人外と人間

狼耳な男×人間の女「偽物狼と黒狼」 和姦

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偽物狼と黒狼 1-248様

 宿屋の一室で、リシカは身を清めていた。
 宿屋の主人に用意して貰ったタライの中でこしこしと腕を擦りながら溜息をつく。
 その腕はつるりとしていて、それが何とも言えずリシカの気を滅入らせた。
(もっと、あたしの腕に毛が生えてたら良かったのに)
 じっと目を凝らして見てみれば、うっすらと毛が生えている様な気がしないでもない。
 けれど、全体的にリシカの肌は薄い皮一枚に覆われているのみだった。
 腕も、足も、お腹も。
 どこもかしこも薄皮一枚に覆われている身体を指で確かめながら石鹸を泡立てていく。
 そうして最後に、髪の毛に触れる。
 リシカは自分の身体の中で、頭が一番好きだった。
 ここにだけは毛が生えている。
 辛うじて自分が獣だと思える場所だ。
 頭に生えた黒い毛を、大事に大事に洗っていく。
 そうして、自分の頭の横に付いている不格好な耳をそっと触る。
 つるりと丸く、毛も鱗も生えていない、ニンゲンの耳を。
 この世界に生きるヒトは皆、どこかに獣の守護を受け、獣の本性をその身に宿している。
 例えばそれは、鳥の翼だとか、魚の鱗とか、獣の尻尾といったもの。
 ヒトは、自らの身体に宿した獣の“守護”と共に生きているのだ。
 それなのに。
「何であたしには、尻尾も羽も生えてないんだろう……」
 タライの縁に腰掛け、ぽつりと呟く。
 リシカの身体には、一切の“守護”が存在しなかった。
 まれに生まれてくる、獣の守護を保たないものは“ニンゲン”と呼ばれ、奴隷以下として忌み嫌われている。
 リシカはその為に、作り物の耳と尻尾で変装をして各地を転転とすることを余儀なくされていた。
「ちゃんとした耳と尻尾があったら、お母さんもあたしのこと捨てないでくれたのかな」
 オオカミの耳を摸した付け耳に目を落としながら呟くと、背後から声がした。
「そんなの、今はもう関係ないだろ」
 怒ったようなその声にリシカが振り向くと、部屋の入り口に一人の青年が立っていた。
「レン……」
 ぱさついた黒髪から覗く三角の耳。
 暗闇でも爛爛と光る目は金色で、彼がオオカミの守護を受けている事を示していた。
「ちょっと、入ってくるならノックくらいしてよ!」
 慌ててタライの影に身を隠して抗議をするが、レンは構わずにずかずかと部屋に入ってくると、金の目を不機嫌そうに眇めて窓を見た。
「カーテンくらい引け。不用心すぎだ」
「夜だもん。暗いし大丈夫だよ」
「今夜は月が明るい。夜目の利くヤツだっているし、見られないとも限らない」
 ニンゲンだってばれたら困るだろうと言いながら、さっさとカーテンをひいた。
「また身体を洗ったのか」
 咎めるようなレンの口調にリシカは頬を膨らませる。
「だって、汗臭いし、べたついて嫌なんだもん!」
「それにしたって堪え性がない。三日前に洗ったばかりだろう」
「三日前は、ばかりって言わないの!」
 そう反論すると、レンはやれやれと肩をすくめた。
「お前が身体を洗う度、匂い付けをするのは俺なんだぞ」
「分かってるよ……レンには感謝してる」
「どうだかな」
 つっけんどんな言い方をしながらも、ぱたぱたと尻尾が揺れているのが分かった。
 尻尾が揺れているうちは本当に怒っていないから、リシカも安心して膨れっ面をしていられるのだ。
 イヌ科の守護を受けた生き物は、こういう所が正直だ。
「それで、臭い付けはするのか?」
 揺れる尻尾を見ながらこっくり頷くと、レンは旅装を解き、黒い毛並みが覆う身体でリシカを抱きしめた。

 作り物の耳と尻尾で外見は誤魔化せても、臭いまでは誤魔化せない。
 レンに会うまでは他人の着古しを着たり、香水を付けたりして“ニンゲン”であることを誤魔化していた。
 けれどもレンと共に旅をするようになってからは身体を触れあわせることでオオカミの臭いを移して貰っていた。
 最近では臭いを移す以上のこともするようになっていたが、それも含めて「臭い付け」と呼んでいる。

「んっ……」
 レンの身体からは、乾いた草の臭いがした。
 これがオオカミの臭いなのか、それともレンの臭いなのか。
 厳密な違いは分からないけれど、リシカはこの匂いが好きだった。
「羨ましいなあ、レンの匂い。あたしもこんな匂いだったら良かったのに」
 そう言って、レンの艶やかな毛並みをそっと撫でる。
「リシカも良い匂いだ」
「匂いなんかしないよ、あたし。洗ったばっかだもん」
「する。甘くて、柔らかい。朝露みたいな味だ」
 そう言って、ざらりとした舌でリシカの首筋を舐め上げた。
「っ………!」
 そのまま牙で、リシカの耳たぶを甘噛みしてゆく。
「レ、ン……」
 ふるりと、リシカの身体が震えた。
 こんなに優しくして貰うことは知らない。
 抱きしめられたり、傷もないのに舐められたり。
 こんなのは、レンに会うまで知らなかった。
 だから未だに、どんな反応を返して良いのかがよく分からない。
 リシカがレンの腕の中で戸惑っていると、レンがその細い身体をそっと押した。
 レンに押され、リシカの身体は簡単に寝台の上に沈みこむ。
 その後を追うように、レンも寝台に乗り上げた。
 安宿の寝台は作りが甘く、二人が乗っただけでぎしぎしと音を立ててしまう。
 やけに響くその音にリシカが頬を染めると、レンはにやりと笑い、囁いた。
「床でするか?」
「………いい。背中痛いもん」
「そうか」
 ぷいとそっぽを向くと、くく、と忍び笑う声が聞こえてリシカは余計に真っ赤になる。
 この行為に未だ慣れないリシカを、レンは時々からかうのだ。
リシカにとって、自分の珍妙な身体を人目に晒すのは非情に恥ずかしい。
 おまけにこの行為は結構な痛みを伴うので、自然と身体が逃げてしまう。
 けれどレンは、リシカがニンゲンだと分かった上で側にいて、オオカミの臭いを移してくれる。
 レンがどれだけ得難い存在か、ちゃんと分かっているのだ。
 だから、逃げたくない。
 今すぐ寝具の中に潜り込みたい衝動を堪えて身体の力を抜くと、レンの手がゆっくりとリシカの身体を撫でていった。
 肩から、腰。
 その動きだけでぞくりとする。
 身の内から湧き起こってくる感覚に思わず身を縮こめると、宥めるように抱きしめられた。
この熱に、もっと簡単に応えられればいいのに。
 思い通りに行かない自分の身体がもどかしくて目を閉じると、力強い大地の匂いが鼻腔をくすぐった。
「大丈夫だ」
 レンは様子を覗うように口づけを落としながら、リシカの胸にそっと手を這わせた。
「だい、じょうぶ……だよね?」
 ぬくもりを直接心臓に伝えるように優しい手の動きに身を委ねると、少しずつ胸を揉む手に熱がこもってゆくのが分かった。

「ぁ、ん……」
 レンがリシカの胸の頂を擦ると、思わずといったように甘い声が漏れた。
 その声に誘われるように、リシカの胸の間に顔を埋める。
 谷間から頂に向かって胸の裾野をぺちゃぺちゃと舐め上げていると、リシカの体温がじわりじわりと上がってゆくのが分かった。
 熱を持て余したように足を摺り合わせるリシカに目を細めて足を割ると、両の胸がレンの目の前で大きく揺れた。
 そのまま指を滑らせ敏感な部分に触れると、リシカは息を荒げ、ふるふると首を振った。
「……ゃ、ぅぅ……」
 身を固くしたリシカを怯えさせないよう、小さな豆を慎重に指の腹で擦りたてる。
 リシカの身体はどこもかしこも柔らかいので、油断すると鋭い爪で傷つけてしまうのだ。
 ウサギの守護を受けた者は痛みに弱く、快感に敏感なので色町でも売れ筋だが、リシカの柔さはそれ以上だった。
 少し力加減を間違えれば、簡単に壊してしまう。
 レンはリシカを抱く度、獣の守護を持たないというのはこういう事かと実感するのだ。
 土の色より優しく、木の幹よりも瑞々しい。不思議な色あいの肌。
 無毛の身体は男女の性差をより明確に示し、下手な媚態など必要がないほどにレンを惹きつけた。
 割れ物のように扱わなければいけない存在だったが、行為に没頭すれば我を忘れ、やりすぎてしまう。
 ケモノの守護を受けていればどうということのないような触れ合いだである。
 けれど、噛み跡だらけで立ち上がることも出来ずにそのまま寝込んでしまうことも二度や三度ではなかった。
今日こそは優しくしよう。
 レンはそう思いながらリシカの豆を優しく潰した。
「はふ、あああっ……!!」
 熱を帯びた喘ぎ声があがり、リシカの身体が大きく痙攣した。
「入れるぞ」
 欲望にかすれた声で囁くと、ひう、とリシカが息をつめたのが分かった。

 粘り気を帯びた水音は激しくなるばかりで、いっこうに止む気配がない。
 愛すると言うよりも獲物を貪るように嬲られて、リシカは頭がおかしくなりそうだった。
「ひぁ、あっ、ああぁぁ……」
 これだけされていても身体は貪欲だ。
 何度達してもその度、レンを味わい尽くそうとするように締め付けてしまう。
「リシカ……大丈夫か?」
 動きは止めずに尋ねたレンに、リシカは喘ぎ声でしか応えられなかった。
 軋むほど抱かれているというのに身体はいよいよ潤み、敏感になってゆく。
 激しく身体を揺さぶられて、もう上下の区別さえ覚束ない。
「……あ、ぁぁ、やぁっ、あっ……」
 リシカの中に埋め込まれたものはひっきりなしにリシカをかき混ぜ、狂わせていく。
「……ぁ、くっ、……は、ぅぅぅん!!」
がりりと、肩口にレンが噛み付いた。
「あああぁぁっっ!!」
 体の芯を熱い痛みが駆け抜ける。
 それすらもう、気持ちいい。
 際限のない快楽のふちに立ち、リシカは縋るようにレンの背に爪を立てた。
「……またやっちまったか」
 レンが我に返ったのは、リシカが意識を手放した後だった。
 こういう時は、夜目が利く自分の目が恨めしい。
 肩や脇腹に無数に刻まれた牙と爪の跡は、無惨と言う他ない。
 今回こそは優しくしようと思ったのに、この有り様だ。
 憤りのやり場も無いまま、血の滲むリシカの傷口から目をそらす。
 こんな時のために、荷物の中には傷薬が常備してある。
 ともすれば血の臭いにまたこみ上げてくる欲望を押さえ、レンは立ち上がった。


 辛うじて手加減ができていたのか、傷は皮膚の表面を傷つけるに止まっていた。
 だからといって罪悪感が無くなるわけでもない。
 陰鬱な表情でリシカの傷口に薬を塗りこんでいると、その痛々しい姿に哀れみのような感覚がわき起こってくる。
 まだ立つことも出来ないような、小さな子供に向ける感情だ。
「ずっとこんな気持ちでいられればいいのにな」
 こんな気持ちの時は、リシカを傷つけることもない。
 際限なく優しくしてやりたいと、偽りでなく思うのだ。
けれど、リシカと身体を擦りつけ合っていると、どうしても自分が抑えられなくなってしまうのだ。
相手を捕食したい、征服したい。血や骨まで啜り尽くしたい。
 このままでは、いつか取り返しのつかないことになってしまうのは分かっている。
 けれど、ニンゲンであるリシカを一人で放り出すこともできないのだ。
 何の守護も受けない者は、この世界を一人で生きて行くにはあまりにか弱い。
「俺は、お前を殺したくはないよ」
 願うように祈るように。
 レンは、リシカの丸い耳をそっとなぞった。





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