願い事ひとつだけ
「こたいちよんぶいこうげきぼうぎょとくこうすばやさそのたこうもくはゆーをまーく」
「ほかのできそこないはしょぶんしろ」
「ほかのできそこないはしょぶんしろ」
頭の中でぐるぐるする、呪文のようなことば。
「きたないみみつきのくせに」
「うまれてこなけりゃよかったのに」
「うまれてこなけりゃよかったのに」
ぐるぐるして消えないことば。呪わしいことば。
見上げれば満月。腹の立つような名月、背負う人影は細身でちいさくて自分と同じ。
見上げれば満月。腹の立つような名月、背負う人影は細身でちいさくて自分と同じ。
「 、」
「きみを ぼくの ぱーとなーにしよう」
「きみを ぼくの ぱーとなーにしよう」
痛む腕を伸ばしたけれど、掴めたのは空気だけだった。
青は瓦礫のすみに脚をなげだして座り込んでいた。
体中が痛くてどうにも動かせない。腕ががたがた震えるのは痛みじゃなくてくすりだけど。
その右手の爪はあのときのまま、赤い化粧は黒ずんできた。
体中が痛くてどうにも動かせない。腕ががたがた震えるのは痛みじゃなくてくすりだけど。
その右手の爪はあのときのまま、赤い化粧は黒ずんできた。
怖かった。
琥珀色のうつくしい瞳が怖かった。
つい指を突っ込んでめちゃくちゃにしてしまう程度には。
けれどもう一方残ったほうの目で見つめられたら。
とても、殺せなかった。
琥珀色のうつくしい瞳が怖かった。
つい指を突っ込んでめちゃくちゃにしてしまう程度には。
けれどもう一方残ったほうの目で見つめられたら。
とても、殺せなかった。
"グラードン"を相手にしたのは失敗だった。青は唇を噛む。
冬はすでに二匹の獲物を取り逃がしているし、当の冬は役に立たないし。
世界の平和が――青は首を振った。
「神はぼくだ、ぼくはせかいを守らなきゃならないんだ」
腕の震えがぴたりとおさまる。ゆっくり立ち上がって、青は深呼吸をした。
「……壊させるものか」
手始めに、あの時の"ジュプトル"でも探そうか?
それとも、"グラードン"を倒そうか?
役立たずの人間一人、いつでも捕まえられる。青は楽しそうに笑う。
「ね、冬。冬はさいごにするね?」
そう、『まほろ』より後に――ね。
冬はすでに二匹の獲物を取り逃がしているし、当の冬は役に立たないし。
世界の平和が――青は首を振った。
「神はぼくだ、ぼくはせかいを守らなきゃならないんだ」
腕の震えがぴたりとおさまる。ゆっくり立ち上がって、青は深呼吸をした。
「……壊させるものか」
手始めに、あの時の"ジュプトル"でも探そうか?
それとも、"グラードン"を倒そうか?
役立たずの人間一人、いつでも捕まえられる。青は楽しそうに笑う。
「ね、冬。冬はさいごにするね?」
そう、『まほろ』より後に――ね。
どこまで歩いてきただろうか。
足元がふらつくけれど、逃げなければ、見つかったら殺されるに決まっている。
そうしたら、幻には永遠に会えない。
冬は首を振ろうとしたけれど、痛みがそれを遮る。
血はもう乾いているようで、時々ぱりぱりと音がした。
まだ疼くような痛みがあったが、いつまでも地面に寝転がっているわけにもいかない。
ひたすらに歩く。身体を引きずるように、すこしずつ、ゆっくり。
身体なんてどうなってもかまわない。まほろに会えればなんだっていい。
けれどもう、その身体さえ、いうことをきいてくれない。
「まほろ…」
このまま会えないのか。
いや、会いたい。――それ以上何も望まないから。
足元がふらつくけれど、逃げなければ、見つかったら殺されるに決まっている。
そうしたら、幻には永遠に会えない。
冬は首を振ろうとしたけれど、痛みがそれを遮る。
血はもう乾いているようで、時々ぱりぱりと音がした。
まだ疼くような痛みがあったが、いつまでも地面に寝転がっているわけにもいかない。
ひたすらに歩く。身体を引きずるように、すこしずつ、ゆっくり。
身体なんてどうなってもかまわない。まほろに会えればなんだっていい。
けれどもう、その身体さえ、いうことをきいてくれない。
「まほろ…」
このまま会えないのか。
いや、会いたい。――それ以上何も望まないから。
『なにもいらない。いまのままで居させてくれ』
『それで、かまわんかね?』
『ああ……これ以上なんて、何処にもない』
『それで、かまわんかね?』
『ああ……これ以上なんて、何処にもない』
『たとえ君がすべて失ったとしても?』
『…あいたい』
『おお、君には立派な牙があるじゃないか』
『…あいたい』
『おお、君には立派な牙があるじゃないか』
どうして。どうして。どうして幻にあえないの?
わたしが嘘を吐いたから?
ほんとうはずっと愛してるっていいたかったのに。
胸をはってそう言えるようになりたいってずっと思っていたのに。
はいつでもそんなわたしでも赦してくれたけれどわたしはずっと苦しかったのに!
わたしが嘘を吐いたから?
ほんとうはずっと愛してるっていいたかったのに。
胸をはってそう言えるようになりたいってずっと思っていたのに。
はいつでもそんなわたしでも赦してくれたけれどわたしはずっと苦しかったのに!
廃墟の壁に凭れかかって、そのままずるずると座り込んだ。
この世界のなにもかもが自分をいじめにやってくるような気がした。
だから何もいらない。
生きるも死ぬも、出会えないならそれすらも無意味。
赤いモノトーンのどこまでも続く世界。
この世界のなにもかもが自分をいじめにやってくるような気がした。
だから何もいらない。
生きるも死ぬも、出会えないならそれすらも無意味。
赤いモノトーンのどこまでも続く世界。
何も望まない。何も欲しくない。
ただ――
ただ――
に、あいたい。