ぱてぃしぇ・ぱーてぃ
澪はやがて、いつもの家に早足で逃げ込んだ。簡易な鍵を扉にかけ、牢の足音が止まるのを待つ。良い様よ、しばらくそうしておきなさい。いつもは気にかけない足音なのに、あんなことがあった直後だからか今日はやけに気になる。澪はベッドに腰を下ろした。
腕を組み、大きくため息をついた。ああ苛々する。なんで自分が、こんなにも不快な気分にならないといけない。アームウォーマーを放り、手近にあった枕をひっ掴み力任せにだきとめる。
腕を組み、大きくため息をついた。ああ苛々する。なんで自分が、こんなにも不快な気分にならないといけない。アームウォーマーを放り、手近にあった枕をひっ掴み力任せにだきとめる。
「……牢の馬鹿」
ばかばかばかばか牢。死んでしまえ。そうだ死んでしまえば良いんだ。その辺にいるような筋肉馬鹿に殴られて死ねば良いんだ。せいせいする。
せいせいする、けど。ぼすりと枕に額を埋めた。けど、と。
せいせいする、けど。ぼすりと枕に額を埋めた。けど、と。
「……こいつだ」
「…この<キュウコン>だ」
「……」
「…この<キュウコン>だ」
「……」
不意に、誰かの声が聞こえた。しかもひとつではない。二人分の声に、ざわざわと何人かの声が重なっている。澪は気だるそうに顔を上げた。
そこに立っていたのは10人あまりの人間。ちらりと視線を横に逸らすと、地下牢へと通じる扉が開いていた。どうやらあそこに潜んでいたらしい。ご苦労なことだ。
老若男女様々な人間が目の前に立っている、ただ共通してるのは、澪への明らかな殺意。吐き気を催したような顔で、澪は彼らを睨み付けた。
そこに立っていたのは10人あまりの人間。ちらりと視線を横に逸らすと、地下牢へと通じる扉が開いていた。どうやらあそこに潜んでいたらしい。ご苦労なことだ。
老若男女様々な人間が目の前に立っている、ただ共通してるのは、澪への明らかな殺意。吐き気を催したような顔で、澪は彼らを睨み付けた。
「何よ、アンタ達」
「…お前が俺の女房を殺した」
「私の恋人を連れていった」
「娘を殺した」
「彼女を焼いた」
「弟を踏み潰した」
「お父さんを焼き殺した」
「…お前が俺の女房を殺した」
「私の恋人を連れていった」
「娘を殺した」
「彼女を焼いた」
「弟を踏み潰した」
「お父さんを焼き殺した」
つまり、みんな澪に恨みがある人間らしい。澪は小さく、吐き出すように笑った。心から彼女は”くだらない”と思う。
誰かのためなら、死ねるというの。
誰かのためなら、死ねるというの。
「馬鹿みたいね」
「……何?」
「……何?」
「そんなに隣にいて欲しいなら、代わりを探せば良いじゃない。」
ごうと、熱気が沸き上がった。
◆
「あーあ、折角綺麗なの見つけたと思ったのに」
澪は大きく息をついて目の前の光景を眺めていた。燃える家具とタンパク質。充満する不快な匂いに、澪は一瞬めまいを感じる。だがそれと同時に感じた激情は、やがて不快感すら焦がし尽くした。
そう。気にくわなかったら燃やせば良い。気にくわないものを置いておく義務なんてない。ふふ、と、彼女は妖しく笑う。
そう。気にくわなかったら燃やせば良い。気にくわないものを置いておく義務なんてない。ふふ、と、彼女は妖しく笑う。
だがその笑みは、家を出ようとして足を動かそうとした直後、消える。
左足が動かない。見れば、転がった大きめの死体の両腕ががっちりと、澪の足を掴んでいた。もう死んでるはずの彼は、逃がすまいと、澪の足を掴んで離さない。
そして、
左足が動かない。見れば、転がった大きめの死体の両腕ががっちりと、澪の足を掴んでいた。もう死んでるはずの彼は、逃がすまいと、澪の足を掴んで離さない。
そして、
みしり。
「…えっ」
不吉な音をたてたのは壁際に設置された大きな本棚。燃え盛る本棚の足元。倒れれば、ちょうど澪の体は、
「……っ離しなさいよっ!この、汚い、汚いくせにッ!!」
右足で何度も何度も何度も踏みつけるが、手はほどかれない。
みしみしばきばきぱちぱちり。不吉な不協和音。
それを破ったのは、家に響いた破壊音と、よく聞き覚えのある声だった。
「澪ッ!!」
息も荒々しく扉を破り、中へ入ってきた黒の青年。澪の姿を確認すると、手にしていた鉄パイプをその場に投げ捨てて彼女に駆け寄る。彼の指が彼女に向けられたその時、本棚の下部分が完全に燃え朽ちた。
澪も彼に、手を伸ばす。
澪も彼に、手を伸ばす。
二人の手が触れあう。
鈍い音が、振動と共に部屋に響き渡った。
鈍い音が、振動と共に部屋に響き渡った。