で。
「ひぁ」
突き放そうと腕に力を込めても、びくともしない。次第に力も殺げるはじめて、
「っあ、や、うぁ、や、め」
耐え切れずに腰が、浮く。
直後、痛みと共に、入り込む彼の指が数を増やしたのだと理解した。
つと、意識が揺れて、白む。
(おかしくなる)
「アル」
今しがたまで少女の内壁を刳っていた彼の指先は、ぐっしょりと濡れていた。
「っ、あ」
もっとも敏感な場所を、抓る。追い込まれた身体が、跳ねた。上り詰めるには至らない。ごぼりと溢れだしたのは、指先を濡らすものと同じ。
薄氷の双眸に、理性が戻る。
「っ―――は」
「欲しい、だろう?」
「っ、っ……!」
熟れて、綻んで、弾ける、その一歩手前。
少女は理性の上では、未だ、あくまで彼を拒まんとしていた。
少なくとも、その意思だけは。マリィの掌と、彼の汗とでぐっしょりと濡れたシャツから、ゆるりと掌が落ちる。達したから、それだけではなく。
裡に押し込められた彼の指が、今度は抜き取られる苦痛に、少女が小さく喘ぐ。
「……く」
まだ、自らが己を取り繕うことはできている事を、アラムは確かめる。
余裕が削がれている。ひょっとしたら、或いは少女以上に。
強すぎる愛着と背中合わせの嗜虐心を、今の少女の姿は否応なく煽る。
助けて、と、半ば譫言めいて呟く声。
「助けて欲しい?」
入り口をなぞる。ゆるい力で、繰り返し。
「……っ」
反駁しようとするも、声にならず―――そして、マリィは漠然と、かつて仲のよかった若い娼婦の言葉を思い出していた。遠い遠い日。それは、スラムで義母と生計を立てながら、自らの無邪気な好意をほんの少し意識していた、それだけだった頃。
『あの人、上手いし、一回寝てみるのも、悪くないかもよ?』
冗談めかして告げられた、そんな言葉。
(そんなの)

そんな、事。
もう、遥か遠い。あの頃の自分も。想っていた人のことも。
今、こんなに近くにいても。
(だから、今の、これは)
これは、なに。わたしたちは、何を?
軋む軋む、意識。
……かちゃり、と小さく金具が鳴る。
(ああ、これが)
この行為が、何を意味するのかは勿論知っている。曝け出された彼の半身は視界の隅。心の用意をする時間も、彼女には寄越さないつもりらしい。
許される予感、けれど、それがそうではないこともまた、気付いていた。
張り詰めたそれが触れて、入り口を押し開く。
これは、次の、はじまりに過ぎない。

「あ」
そして、彼は哀しげな声をひとつ、聞く。
構わずこじあける。身を、肉の塊を沈める。
体液に塗れて、粘膜が擦れる。
―――まずは、最後まで。
「ぅ、あ、くッ」
組み敷いた少女が、苦痛を訴える。真っ白い喉が曝け出される。
男を知らなかったことは、明白。指で慣らしたとはいえ、受け入れることをまだ知らない秘所へ、痛むほどに張り詰めた醜い己の半身を、進める。脳漿が焼けるに等しい苦行。
「く」
それでも、ずっと望んでいたこと、その筈だった。
押し込む毎に、華奢な、少女の身体が跳ねる。
「あ……」
声にならないのか、堪えているのかは定かでない。
吐息に快感中枢を叩かれて、思わずぶちまけそうになった。
摩擦に、表皮がつよく張った。堪えて、進める。
不意に、半身が行き当たる。
あ、と、動きを止め掛けるも、その前に少女が反応した。
「あ」
―――止まるな。
「っ……や、痛ぁ、めくれて、っ、っは、かは」
強張って暴れる華奢な身体を、貫く。
「っ、ア……!」
断続的な悲鳴が途切れた。
狭く、けれどもどうしようもなく泥濘んだその場所は、びっちりと快感の中枢を包み込んでいる。不思議な感覚だった。
赤い色が僅かに滲む秘所に、半身が収まっている。
「っ」
びくりと少女の肢体が引き攣って、彼を包む肉壁が震える。
濡れた氷の双眸がぼうっと見上げてくる……と思った直後、歪む。
「……く」
そして思わず零したのは、彼のほうだった。荒い、少女の呼吸が耳につく。
熱い。どうしようもなく、熱い。
「っは、ど、して」
苦しげに囁くのは、マリィの声。
「やだ、おかしく―――っあぁ、ひぁッ」
喘ぎに呼応するように、接触は一層に深くなる。つぷ、と、湿った音の反復。
柔らかな場所と場所が擦れあう。腰を前後させる動作は何かに突き動かされるように、人形同士の営みのように。だとすれば、糸を引くのは一体、誰なのだろう。
「っ……ふぁ」
この瞬間、彼女に触れているのが自分だけであることに安堵する。
今、この少女を傷つけているのは、彼ひとり。他の誰でもない。
捻じ込まれる快感に、少女の四肢から刹那、力が抜ける。

そして、強張る。繰り返し。
(―――君を)
間違えていたのは、きっとはじめから全て。
間違えた関係と、間違えた距離。間違えた契約。
守りたいものを決断する強さが、自分にあったなら。
何かが違っていたのだろうか。

「あ、る」
少女が、彼を呼ぶ。彼女の瞳が、彼を見ている。
ああ、今も泣きそうに揺れて。
交差させて握り締めた指先に、そっと、帰る力があった。
………あぁ。
囁きかえす言葉、一つ。
しがみつくように、驚くほどに強い力で、肉茎が抱かれる。
無茶な行為の果てだというのに、少女から返されたものは、あまりにささやかで、けれど、強すぎる酒がもたらす酔いのように、甘く、暴力的だった。
戻れない場所に駆けて行く、ように。

―――炸ける。

瞬間、懐かしい光景を、目蓋の裏に見た気がした。



←・→



タグ …
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー