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ろじうらにて・3

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nightmareofmio

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ドキッ!☆神様だらけの路地裏バトル!?




静まった路地裏に、雨は細々と降り続く。
鏡は水の苦手な"ハガネール"・咬竜が濡れてしまわないように、"ひかりのかべ"で雨を避けていた。
しかし陰気な雨はやむ気配もない。
「……うごけないじゃないですかぁ」
咬竜が低く唸る。腹を空かしているらしいが、食べるようなものは見当たらない。
雨を嫌って誰も彼も出歩いていないのかもしれなかった。
咬竜の鼻先を撫でて、鏡は何度目かのため息を盛大に吐く。
「こうちゃん、だいじょうぶ?」
くぐもった唸り声にいつもの元気はなかった。
「おなかすきましたよね、かわいそうです…」
いっそ自分が出向いて行って、彼の餌を探してこようか。
それがいい。ここで待っていて、と言おうと顔をあげた時だ。

ごく近くでどおんと爆音が響く。近所にあった屋根のない廃墟が、粉々に吹き飛んだ。
尋常でない量の水流が瓦礫を飲み込んで、押し流し、ひき潰していく。
水はすぐにひいた。崩れた瓦礫の上には、うっすらと細身の影が見える。
それ、が鏡と咬竜を見る。鏡の両肩がびくんと跳ねた。
あれは。ヒトではない。ましてやただのポケモンでもありえない。
畏敬と恐怖の対象――神、だ。
両腕が半ばから鯨かなにかの鰭のようになっている。鏡は身動きしないでその姿を見ていた。
冷や汗が背中を伝うのがわかる。けれど脚は縫いとめられたように動かない。
逃げなければ。危険だ。自分だけではない。咬竜も。
しかし当の神、"カイオーガ"は鏡と咬竜をちらりと見ただけで、瓦礫の向こうに視線を戻した。
その奥から。水蒸気をまとってもう一人、異形の人間が現れた。
"カイオーガ"と"グラードン"。歴史に刻まれた神々の戦い。
それが今、鏡の目の前で繰り広げられた。ほんの一幕にすぎないが。
"グラードン"が雄叫びを上げた。
巨大な爪が"カイオーガ"を狙って振り下ろされる。"カイオーガ"はひらりとそれをかわす。
爪を地面に食い込ませた"グラードン"は"カイオーガ"の背後にあったモノを、漸く認識した。
「…じゃま、や。」
翳された彼の手から炎が噴出し、鏡と咬竜を飲み込む。それは一瞬の出来事だった。


陸は"だいもんじ"を放ち、即座に刹との戦いへ戻っていった。
よく確認はしなかったが、はがねタイプだったようだし、消し炭になっているだろう。
背を向けた。もう二人のことは記憶の片隅にもない。見えるのは青、だけだ。
瞬間、巨竜の咆哮が響き渡った。陸の背後から"ハガネール"が飛び出した。巨大な牙は冷気を帯びて、陸にい掛かる。
「……!!」
陸は頑丈な腕で牙を受け止め、竜の背後に立っている人影を認める。
「"ひかりのかべ"、てんきは"あめ"。ラッキーでした…ちょっといたいですけど」
"ドータクン"・鏡は震えていた。この神々を相手にして、勝てる自信は全くない。
それでも。やらなければやられる。それがこの世界の、掟だ。
数珠を放った。数珠の球と球を繋いで、魔方陣が描かれる。
「"トリックルーム"!」
鏡の言葉で魔方陣がかっと赤く光り、場の時間が歪む。後のものは先に、先のものは後に。
陸と刹の動きが落ち込み、鏡と咬竜は見るからに軽快になった。
咬竜が吼え、"すなあらし"を巻き起こした。じめんタイプの陸にはダメージにならない。
しかし刹には確実に効く。力量差が明らかな試合では、定量ダメージの効果は大きくなる。
まだ動き出せない二人に向けて、鏡は両手から光の球を飛ばした。
"あやしいひかり"は陸と刹の額に真っ直ぐに届き、二人に幻覚を見せる。
「いまです、にげますよこうちゃん!」
鏡は走り出そうとした。なんなら"ロックカット"を使って咬竜の素早さも上げなくては。
まともに戦っても勝てない。それならば戦うのは馬鹿のすること。
けれど、咬竜は動かなかった。咬竜は目の前の相手を少しも恐れてはいない。
「こうちゃん!」
今の咬竜を支配しているのは、ただただ空腹、それだけだった。
牙の並んだ口を大きく開け、陸へと襲い掛かる。
ところが"ハイドロポンプ"が咬竜を貫いた。刹だ。
「…邪魔をするな」
刹は"すなあらし"と"あやしいひかり"の幻覚を振り払い、水を受けて絶叫した咬竜を睨む。
耳障りだ。歯軋りをして、鰭の腕を翳した。"しおみず"が降り注ぐ。
「やめてくださいッ!」
刹と咬竜の間に、鏡が飛び込む。"ひかりのかべ"が海水の雨を弾いた。
「こうちゃんをころさな――」
言葉は最後まで続かなかった。陸の爪が、鏡の"ひかりのかべ"を叩き割っていた。
弾ききれなかった分の"しおみず"が鏡の傷を的確に嘗め、体力を奪い取る。
「ぅあ―――――――…!!」
「じゃまするやつは、ころす」
地面に転がった鏡に、無慈悲に振り下ろされる爪。
肉を叩き切り、骨まで断ち切る強烈な"きりさく"。はがねタイプといえど、訳はない。
鮮血が飛び散り、鏡はぴくりとも動かなくなった。
陸と刹の視線は、ただの肉塊に変わった鏡から、咬竜へ。
咬竜は濡れた身体を起こすと、鼻先で鏡をつつく。鏡は勿論動かない。咬竜はただ吼えた。
「…お前も」
刹が再び鰭を翳した。もう、邪魔するものは何もなくなる。
咬竜はぴたりと吼えるのをやめた。低く唸って、鎌首をもたげるように頭を引いた。
鏡のかけた"トリックルーム"はまだ切れていない。動くのは咬竜が先だ。
咬竜は再び、半ば絶叫するように吼えながら、陸と刹に飛び掛った。
明らかに今までと違う音。そこで漸く悟る。吼え声が何を意味するのか。
今までの咆哮はすべて、"いやなおと"だった。防御力を格段に下げる技だ。
防御の姿勢を取らなくては――しかし"トリックルーム"の影響下では、頭で思うほど早く動けない。
咬竜の姿が閃光に包まれ、二人の視界を塞ぐ。咬竜の吼え声は、笑いに聞こえた。
「――――!」

"だいばくはつ"は路地一つを灰に帰した。






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